少女よ、夢を語れ。二匹よ、暇に踊れ
エメの名前はある人をモチーフにさせてもらっていると言っても過言ではありません
彼女は良きお姉さんとしていて欲しいです
キャラがぶれませんようにという願望ですね
第十一の旅「夜空に夢を見た少女」
満天の星空がこの城の訓練上なら良く見える。普段は兵士の皆が互いに競い合い高め合う、自分には到底縁のない場所だが夜だけは顔見知りだ。
人間よりも遥かに大きく数も多い筈なのに、どの星も協調して一つの景色を作っている。レイスは人と人との理想として、この星空に夢を思い描いていた。
「どの星も美しいですね…」
足元へ飛んできた鳥に話しかけてみたが返事は全くしてくれない。
「ふふふ、嫌われちゃったわね」
少し落ち込む背へ声がかけられた。
「え、エメさん?どうしてここに?」
振り返るとエメがすぐ後ろに立っていた。
「その大きな切り株に、私の席は空いていますでしょうかお姫様」
少し冗談気味だ。
「もうからかわないでくださいよ。どうぞお座りになってください」
エメの大人びた姿の中に時たま見える若気がレイスは好きだった。
「大変ありがたき幸せ、失礼しま〜す」
レイスは身体を少しずらし、エメがそこへ座る。
「レイスはここが好きなの?」
「はい、よく夜にここで祈るんです」
「祈る…?一体何を?」
「それは…」
一拍置いてレイスは答えた。
「この世界の平和と、もっと家族と一緒に日常を過ごしたいということです。昔のように父や母の温もりに触れながら、この世界を、この国の民を大切に見守っていきたい…。これでも真剣なんですから馬鹿にしたりしないででくださいよ」
夢を語るレイスの純粋な笑顔が、エメの心に突き刺さった気がした。
「……。ふふ、馬鹿にするわけないじゃない、レイスの夢は私達タテノツキの民の夢よ。自分の夢を馬鹿にする人なんていないわ」
エメに出来ることは激励だった。
「私の夢が皆の夢…?」
「そう皆の夢。あなたはこの国のお姫様なのよ。あなたが平和を願う限り民はいつか必ずそれに答えてくれる。民の前に立つあなたはこの国の光。あなたの優しさがこの国の意思になるのよ」
「私が願えば…」
レイスは少し下を向いた。
「…レイス?」
「まだ、あまり実感が持てないでいるんです。私がこの国の王女であり、いつかは民を導く人材であることに」
「なるほどねぇ」
「私はこの国の王女として相応しいのでしょうか?」
レイスは尋ねてみたがエメからの返答はしばらく来なかった。
「私がここに来た理由」
「…え?」
「私がここに来た理由はね、明日の為なの」
エメの瞳が凛々しく星を写す。
「明日…フェスタのためですか?」
「そう、明日私皆の前でカーニバルの時に歌うのよ」
「そうなのですか!?初耳ですよ!」
レイスは飛び切りに驚いた。
「そりゃあ誰にも言ってないもの、というか皆察していたわ」
「エメさんはもう、この国にはなくてはならない存在ですものね」
「そんな大層な人間じゃないわ。初めの頃は必死だった。ずっとずっと歌い続けて、ウィルアとフォースにはいつも聴いてもらってた。あの時はまだ三人の歌だったのよ」
「本当に昔から仲が良かったのですね」
「ええ、心から信じれる二人よ。でも、それがパルナが解放された途端に私の歌は皆の歌に変わった」
良い事のはずなのに、エメは少し浮かない顔だった。
「歌姫…ですか?」
「フォースは平気そうだったけど、ウィルアは友達同士の秘密をなくし子供みたいに少しがっかりしてたわ」
「ふふ、お兄様は今でもエメさんの歌が大好きですものね」
「意外と自信が出るものなのよ?でも、ウィルアががっかりしてしまったように、これは私だけの力じゃないのかもしれない。それでも歌える限りは私は自分の意志で思いを人々に届けたいって思うの。折角掴んだチャンスなんだから、大事にしないとね」
「チャンス…ですか?」
生きている中で、自分にはあまり関わりのない言葉だっただけに、レイスは心の奥にそれが積もっていく気がした。
