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キンレンカ-幼女転生の殺し屋の成り上がり-  作者: 東山ルイ
第一幕 キラー・クイーン

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009 強引な投資活動

 姉は、テーブルに置かれた札束と、血の匂いが微かに残るサーシャの姿を交互に見て、震え上がった。


「さ、サーシャ。アンタ一体なにを━━」

「お姉ちゃん」サーシャは静かに、しかし有無を言わせぬ響きで遮る。「お父さんは死んだ。お母さんは捕まった。私たちはふたりきり。このカネがどこから来たかなんて、いちいち詮索しないほうが良いよ」


 姉は怯えながらも、サーシャの翠の瞳に宿る異様なまでの覚悟に押し黙る。それは8歳の少女が浮かべる表情ではなかった。


「お姉ちゃんは、お母さんが帰ってくるまで家を守れば良い。その間、私はカネを稼ぐ。それだけだよ」

「で、でも……」

「大丈夫」サーシャは、その小さな手で姉の手を握った。その手は、裏路地で硝煙にまみれていたとは思えないほど柔らかかった。 「お姉ちゃんは、私が守る」


 その言葉に、姉は再び泣き崩れた。だが、それはもはや絶望だけの涙ではなかった。


 *


 数日が過ぎた。 サーシャが稼いできた「仕事」の報酬で、姉との生活はひとまず安定した。

 冷蔵庫は満たされ、滞納していた光熱費も支払われた。姉は少しずつ落ち着きを取り戻し、慣れない手つきで家事をこなしている。

 その日、サーシャは買い出しの帰り道、あの日と同じイーストAsの薄汚れた路地を歩いていた。両手には、8歳の身体には不釣り合いなほど重い買い物袋をぶら下げている。


(さて、次の〝仕事〟を探さねぇと。カネはいくらあっても足りねぇ)


 そんなことを考えていると、不意に視界の隅に気配が映った。 サーシャは買い物袋を降ろさず、気配の主を睨む。 ゴミ箱の影に、少年が一人立っていた。


「やぁ。クール・ファミリーの金庫番さん」


 切り揃えられた黒髪。病的なまでに白い肌。そして、一切の感情を映さない情熱のバラのような瞳。10歳にして、クール・ファミリーの金庫番を務める切れ者リオがいた。

 彼はあの日のように、ただ静かにジッとサーシャを見つめていた。


「なんの用だい? デートでもしたいの?」


 サーシャが挑発的に言うと、リオはその薄い唇をわずかに動かした。


「……随分重たそうだ」

「見ての通り」

「……持ってやる」


 リオはサーシャに近づくと、その小さな手で、サーシャの持っていた買い物袋の片方をヒョイと持った。サーシャは眉をひそめる。


「なんだよ、そんなに私の関心を買いたいの?」

「……オヤジが呼んでる。事務所まで来てほしい」

「あぁ、そういうこと。お使いって大変だよな」あっけらかんと言い放った。


 リオはサーシャの皮肉を意に介さず、先に立って歩き出した。その小さな背中は、この危険な街に似つかわしくないほど頼りなげだが、放つ空気は紛れもなく裏社会のそれだった。


(コイツ、おれの帰り道を見張っていたのか?) サーシャは、先を行くリオの背中を見つめる。 (相変わらず、人形みてぇなツラだ。だが━━)


 サーシャは、この数日間、頭の片隅でずっと考えていた。 あの日、事務所で感じたリオの視線。それは、サーシャの『中身』を見透かそうとするような、値踏みするような目だった。


「なぁ、リオ。この前のネクサス・ファミリーの幹部どうなった?」


 リオは立ち止まることなく、サーシャを背後に近くの石ころに目を向けながら言う。


「……オマエの知ったことではない」

「そんな態度じゃ、女の子に嫌われちまうぞ? この美少女様に」

「……だが、オヤジは良くやったと褒めていた」


 その声には、まだ温度はなかった。だが、それは間違いなく、クール・ファミリーから評価されているという事実でもあった。


「……そして、僕とオマエはタッグを組むことになった」

「あァ? タッグ? ……あ、クールさんが株価操作とか言っていたな」

「……オマエ、株価を激動させる方法、知っているか?」

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