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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
23/63

朝の日課

新しい朝が来ましたね

第三の旅「今から体操しまーす!」


「起きて!おねぇちゃん!!ねーねー!朝だよ!眠いの?昨日何時に寝たの?アスはね、あの後すぐ寝たの!偉いでしょ♪一杯背伸びるかな!目標はね、ミークより五センチ高くなる事なんだよ!!」 


 朝から騒がしい声がする。


「ちょっとアス朝からうるさい。寝起き悪くなるよ。うるさいの嫌だ」

「それはミークだからでしょ!朝はね、元気な方が全然いいの!!元気におはよー!ってこれが一番なんだよ!」

「それこそアスだからでしょ…」


 相変わらず仲が良いようだ。


「ん、んん…アスちゃん?ミークちゃん?」

 目を開けるとそこにははっきりと双子の姿が写った。


「あ、おねぇちゃん起きた!ミークが好きなお兄ちゃんはもう起きているよ!朝早いんだね!ミークよりも早いなんでビックらこいただよ!」

「だから好きじゃない」


 時計を見るといつも起きる六時より少し前のようだ。隼人はもう起きている。流石に早いものだ。朝ごはん…は作らなくて良いのか。お父さんは大丈夫だろうか。


「ふふ、ありがとね二人とも。ごめんねお姉ちゃん寝ぼすけさんで大変だったでしょ?」

「そんな事ないよ!今日は勝手にアスが起こしに来たの!体操一緒にしようと思って!」

「良い迷惑、お姉ちゃん可哀想」

「朝はこのくらいが健康なんだよ!長老様が早寝早起きは大事だって!今日帰ってきたらもう一度きいてみるからね!むしろミークは遅く起きすぎなの!こないだも長老様から説教されてたし」

「うるさいお姉ちゃん起きた。一度ここ出るべき、行くよ」

「あ!ミーク逃げる気でしょ!そうはいかなぶっ」

「えっと…、ミズキお姉ちゃんまた後で」

「あはは、朝から元気だねアスちゃん…。またね!ミークちゃん」

「うん」


 ミークはいつも通りアスの口にテープを貼り、縄でぐるぐる巻きににして退散していった。


「おはよございます」

「あら、おはよー。あの子達朝からうるさかったでしょ」

「凄く元気良かったです」


 水希は二人を思い出し微笑した。


「お前おっせぇぞ。ピンピさんが飯用意してくれてんだから早く食っちまえよ」

「おは…、隼人が早いだけでしょそれは。見た目にそぐわ無さすぎ。あ、ピンピさんありがとうございます。いただきますね」

 水希はきっちり態度を使い分けた。


「見た目にそぐわない…?」

「ふふ、今すぐ用意したげるから席に座っときな」

「はい!」


 言われるがままに水希は席に着く。


「それで、今日はどうすんだ?まず体操すんだろ、んでもって…」

「あ、やっぱり隼人も誘われたんだ」

「あの子皆を起こして回ってたぜ朝から、尊敬に値するな」

「あはは、隼人も参加したら?」

「お、良いなそれ。色んな人との交流もできそうだ」


 隼人の目は少しキラキラしている。


「本気…?」

「ほら、用意できたよ」


 目の前に出されたのは肉と野菜を合わせた料理だった。どうやらライプの主食は肉らしい。寒い環境下にあるために作れる料理も限られているのだろう。


「ありがとうございます。いただきますね」

「はいよ、私の料理は美味しいよ」

「これ、マジな」

「期待させてもらいます」


 ピンピの料理は一口食べると一気に目が覚めるような香辛料の程良さだった。焼き加減により食感にも気を配っているらしい。水希は朝控えめに食べるが、それも気にせず残さず食べられた。


-宴の間-

 

「今から体操しまーす!」

「ははは!!いいぞアス!俺も前に立たせろ!!」

「良いですよガントルさん!二人でやりましょう!」


 うるさいのとお喋りなのが一緒になって数名の正面に立つ。周りにはマルさんやシュートス?君もいた。ルイさんはいないようだ。


 皆から眠そうなオーラが溢れている。確かに朝から体操なんて小学生以来やらないことだから面倒なのも心から共感できる。


 というかそもそも、

「え、ちょっとこれうちやり方知らないんだけど、どうするの隼人?」

「んー、多分俺らの世界と同じなんじゃね?」

「え、なんでそんなこと」

「始まっぞ」


 いーっちにっ!さーんし!ごーろっくしちっはち!!


 アスとガントルの声に合わせて、皆は見慣れた体操をし始めた。ラジオ体操第二だ。


「えっ、嘘。本当に一緒なの?」

「ほらな」

「なんで分かったの?」


 身についた体操を流しながら隼人に問いた。


「確証はねぇよ?でもさ、昨日から色々見てたんだけどよ。飯とか喋り方から就寝起床に風呂の文化。俺らの生活とあんまり変わらねぇんだよ。食べ物の形だって少し違うだけで味なんかはほぼ一緒。違う所と言えば文明が限られててモンスターがわんさかいるらしくて髪と目の色が派手なだけ。ルイさんにいたっては目の色は俺らと大して差がねぇだろ」

「そ、そこまで見てたんだ。うちは皆と喋るので精一杯で…」


 改めて隼人の余裕さを見せつけられた気分で、自分が不甲斐なく思えた。


「分かってるよ、だから俺が見てたんだろ」

それに加えてこの物言いだ。

「…隼人って、そういう所だけしっかりしてるよね」

「だけってなんだよ、全部しっかりしてんだろ」

「朝からの寒い冗談は返す気力なし」

「こらっ!そこ、喋ってないでしっかりするの!」

「おらおらおら!!アスを怒らせちまったら終わりだぞ!!がはははは!!!」

「わははは!」


 どうやら怒られてしまったらしい。


「すみませーん!しっかりやります!」

「や、やります!」


 私達はしっかりと身体を動かした。ラジオ体操で汗をかいたのは久しぶりだった。皆もアスとガントルの元気な姿を見て予想以上に活力化してきたらしい。皆自分がやるべき事へ元気に向かっていった。


