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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
31/63

そのためのお付きだよ

ゴロツキって噛ませ犬感強いですよねぇ

第十六の旅「午後三時に響く鐘と悲鳴」


「なぁお二人さんがた。ここは闘技区って言ってよ。友達ごっこする場所じゃねぇんだよ」


 六人のうち一人がこちらへ話しかけてきた。数は圧倒的にあちらが多く、皆武器を手にしている。


 人だけじゃなく豚顔や犬顔も一匹ずついるらしい。別の種族はそれだけで恐怖を煽ってきた。


六人のゴロツキは右からショートナイフ、メイス、ロングソード、クレイモア、ナックル、パチンコをそれぞれ腕にもっている。どれも残念なから本物だ。


「騒ぐつもりはなかったんだ、迷惑をかけてすまない。すぐに出ていくよ」

 瑛はなるべく笑顔で交渉し、この場を打開するつもりだった。レイスもそれを察してくれたらしい。口を開くことなく、無言で瑛の背へと身を隠した。


「そーかそーかぁ、出てってくれんのかぁ。物分かりの良い奴で俺は嬉しいよ」

「ありがとう、話が分かってくれる人で助かったよ。じゃあ俺達はこれで」

 そう言い瑛はレイスの手を引いてその場を立ち去ろうとした。


 しかし、そんな上手い話があるわけでもなく、彼の目の前を大きなメイスが通り過ぎる。


「っな!?危っ」

「ひぃ!な、何をしていらっしゃるのですか!?」


 その一振りは瑛の鼻先を掠めそうになるほどギリギリで正面に落とされた。下を見ると地面は抉れている。


「うぉっと危ねぇ。手が滑っちまったよ」

 メイスの所有者である豚顔はゲスな笑みを浮かべている。


「おいおい、俺が折角許してやったのに虐めてやんなよ」

「でもよジャックの兄貴、この女上玉どころじゃないぜぇ?」

「お、本当だよジャック!オークの鼻はイヌより敏感ってか?」


 もう一人の男がイヌの方を見て言った。


「俺は別に女に興味はない」

「おいおいこれだからつまんねぇやつは困っちゃうねぇ。ジャックの兄貴に嫌われちまうぞ?てことで嬢ちゃん。ブーヒが気に入っちまったらしいからよ、 俺らと一緒に遊ぼうぜぇ?」

