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人殺しの墓標

作者: さきら天悟

「お前は、なんで、人殺しにそんな目を向ける」


俺は我慢ならなかった。

お前の視線の先には奴が眠る墓標があった。


「3年前、あんな事があったのに」


奴のせいで、多くの人が死んだ。

3万人、いやもっとだ。

間接的には数十万、数百万の人が死んだ。

なのにお前は何も無かったように、そんな目をする。

威厳に満ちている者を見つめるように。


「俺は許さない。

絶対に。

母親を奪ったあいつを」


でも、お前だけじゃない。

あいつを許している人間は。

むしろ、憎んでいる人より多いだろう。

逆に、憎んでいる俺たちを蔑む目で見る。



「兆候はあったんだ。

だから、先に・・・」


やつを防ぐ対策はあったのだ。

しかし、法律が縛った。

日本の法律があいつを守った。

すでに、手出しができなかった。


「世界遺産、そんものに指定されなければ・・・

土手っ腹に穴を開けて、膿を吐き出させるのに。

多くの人を助ける方法はあったんだ」



204X,富士山は大爆発した。

火山弾、火山礫、火砕流、土石流で3万人以上の人が亡くなった。

しかし、それだけない。

火山灰は成層圏まで達し、北半球を覆った。

そのため、太陽光が遮断され、地球の平均気温が3度下がった。

植物は育たず、雨水は汚染され、酸性雨となった。

すでにこれまで、地球規模で数百万人亡くなっている。

そして、以前の気象が戻るまで、まだ数年かかるだろう。




「あの時、世界遺産にしなければ・・・」

火山は地震と比べ、予測精度が高かった。

しかし、富士山は違った。

世界遺産になったため、観測センサーを自由に設置できなかった。

そのため、事前爆破もできなかった。

海外では大噴火を防ぐため、岩盤を砕き、溶岩を吐き出させ、

大噴火を止めた例がいくつもあったのだ。

だが、日本人は許さなかった。

富士山を人為的爆破するなんて、と言って。



「そんな悲しい目・・・」

そんな目を俺に向けるな。

俺も分かっているんだ。

富士山のせいじゃあ無いことを。

でも、もう少し時間をくれ。

そうすれば・・・」


俺は振り返る。

上部を吹き飛ばし、1564メートルになった富士山。

亡くなった人々の墓標。

それでも富士山は美しかった。

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