叫べど声は積もりゆく
さてさて、水希と隼人の行方はどうなっているのでしょうか
第三の旅「お前を追ってきたんだよ」
「寒い…」
「寒いな」
「何なのこれ…」
「何だろうな」
「さっきまで森だったのに…」
「寒くなかったな」
「どうしてこんな雪山に来てんのよおおおおおおおお」
水希と隼人は辺り一面雪景色にいた。雪は降っていないが、彼らの学生服では凍えるような寒さだ。歩を進める度に、足が雪へ埋まっていく。
「何なのよ本当何なのよ!訳分かんないいいいい」
普段不思議な現象に出会うと目を輝かせる水希も、どうやら寒さには弱いらしい。隼人も、寒いのは好きではなかった。
「制服うっす!何これ!こんなので今まで過ごしてきたの。生徒を殺す気!?」
(いやいや、こんな状況想定してねーだろ)
「しかし、さっきの兎と亀!あの人でなし!!」
(人じゃねーけどな)
「こんな寒い場所に放り出しといて、何が力を授けるからこの世界で生きろよ!じゃあもっとまともな場所に放り出してよ初めから殺す気満々じゃない!確かに景色はいいけどね!!」
確かに、さっきの二匹は何だったのだろうか。俺たちに何をしたのだろうか。一つ気がかりがあるといえば、今この格好で俺らが凍死する間もなく、普通に歩けていることだ。つまり、思ったより寒くない。
雪を触ってみても分かるが気温は相当低め、それなのに未だにピンピン歩いている。これが奴らの言っていた力の一つなのだろうか。
「もおおお」
「さっきからうるせぇよ、山だからもっと響くわ」
「こんな状況で喚かない方が病気よ!」
一理あるがパニックになるとやはりこいつはうるさい。俺も学校じゃよく喋る方だが、こいつと正の前だとあまり口を開く気はない。まぁこいつの場合は、こうなっちまったら開く隙もないんだけどな。
喋り出すと止まらないってのは厄介なもんだ。しかもピンチ限定。
「ねぇ、隼人!あんたさっきから話聞いてる?」
ずっと話を続けられていたらしい。
「え、あぁわりぃ。考え事してたわ」
「もう何なのよこのバカタコマヌケ!女の子をほっといちゃダメなんだよ!!」
水希は口が自由に動きすぎてしまう。ムキになった時なんてまるでガキだ。幸い他の奴等の前だと優等生を演じて話すのも控えめにしてはいるが、俺や瑛に対してだとどうも手に負えない。おしとやかでワガママを言わないお前を返してくれ。
「悪かったよ、そんなかっかすんなって」
謝ってはみたものの、やはり水希はしかめっ面を続けている。
「気持ちこもってない。ていうか、第一何でであんた一緒にここにいるの?何でうちが悲鳴上げてたのに降りてきちゃってんのよ」
「はぁ?んなもんお前の悲鳴が聞こえたからに決まってんだろ 」
俺は当たり前のことを言った。
「悲鳴って、そんなの普通付いて来ないでしょ」
「だから、悲鳴ってよりよ、お前を追ってきたんだろ」
「…へ?うちを追って…?」
「あぁ。お前を1人になんて出来るわけないだろ」
それなのに、返事が帰ってこない。
「一人にできない…つまり私を追ってきた。つなわち助けに来た。ヤバイって分かるのに…」
何かを一人でブツブツ言っている。大丈夫かこいつ?
「ふ、ふおおおおお!?ぱっ、ぱぴぷぺぽぱぴ!?どうしてうちなんか追ってきてんのさ。いくら友達でも危ないでしょ!」
「女の子をほっといちゃいけないんだろ?」
そう言うと、何故か水希がそっぽを向き始めた。
「何でそっち向いてんだよ、話し相手はこっちだぞ」
「うるさい!良いからもう良いから!」
顔を覗き込もうとする。
「見いいるなあああああ!!」
大声と共に、規格外の強さで平手打ちがきた―――え、いやなんで殴られたの?ホワッツ??
……そして俺は気絶した。
「…バカ」
第四の旅「ドアの奥には夢がある」
目が覚めると、俺はベッドに寝転がっていた。寝心地はとてもいい。フカフカの枕に羽毛布団がマッチして素晴らしい暖かさを演出している。
(…夢か?)
そう思い周りを見てみると残念ながら自分の部屋でもなく自分の家でもないようだ。
「ここは…」
「目覚めたみたいね」
「え、誰」
声の主を探してみると、この部屋のドアが開いていたようで、そこからブロンド髪の美人といっても言い過ぎでないような人が顔を出していた。
「えーっと、ここどこ?んで、あなたは誰でしょうか??」
「ふふ、まぁ落ち着きなって。私は君の敵なんかじゃないからさ。お連れのキュートな子も今あっちにいるよ」
見た目からして三十代だろうか、瞳の色は青色で外国人と言ったほうが的確な姿だ。しかし言葉は分かり合える。言語は日本語なのだろうか。
「ということは、助けてくれたという事でしょうか?いきなり失礼な態度をとってすみません。水希も無事なんですか?」
隼人は少し警戒して、慣れない敬語を使い出した。
「はは、無理に敬語なんて使う必要ないって。私にとっちゃあの子も君もお客様なんだからさ」
余裕でばれてしまっていた。化けもんかよこいつ…。
なるべく笑顔を取り作り、
「お心遣いありがとうございます。でもやっぱり大事な事なんでこのままていきますわ。そういえば水希あっちにいるんですよね、ちょっと様子見てきます」
と言って、隼人は直ぐに指さされた部屋へと向かった―――無事だよな、食われてねぇよな水希!?あいつ山姥とかじゃねぇよなマジで。いや、でも美人だったよな。
「ん、まだ水希ちゃんだっけ。あのこは入浴って…行っちゃったよ。まぁ大丈夫よねぇ若いんだし」
そう言うと、山姥こと女はクスりと笑った。
「ふーんふふーんふらーらーららーん♪」
水希は陽気に鼻歌を歌っていた。
ドンドンドンドンドンドン!
ダッダッダッダッダッダ!!!
「え?何??この音」
何かが走ってくるような音が聞こえる。
「段々…近く…な、何なの??」
水希は恐怖で身を縮めた。
ダンダンダン…
「音、消えた?」
水希は辺りを確認した。何かがいるわけでもない。ホッとし胸を撫でた途端、急にドアが勢いよく開いた。
ガラガラ!
「水希ぃ!無事かぁ!!」
扉を開くとそこには文明の遺産を何一つ纏わぬ水希の姿と彼女の浸かる風呂があった。水は透き通っていて、色んなものが良く見える。いや、見えてしまった。
「あ…」
「…え?」
「あ、あのー。人違いでした」
「………」
「で、では失礼しま」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「っ!!」
水希が声高らかに悲鳴をあげる。
「何入ってんのよおおおおお!この変態金髪おしゃべりごぼう馬鹿ああああああああああああ!!!!!」
「ま、待てって水希!これには理由が!な!?俺は騙されたんだよ!!」
「良いから早く出てって!」
水希が様々な物を投げ、何かが見事に隼人の顔面に命中した。
「ぎゃっ」
そして隼人は再び気絶した。
サービス回です
とか思ってたんですがサービスできてませんね
水希はスタイル抜群で色々完璧な設定ですね
隼人といる時だけ子供っぽくなったりする所をきちんと描きたいです




