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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
25/63

森を抜けたいです

ようやく森を抜け、正達がタテノツキへ行く事で物語が始動します

自分が一番ワクワクしていますね

第六の旅「上を向いて、導はそこに」


「あぎらぐぅん、まだなのぉ〜」

「わ、私もうお腹が…」

「黙って歩け、もうすぐの筈だ」


(記憶が正しければ後少しで…)


「あぅ〜、う?あぁ!導衆君!空見て、空!!」

「そ、空?」

「あったか!」

三人が森の中で上を見上げると、奥の方に大きな船のような物が空に浮かんでいるのが見えた。


「凄いよあの船、空飛んでる!」

「でかしたぞ明日見!よし、天野後少しだ。あの船の方へ走れば出口が見える!」

「ほ、本当?こうしちゃいられないよ!早く行こう!」


 三人は空腹でへばっていたのも忘れ、無我夢中に空飛ぶ船へと全力ダッシュした。段々森の奥に光が見えてくる。


「見て見て!奥光ってるよ!」

「やった!出られる、出られるよ!」

「俺に、陽の光を、浴びさせろおおおお」


 草木を掻き分けボロボロになりながら、三人の視界は光へ包まれ、その先には広大な草原が広がっていた。彼らはついに、大地へ降り立ったのだ。


「うおおおおおおおお」

「森を抜けたああああああああ」

「やったね!やったね私達!」


 開けた視界の先には緑と空の青、そして2隻の飛空艇を纏った大きな都が見えた。


「あれだよね、例の場所って」

「あぁそうだ、この勢いで辿り着くぞ!」

 僕らは勢いに任せ、またもや走り出した。


−30分後−


「あぎらぐぅん、都が近くにこないよぉ〜」

「本当だねぇ、ずっとずっと遠いねぇ」

「おかしい、絶対におかしいこんな事は。さっきから同じ景色ばかりだ」


 二人はそれどころではないらしいが、完全に六回以上同じ景色が続いているように思われる。草原で似たような景色だからでは済まされない程にだ。


 瑛はへたっている二人を何度も見た大きな岩の麓で少し休ませ、地面に後がつくように強く木の棒で線を引きながら進んでみた。


 少し歩くのが遅かったのだろう。十分後にようやく、正達のいる大きな岩がまた見えてきた。


(やはりか)


 瑛は棒を置き、今度は足元を眺めながら進んだ。すると線が途中で切れているのが見えたのだ。


 (俺は一度もこの棒を手放したりなどしなかった。だったら)


 瑛は足元にある石ころを数個色んな方向へ投げてみた。するとそれのいくつかは目にも止まらぬ早さで姿を消したのだ。


(何か特殊な壁が張られている…?そしてこれは多分単体でなく全体をどこかへ転移しなおす物。現に俺たちは誰もループしている事や消えている事に気づかなかった。だからこの現象に気づけなかったのか)


 瑛はもう一度いくらかの石を投げ込んでみた。するとそれらはまた一瞬で消滅したが、一箇所だけ必ず奥まで届く部分があった。


(見つけた、ここが抜け道というわけか。おそらくこの都は普段はこんな結界を張ってはいないはず。でないと流通者や旅人も不便で仕方ないはずだ。都の人々もそれは同様。だったら今日は何か大切な行事でも行われているのか?)


 瑛は通れる空間付近に目印を置き、二人を呼ぶ事にした。



「わぉ、相変わらず凄いね瑛君は」

「流石学年一位…」


 事情を説明すると二人は納得してくれたようだ。


「そんな大したことでもない、お前らだって冷静なら気づけた筈だ」

(いや、仕組みは僕らでも気づけたかもだど、君が凄いのはその先の事まで考えちゃったところだよ…)


 あくまで瑛君は僕程度が変わらないと思っているらしい。才能があるはずなのに、それを全て努力と勘違いしてしまっているところは、嫌味のない良い人間の証でもあるのだが少し抜けているとも思ってしまった。


 人ってのは、良く分からないものだ。


第七の旅「行商人ダス」


「じゃあ、行くか」

「うん」


「お〜い、待ってくれぇ〜」


「俺は待つ気はないぞ天野」

「僕もだよ瑛君、そんな事言ってないで早く行こう」

僕らは歩もうとした。


「え、ちょっといや待ってくれってぇ」


「何を言っているんだ天野!俺は先へ進むんだよ!」

「僕だって同じ気持ちだよ瑛君!一体どうしちゃったのさ!?」

「あ、あの〜二人共。多分会話成り立ってないって言うか、後ろにお客さんがいるんだけど…」

 明日見さんの言うように後ろを振り向くとそこには確かに何者かがいた。しかしその者は輸送用であろう荷馬車に乗る者だった。そう、人物ではなかったのだ。


「…へ?」

「は?」


 彼の見た目はトカゲのようだった。というかトカゲだった。しかし人型なのが初めてだった。僕は自分の知らない光景に唖然とした。


「あぁ!やっと振り向いてくれたよぉ。ありがとな嬢ちゃん」

「ひっ、ち、近づかないで!」


 明日見さんは話しかけられると酷く怯え僕らの後ろに隠れた。それもそうだ、僕ならちびる。


「待て、あんた一体何者だ。なぜそんな着ぐるみを着ている。話しかけた理由は何だ?」


 瑛君は着ぐるみと勘違いしているらしい。確かにあの見たこともない生き物たちを目撃したのは多分僕だけだった。だったらこの現状を直視できないのも仕方ないのかもしれない。だが本当に、リザードマンがこの世にいたとは。


