王子殿下を守ります 後編
ああ、鼻がつまる……
婚約者様の後ろから顔を出したバナッシュさんはキラキラした瞳で王子殿下を見た。
「この前はぶつかってしまってごめんなさい。王子様だったんですね!私ったら何も知らなくて………」
自己紹介イベントを勝手に始めたバナッシュさんに私もお兄様も王子殿下も呆然としてしまった。
小説で侯爵家の息子が伯爵子息と王子をヒロインに紹介してからヒロインが言う台詞をバナッシュさんが話はじめた。
私は、バナッシュさんが強引に来るつもりだと悟った。
「私はジュリー バナッシュと言います。宜しくお願いします」
王子殿下は私の方をチラリと見た。
助けて~って言っているようだ。
「バナッシュさん、今殿下はお兄様と今後の国に必要な書類の話し合いをしています。自己紹介はまた後でにしてくださる?」
私の言葉にバナッシュさんはキズ付いた顔をした。
私が苛めた事にしたいらしい。
「ご、ごめんなさい。私、何も知らなくて………」
「ユリアス、何故お前はジュリーを苛めるんだ!」
面倒臭い。
ケチョンケチョンにして良いだろうか?
「ラモール様、妹は常識人のため貴族としての常識が無いバナッシュ嬢が恥をかかないために言ったまでです。悪気はないので許してあげてください」
お兄様の悪気のある台詞に私は笑いそうになってしまったが、たえた。
「ラモール様、私が悪いのです。許してあげてください」
バナッシュさん、何処から目線ですか?
常識が無いってハッキリ言われてるの、気がついてないの?
私は笑いが込み上げて辛かった。
「兎に角、自己紹介は終わったのだろう?では、もう用はないな」
「私!王子様ともローランド様とも、もっとお話がしたいです」
バナッシュさんは顔を真っ赤にして言った。
可愛いがアホにしか見えない。
「悪いが大事な話し合いなんだ、席を外してくれ」
王子殿下が冷たく言った。
これは予想外だったのか、バナッシュさんは首をかしげた。
「………お邪魔にならないようにしますから……」
捨て犬のような顔でバナッシュさんが呟いた。
王子殿下が怯んだのが解った。
「バナッシュさん、殿下を困らせないで下さい」
「!」
バナッシュさんは瞳に涙を浮かべた。
「ご、ごめんなさい」
そう言うと、バナッシュさんの瞳から涙が溢れた。
それを見た婚約者様の眉間にシワがよった。
「ユリアス!お前はなんて女なんだ」
「なんて女とは?」
「ジュリーを泣かして楽しいのか!」
私は勢いよく立ち上がると婚約者に近付いて言った。
「楽しくなどありません。ラモール様も彼女に注意されたぐらいで泣くなとちゃんと言い聞かせておいてください!私はバナッシュさんが社交界で恥ずかしい思いをしないように言っているのです!ラモール様もバナッシュさんが困るのは本意では無いでしょう!」
勢い良くまくしたてると婚約者様は後ずさりをした。
「バナッシュさんが困らないためにラモール様が出来ることは常識を教えることです!常識のあるラモール様は解りますよね!国の重要な話し合いを邪魔してはいけないと」
「………あ、ああ」
私の勢いに、婚約者様が頷いたのを確認すると私は笑顔を作った。
「では、お引き取りを」
婚約者様が困惑した顔をしながら元々座っていた席の方に向かっていき、バナッシュさんは悔しそうに私を睨み付けると婚約者様を追いかけて行った。
「ユリアスは、凄いな」
「そうでしょう!惚れないで下さいよ」
王子殿下が何かを呟くとお兄様が小声で何かを返していた。
こそこそ話すのはやめてほしい。
私は不満な顔を作った。
何故かお兄様と王子に微笑まれたのは何でなんだ?
私は何だか釈然としない気持ちで口を尖らせたのだった。
喉がしんどい。
風邪のため更新が遅れるかも知れません。
ごめんなさい。