§4 立て看表示するだけでもビオトープ!?
ようするにまあ、そうなわけです。
§1で書きましたように、べつに池やせせらぎだけが『ビオトープ』なワケではないですから、どんな場所でもビオトープになります。しかも何も手を掛けなくとも、どんな場所でもそこが屋外であれば、住み着いている生き物は必ずいますから、そいつをビオトープの構成員と認めれば、それでビオトープは完成と見なせるわけです。
例えば、花壇に何も植えず、数ヶ月放置して草ぼーぼーにすれば、「雑草ビオトープ」となり、秋にはたくさんの虫の声が聞こえてきます。
屋上のような不毛の地でも、隅っこにはギンゴケやスナゴケが生えていますし、その中には「地上最強の生物」の呼び声も高い「クマムシ」が潜んでいます。うまくすると、カラスの糞から生えた果樹の実生もあるかも知れません。
乾燥しきって何もいない、と思われる庭の片隅にも、草の上ではアリとアブラムシの共生関係が観察できたり、ダンゴムシやワラジムシ、ハサミムシなどの土壌生物たちの営みが観察できたりもします。
こういった場所に全く手を加えずに、それぞれ、「雑草と鳴く虫ビオトープ」「クマムシ王国」「ダンゴムシ天国」「ナメクジ地獄」などの看板を立てるだけでも、それらの生物の住む『ビオトープ』です。
でもまあ、それで満足する人はなかなかいませんよね。
あんまし誰かに自慢することも出来ません。
で、どうするか?
そこから少しずつ手を加えて、『生物多様性』とかっていう、よく分からないキーワードを『豊かに』していくわけです。
例えば「雑草と鳴く虫ビオトープ」ならば、定期的に草刈りをし、刈った草をゴミに出したりしないで、集めて積み上げておきます。
すると、そこにはコオロギの子供達がいっぱい住み着きます。
コオロギは生きた草よりも、そうした刈草が大好きなのです。
また、幅をきかせすぎている草を選んで引っこ抜きます。ブタクサ、セイタカアワダチソウ、オオマツヨイグサ、ヒメムカシヨモギなんかの外来種が蔓延り過ぎると、他の草が遠慮気味になってしまいます。
弱い草は圧倒されて消えてしまうことも。
外来種ではありませんが、メヒシバ、ヨモギ、チガヤ、スギナ、ヤブガラシ、カナムグラなんかも、蔓延りすぎると他の植物を圧倒しやすいです。
とはいえ、どれも全滅させてやろう、なんて考えないで、気楽に引っこ抜く事です。
ヨモギにしかつかない虫、スギナが大好きな蛾なんかもいますから、全滅させると、そいつらもいなくなってしまいます。すると例の『生物多様性』が減少しちゃいますので。
私は草を抜くとき、『駆除』ではなく『収穫』と考えています。
ただの土から生えた植物が、太陽の光を吸収して大きくなり、収穫期を迎えたわけです。
これをコオロギの宿にするために収穫するわけですから、苦でも何でもありません。
この刈草、最終的にどうなるかと言えば、コオロギたちが食べ、ダンゴムシやワラジムシが食べ、ミミズが食べて、腐植質として土に還っていきます。
腐植質の多くなった土は、更に多くの植物を育み、そこにはさらにたくさんの昆虫やその他の生き物たちが集うようになるわけです。
また、一定以上腐植質が溜まってくると、臭いをかぎつけてコガネムシ、ハナムグリ、カブトムシなども産卵に訪れるようになります。
庭木などに樹液が出るようになれば、そのままカブトムシ・ビオトープにできますが……庭木に樹液を出させちゃうワザは、また別項で。