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マイガーさんが転入しました

いつもありがとうございます。

 学園でマイガーさんと殿下が一緒に居るのがよく目撃されるようになった。 

 私はできるだけ取り巻きとして二人を観察している。

 学食にも最近近づいていなかったが、今日はこっそりのぞこうと思っていた。

 殿下がA定食をたのみ、マイガーさんがB定食をたのんだのが見えた。

 その後ろからバナッシュさんが近づいていくのが解る。

 バナッシュさんが勢いよく殿下にぶつかろうとしたのをマイガーさんが殿下をひょいっと抱えあげて回避。

 バナッシュさんは勢いよく床に倒れこんだ。


「マイガー。もっと他の助け方は無いのか?」

「気に入らないなら抱き締めちゃうぞ!」

「………これでいい」


 マイガーさんは殿下を下におろすと、バナッシュさんに手を差し出した。


「大丈夫?」

「大丈夫です……貴方は!」


 バナッシュさんの瞳がキラキラした。


「食堂の床って結構汚いから早く起きた方が良いよ」

「あ、はい」


 バナッシュさんがマイガーさんの手をとろうとした瞬間、マイガーさんと目があった。

 マイガーさんはバナッシュさんの手をスルリと避けると私に手をふった。


「お嬢~!」


 注目されるから止めて欲しい。

 マイガーさんは私のところまで走ってくると私を勢いよく抱えあげた。


「キャー」

「キャーだって可愛い!お嬢制服似合うね」

「ま、マイガーさん下ろして!」


 私がもがくとマイガーさんは更に力を込めた。

 

「私服じゃないお嬢なんて新鮮だからちょっと堪能させて」

「マイガーさん!」

「今度タダ働きするから」

「タダ働き!」


 私は少し我慢することにした。

 そこに、呆れたように声をかけてきたのは殿下だった。


「タダ働きに釣られて良いのか?ユリアス」

「はっ!そうですね。マイガーさんそろそろ下ろしてください」

「王子邪魔すんなよ」

「邪魔じゃなくてユリアスに何かしてるとマイガーがローランドに殺されるぞ」

「若さん怖い」


 マイガーさんが私を下ろすと私は、まだ床に倒れているバナッシュさんと目があってしまった。


「酷い!ユリアスさんはそんなに私が嫌いなんですか!」


 突然の声でバナッシュさんに周りの人の視線が集まる。

 そのせいで、私がバナッシュさんを転ばせたみたいな雰囲気になっている。

 

「ユリアス!貴様!またジュリーを苛めてるのか!」


 面倒なことに婚約者様まで登場した。

 厄介だ。

 しかも、倒れているバナッシュさんを抱き起こし抱き締めている。 


「何でお嬢のせいにするのかな?マジありえない」


 マイガーさんは私の前に立ち、守るように言った。


「お嬢は何もしてないけど?あんた見てたわけ?」

「なに?」

「見てないよね?見てたらお嬢を疑うわけないよね?」


 マイガーさんは婚約者様を睨み付けると言った。


「俺の大事なお嬢に因縁つけると潰すぞ」


 何を潰すんだろ?

 私は普通に疑問に思っていた。


「何なんだお前は何処の家の者だ!」

「ラモールは、はじめましてか?宰相の息子のマイガーだ」


 殿下がそう言うと婚約者様は驚いた顔をした。


「宰相様の息子さんだったんですか?貴方はユリアスさんに酷い目にあわされて……」


 バナッシュさんがそう言うとマイガーさんは眉間にシワを寄せた。


「お嬢は俺に酷いことなんてしない」

「でも!」

「それこそ見たのかよ?見られるわけないよな?だってお嬢は俺のホッペつねるのだって嫌がるんだから」

 

 うん。

 ドMが喜ぶからつねるなんて嫌だ。


「で、でも」

「お嬢は冷たそうに見られるけど、スッゲー優しい人だ言いがかりをつけるな」


 マイガーさんはそう怒ってくれた。

 マイガーさんいい人だな。


「ユリアス、貴様は宰相閣下の息子をタラシこんでいるのか!婚約者が居ながら恥ずかしいとは思わないのか!」


 その言葉そのままお前にプレゼントフォーユーだ!

 私が困惑した顔をすると殿下が額を押さえたのが見えた。

 私も頭を抱えたい。


「何だ!何も言い返せないのか!」


 婚約者様が勝ち誇った顔をしているが周りに居る皆がコイツバカだ!って思っているに違いない。


「お嬢………本当にコイツと結婚するつもりだったの?」


 う、うん。

 私は躊躇いがちに頷いた。


「あれは無いわ!あんなのだったら俺の方がよく働くよ」

「マイガーさんが働き者なのは知ってます」

「俺が我慢して親父の家継げば地位も手に入るよ」

「貴族に馴染めないくせに」

「それ今言う?」


 私が笑うとマイガーさんは苦笑いを浮かべた。


「ユリアス!お前、それは浮気だぞ!」

「ただの従業員との世間話です。周りからしたら浮気に見えるのは、今まさにバナッシュさんを抱き締めているラモール様ではありませんか?」


 周りに居た人達も軽く頷いている。

 婚約者様はぐっと息を飲んだ。

 

「これはお前がジュリーを苛めたからだ!」


 むしろ今、私が苛められていると思うのは私だけだろうか?

 私は大きくため息をついた。


「では、ラモール様は私が誰かを苛めたら誰でも抱き締めると言うんですね?」


 私は近くに居るマイガーさんを見ると言った。


「マイガーさん。ラモール様がああ言っているので貴方をクビ…」

「待って!それ一番俺が言われたくないやつ」

「ええ、知ってます」

「もしかして、俺の事苛めてる?」


 私がニッコリ笑うとマイガーさんは口元をヒクヒクさせた。


「俺にあれに抱き締められろって言ってるわけ?」

「気が付きました?ちゃんと平等に誰でも抱き締めるのか調べなければいけないでしょ?」

「そっちの方が苛めだって解ってる?」


 私はニコニコしながら言った。


「だって、マイガーさんは私に苛められたいでしょ?」

「俺が望んでるのと違う気がする」


 マイガーさんは暫く天をあおぐとニッコリ笑顔でラモール様に近づいた。


「お嬢に苛められたから慰めて!」

「よ、寄るな!」


 マイガーさんの顔色も悪いが婚約者様の顔色の方が青い。


「ちゃんとあんたが証明してくれないとお嬢が納得できないんだって!俺クビになりたくないの!」

「何で貴様なんか抱き締めなきゃいけないんだ!お前らなんかにかまってられるか!ジュリー行こう!」


 婚約者様はバナッシュさんを連れて逃げるようにその場を去っていった。


「お嬢、逃げられちゃったけど?」

「よくやってくれました。マイガーさん後程ボーナスをあげます」

「ボーナスいらないから、もうクビとか言わないでよ」

「解りました」


 私とマイガーさんがニコニコしていると、近くで殿下のため息が聞こえたが無視してしまったのは言うまでもない。

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