§3 ビオトープは足し算でなく引き算
ビオトープ、っていうか、池とか作ると、とにかく何か放流したくなりますよね?
その心理はよく分かります。
でも、とりあえずグッと思いとどまって、様子を見る事から始めてみよう、今回はそんな話です。
さて、どっかに創られたビオトープを見て「何コレ??」って思われた事はないですか?
何でロープウェイで行く山頂近くの人工池に、メダカが放してあんの? とか
何で海岸近くの公園に水田もどきを作ってんの? とか
何で杉の人工林に囲まれた薄暗い湿った場所に、無理矢理クヌギ植えてんの? とか
何で住宅地のど真ん中にホタル飛ばさなきゃならんの? とか
一般の方が見ても違和感アリアリの、妙なビオトープ。正直、あちこちで見かけますよね?
何でそんなに違和感があるのか? それは、地域や場所の環境に合ったビオトープではないからなんです。
もともとの生態系が大事っつっても、別に先史時代の原生林や大湿地帯に戻す必要はないんですが、その地域や場所には、それなりにそこに合った生態系ってヤツがあるわけです。
例えばメダカは、もともとは大きな河川の氾濫原に住んでいましたから、平地や低湿地が原形となって水田地帯へ変えられた地域が本来の住処です。
ヤツらはタフな生き物ですから、水の冷たい山のため池に放流したとしても、まあ、繁殖も定着もしますけど、決して本来の住み場所ではないわけです。
汽水どころか海水にも適応しちゃうんで、海岸のビオトープ池でもまあ、繁殖も定着もしちゃうんですが、ありていに言って『変』ですよね。
せっかくの海岸なら、砂浜の海浜植物とか、汽水独特の魚類や水生昆虫とか、いくらでも面白い生き物がいるわけで、それを無理にメダカを放す必要はないわけです。
でも、じゃあどうしたらいいの?
って言われれば、簡単な話です。池とか築山とか道とか作って、木とかを植えたらあとは、しばらく何も放流せず放置すればいいわけです。
しばらく放置すれば、移動できる連中はすぐにやってきます。
水に頼る生き物は多いですから「水場ができたー」ってんで、大喜びです。
カエル、トンボ、ゲンゴロウなど。池と周囲の用排水路で、行き来できるよう工夫しておけば、魚やエビなんかも入り込んできます。
水生植物も、土の中に休眠していた種子が芽を出して、植えるまでもなくうじゃうじゃ生えてきます。
で、放流、移植するんじゃなくて、出てきた中から異常に増えすぎたもの、特に外来種を選んで引き抜き除草や、駆除をします。
といっても、べつに全滅させる必要はありません。
前述しましたが、外来種っていうのは、フロンティアスピリッツとバイタイリティにあふれたヤツらで、だからこそ異境の地で定着しているわけです。
ですから、『生態的な空き空間』があると、どっと集まってきて、ばっと殖えて、資源を食い尽くして消える、っていうヤツらが多いのです。
つまり、最初の異常発生さえしのいでしまえば、次第に数も量も落ち着いてきます。
最終的に、いなくなってしまう連中もいます。
でも、最初の異常発生のときに、最後までいてくれる在来種を食い尽くしたり、居場所を奪ったりして消し去ってしまう事があるので、それを防ぐために、選んで駆除するわけです。
そうやってしばらくすると、移動して来ないけど、どうやら周りにいっぱいいるっていう在来生物も見えてきます。
移植や放流は、彼等の移動を手助けする感じでやりましょう。
こうすれば、その地域や場所に合ってないビオトープになってしまうなんてことは、まず有り得ません。