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§8 水場の作り方その2・どんな水場にするか、池を例に考えてみる


 さて、水源を確保したら、今度はどんな水場にするか考えなくてはいけません。

 もちろん、水源によって水場が決まってしまう場合も多いのですが、その場合でも水場の深さや広さなど、迷う点は多々あります。

 池ってのは、単に水を溜めただけ、と言えばそれまでなんですが、作ってみるとなかなか奥が深いのです。

 まず水場の条件として、「涸れちゃいけない」ってのが大前提ですから、水が漏れて無くなっちゃいけません。

 ですから、ビニールシートや粘土、あるいはコンクリートなどで池底を覆います。これを『遮水』といいますが、遮水の方法によって、周囲の環境も池の水場としての効果も変わってきます。

 この項では、もっともオーソドックスな水場「池」を作り方の方向から考えてみます。


① 素堀りの池

 何も遮水しないでただ掘った池。

 これを「素堀り」と言いますが、この場合がもっとも自然に近くなります。

 素堀りの池が作れるような場所は多くありません。

 休耕田など、最初っから湿度が高い場所で放って置いても水が浸み出してきて、年中じとじとしているような場所、こういう場所なら、ただ穴を掘っただけで勝手に水が浸み出してきて『池』になってしまいます。

 また、水源が自然水や湧き水、農業用水など、常時水を掛け流し状態にしておける場合もまた、水が補給され続けるので、遮水の必要がありません。

 上記以外の場所では、素堀りだと、どうしても水が抜けてしまう事が多いです。

 しかしこうした素堀りの池は、見た目が自然なだけでなく水際にも植物が生えやすく、生き物も行き来しやすいのが大きなメリットです。

 水辺に住む生き物の多くは、水場に一生いるわけではありません。

 オタマジャクシがカエルになる際にも、水際の湿った土やコケの生えた場所があれば、干からびたりする心配がありません。ゲンゴロウやホタルのように岸辺の土の中で蛹化する昆虫にもとっても、潜りやすくて、柔らかい水辺の土はありがたいです。

 そういう意味でも、素堀りの池はビオトープ的には大変良いものと言えます。


 ただ、デメリットとしては、年数が経つにつれて崩れてくるので、丸太や土嚢、粗朶柵なんかで護岸してやったり、補修作業したりする必要があります。

 岸の土が軟らかくなっていて、そこを人間が踏むと崩れやすいのも難点です。土質によっては、次第に埋まってきてしまうので、何度も掘り直してやらなくてはならない場合もあります。

 また、赤土などの泥が浮遊し、濁りがいつまで経っても消えない場合もあります。

 こうした場合には、常に綺麗な水が流れ込むようにするか、腐植質を沈殿させ、生物の活動を増やして濁りを無くす以外にありません。


② シートで遮水する方法

 これもかなりオーソドックスな方法で、学校ビオトープなどの小型ビオトープから木道を設置した立派なビオトープまで、様々なビオトープで採用されています。

 この方法のメリットは、ほぼ確実に水漏れを防げることです。

 シートの種類や工法にもよるのですが、穴が空かない限りは、蒸発以外で水位が下がる事はありません。

デメリットは、まず一つ目は岸辺が見苦しいことです。ビニールシートは表面がつるつるしているので、コケや草が生えません。ですから、むき出しのままのシートが違和感丸出しですし、それを目立たないように何かで覆うのは手間が掛かります。

 二つ目の問題点は、穴が空くと水が抜けてしまう事です。

 当たり前と言えば当たり前ですが、どこかに小さな穴でも空けば、そこから水が抜けていってしまうので、施工には結構気を遣います。

 しかもいったん穴が空くと、広ければ広いほどどこに穴が空いたか分かりにくいわけで、修繕も厄介です。

 シート自体も値段も性能もピンキリです。ホームセンターで売っている薄いブルーシートでも出来なくはないのですが、石や木の根で穴が空きやすく、日光で劣化もしやすくて寿命が短いです。

