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-EP.08-調査

次日…


学園に到着し席に着いたところで足早に快斗が近寄ってきた。


「灯里、後で少し相談があるんだが…いいか?」

「別に構わんが…。どうかしたのか?」

「いやぁ、なんて言っていいのかよくわからなくてな…。真菜の方がこういうのは詳しいんだが…」


頭をかく快斗に灯里の眉が寄る。快斗の悩み事が中途半端でそれに妹の真菜が絡んでいるとなると、厄介事である可能性が格段に高いからだ。




◇◇◆◇◇




午前の授業中、灯里は気づかれないようにシアンの様子を伺っていたが、彼女は普段と変わりない様子で授業を受けていた。


授業が終わって昼休みに入ると快斗とともに屋上へと向かう。

到着した先にはすでに弁当箱を開けて食べている由希と正座のまま重箱を膝に載せている真菜がいた。


「悪ぃ悪ぃ、遅くなっちまった」

「兄様はお弁当を持ってきていらっしゃいませんから購買にでも寄ってらっしゃったのでしょう。由希さんは待ちきれずに食べ始めていますが」

「由希の我慢が緩いのは知ってるから気にするな。それより、相談があると聞いたんだが…」

「まずは座ってくださいな。少し長い話になると思われますので」


真菜に促され、快斗とともに屋上に敷かれたシートに腰を下ろす。

灯里は弁当箱を開き、真菜も重箱の蓋を開く。快斗は購買で買ってきたパンの包みを開ける。


「食べながらになるので恐縮なのですが――」


二段重ねの重箱の内、色とりどりのおかずが入った重箱から黒豆をつまみ上げつつ真菜が話し始めた。


「実は昨日、兄様に何やら変な気配のようなもの感じたんです」

「こういうこと言う真菜に間違いって少ねーからさ。普段はお祓い受けに来る人にしかやらないお祓いをわざわざ真菜にやってもらったわけなんだが…」


あくまでも補足だが古賀家は古くからの陰陽等に関わることのあった家柄らしく、何代かに数人の割合で特別な力を持つ者が産まれるらしい。

今代で言えば真菜がその気が強く、いわゆる霊感に近いものを持ち、お祓い等も出来る。

以前に『この力』を発端にとある事件があったのだが…。今は関係のないことなので割愛。


「今まで相手にした悪霊等とはまた違ったものでいまいちなんなのかわからず…。しかし、祓うことはできましたのでよくないものであることは確かなのです」

「快斗に直接の害はなさそうだったのか?」

「はい。漂ってまとわりつくようなものでしたが、心や身体に害をおよぼし続けるような類ではないようでした」

「直接の害はない、か」

「まぁ、そういうのだから呪われたとかじゃねーみたいなんだが気味が悪くてな」

「ふむ…。真菜、そのまとわりつくようなものはこの学園内の生徒で他にもいるのか?」

「そう、ですね…」


心当たりがないか考えるためか、弁当箱のおかずやご飯をついばんでいく。

しばらくの間食べることに専念していた真菜だったが――


「いらっしゃいますね。何人かは兄様のクラスメイトだったと思いますが詳しいところまでは…。申し訳ありません」

「いや。大丈夫だ」


頭を下げる真菜に対して軽く手を振る。


「うーむ…、学園内には何人かいるのか」

「真菜ちゃん。お兄ちゃんには無いの?」

「灯里さん、ですか?」


ジッ…と見つめる真菜の視線を何やら気恥ずかしくなって弁当箱へと目をそらす。


「こうして視る限りではありません」

「……いくつか可能性を話すぞ?」


前置きをおいてから自分の中で出した答えを並べる。


「1つは浮遊霊の類がウロウロしている可能性。真菜に視えていて、しかし直接の害はないということだからな」

「それは私も考えましたが…。兄様には私特製の『御守り』を渡していますので、浮遊霊の類がつくとは考えにくいのですが…」

「そうか。次に考えつくのは呪術とかで何かされてる場合だが…」

「それはねぇ。ここんとこはトラブル起こしてねーし」

「確かに神社に変な方が来ることはありませんでしたね」

「となると、考えられるのはもう1つあるんだが――…」


そこまで言っておいて口ごもる。


「お兄ちゃん、私も同じ答えにたどり着いたよ!!」

「だよなぁ。そうとしか考えられないよなぁ…」

「…?なんか言いにくいことか?」

「気にせずに伝えてくださって構いませんよ。私には大きな関連はなさそうですから」

「おい、こら。自分がよければいいのかお前は」

「害が無ければ構いません。昔のようなことにならなければ私にはあまり関係ありませんので」

「そうは言えないな。まったく関わりがないわけでもない」

「どういうことだ?」

「コレを話すのは正直気が引けるんだが…。しかし、すでに巻き込まれてる可能性がある以上は話しておいた方がいいのかもしれない」

「隠し事は無しでお願いします。私も兄様もどのようなことに巻き込まれていようとも、灯里さんや由希さんに恨み言を言うことはありえません」

「そうそう。そもそも先に厄介事でお世話になってるのは俺達だしな。お前の方の厄介事が発端なら乗らせてくれ」

「……すまないな」


迷いのない2人の笑顔に、灯里は安堵のため息をつく。そして、最近あったことを話し始めた。

最初こそ驚きや戸惑いといったものを見せていた2人も、話が『魔法』に関わるところまで聞くと表情が変わった。


「つまり、兄様にはその…『魔法』という異世界の力がまとわりついていた。ということですか?」

「にわかには信じがたいな…。異世界なんてものはさすがに」

「信じがたいのは説明している俺でもわかってる。異世界どうだのってのも魔法がどうだのもこれ以上ちゃんと説明する方法が無い」

「まぁ、変な話。レンちゃんに会えば一番わかりやすいんだけどね」

「レンちゃん?」

「誰だ?」

「家にいる居候だ。この前、お前達に少し相談に乗ってもらっただろ。実はその居候のことなんだ」


そうして、レンのことを2人に説明する。黙って聞いていた2人だが、やはり半信半疑なのか渋い顔をしている。


「こんなこと言うのもなんなんだがよ。マジの話なのか?特に、その…、シアンのことは…」

「信じられないのは俺だって理解はしているつもりだ」

「しかし、良からぬことを兄様に行ったのは事実なのですよね?」

「断言できる段階にはないが、可能性が高いのはあいつだけだ」

「…とりあえず、だ。今は出方を見てみようぜ?今からガタガタしたって仕方ねーだろ」

「そうだな。シアン以外の可能性も0じゃない。今は、様子見としよう。由希もわかったな?」

「不用意に動くなってことだね!合点承知だよ♪」

「真菜もだ。この中だとそういったものに精通しているのはお前だが、だからこそ慎重な行動を心がけてくれ」

「承知致しました。動く前にはまず御連絡致します」

「じゃあ、解散するが…。くれぐれも不用意に藪はつつくな。一度は痛い目を見ているからその辺りの引き際は各々わかってはいるとは思うがな」


お互いに頷くタイミングで昼休みが終わるチャイムが屋上に鳴り響いた。


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