始まり No.4
「うそ?」
「ええ、うそです。すみません、助けて頂いたのに疑うようなことを言ってしまい。それでも少しだけ疑問に思ったんですよ」
「疑問?何の事だい」
「疑問というには、随分な言い方をしますが、いってしまえばあまりにも自然すぎるんです」
フレイムのその言い方に、少し呆れたような顔をし始めているのが伺えた。
「自然すぎるも何も、言っていることは事実なんだから自然なのは当たり前だよ。……まさか君はそんな理由で僕たちを疑っているのかい?」
「ですから先に謝っておいたんです。自分でも思いますよ、おかしい考えだって事くらい。けど……」
そう言ってフレイムは真剣な眼差しで言い切った。
「僕にだってうそを言っている人の見分けぐらいできます」
その迷いない眼差しと言動に、カイルは一瞬たじろいだものの少し間を置き、突如笑いだした。
「……ハッ、ハハッ、ハハハッ、クク、君は面白いことを言うね。けどまぁ、そうだね……」
そう言い、カイルは少し考え始めた。しかし先ほどまでの彼とは違い、少し雰囲気が冷たくなったようにフレイムは感じた。何より先ほどから顔は笑っているものの、目だけは笑っていなかった。
「……君には私たちがどう見える?」
ふとカイルはそう切り出した。その質問の真意を確かめるため、カイルの瞳を見るものの、もはやそれは今までのものとは違っていてわからない。
「……どうも何も、あなたが言ったようにただの商人にしか見えませんよ」
「では何故疑ったんだ?」
「何故と言われても。言ったでしょう、僕にはうそだとしかわからない。何がうそなのかもね」
その言葉にまた少し考えたカイルだったが、結論が出たのか、再びフレイムに向き直り告げた。
「……どうやら君はただの一般人みたいだね」
「それはどういう意味ですか?」
「その言葉の通りさ。僕にはてっきり……いや、やめておこう。うそだと気付いた君なら、この意味わかるよね?」
まるで諭すようにカイルは告げた。
……つまり一般人の自分が聞いてはいけない内容だと言うことを言外に告げているのだ。
そう理解したフレイムだったが、少し考えあることに気付く。
――『一般人』の自分には?
その言葉の真意を理解した時、この現状、そしてすぐ先の自分の未来を理解した。
いや、してしまったと言ったほうがいいのかもしれない。
少し驚いているフレイムに、カイルは察したのだろう、その心中を告げた。
「やはり君は少し異常だ。おそらく今の私の言動で全て、いや大半のことを理解したんだろう。今の現状と、そして君のすぐ先の未来をさ。ならこの意味もわかるだろう?」
そう言ってカイルは懐から拳銃を出し、銃口をフレイムに向けた。