 ゴム製の専用遮水シートもありますが、これは結構高価ですし、入手も難しく、取り扱いには相応の技術が必要です。シートの裏側に『ベントナイト』というものを吹き付けたものもあり、なんと穴が空いても自己修復する、という優れものですがゴムシート以上に高価なので、おいそれとは使用できません。

 三つ目の問題点は、『池の水分が土に潤いを与えないこと』です。

 うまく遮水が成功した場合、池の中の水はどこにも浸み込んでいきません。

 つまりは周囲の土壌はカッチカチに乾いていて、池には水がある、というような状況になるわけです。ここでゲンゴロウが蛹化しようと岸に近づいても、土を掘れもしませんし、万が一掘って蛹化できても、その中で乾いて死ぬ事になります。

 オタマジャクシも同じで、せっかくカエルになって岸に上がっても、下手をするとその場で干涸らびる事にもなりかねないわけです。

 こうしたことを防ぐためには、遮水シートは池そのものの大きさよりもかなり広く敷き、一度土で埋めて、その中に素堀りの池を作る、くらいの感じでやるとうまくいきます。

 ただ、こうすると遮水シートは大きくなり、予算オーバーしてしまう事になるわけです。


③ コンクリートの池

 コンクリート製の池を作ってしまう方法です。

 この場合、自分で作るのも良いのですが、業者さんに頼むのが一番無難です。『水密コンクリート』などがホームセンターなどで売ってはいますが、大きな池を水漏れしないように、かつ強固に、素人が作り上げるのは困難です。

 うまく出来れば、かなり確実に遮水出来ますし、自分で作って後でヒビが入ったり崩れたりするよりも、プロにお願いする方が結局は安上がりなことも多いです。

 水漏れが万一あっても、業者さんに修繕をお願いすればいいので楽です。

 ただ、形状が池というよりも防火水槽に近いものになってしまうのが最大の難点です。大抵の場合、厚みが十五センチくらいの、四角張った単純な形状になります。

 型枠を作ってコンクリを流し込む、という作成工程ですから、やむを得ないといえばやむを得ないのですが。

 それに、日光であたたまったコンクリ壁は灼熱地獄ですので、そこにカエルが上陸しようものなら、一瞬で焼け死んで干物の出来上がりとなります。

 これを防ぐには、土嚢を積んで壁が見えなくなるようにしたり、麻袋など水を吸うものを、水面まで垂らし、毛細管現象で水を吸い上げさせておく方法があります。


 また、コンクリ池特有の問題点として、水がアルカリ化することが挙げられます。

 できあがった池にそのまま水を張ると、その水が強いアルカリ性を示し、水生生物の多くは、そのままでは住めません。ただ、アク抜き剤が通販などで簡単に入手できますので、これを使ってもらえば、すぐにアクが抜けて使用可能になります。


④ 埋め込み式の池(ひょうたん池)

 屋外用の樹脂製の池を買ってきて、埋めてしまうやり方です。

 金魚やコイを飼うのによく使われる方法ですが、もちろんビオトープにも応用できます。

 良い点は、まず価格がわかりやすいので予算が組みやすく、施工も簡単なところです。

 形状も真四角ではなく水深差もあるので、コンパクトに池を作るには最適です。

 ただ問題点は、思うように形状が作れない事、意外に水量が少なく、水質が安定しないこと、土を入れる余地があまりないので、水生植物には向かないこと、などが挙げられます。


⑤ 粘土やベントナイトによる遮水

 土の中には、非常にきめが細かく、水をほとんど通さない性質のものがあります。

 こうした粘土の中でも、『ベントナイト』と呼ばれ、建設資材や薬品などの材料にされているものがあり、これで遮水することができます。粉状で販売されているこの『ベントナイト』を、土と混ぜ合わせて素堀りの池の底に貼り付けていくのです。

