飛び出した闇
第四章突入です!
この章では主に正達と隼人たちがメインです
第一の旅「ジョーカー」
―ツルギノマヒ エレル城―
「ねぇ、ヴェイガァ、本当に行くのぉ?めんどぃ」
「当たり前だろうが、俺が一度決めたこと、曲げたことがあるかぁ?」
「私とのデート」
「した覚えもねーよ」
「もう、焦らさないでよぉ」
「うるっせぇんだよ黙っとけ、置いてくぞ!」
「ケーチケチケチ!!」
城内の一室には何人かの人がいる。自分も含め計八人のようだ。皆同じベースの軍服のような物を、それぞれ自分の好みにいじっている。
彼らの中心にいるのはヴェイガ・ハートラスト。王国ツルギノマヒの部隊、ジョーカーのリーダーであり、この国の王子だ。王子という見た目とは程遠い、手入れのあまり行き届いていない伸ばしっぱなしの髪に加え、服も一番雑に着ている。兄とは思いたくない程に荒っぽい。
その横にはグラマラスな赤に近いピンク色の髪を、豊満な胸にまで垂らしながらヴェイガに言い寄る女性がいる。彼女の名前はレドイ・テレキス。十九歳らしいがどうも嘘のように思える。兄の右腕でありどこでも付いて来る困り者だ。
「おい、ヴェイガ。イチャイチャは良いから早くしろ。時間がないぞ、勝手に動くんだからな」
「んぁ?おぉ、わりぃわりぃ。そうだよな時間ねーもんなぁ。よっしゃじゃあさっさと決めようぜ」
今兄に催促したのはバーン・カニバル。寡黙な男だが真面目な性格であり、いつも場を取り仕切ってくれる。実質の指揮官は彼であろう。
「んーと、じゃあまずビスト・ガヲル君。俺と来い」
「おっ、俺ご指名っすか、やったぜぇ!流石ヴェイガの兄貴」
「うるせーよ。おだてんなろ連れてくのやめんぞ」
ビスト・ガヲル、野生的でまぁ単細胞というのがふさわしい。私はとても苦手だ。
「お次にメフィナスト君とエドア・レプリカ君。君らもこっちねー」
「了解」
「またヴェイガのお守りかぁ…」
「当たり前だろエドア。お前は俺に付いてくんだよ」
「はいはい」
メフィナストさん。種族はバンシーで二十一歳らしい。物静かなところが女性らしくて、私の憧れだ。
そしてもう一人が兄の幼馴染であるエドア・レプリカ。兄なんかと出会ってしまったがために争い嫌いが増してしまった。同情の念を捧げたい。
「じゃあ、こっちに残ってもらうのはロナ君とバーン君、そんでもってスピリツさんねーん」
ふむ、兄としては悪くない編成だ。
ロナ・オペレト、同年代でとても優しい少女だ。数少ない友達といっても良い。
スピリツ・ハローリア、ジョーカーでは最年長であるが何かと謎が多い。というか喋っているのを見たことがない。たまにいるのを忘れてしまうがどういう人なのだろうか。私にはよく分からない。
「うっし、これで全員に指示出したな。それじゃあ作戦開始とすっかぁ。行くぜ、てめぇら。目指すは戦争屋のタテノツキだ、とことんぶっ壊しに行こうじゃねぇか」
「はっ、我らジョーカーは王子の心のままに」
そうレドイが言うと、彼らは部屋を出て行く。私には命令が課せられていない。好きに生きろ、それが兄からの命令なのだ。だから、存分にそうさせてもらうとしよう。
任務に向かう彼らの背を見送った後、ティエナは背伸びをし、これからどうするかを一通り考えてみたが、これといって良い案は思い浮かばなかった。
(訓練でもしておくか)
彼女は相手にならない王国兵士たちの元へ、暇つぶしに向かうことにした。




