始まり No.5
「全てを知った一般人には消えてもらうしかない、と?」
「……やはり君は異常だよ。君は全てを理解しているんだろ? なのにその落ち着きようはなんだい?」
「ええ、僕も不思議ですよ。……けどまぁ、そうですね、強いと言うなら僕はずっと、最後まで奇跡を信じろって学んできているからですかね」
「奇跡?」
「そう、奇跡ですよ。どんな時でも奇跡を信じていれば必ず起きるからって、ずっとずっと学んできているんですよ」
「……わからない。この現状で奇跡がおこるとも? 言っておくが私は本気で」
「わかってます。あなたは本気で撃つ気なんでしょ?」
「だったら何故」
「だから言ったでしょう。どんな時でも奇跡を信じろと学んできたと。それはそれ、これはこれですよ」
この現状で少しふざけながらも、そうはっきりと言い切ったフレイムに、銃を向けているカイルの方が少したじろいでしまった。
しかし、最早決意を固めているからか、下げかけていた銃口を再び向けなおし、トリガーに指を掛けた。
だがその表情は今までの冷たいものではなく、苦笑と少しの悲しみがあった。
「君は異常だ。……けど面白い人だったよ。フッ、困ったな。君がもっと悪い人間だったらこんな気分にならずにすんだのに……」
瞬間。
フレイムはカイルの人間性を見たように感じた。
どこまでも冷静に、冷徹に。しかし心までは制御しきれない人。
おそらく本来は優しい性格なのかもしれない。
けれど、それとは別で最後まで冷徹に終わらせる力を持っているのだろう。
最早止まる事はない。
数秒先の自身の未来はおそらく……
――カチャ
トリガーに力が加わる音が聞こえた。