「そう、チャンス。だからレイスもその立場をチャンスなんだって思うといいわ。優しい人々の誰もが力や権力を持っているわけじゃない。裕福でもなければ飢え死にするほどに貧しいのかもしれない。そんな人々がいるからこそ、優しい王女様は民の光になれるって私は思うの。今はまだ難しいかもしれないけど、レイスなら必ずなれるって信じてるわよ」
「皆の光に…、私はなれるでしょうか。そんな力が私に」
レイスの目には未熟さ故の不安が見えていた。
「確かに、拒絶されたり疎まれたりすることもあるかもしれない。でもそんなに気負う事じゃないわ。今はなくても、これから長い日々をかけてどんな人でも愛せる程に強くなればいいの。それこそ、世界を見渡してね」
「世界を…見渡す」
「そう、いつかきっとそんな日がこれるわ」
私はずっと悩んでいた
自分の生き方に、自分で決められない人生に
でも今やっとわかった事がある
民は私にとっての夢の光であり、私は希望の光にならねばならない事実を
だから、もう子供ではいられない
誰に何と言われようと、私は一度この箱庭から飛び出してみる必要がある
自分の視野を広げる必要がある
「分かりました。私はこの国の民を信じ、必ず平和な世界にしてみせます。お互いに夢に向かって頑張りましょう」
「えぇ、頑張りましょうね」
(私は歌う。この世界のために、平和のために、皆のために。命を賭けてでも)
「それじゃあ、私はそろそろ戻るわね。レイスも風邪をひかないように」
「はい、明日を楽しみにしていますね」
「任せといて。最高の歌を届けるわ」
それからエメは穏やかな顔で去っていった。
「世界を見渡す。ふふ、決めましたわ小鳥さん。私は明日、この城を抜け出して世界をみてきます」
期待せずに話しかけると、今度は小鳥はこちらを向き、鳴き声で返事をしてくれた。
「大丈夫、外の世界はのどかで安全よ。少し視野を広げてくるだけ」
レイスは立ち上がり、広大な夜空へ手をかざした。
「まずは自分のために」
第十二の旅「フェスタ前日の男達」
兵士が集まる大きな集会所で二匹は入念に武器の手入れをしていた。兵士が集まるのを確認すると、彼らは立ち上がった。
「いいか、てめぇら。明日はフェスタ、しかも王国二百年記念のでけぇ大玉だ。失敗する事は許されねぇ。特に明日は民が賑わい警備が手薄になる。遊びてぇ気持ちは分かるが程よく抑えろ。ツルギノマヒの連中が結界を破りいつこっちに来るか分からねぇからな。気張ってくぞ!!」
ドグが王国兵士達を激励する。
「うおおおおおおおおおおお!!」
皆も士気を高め合う。
「もし、明日が成功すれば改めて」
ごくりと誰もが息を呑んだ。
「パァっというこうや」
「うおおおおおおっしゃあああああ!!」
「女だ女だ!!」
「家族と久しぶりにゆっくりできそうだな」
「はしゃいでくぜえええええ」
「飲み比べといこうじゃねぇかあ!!!」
兵士達は互いに意気揚々と各々の願いを口にした。
「よぉし、分かったら今日は解散だ!」
大歓声が次第に静まり返り、二匹はその場所に誰もいなくなったのを確認した。
「戦争中とは思えないね」
「しょうがねぇさ、明日はこの国にとって大事な日なんだからよ」
「かと言って浮かれ過ぎるのは危ないよ」
「分かってるさ。だから何人かの兵士には防衛線を張ってもらってる。エメさんの歌だけは聴こえるようにしてあるから、それで許してもらった」
「流石歌姫か…。まぁそれならある程度のレベルの軍隊がきても対処できるか」
「そう言うことだ。全く、全部俺に任せやがってお前ってやつは」
「しょうがないでしょう?僕だって最近ずっと戦闘続きだったんだからさ」
ワンは大袈裟に疲れを見せた。
「それもそうだな。お前も明日はゆっくり休めよ」
「ドグも働き過ぎだから程々にね〜」
「あたりめえだ。レイスが大人しけりゃ何の問題もねぇ」
ドグは少し嬉しそうだ。
「でもこの年頃の女の子って、結構突飛らしいから気をつけなよ」
「へっ、大丈夫。あいつはまだまだガキだよ」
「確かにね」
二匹は久々の休暇とも言える時間に、僅かながらに胸を踊らせた。
小説を書いている人達の偉大さに改めて気付かされるものですね
キャラの立て方や台詞回しなど素晴らしい文才ばかりです
本日の投稿はこれで終わりですね
キャラ紹介だけ書いておこうかな




