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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
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魔法の笑顔

久々の風呂回です

お風呂ってやっぱり色んな意味で生きるのに大切ですよね

第十の旅「笑顔に飲まれ、空気よ和め」


−タテノツキ−


「どこに今向かってるんだ?」

「ん?あぁ、今あのでけぇ建物に行ってんだよ」

「城か」

「えぇ!お城に行くんですか!」


 明日見が目を輝かせる。


「やっぱり女の子って、城とかそういうのに憧れるものなの?」

「女の子だけじゃないよ、天野君だって嬉しそうじゃん!」

「あはは、バレちゃった?」

「いいねいいねぇ、その通り。この酒は兵士の打ち上げ用ってこった」


 後ろの樽酒はかなりの量だ。


「お城に行けるなんて夢みたい…」

 明日見と天野はそれからずっと外を覗きながら、目に見える一々に驚いていた。


(あの二人にはむしろあの態度でいてもらうか…)


「なぁ、城の誰かに取り次ぐ事は出来るか?」

 瑛は小声でダスに尋ねた。

「おいおいお前さん何をするつもりだい?」

「ちょっとな。それで、出来るのか?」

「面白いなぁアキラ、任せとけよ」


−シルド城−


「ダスさん、いつもありがとな」

「いつも通り遅れて来てくれるから、こっちも警備を気兼ねなくサボれるもんよ」

「ダスも今夜どうだ?パーっといこうじゃねぇか」


 兵士達はダスと世間話をしている。どうやら任せても良さそうだ。瑛はこれからこの国の者と話をするつもりだった。


「へ、兵隊さんですか!わわ、初めて見ました!」

「ちょ、明日見さん顔出しちゃうの!?」


 明日見は荷馬車からひょいと降り、兵士達へと挨拶をした。

「私、明日見 愛といいます!よろしくおねがいします!」


(な、何だこの可愛い子は!)

(天使きた?天使きたああああ!?)

(今日の夜の予定をチェックしねぇとな)

(レ、レイス様やエメ様に張り合える素晴らしさではないか…)

(フェスタ最高)


「あ、うん、よろしくね」

「こちらこそ、楽しんでいってね」

「お、お嬢ちゃんどこから来たの?」

「おいごらてめぇ、抜けがけしてんじゃねえぞ!?」

「あぁん?うるせぇ俺がゲッチュすんだよ黙れハゲが」

「ハァゲてねぇしまだ俺若いしぃ」

「残念フェイスは黙ってイケメンの俺に譲れよ」

「お呼びじゃねぇんだよ人面魚!」


「あ、あのー、僕は天野 正って言います」

「男に興味はねぇ引っ込んでろ!」

「あぼーん!?」

 正は屈強な兵士達に吹っ飛ばされてしまった。

(え、何この人達怖いんだけど!?)


 そんな輩にビクビクしていた僕を置いて、その場は明日見さんの一声で静まった。

「み、皆さん!」

 争っていた野郎共が皆一同に彼女を見つめる。

「な、何だいお嬢ちゃん」

「俺に惚れちまったか?」


 それにしてもどいつも情けない面構えだ。


「いえ、そうじゃないんですけど、私の名前は先ほども言ったように明日見 愛です!ずっと耐えかねていて、お城に着いたら言おうと思っていたんだけど…」

「…どうしたんだー?一体」

「お…」

「「「「「お?」」」」」

「お風呂を貸していただけないでしょうか!」

「「「「「喜んでお貸ししましょうアスミ様、どうぞこちらへ」」」」」


(な、何なんだ、兵士ってこんなんなの!?)

 正のイメージする兵士とのギャップに、彼は妙なリアリティーを感じた。


「大丈夫なのか?ここの兵士は」

「あぁ見えて皆頼りになる奴らだよ」

「だと良いんだが…」

 瑛も不安な顔をした。


 倒れている正と、瑛の方へ明日見が声をかける。

「二人共ぉ!お風呂借りてもいいんだってー!」

 見れば分かる。どういう人気度なんだあいつは。


 瑛は天然というものの恐ろしさを感じた。あの屈強な男達に恐れを抱かず平然と自己紹介をする。ましてや、お風呂が借りれたのもきっと、自分の見た目ではなく相手に優しさがあったと思っているのだろう。


「明日見さんナイスだよ!瑛君、今すぐ入っちゃおう!」

「ん、あぁそうだな。ダス、待ってもらえたりできるか?」

「当たり前だろ、ゆっくりしてこいよ」

「すまないな」


 それから僕らは兵士達に案内され浴場へと案内された。どうやら大浴場のようだ。兵士達用だろうか?


「ひ、広いね」

「あぁ、どこにこんな金があるんだろうな」


(そこじゃないでしょ)


「瑛君って変な所に目がいっちゃうよね」

「変な所とは何だ?」

「んーっと、変人的な?」

「なっ、言葉選びは気をつけた方が良いぞ」

「実感しています…」


 お湯からは何故か良い香りがする。これもパルナの力だったりするのだろうか。成り行きで今ここにいるが、お城のお風呂に入っているというのは普通に考えれば凄いことではないだろうか。


(記念写真しとこうかな…)


「明日見 愛」

「え?」

「人の事ばかり考え過ぎているな。今回は自分にも恩恵がきてはいるが」

「ど、どういうこと?瑛君」

「お前だって気付いているはずだ」

 そう言うと瑛君は少し早めに浴場を出ていった。


(いや、全然気づいてないんだど、どうして同じ基準で見てくるの!?)


