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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
32/63

時には嘘も必要です!

そろそろ主人公を出さなきゃね

第十七の旅「苦労人」


 二人の男女は駆け抜けた。闘技区を抜けるために全力で。


 住宅区の目の前まで来ると、レイスは顔を少し伏せ始めた。そんな事に瑛は気づくことなく、衛兵の元へ駆け寄り、住宅区へ行きたいと話した。


 見た目から衛兵には迷い込んだと思われたのだろう。快く通路を開けてくれた。


 長い通路を行く途中、息を切らしながらも瑛はレイスへ尋ねる。


「本当に、あいつを置いてきて…、良かったのか?」

「大丈夫です、彼はとても強いですから」

「追われてる身なのに、やけに信用してるんだな」

「あ、そ、それは!」


(ま、不味いですね。このままではバレてしまいます!)


「えぇと、彼はパルナの発動者ですから」

「何?パルナだと?」

 瑛はその言葉に食いつかざるを得なかった。

「は、はい!」


(この目の変わりよう、何とか誤魔化せそうです!)


「彼のパルナはオープンアイ、普通の者では歯が立ちません」


【オープンアイ】

ある半径内の空間を視覚できます。つまり、全方位の状況を理解することができるのです。こんなのずるいですよね!


「そんな能力が?」

「はい、これで幾多の悪さをしてきました。私も何度も狙われたのです…」


(ごめんなさいドグ、いつか真実を彼には話します)


「なるほどな、そんな能力となればこちらの方へもすぐ現れるかもな」

「えぇ、それに彼の場合は能力を使わなくても元が非常に強く凶暴です。早く住宅区の内部へと行くのが良いでしょう」

「流石に狙われているだけに詳しいな。よし、湖周辺は隠れる場所が多そうだ。まずはそこで落ち着こう」

「はい、ナイスアイディアだと思います!」


 瑛にはレイスが慣れない単語を言っていることがすぐに分かった。


「…じゃあ行くか」

 二人はそのまま少し暗い通路を抜け、住宅区の中へと入っていった。


第十八の旅「記憶するのは眼鏡で足りる」


 買い物やフェスタの雰囲気も存分に楽しんだため、瑛君に言われた通り城へ戻ってきたのだが、彼はまだそこにはいなかった。


「あれれ、はぐれたらここにって言われたんだけどな」

「も、もしかして私達が遅すぎて怒っちゃったとか!?」

 散々楽しんだ明日見さんも、人の事になると急にオドオドし始める。そこが素晴らしくキュートだ。


「んー、どうなんだろうなぁ。もしかしてハプニングでも起こったのか?まさか道が分かんなくなったりしててよぉ」

「それは絶対にないと思います」


(瑛君が道を間違えるはずがない。彼は街の構造なんて理解してるはずだ)

 正は自分でも何故だろうと思うくらい、瑛を信用できていた。


 そうやって城の一階にある開けた場所で頭を抱えていると、そこへワンが現れ、キョトンとした顔をしてきた。


「皆さん、どうなさったのですか?」

「んぁ?お、ワンじゃねぇか聞いてくれよ。アキラがはぐれちまってよう。どうしたもんかねぇ」


 その発言を聞いてワンは不思議そうでならなかった。


「彼はとてもしっかりしたヒトですよ?あなた方が彼から離れてしまったのでは?」

「…え、そ、そんなつもりはよぉ!」

「全く、ダスさんしっかりしてくださいよ」

「いやぁ、ついつい美味そうな飯があってな。そう!アイが食べたいって言うから仕方なくだな!」

「え、わ、私ですか!?えとえっと…ごめんなさい!」

「ちょっとダスさん、明日見さんのせいにするのはやめてくださいよ。瑛君に知らせもなくそこへ引っ張っていったのはダスさんじゃないですか。その後もあいつは大丈夫だっての一点張り」

「ぐぬぬ…、よく覚えているなセイ」

「はぐれた原因ですからね」


 三人の会話を聞いていたワンは二人に尋ねてみた。


「そういえば、お二人がセイ君とアイさんですか?」

「え、あ、はい!そうです!」

「天野 正です。ワンさんでしたっけ、よろしくお願いします」

「アキラから話は聞いていますよ、ワンと言います。よろしく」

「瑛君から…?」


 二人に挨拶を終えると、ワンさんは仕事かあるらしくそのついでに瑛君を探してくれると言ってくれた。


「ありがとうございます、特徴とか分かりますか?」

「あのメガネ、とやらですぐ分かりますよ」

「あぁ、確かに」


 眼鏡で存在を覚えられている瑛君を少し可哀想だと思ってしまった。


「何か凄く悪い事しちゃったなぁ…」

「しょうがないよ、明日見さんだけが悪いんじゃないから心配しないで。僕らも探しに行ってみようよ」

「う、うん!一緒に探そうね!」


(一緒に…一緒にかぁ。ぇ、じゃあ二人っきりってこと?それってなんかデートっていうか、えへへへ)


 正は二人で街道を歩く姿を想像し、胸が高まった。


「お、いいねぇ!俺も手伝うぜ!」


 あぁ、なんて空気の読めないリザードマンなんだ。

 彼が隼人だったら即察してくれただろうに。正は親友が傍にいない事をこの時一番悲しく思った。


「ありがとうございます!三人で探しましょうね」

「おうよ!任せろってんだい!」


(元は誰のせいだよ…)

 正は能天気な男に振り回されている自分を情けなく思った。


 その飛び交う会話を背に、城から出るために大きなドアを開けようとすると、それは急に勢い良く開き、ワンは身体ごと吹っ飛ばされてしまった。


「ぐっ!」

「えぇ!?ワンさん!?」

「ふ、吹っ飛ばされちゃった…」

「ありゃいてぇな」


 そんな彼を吹き飛ばしたドアの先には、ワンと対と言えるイヌが立っていた。


「おいワン!何だこりゃ一体どうなってんだよ!!」

「いったた、何するんだよドグ。僕の身体はデリケートなんだからぞんざいにしないでくれよ」

「うるせぇ何がデリケートだ!ただ白いだけだろうが!」

「ドグが黒すぎるだけ」

「何だとぉ!」


 急に出てきたドグと呼ばれる男は、会って早々ワンと何かしらの口論を始めた。


 状況が掴めず置いてけぼりの三名はひたすらに程度の低い喧嘩を眺めるしかなかったのだが。


「もう色の違いは良いから何があったんだよドグ」

「おぉそうだ!色なんてどうでも良い!レイスが変なもん身につけた男と逃げ出しちまったんだよ!!」

「…え?」


 その知らせを聞いたワンの顔は彼に似合わずどれほど間抜けだっただろうか。


「だからぁ、レイスが変ななよっちい男と逃げ出したんだよ!」

「…ねぇそれってもしかして」


 ワンさんはそう言いながら沈黙する僕達の方を向いた。


「真ん丸いガラスみたいなのが2つ付いた、目に付ける物だったりする?」

「おぉそうだ、良く分かってんじゃねぇか流石だな!」


 その問いにドグはすぐさま答えた。


「アキラ…」

「嘘でしょ…」

「導衆君…?」

「あいつしかいねぇなぁ…」


 ドグは皆の発言に周りをキョロキョロし、僕らを見つけるとまさかといった表情をした。


「知り合いか…?」

「「「「はい」」」」

「マジかよ…」

今更ながらこのワールドツリーという題名は語呂が良いからってつけたんですよね

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