 私達はどうすればいいのだろうか。分からないままにとりあえず部屋へと戻ることにした。


第四の旅「早起きは三文の得?」


 このタテノツキでは年に一度、フェスタという王国誕生記念日がある。特に今年は二百周年のより一層特別な日だ。城内だけでなく、タテノツキ全体が大忙しであった。


 警備兵は都付近の外壁だけに配備されるらしく堅苦しい雰囲気も一切ない。市場区だけが盛り上がるイベントに思われがちだが、この日のために多くの商人だけでなく冒険者もやってくるため、宿場区も大盛況となる。


 それに加え闘技区では、中心にある闘技場で大イベントも行われ荒くれ者とやらが賑わうらしい。レイスは未だにそこへは行ったことがない。危険だとかなんとかでドグが禁止するのだ。


 住居区では夜、巨大な人口湖での魔法や王国専属の劇団による水上パレードが行われ、メインイベントの一つとなっている。そしてフィナーレには、その四つの区を取り巻く丘の上のこの城やいたる場所へ、何千発もの花火が打ち上げられるのだ。


 このイベントが皆から好まれる理由はどの区も蔑ろにされる事がなく、日頃の苦労を夢のような一時で忘れられる点。そして、レイスが目をつけたのは堅苦しさが無くなるという点だ。つまり、


(警備が手薄になり、人々がお祭り状態になることで人ごみに紛れやすくなる。つまり、外へ出やすくなる!例年通りなら警備兵達も皆お祭り騒ぎで酔いつぶれている筈です!)


 レイスは勝利を確信した。


 あと十二時になるまで二時間。そうすれば外へと出られる。少し堪能してドグが気を緩めた時がチャンスだ。ワンは別の仕事があるため遅れて警備にやってくる。自分が姫とバレない様にお付きもドグ一人のはず。


 失敗する理由がどこにも見当たらなかった。


(ワクワクが止まりません!)


 レイスはルンルンと回廊を一人歩いていた。持っていくものは粗方用意も終わってしまっている。


 幼い頃に父親からプレゼントされた小さな人形にメモ帳。ご飯は何とかなるだろう。お金というものも良く分からないため持って行かないことにした。肩身離さず持っているペンダントを首にかけ、動きやすく質素な服を着た。


 後はこの国の地図とやらに非常用カプセルセット。この中には小さく凝縮された生活アイテムがいくらか入っているらしい。滅多な事があれば使えと言われたため、多分こういう時の場合にということだろう。


 この不思議な道具はパルナという力を持つ人によって作られたそうな。それを小さな肩掛けポーチに入れて準備完了だ。


 レイスはこの先の事を考えて思わず身体が踊り出した。


「朝から楽しそうね、レイス」

 目の前には昨夜互いに激励しあったエメがいた。どうやらこの距離まで自分でも気づかなかったらしい


「あ、エメさん。おはようございます」

「おはよ。ふふ、お姫様は一体何があったのでしょうか?素敵な王子様でも現れになったのですか?」

 エメはまた少し話そうとでも思ったのだろう。しかし、レイスの返事は予想外だった。


「ふふ、かもしれませんね。今日のフェスタ頑張ってください。私、応援してますね!では、失礼します」

 それだけ言って彼女はその場を去ってしまったのだ。

「あ、あれ?怒ってこないんだ…」

 エメは気付かぬうちに目が点になっていた。


 更に真っ直ぐ進み中央の階段から皆が動き回るホールへと降りるとそこにはウィルアや皆がいた。


「あ、お兄様!おはようございます」

「おー、レイスおはよう…え、え?レイスか?」


「おー姫様!今日は珍しく早起きだな!」

 ロックはいつ見ても実年齢より老けて見える。


「そ、そんなレイスさんが…ありえない!」

「リヒナ、レイス姫に失礼だろ?確かにお暇様かもしれないが朝くらいちゃんとレイス姫は起きれるよ」

「そうですね、フォース先輩。失礼でした…」


「いや、あの皆さん今でも十分失礼な気がするのですが…お暇様って…」

「はは、冗談ですよレイス姫。本日のフェスタは楽しんできてください」

 フォースはいつも人をおちょくる。


「もう、本当に冗談なのですね!ならば楽しませていただきます」

「おいおいフォース、姫様拗ねちまったぞ?」

「なっ、拗ねていません!ロックさん、私はその程度で血が上るような愚者ではないのですから!」


 この二人を相手にするのは何故か分が悪い。自分が子供だからなのだろうか、いやきっと違う。この二人の性格が悪いのだ。


「とか言って、声が大きくなってますけどねぇ…」

「言うなリヒナ、あいつはまだ少し子供なんだ」

「私歳変わらないんだけどなぁ…」

「あぁ、お前も子供だ」

「殴りますよ?副隊長」

「すまなかった、土下座で良いか?」

「じゃあフェスタで何か奢ってください」

「リヒナ、お前は安い女だな」

「副隊長って馬鹿ですよねやっぱり、めっちゃ買わせますんで」

「もう一度チャンスをくれないか」

「まず断りますよね」

「お許しを」


 ウィルアとリヒナはいつも通り顔色一つ変えずに何やら言い合いをしているらしい。フォースとロックはもう反応するのに疲れたから無視をすることにした。


 四人にはタテノツキを出ればしばらく会えないだろうから、きちんと顔を合わせれたことをレイスは嬉しく思った。

リヒナやロックの詳細はまたいつか書こうと思っています

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