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第四話 異世界とIT





 カータス王国アモル領 聖銀の森


 カータス王国と言えば、ゲームでは、Ver2.00で実装された魔王を最初に討伐した大手ギルド連合の代表が国王として建国した国で


 当時、僕は魔王実装時にプレイしていたが、また幼い子供で最前線のプレイヤーなんて夢のまた夢だった


 数年経って僕が最前線の攻略が出来るプレイヤーとなった時


 憧れていたトップランカー達はみんな引退していたが


 彼らが残したその、強靭な巨大国家は残っており依然として繁栄していた


 偉大なプレイヤー達が作り上げた栄光ある巨大国家


 僕から言わせればまさに王道とも言えるイメージの国だ


 (って言う気持ちはあるんだけどさぁ・・・)


 どこか幻想的に輝く森、周辺を見渡せば、視界のすべてを深い木々が埋め尽くしていた。


 自然と最後に足元を確認すると、地面にはどこかで見た事があるような魔法陣?に見える物が書いてあった


 (あ~、なんだっけ?ミスティカルだっけな?)


 確か会社の先輩とコードの話をした時に、僕がファンタジー好きと聞いて最近、魔法陣の様な言語を開発した人がいると見せてくれた事があった


 難解プログラミング言語と呼ばれる意図的に作られたジョークの様な言語として区分されている


 そもそもプログラミングと言えば、よく教科書などで英語と数学を足して2で割ったものなんて表現されるが


 ようは、あーだこーだと色々決めた命令書みたいな物だ


 決めた内容が伝われば、言葉である必要性すらないのは理解できる


 お店とかで商品に付いているJANコード、別名では、バーコードとよく言われる物があるが、アレが良い例だと思う


 ただの棒線でも決められた法則があれば、計算して書けば伝わるのだ


 普通はやらないがJANコードとして印刷されたデータを読み込むのでは無く


 法則に則ってあの棒をペンで書いて読み込ませる事で


 自分が伝えたいデータを作り出して好きなように伝える事ができるのだ


 それは、プログラミングと本質は変わらないと言えるであろう


 (ん~でも見た感じこんなに複雑な模様では無かったしなぁ・・・なんだろう?コレは)


 まるで。ペルシャ絨毯の様な非常に複雑で緻密な模様が描かれているその魔法陣に魅了され、しゃがんで手を伸ばすと


 雪を触って溶けるかの如く模様が消えて行く


 (んー、分からん、まぁいっか。)


 「さ・て・とっ!」


 とりあえず仕切り直して立ち上がり胸を張って上を見る


 空には煌びやかに2つの太陽?が輝いていた


 それを見て僕がここにいる理由を思い出す


 (まさか、本当にこんな事になるなんてなぁ~)


 右手で頭を抱えつつもちょっと嬉しくもあり、ちょっと楽しくもある状況に自然と笑みが浮かんでしまう


 就職したいと思った会社の面接を受けた時に


 以前の職場で何をしていたか?を聞かれたタイミングがあった


 僕は開発部に所属していた事を答えるといきなり入社した際にはメインのリポジトリからブランチを切るから自由にやってみてくれと言われた


 リポジトリとはデータやプログラムの保管庫


 ブランチとはバージョン管理アプリでデータをコピーする事、元のデータはマスターと呼ばれる


 もしコピーのデータを弄っていて失敗などしてもブランチをして枝として分けていれば、マスターは幹として存在しているので全く影響は無く問題は無い


 しかし、メインのリポジトリとなると話は変わってくる


 そもそも、大切な財産とも言えるオンラインゲームの全てのデータを


 入社したら新人でもNDA、要は秘密保持契約書なんて言う紙切れ一枚に署名するだけで渡すなんて事は中々セキュリティ上リスクがあると思う


 (そりゃ、僕を信用してくれるのは嬉しいけど何かあった時に損害賠償なんて払える様には見えないだろうし、それなのにそんな事言うって事は、それだけネタ切れというか)


 (まぁ、ダメ元で機能とか地域、モンスターだろうと何でもいいから作ってもらって、その中で使えそうなのが出来たらそれだけマージすれば良いって思われてるんだろうなぁ~とは思ったけど)


 マージとは、ブランチを切って変更を加えたデータをマスターに統合させることを言う


 「そりゃ紙切れ一枚だろうとメインのリポジトリだろうと関係無いわけだ、まったく」


 まさか、画面の中のゲームでは無く現実としてその世界に送られるとは夢にも思っていなかった


 新人研修は宿泊研修だと聞いて、いつの時代だよ?なんて思っていたが、新卒で入社した会社よりも提示された給料が高い事で仕方ないな、なんて納得していた


 だが、研修最終日にそのまま配属された先は、まさか、県外どころか世界すら違う事になるとは思ってもいなかった


 (はぁ~、とりあえずあのふざけた宗教みたいな研修でやらされた事を試してみるか。)


