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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第二章 ツリー編
12/63

勝てばそれで文句はない!

この物語初の戦闘シーンです

戦闘シーン自体書くのも初めてなので覚束無いですが、読んでくださいませ

第七の旅「センス」


「はああああ!」


 腕にしっくりとくる模擬戦用の剣を思いっきり振りかざす。


「甘いんだよ」


 しかし、彼の戦友であり親友であるフォースはそれを剣で難なくかわす。それでも右へ左へ剣を持ち替え、相手を翻弄しつつ隙を突く。何度も剣を交えかわされながらも、機会を伺っていった。


「その変な戦い方、初めての相手なら有効かもだけどもう俺には効かないんじゃない?それに利き手じゃなきゃ決まっても浅いでしょ」


 確かにフォースは対応が早い。剣の腕は王国でもトップクラスだろう。だからこそ俺はこのやり方でセンスの塊に勝てるような動きができなければならない。


 ウィルアは剣の腕がないといえば嘘になるが、基本的にスタンダードな戦い方しかできないため、意表を突ける技術が欲しかった。


 何より一国の王子が一兵士に負けていたら面子が立たないという悲しいプレッシャーもある。だからこそウィルアは何を言われてもがむしゃらに剣を振り続けた


「そういう考えだと、すぐにうちの部隊じゃあ使い物にならなくなるんじゃないかぁ?」


 ウィルアの猛攻によりフォースの動きが少し鈍くなった。その瞬間、彼は横から相手の腹部へと剣を運ぶ。フォースはそれに気づき、一瞬で守りの体制に入った。ここまでは計算通りだ。