「…」

 少し身体が火照ってきた。

「何に気づくのさ」


−女子大浴場−


「う、うわぁ!」

 愛は家の風呂の二十倍以上ありそうな光景を見て、ぽかんと立ち尽くしていた。


「あら、お客さん?」

「え、この時間にですか?」


(な、先客がいる!)


「え、えと、いや、あのーそのー!」

 何と声をかければいいのかがよく分からなかった。


「あなた、どうしてここにいるの?」

「見た事ない顔ぶれですね…可愛い」

 目の前の二人は素性を聞いてきた。


「あのですね!兵隊さん達が、入ってどうぞぉって…」

 その言葉で二人は何かを察したらしい。片方はお湯の中へぶくぶくと沈んでいった。


「ここの警備が心配になってきたわね…。あなた、名前はなんて言うの?私はエメ・スターリング。皆からはエメって呼ばれているわ」

「わだしはブクブクブク、リヒナ・デンジャーって言います。よろしくお願いします」

 エメと、もう一人の沈んでいる彼女はリヒナというらしい。やけにアメリカンな名前だ。やっぱり皆外国人なのだろうか。言葉が通じるのが不思議だ。


「私は明日見 愛です!歳は十六歳!です!」

「ブクブクブク…!?え、同い歳!?」

 いきなり水を打ち上げてリヒナは飛び出してきた。


「もう、リヒナったら水が飛ぶでしょ。アイさん、ほこに立っていては寒いと思うから、こっちに来て一緒に入りましょ」

「あ、はい!」

 言われた通りに、愛は二人の元へ寄っていった。


 近づく事でようやく二人の姿が浮き立ってきた。


 エメという女性は歳はおそらく若いのであろう。しかし、そうとは思えないほどの大人っぽさを持つ美人であった。


 リヒナは、先程からの振る舞いから見て、多分よそ者があまり好きではないのだろう。桃色の髪色と鮮やかな赤い瞳がとても綺麗だ。顔は少し子供っぽいがこれまた可愛い。アイドル顔とでも呼べばいいのだろうか。


(ふ、二人共すっごく綺麗だなぁ…)

 愛は緊張のあまり顔が赤らんできた。


「その黒髪、とても綺麗ね。珍しいわ。どこから来たの?」

「ええと、あの」

「ふふ、別に無理に聞くつもりはないわ。今はゆっくりお湯に浸かって疲れを癒して」

「あ、はい!分かりました!うわっ、良い匂い…」

「香りのパルナがこの浴場の元にある温泉源にはかけられています。だからとても良い香りがするです」

 愛の独り言にリヒナは食いつくように言葉を返す。


「…ええと、同い歳なのに敬語なんですね」

「べ、別に良いじゃないですか!これが私のスタンダードなんです」

 リヒナは距離を置こうとしたが上手く置けなかった。


「リヒナさんって優しいんですね」

 それでいてこのフワフワ具合だ。自分も敬語じゃないか!

「もうリヒナ。意地張ってないで歓迎しないと」

「うぐぐぐぐ…。分かりましたよ。どうぞゆっくりしていってください」

 エメさんに言われては仕方ないと、腹をくくることにした。


「はい!ありがとうございます!」

 その顔にその笑顔は卑怯だ。

 リヒナは愛の笑顔に自分にはないものを感じた。


−シルド城応接室−


「それで、ご要件とは何でしょうかアキラさん」


 目の前のソファに腰掛ける犬はダス同様確かに喋っている。


「瑛で構わない。こちらもワンと呼ばせてもらう」

「なら、それでいきましょう」

「二人がいない今話しておきたい。ここの付近にある神殿を構えた森、あそこは一体何なんだ?」

「ふむ…、選択の森のことでしょうか?」


(選択の森…)


「名はそう言うんだな。俺達は空から降ってきて、その森へと降ろされた」

「…おっしゃっている意味がよくわかりませんね」

「そう思うだろうがこれは事実だ」

「いえ、アキラ。あなたが空から降ってきた。それは僕も了解できます。でもなぜその森に入れたかが重要なのです」

「…というと?」


 ワンの目は少し鋭くなった。


「あの森は、パルナを持つ者、そして力が潜在している者しか入れないのです。そしてあなた方はそこへ降りたと言いました。つまり、三人ともパルナが潜在しているということになるのです。そうでもなければ普通の人間が立ち入る事はできません」

「つまり俺たちも、いつか固有の力が手に入ると?」

「可能性は十分にあります」


(予想以上に良い材料だ)

 瑛は自分達が不利な状況にいるわけではないことを理解し、次のステップに行くことにした。


「なら話は早そうだ。俺達はパルナを持っている。国は能力者が欲しい。そうだろ?」

「まぁ、そうなのでしょう」

「だったら、俺達を保護してくれないか?」


 瑛は眼鏡をくいっと上げた。


「そう来ましたか…、分かりました。私から副官であるクレイズィアに話を持ちかけてみましょう」

「本当か、頼もしい答えをくれて嬉しいよ」

「最初から筋書き通りなのでは?」

「俺はそこまで賢くないさ。まだ若造だよ」

「僕と歳もお変わりないようで」

「だったら上品な敬語をやめれば良いさ」

「そうさせてもらいましょうかね」

「食えない奴だな」

「ふふ、良く言われるよ」


 一人の眼鏡と一匹の犬は、不気味な笑みを浮かべながら部屋を共に出ていった。


瑛は結構一人で色々進めちゃうタイプですね

野心家というわけではないですが、彼は彼なりに色々考えています

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