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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
39/63

言葉で踊れば猫じゃらし

もしかしたら、キャラが多過ぎて困るーという人もいるかもしれません

そんな時は頑張って覚えましょう

第二十五の旅「冗談も程々に」


 パレードも終わり、都全体が賑わいを終え、静けさを漂わせていた。未だに盛り上がっているのは各地区の酒場くらいだろうか。


 レイスに案内され、瑛は共に市場区の未だに屋台等が賑わう付近にやってきた。こんな所に一体何があり、誰がいるというのだろうか。さっきは冗談と言ったがやはり不安になってくる。


 酒場では兵士や男共がドンちゃん騒ぎだ。


「もうそろそろか。その協力してくれそうな奴も家は」

「はい、家というよりも踊り場ですが」

「踊り場?どういうことだ」

「その人は踊り子なんです。ほら、あそこで」


 レイスが目線を動かした先には、妖艶ともいえるが、歳はレイスとさほど変わりないような少女が、美しい踊りをしていた。周りには鼻を伸ばした者たちが群がっている。多種族でもその美しさには魅力を感じるらしい。それにしてもこの酒臭さの中でよく平然と踊っているものだ。


「おい、まさかあの女か?」

「はい、私の友達です」


 レイスの笑顔はいつも通りだった。それはまぁ良い。肝心なのは二人に接点があるとは思えないほど、雰囲気に差があることだ。


「本当に友達なのか?」

「疑うのですか!?彼女とは幼い頃から見知った仲なのですから。丁度踊りも終わりましたし、証拠をお見せします!」


 そこまでムキにならなくても良いだろ。自信満々な足取りでレイスは、歓声を後にし立ち去ろうとする少女へと話しかけた。


「ニーナ、久しぶりですね!」


 そのニーナと呼ばれる少女は、突然レイスに名前を呼ばれると不思議そうな顔でこちらを見つめてきた。しかし、レイスとの再会を喜ぶ様子も、何か言いたげな様子も見られなかった。


「あ、あれれ?ニーナ、どうしたのですか?レイスです。レイス・ハートマイトですよ?」


 レイスはどうやら慌てているように見える。それもそうだ、傍から見れば知らない人間に友達面をして話しかけている変人だ。そんな泣き目で混乱する彼女に追い討ちをかけるように、ニーナは慈悲のない言葉を繰り出した。


「レイス…どなたでしょうか。私にはそんな友達も知り合いもいない気がします。人違いではないでしょうか」


 これは誰でもピンポイントアタックだろう。


(どんまいレイス、お前には俺と言う友達がいるから元気出せよ☆)


 そんな柄にもないふざけた言葉をかける余地もないほどに、レイスは真っ白な灰になったように地面へ崩れ去り、口からは魂が抜けているようだった。


 美人もこんな顔になるのか。


 風が吹けば一瞬で塵じりになってどこかへ飛びそうな彼女は、何かぶつぶつ言っている。


「友達って言ったじゃないですか。ニーナが言ったじゃないですか。酷いです。私は悲しいです。友情とは脆く儚くて、こんなにも切ないものなのですね…。うぅ…私はちゃんと覚ぇ……ぃ…ぅ…南無阿弥陀仏ゴニョゴニョなんちゃらかんちゃら……」


 あまりにも声はか細くなっていき、何を言っているのかも分からない状態で、出る言葉が全てお経のように聞こえるほどだった。本当に彼女は知り合いではないのだろうか。


「クスクス…」


 誰かが笑っている。 


「プックックック…」


 一体誰なのだろうか?


「ククク…アハハハハ」


 その笑い声はだんだん大きくなり、可愛らしいものへと変わっていた。どうやら声の主はニーナのようだ。


「アハハ、無理無理!演技無理ぃ!笑い死んじゃうってこんなの、レイス本当いっつも騙されすぎぃ!」


 先ほどまでの口調とは全く違う喋りの様子で彼女は笑い転げている。一体どういうことだろうか。


「あんた、子供の頃から、アハハ、私が会う度に嘘ついてんのに、クスクス、何回騙されてんのよ。私は悲しいです。友情とは脆く儚くて、こんなにも切ないものなのですね…。恥ずかし、演劇でも言わないわ!アハハハハまじお腹痛い!助けて誰か!アハハアハ…アハァン!?」


 劇口調でレイスの言葉も採り入れ、からかいながら地面に転げ回る彼女の前に、他の民に見せれば泣いて逃げる程の笑顔でレイスが立っていた。


「ニーナァ?ふふふ、本当久しぶりですねぇ。もう一年以上も経って私の見た目も変化したためにきっと気づかなかったのでしょう。まだ夜は長いですから、これから二人っきりですこぉしずつ、思い出していきましょうねぇ」


 そう言うとレイスは地面に転がったままのニーナのほうへ近づいてくる。


「あ、えと、ごめんね。ほ、ほら何て言うの?久しぶりの再会でテンション上がっちゃったとか、ね!?いやまじで心からごめんなさい。ちらっ、あ、だよねぇ許してくれないよねぇ…。でででもさ、そそそそんな怖い顔しないで、は、話し合おうよ、ね?」

「えぇ、話し合いましょう。私の一番好きなやり方で良いですよね♡」

「お、おいレイス。お前何を…?」


 そういうとレイスはどこから持ってきたのであろう猫じゃらしを片手に、更に笑顔を作る。


「え、あ、そうじゃなくて、ほら、違うと思うよ!?ももももっと他にあるからぁ。や、やめて!そ、それは本当に、あぁ、あぁ…」


 彼女の必死な訴えも土下座もレイスを止めるに値することはなく、腰の抜けたニーナの耳元でレイスは小さく囁く。


「ふふ、たっぷり遊びましょうねぇ」

「いや…いやああああああああああああああああああああ」


 静かな都に響くほどに、ニーナの自業自得な断末魔が無残にも耳に入っていった。


笑顔ってやっぱり怖いですよね

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