「え、ん?もしかしてお前さん達、ヒト以外を見るのは初めての田舎者か?」

「なぁ正…こいつは何を言っているんだ?」


 瑛君は彼を可哀想な目で見ながら言った。


「えーっとね瑛君、多分僕の予想だけどこの世界には人間以外にも喋る生き物がいるんだ」

「その通り、生き物ってのは誤ってるけどな。種族だよ種族」

「…種族だと?」

「それってもしかして…エルフとかだったり!」

「ん?何だい嬢ちゃん、エルフは知ってるのか」

「え、はい!本で読みました!」

「エルフの本なんてあるのか、そりゃすげぇぜ」

「エルフってのはもしかして他の種族とあんまり関わらなかったり…?」

「あぁ、そうだ。俺らリザードマンは荒っぽかったりフレンドリーだったり沢山いるけど、あいつらは一貫して頭の固い連中だ」

「なんて世界だ…」


 瑛君はまたも現実を逸脱した状況にテンパっていた。


 しかし、この世界はどうやら本に出てくるファンタジー物の種族が大勢いるらしい。ますますどんな世界なのか疑問が生まれてきた。


「そうなんですか、なんかおっかないですね…」

「そんな事はないさ嬢ちゃん。俺の名前はダスってんだ。こんな感じで大半は皆良い奴だよ」

「自分の事を良い奴というのは信用ならんな」

「私明日見 愛って言います!よろしくおねがいします」


 顔文字でならにこっとかで出てくるような顔で明日見さんは挨拶をした。ありがとうダスさん、至福の時間です。


「え、あぁ…。普通に挨拶しちゃうんだな。俺は導衆 瑛って言います。よ、よろしくお願いします」


 瑛君は明日見さんの挨拶に負けて呆気なく自分も自己紹介をしてしまった。


「ぼ、僕は天野 正って言います。よろしくお願いします!」

「んーと、お前さんがたもしかして、自分の名前はセカンドネームがファーストネームか?」

「え?ええと、多分そうです」

「やっぱりかぁ、ヒトってのは名前が長くて覚えにくいな。しかもお前らの村は逆さまに名乗るのか、珍しい」

「ん、逆さまとはどういうことだ?」

「あ、いやぁ何でもねぇよ。じゃあアイとアキラにセイ!よろしくな!」


 ダスは良い笑顔を見せてくれた。この瞬間に瑛君も警戒が解けたのだろう。彼の方から話を始めた。


「それで、何故俺達を引き留めたんだ?」

「いやぁ、それが俺荷物を輸送してたんだが寝坊しちまってよ。結界が張られる前の時間に間に合わなかったんだわ」

「それで入口が分からずに足を踏み入れようとしている俺達を発見して、しめたと思ったわけだ」

「はは、アキラは察しがいいな。まぁそういうこってい」

「誰にでも分かることだ。そういう事なら、都まで共に行くか?」


 瑛君は余裕そうな表情で言ってるけど絶対荷馬車に乗せてもらうためだ。


「お、別にいいぜ。入口を見つけてくれたお礼と言っちゃなんだが、都まで連れてってやるよ。その足じゃ時間がかかっちまうだろ?」

「な、良いのか?それはありがたい、そんなことを言ってくれるとは俺達はなんて運が良いんだ」


 棒読み感がひしひしと伝わってくる。


「わぁ、やったね導衆君!もう身体ヘトヘトお腹ペコペコだよぉ」


 何て純粋なんだ彼女は。


「ん?なんだ腹減ってんのか?俺の輸送中に食べる用の飯、まだ結構残ってるから食ってもいいぞ。水もある」

その言葉を聞いた時の明日見さんの表情はきっと一生忘れないだろう。

「本当ですか!?!?私!凄く!食べたいです!!導衆君天野君!すぐに乗ろう!!」

「え、あぁそうだな。お言葉に甘えさせてもらおう」

「分かったから明日見さん落ち着いて…」


 彼女の勢いのままに僕らはその荷馬車へと乗り、ご飯をいただきながは都へと進路を進めた。

ダスは何となくヒト以外の人と出会うべきだと思い作ったキャラクターです

様々な種族がいるつもりですが、どうにもヒト以外を登場させるイメージが湧いたりしないところが異世界物の難しいところですね

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