「俺が一番強いんだけど、手口もバレバレ。そんな事はまずありえなっ」


 完全にフォースは油断していた。そしてその時を待っていたかのように、彼の視界からはウィルア・ハートマイトは消えていた。


「な!?消えっ」

「後ろだ!」


 声と共にウィルアの剣がフォースの首元で止まった。


「くっ」

「俺の勝利だな」

「はぁ…。流石の能力だなぁ、それせこすぎでしょ。てか何で使ってんの」


【瞬間移動】

ウィルアのパルナの能力であり、彼のお得意技だ。切羽詰まると考えなしにとりあえず使う。切羽詰ってなくてもだ。


「模擬とは言っても本気の戦いだ。使えるものは全て使うさ」

「でも魔法は禁止なんでしょ?それじゃあ俺能力使えないし、ウィルアが勝てるルールじゃんそれ」

 フォース・ウォーターフォースは情けないという表情だ。


「違う!いいか、これは副隊長として隊員の実力を高めるものであり断じて俺のためとかじゃ」

 ウィルアは言い訳をするように、ああだこうだと意味のない身振り手振りを加え抵抗した。

「うんうん分かってます分かってます。それじゃあフェスタの準備しようか。そろそろお叱りがきそうだし」


 フォースは完全に聞く耳持たずで話を進めようとしたが、ウィルアはその程度じゃ折れない。彼は折れないのには自信があった。

「何言ってるんだ、エメもロックも皆忙しくて俺たちを探す暇なんてないさ」

 ウィルアが不敵な笑みを浮かべる。


「ちょっと、先輩方!」


 しかし、そう言ったのもつかの間、訓練場の隅の方から声が聞こえた。


「昼間っから何してるんすか!今日はお城のお手伝いしないと人手が足りないって言われてるのに、副隊長もフォースさんもいないと思ったら…もぉ」


 その隅でリヒナ・デンジャーは口を膨らませている。


「ほーら、リヒナがお怒りだよ」

 フォースは待ってましたと言わんばかりに彼女のほうへ行こうとするが、ウィルアはそうさせまいと襟首を勢い良く掴んだ。


「ぐえっ!ちょ、ぐ、ぐるじぃ」

「くっ、そんな馬鹿な。あいつは何故いつも…」

「いや、だから当たり前のように掴むのやめて、馬鹿かよ」

「ん?俺は馬鹿じゃないぞ。それより何故…」


 ウィルアはフォースを完全に何事もないというように無視しようとしていた。フォースはこういうのが嫌いだ。 

「どうせ皿とか割りまくって勘弁されたんでしょ。そのくらい自分で考えなよ、そんなんじゃ脳筋になっちゃうと思うけど」

 少し気合を入れたフォースは、人を小馬鹿にする腕では確実に王国一だろう。


「ん、俺は脳筋なんかじゃないぞ?脳は筋肉で出来ていないはずだ。あれ、できているのか?」

「あ~うん、もう良いよ君。良いから行くよ、幼馴染じゃなかったら馬鹿王子って呼んでたね多分」

 その言葉にウィルアはきょとんとし、

「いつもそう呼んでるじゃないか」

 と、笑顔で応えた。脳筋なのか天然なのか、いや、多分どっちもだ。自分が支えなければという使命感にフォースは駆られた。


 リヒナは呼んでみたものの、二人がこちらへ来ようとする様子は全く伺えない。


「ちょっとぉ!?私の話聞いてますー?」

 リヒナは再び大きな声を出してみた。


「さあさ、立ち話も疲れたし行ってあげよう。早く手離して」

「後もう少しはできた筈なのに…」

 ウィルアは渋々、フォースから手を離し、リヒナの元へと向かった。


第八の旅「朝十時」


「ふんふーんふふーんふふん♪」


レイスは上機嫌だった。何故なら、明日のフェスタでは少しだけ外に出る事が出来るからだ。勿論ワンとドグが付いてくるわけだが、それでも街の空気に触れる事ができるのが彼女には喜ばしいことだった。


 スキップをしてみたり、回ってみたりと城内の廊下を歩き回っているとエメが飾り付けをしているのを見つけた。


「あ!エメさーん!!」


 エメ・スターリング。名前を呼ばれた彼女はウィルアやフォースと幼馴染みであり、小さな頃からレイスとも付き合いがあった。レイスの数少ない女友達の一人でもある。


「あら、レイス。もう起きたのね」

 彼女は時計を見ると少し驚いていた。


「もう起きてるって、もうお昼間近の十時ですよ?流石にこの私でもきちんと目覚めます!」

 そう胸を張ってみたが、いつもは後一時間は寝ている。


「ドグが起こしてくれたの?彼も大変ね」

 エメは朗らかに笑みを浮かべている。


「な、何故お分かりに…?まさかドグが言いふらしたのでは」

「何故って、いつものことでしょ?早く朝食を食べてきなさい。これから忙しくなるんだから」

 完全に見透かされていた。


「なっ!全てお見通しということですね。まるでお母様みたい…」

 レイスはオーバーリアクションを取る。だが、驚いたのは事実だった。

「ふふふ、何年あなたを見てきたと思っているのよ。ほら、急がないとドグに怒られちゃうわよ」

「十年以上経ちますね。時の流れというものは早いものです。少しお喋りをしていただけなのにこんなにも時間が…」


「おいレイス!!!どんだけ待たせんだ飯が冷めちまうぞ!!」

 食事部屋間近でドグの怒鳴り声が飛んできた。


「ひぃ!今行こうと思ってたんです、そんなにさとすことではないでしょう!?」

「うるせぇ!食いもんは熱が大事なんだよ。ほらこっちださっさと来い!」

 ドグがこちらへ猛スピードで迫り、レイスを勢いよく連れて行く。

「わ、私は囚人か何かなのでしょうか!?」

 彼女はズルズルと引かれ、なんとも哀れな姿だった。


 レイスはエメに助けを求めようと目線を送ってみたが彼女は笑顔で優しく手を振っている。

「そんな…」


 手を何度か左右に振っているとレイスはドグに部屋の中へと連れていかれた。

「あの子もマイペースねぇ本当。平和な生活ってこういうものなのかしら。他の人の前ではあんなにも素晴らしい立ち振る舞いなのに…」

 エメは遠い空を見ながら軽い溜息をついた。


 大丈夫かしら。

パルナとは造語で、詳しい概要等は今後明かされていきます

いつかそういう言葉に関しての説明の文章も作っていきますので、よろしくお願いします

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