「ハルラ、手加減してやれよ」


 ハルラと呼ばれたその男はじわじわとこちらへ近づいてきた。


「ま、待て。彼女は用事があってこれから家に帰る所なんだ。お前達と遊んでる暇は」

「黙ってろ弱小がぁ!」


 瑛の説得が終わる前に彼の一撃が腹部へと入った。

「っがぁ!」

「アキラ!」

 殴られた瑛は腹を抑え、地面に倒れ込みそうになった。かなり効いたらしい。


 そんな瑛を通り過ぎ、ハルラはレイスへと手を出そうとした。

 レイスは恐怖で足がすくみ、動けないでいる。

 チャンスと思い一気に飛び掛ろうとしたハルラの足は急に動きが止まった。


「あ?」


 足元を見ると、瑛の手が彼の足を強く握り引き止めていた。

「彼女は、用事があるんだ…。それ以上は…行かせな」

「ヤド様キック!」

「がはっ!」


 引き留めようとする瑛の仰向けで無防備な背中を、ヤドが思いっきり踏みつけた。


「うっせぇんだよお前、ジャックが生かしてるからって俺が殺さねぇ訳じゃねぇぞ?」

 そう言うとヤドはショートナイフを瑛の顔の真横に突き立てた。


「はは、流石だぜヤド。これで俺は安心して食えるってこった。さぁ嬢ちゃん一緒に楽しいところへ行こうぜ?」

 再びハルラが近づいてくる。


 レイスは後ろへ去ろうとしたがうまく動けず、尻をついてしまった。もう逃げることもできない。周りの者は見な面白そうに眺めるか、見て見ぬフリをするだけだった。


 瑛は地面に押さえ付けられ、苦しそうにしている。


 自分のせいだ。


 ドグに言われた通り闘技区には近づくべきではなかった。アキラが言ったように宿場区で待っておくべきだった。ここよりかはまだマシだったはずだ。


 ハルラの手は近づいてくる。その手はもう肩に触れようとしていた。

「へへ、つっかまーえ」


「てねぇよ」


 どこからか声がした。前だろうか、右だろうか、左だろうか。いや、その声は後ろからだった。

「誰だ?てめぇ」


「…ドグ!」


 振り返るとそこにはお祭りでお節介に渡される物を身体中に身につけたドグの姿があった。


「やっと見つかったか、レイス」

 泣き出しそうな彼女を見つけると、ドグはほっとし、更にその奥で地面に突っ伏している男が目に入った。

「情けねぇなぁおい」


 ドグはやれやれ仕方なく二人を助けようとゴロツキの元へ歩み出す。


 その歩みから、ゴロツキ共はドグが二人の少年少女に何か関係があるのだと気づき、敵と認識した。

「おいおいちょっと待てよあんた、このヤド様の邪魔をすんなら容赦しねぇぜ?」

「ジャックの兄貴、殺っても良いですかい?」

「勝手にしろよ」


 楽しみを邪魔され苛立った二人は振り返り、ジャックの了承を得ると、ご自慢の武器を取り出す。


「流石話が分かりますね」

 そう言うとヤドは思いっきりショートナイフを持ってドグの方へ走り出した。


「はっ、ドグ、危ない!」


 その掛け声よりも早くそのナイフはドグへと突き出された。


 しかし刺さる手応えもなくドグはそれを難なく左へとかわし、ナイフを持つ手を右手で引っ張りながらながら、腹部へ大きく蹴りを入れる。


「心配すんな、何のためのお付きだよ」


 引っ張られた勢いと強い一撃が合わさり、ヤドはそれだけでダウンした。

「うがっ……」


「レイス、その男と隠れてろ」

「え、はい!分かりました!」

 レイスはドグに言われた通り、ハルラを通り過ぎてヤドのいなくなった瑛の元へ行き、彼と共に隅の方へと退避した。


 ハルラは彼女の行動に目を向けようともせず、目の前の出来事に牙をむいていた。

「んだよそれ、つええのかよ!おいブーヒ、行くぞ!」

「言われなくても潰してやるよ!」

 ハルラはロングソードを片手にブーヒと共に突進してきた。


 ドグは身につけていた受け取り品を道端の横へ置くと、先程と同じようにハルラの正面からの一太刀をひらりと交わした。その隙を狙うように、ブーヒが腹部へ大きく振ろうとしたメイスを、跳びつつ頭を鷲掴みにし、顔面に膝蹴りする事で完封した。


 しかし、そこで止まることもなく、その行動に呆気にとられたハルラの頭と、怯んだブーヒの頭をそれぞれ掴む。


「へ?」

「ぶっ?」


 二人はその意味を理解するまもなく互いに頭部を打ち合い気絶した。


「おいおいマジかよ一瞬かよ」

 伸びた二人を地面に投げ捨て、ドグはジャックを睨んだ。

「強いねぇおい。でもよ、俺と遊ぶ前に最後にラグと遊んでくれや」


 そう言うとドグの前には例のイヌがファイティングスタイルを取っている。


「ナックルか、面白ぇ」

 今度はドグの方からラグの方へと駆け出した。


 跳び後ろ廻し蹴りを繰り出し、相手の顔へと蹴りを入れようとするが、腕で止められてしまった。弾かれた足を地面につけようと体勢を立て直し、間髪入れずに殴りかかる。


 だが、ラグはそれを軽くよけながらチャンスを見計らい、大きくアッパーカットを決める。


 しかしドグも負けてはいられない。怯みながらもその瞬間にドグはラグが打ち上げた腕を両手で掴み、逃げる隙を与えずラグの身体を地面へ叩きつけた。

「中々やるじゃねぇか、でもまだ俺には足りねぇよ」

 ラグは起き上がろうとするも意識が持たず、そのまま地面へ倒れ込んだ。


「うっそでしょぉ」

 ジャックは目の前で起きた出来事から逃れるように、その場を離れようとしていた。


「おい、クソゴミ」

「は、はぃ」

「こいつを片付けたら俺と遊んでくれんだろ?」

「あー、また来週ね☆」

 その言葉を置いて、彼は一目散にその場を走り去っていった。


「はっ、根性無しが」


 大将を降伏させ、辺りを見渡すと先程潰した四人とパチンコを持ったまま泣き顔で突っ立っている男がきちんとそこにいた。


 逆に言えばその場に見知った顔はその五人しかいなかったのだ。


「…は?あいつらは?」


 そこにレイスと瑛の姿はなかった。ただ一人そこに立つドグを嘲笑うように、三時の鐘が都へ響くのだった。

犬だけど惚れていいんやで?

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