 この方法の良いところは、ほとんど素堀りの池と同じような自然な雰囲気と、機能を持ちながら、水漏れがほとんど無いことです。

 驚く事にベントナイトは水の中で『膨潤』といって数倍に膨らみますので、底に杭を打っても水が抜ける心配がありません。

 これが、前述した『ベントナイトを吹き付けた遮水シート』の原理でもあり、仮に穴が空いてもベントナイトが膨らみ、塞いでしまうわけです。

 しかし、じゃあ、なんでこんな素晴らしいものがあちこちで使われていないのでしょうか? 当然、長所を台無しにするような短所が多々あり、実際に使用するには問題が多いのです。


 まず、第一に、入手のしにくさがあります。

 工業的には様々な分野で使用されていますが、一般にはあまり使い道がないため、普及していないのです。ホームセンターなどではまず置いていませんし、専門の建材商社にお願いしても、少量では売ってくれません。もう十年以上前ですが、私は三十キロ入りの紙袋を百袋買わされました。で、いくつかの現場に使用しましたが今でも二十袋は残っています。

 次に施工のしにくさがあります。

 説明書を読むと、現場の土に五パーセント程度混ぜ、五十センチ以上の厚みで遮水層を作れ、とあります。

 湿った土に、それだけの粉を混ぜ込むだけでも大変な重労働ですが、それを五十センチ以上の厚みで池の底に敷いていくのは、これまたとんでもない重労働です。

 人力ではまず無理で、小型の油圧ショベルを使用しなくてはいけません。

 で、そこまでして作った遮水層ですが、場合によっては一ヶ月で崩壊します。

 何故でしょうか? 答えはそうした粘土層が大好きで、穴を掘って生活する連中が住み着く事が多いからです。

 その連中とは……アメリカザリガニ。

 多くのビオトープでは招かれざる客として駆除されたりしていますが、彼等の掘削能力にかかれば、ベントナイトの遮水層などどんだけ分厚く作っても、無駄ウリリ無駄リリ無駄リリイです。


⑥ プラ舟(樹脂製の箱)

 ベランダや駐車場など、掘れない場所、狭い場所に池を作るには最適の容器と言えます。

 価格も比較的安く、耐久性もあり、簡易型の水場としてはもっとも普及しているものだと思います。


 問題点としては、形が決まっていて、水深や面積に変化を付けづらい、ということがあります。この対策としては、プラ舟を一個でなく、様々なサイズのものを数個買ってきて、湿地、水場、陸地、などのように水深や状況を変えて、隣接させます。プラ舟同士の間は麻袋を切り開いた麻布で目隠しして、更にその上に水苔や粘土などで覆ってやると、自然な感じで水場を作る事が出来ます。


 また、壁面が逆ハの字なので、外から生き物が侵入しにくい構造になっています。

 この対策としては、プラ舟自体を地面に埋めてしまうか、それが出来ない場合は、周囲を小型の植木鉢やプランターで囲んでやり、その周りに更に素焼きレンガなどを置いて、階段状になるようにしてやることです。

 植木鉢に植えるのは、野草でも何でも構いませんが、水の中にまで侵入してツルを伸ばす、カキドオシやチドメグサ、ヘビイチゴなどを植えておくと、プラ舟から外に出る場合の「梯子はしご」としても使えます。

 

 それと、似たようなものだからといって、半透明の「衣装ケース」を使うのはお薦めできません。たしかにプラ舟と比較すると数段安いのですが、屋外で使用することを前提として作られていないので、一年ほどで紫外線劣化して崩壊します。



 さて、池について考察してみましたが、いかがでしたでしょうか?

 この中で、私の一番のお薦めの池は、やはり「素堀り」です。

 水が常時供給できるなら、これに勝るものはありません。場所がベランダなどの場合には、「プラ舟」がベストでしょう。

 ご紹介したどれも、それなりに使える方法ではありますが、かけられる予算や時間、場所などと相談して、最適の方法を選んでみてください。


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