No.1
初めて童話を書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
あるところに、一人のお姫様がおりました。
国王であるお父さんとそのお妃であるお母さんは、一人娘であるそのお姫様を大層可愛がり、大切に大切に育てました。
お姫様が欲しいものがあれば何でも探しだして渡します。
本も、ぬいぐるみも、綺麗で素敵なお洋服も。
そのお姫様、大切にされ過ぎたものですからとても我儘に育ってしまいました。欲しいと言った物が貰えればすぐに飽きてまた次の物。
それを国王とお妃様は注意もせず、何も言わずに次から次へと渡します。
だからお城にはお姫様の物が沢山ありました。
ある雪の降る日、ドレスの上に厚手のショールを着て本を読んでいたお姫様はいつも自分のお世話をしてくれているメイドを呼び、こう言いました。
「ねぇ、お城の外ってどんなところなの?
私、お城の外へ行ってみたいわ。
"町"というものを見てみたいわ」
お姫様は今まで、お城の窓から外を見たり、お城の庭を散歩することはあっても、お城の外に出たことはありませんでした。
国王とお妃様から外に出ることは固く禁じられていたからです。
メイドはそれにこう答えました。
「お城の外、町には本に出てくるような恐ろしい魔女や、姫様を一口で食べてしまう大きくて怖い怪物がいるんですよ」と。
お姫様は違うと言うように首を振りました。
「そんなの嘘よ。
町には、色んな物が売ってある"市場"というところや、美味しいケーキを食べれて紅茶も飲めるところ。
可愛いお洋服があるお店、沢山のお花があるところがあって、魔女や怪物なんていない。
本にはそう書いてあるもの」
「確かにそのような場所は町にありますが、魔女や怪物がいるのも本当なのです」
「だってお父様やお母様はお出かけしているじゃない」
「国王とお妃様はお仕事で出かけているのです。
魔女や怪物がいて危ないから兵を沢山連れていくのですよ」
お姫様の質問にメイドは諭すように答えました。
「それでも私は町に行きたいわ。
絶対行くの。
連れていってくれないなら私、一人で行くわ」
お姫様の我が儘が始まりました。
メイドは困ってしまいました。
さてどうしたものでしょう。
国王様とお妃様にはお姫様になんと言われようと外へは連れ出さないようにと言われていますし、お姫様は自分のお願い事が叶わないと何をするかわかりません。
この間なんてぬいぐるみをあわせて100個をその日中に欲しいと言いました。
その時はもう夜で、それは無理だとメイドが言いましたら、お姫様はあろうことか窓から飛び降りようとしたのです。
「私は地面にぬいぐるみを100個置いて、その上に飛び降りたかった。
無いならそのまま飛び降りてやる」
ということでした。
メイドはあわててそれを止めて国王とお妃さまに訳を話しに行き、結局その次の日にぬいぐるみをあわせて100個集めてお姫様が飛び降りれるように準備したのでした。
さて、今回もお願い事が叶わなければ本当にお姫様は一人で町へ行ってしまうかもしれません。
どうしたものかと考えた末、やはり国王とお妃様に相談することにしました。
「では、国王とお妃様にお聞きしてきます」
むすっとしているお姫様にそう言って、メイドはその場を後にして国王とお妃様の所へ向かいました。国王とお妃様にその事を話したところ、大層悩まれた末にメイド10人と兵30人を供として連れて行くことを条件にお許しになりました。
行く日も1週間後に決まりました。
それを聞くとお姫様は大喜びしました。
その日からというもの、お姫様は町へ行くのがとても待ち遠しく、そのたった七日間が一ヶ月もあるように感じられました。