今回からチートスキルはあげないことにします。まあ頑張ってください。
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「異世界に転生してもらいます。若畑小麦」
なるほど理解した。意識を取り戻して一番に見たものは、白く裾の長い服を来た美しい女性。周りを見渡して見れば、暗いというのに自分の手や美しい女性の姿ははっきりと見えるナゾの空間。
そして私が手をついている床は石のような硬い感触だが不思議と冷たさは感じず…なんか湿っているな、気持ち悪い。
転生系漫画の広告とかで一億回は見た光景だ。
察するに目の前の女性は女神で私はこれから剣と魔法のファンタジー世界に生まれ変わるのだろう。そしてスキルなる便利な力を貰うのだろう。
これからは大した苦労に見舞われることもなく、チートで悪役令嬢なスローライフを謳歌していく事が確定したのだ。
これは美味しすぎる。だがちょっと待て。フラフラと立ち上がりながら考える。
そもそも『転生』という事は私は死んだのか?
私は若畑小麦。ちょっと恵まれた環境に生まれただけの女子高生だ。そんな私が何故『転生』させられなければならないのか?
というか今、自分の身体を見返して気付いたのだが私は高校指定の制服を着て………何これ…?固まりかけた赤黒い血がベッタリついている。
一体私に何が起きたの?
私はめまいに耐えながら、必死にこの空間で目を覚ます前の事を思い出そうとする。高校の教室でお弁当を食べた記憶はある。そうだ、いつものように友達の桜餅子と食べていたはず。下校した記憶は……ない。午後の授業中に何かあったのか?
けれど、どうしても思い出せなかった。
「そろそろよろしいですか? 虫ケラ風情がいつまで私の呼びかけを無視するつもりなんです?」
パニックになり、固まってしまった私に対し、少しイラついた声で女神(と推測できる女性)は問いかける。
「あっ。しゅみっ……すみません。そのっ、えっと。初めての…ことなもので…! 」
ヤバい噛んでしまった。そして神は人間のことを虫の一種だと思っているらしい。だがこの神の話を聴けばいろいろわかるハズだ。女神は澄んだ声で語りかけて来た。
「私のことはパンタレイとお呼びください。貴女が想像する通り女神ですのでどうかご安心を。先程もお伝えしたように貴女には異世界に転生してもらいます。解りますか? 虫ケラのゴマ粒サイズの脳ミソでも、ご理解いただけます? 」
透き通るような美声に反してめっちゃくちゃ口が悪い。これが神なのだろうか?いや怯むな。このまま話を進められてはまずい。
「ちょっと待ってください。そのっ、私には、家族とか友人とかがいるんです! だから、えーっと、転生は待って欲しいと言うか! ………そもそもなんですけど……私、なんで転生することになったんですか……? 転生ってことはつまり……し、死ん…」
「ああ、死にましたよ?」
予想はしていた事だった、だから尚更、ズンと重い衝撃が脳に伸し掛かった。
「それと私が貴女に与えたのは『転生する』という運命だけです。それを拒否する権まで与えたつもりはございません。」
「そんな…待って…。」「待ちませんよ。」
何かに口を押さえつけられた感触。グゥッと呻き声が漏れてそれっきり私の唇は開く事が出来なくなってしまった。目を見開いて口元に手をやる。だがそこには何もなく、ただ強張った自分の頬に触れるばかりだ。
私は今になって、こんな状況だというのに自分の脈拍の音が聞こえないことに気がついた。そういえば口を閉じられた時に、息を止めてしまったのに、いつまで経っても苦しくならない。
「ではこれから転生先のことについてご説明させて頂きます」
女神を自称するナニカは淡々と続ける。
「貴女がこれから行く先は剣と魔法の世界。貴女方の言うところのファンタジーのような世界です。竜が空を舞い、人喰いのモンスター達が人間を踊り食いし、飢えた人間達が人間を捌き喰いしているぐらいで、さほど今までの世界と変わりありませんよ。」
変わりあります。とんでもねー世界です。
「あとは、疫病とか戦争とか、程度に差はあれ貴女のもといた世界でも見られるものが蔓延っているぐらいです。何か質問はございますか? ……ああ、もうしゃべっても構いませんよ」
パッと口を開放された私は、おそるおそる聞いてみた。その危険な世界に飛び込むにあたって何か便利な能力は貰えないのか?と。
「ああ、チートスキルと言う奴ですね。」
女神は綺麗にフェイスラインを描く顎に人差し指を置きニコニコと笑みを浮かべた。
「それは、今回からあげないことにしました。」
「えっ……? ……はっ? ………あげ…ない?」
「ですから貴女方の言う、チートスキル、固有能力、異能の類は今回より渡さないことになりました」
なんということだ。チートスキルなしでそんな危険な世界に行くのか。もう動いていない心臓に氷漬けにされたような痛い衝撃が走る。だがまだ、良家にでも生まれられたら。あるいは……。
「それと今回、若畑小麦は死ぬ直前そのままの身体を昔に作り出す形で転生して頂きます。安心してください。その服汚いオプションでそのまま再構成しますから。いえ…こういったものは転生ではなく転移と呼ぶのでしたか? まあどうでも良いですね、呼び方なんて」
本当にどうでも良い。呼び方なんて。
それより、今から私は何のサポート貰えて寄る辺もいく当てもないまま、別世界に吹き飛ばされるのか?この血で汚れた制服以外の持ち物もなく!?
歯の根がガチガチとなり始めた。同時にめまいが再発し、脚が小刻みに震えて踏ん張りが効かなくなっていく。女神はしなやかな五指をゆっくりとこちらに向けた。
「では貴女の新しい道の行く先に幸せがあることをあること願って……」
「待ってください!! お願いですから、マジで待ってください!! そんな……。帰してくださいよぉ……!!」
「行ってらっしゃいませ。サンプル17号ちゃん」
フッと世界が暗転して、脚に踏ん張りが効かなくなった。落下していくような感覚に包まれながら、私の意識は溶けていった。