 研修中は全く持って意味の分からない奇行ばかりやらされていたが


 それは、問題があれば、契約上の試用期間に切る為で、どんな内容でもしっかりと指示に従う人材であるか?自己判断せずに言われた事をしっかりと考えるか?など、色々と試されていると思っていた


 しかし、こうなってしまっては受け入れるしかない、信じるしかない


 「デバッグ」


 誰もいない事もあり教えられた事をかなり端折ってボソりと呟いた


 異世界に来る前はただただ大声で叫ぶように言わされた


 他にも、どんな時でもデバッグと言える様にと逆立ちしながら言わされた


 挙句の果てには心の中でデバックと言えと意味の分からん事を指示されていた


 デバッグと言う事で頭の中でIDEが起動されるからというトチ狂ってんじゃねーか?と思ってしまう理由でだ


 それに、はい!と短く大きな返事だけをして言われた事を実行していた僕は


 自分でも良い新人だと思っていたぐらいだ


 IDEとは統合開発環境の事で、プログラミングする際によく使われるコードを書くアプリの事だ


 プログラミングとは定義や手順などをプログラムとして書いたり決めたりする事


 ぶっちゃけた話、別に書くだけならエディタと呼ばれる文字を入力したり編集したり作成出来るアプリだけでもできる、メモ帳とかが有名だと思う


またガリガリとプログラミング言語で書き込む事はコーディングとも言う


しかし、IDEには便利な機能がいっぱいあるのだ、そして非常に種類が多い


 対応しているプログラミング言語や開発する目的の端末やソフトによって別の会社の製品であるIDEを使用する


 様はIDEは総称と言う事だ


 (だとしても、全く持って意味が分からなさ過ぎだろう・・・これは・・・)


 いくつかのIDEを覚えれば大体は似たような物なので共通点、所謂パターンが理解出来る、つまりコツがあるのだが


 デバッグと小さく呟くと同時に頭の中に浮かんだ謎の空間?には


 不思議な事に、そこには文字が表示されるIDEだとイメージが湧いた


 しかし、今までの経験から来るコツなんて物は何一つ役に立つ気がしなかった


 とりあえず目の前にある木の中でひときわ立派な木を見て呟く


 「アタッチ」


 頭の中に浮かんでくる空間に【Tree(346);】という文字が浮かぶイメージがした


 (あーーー!ね!)


 空間に浮かんだイメージの文字を見てピンと来た


 そもそもデバッグとは文字の通り、昔コンピューターに虫が入り込んで故障した際にそれを取り除いて直した話から来ており


 アタッチとは実行中のプログラムに直すソフトであるデバッガを繋げる事である


 つまり、どういう事かというと、昔は書くアプリとしてエディタを使い、直すアプリとしてデバッガを使っていた


 IDEが登場して、IDEにはその両方の機能が当然の様に付いているのだ


 「IDEはやっぱり最強って事よっっと!実行!!」


 頭の中の文字を【Tree(3460)】に書き換えて実行と呟くと


 目の前にあった立派な木が更に大きくそして盆栽の様に味のある姿に一瞬で変化した


 「はは...、ハハハハ、あははははは!」


 笑いが込み上げて来る


 なんて愉快なんだろうか


 目の前にある結果を見て初めてプログラミングをした時を思い出す


 そして間違いなく今、僕は、過去最高に面白くて楽しいプログラミングをしたのだ


 それはリファクタリングとして誰かの書いたコードを書き換えて洗練させたのか?


 それともハッキングとして高い技術力を駆使して解析し、自分で書き換えたのか?


 リバースエンジニアリングしたのか、モダナイゼーションしたのか、リエンジニアリングしたのか


 あぁ、あぁ、あああ!!


 そんな事はどうでも良いんだ!!!


 「なんて、素晴らしい世界なんだ・・・」


 僕の顔には涙が流れていた・・・。


 「アイテムボックスッ!!」


 認めよう、この世界を


 「ステータスッ!!!」


 認めよう、彼らの言っていた事は本当だったと


 「鑑定!!」


 認めよう、この異世界の存在を


 「・・ハハ.ハ。ほんと、マジかよぉ....」


 目の前に広がる知っている様で知らなかった


 新しいインフォメーション(情報)と


 知らないテクノロジー(技術)を見て


 僕はITの意味はInformation Technologyだと再認識した







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