006 異世界での初仕事
「弾数、7発か」
弾倉を取り出し、サーシャは銃弾数を確認しておく。手始めに持つにはちょうど良い。彼女は銃を上着の中に隠す。
あとはナイフがほしいところである。近距離戦だと、やはりナイフは相応の威力を発揮するからだ。
そう思い、また起こるであろう殺し合いを待っていたら、
「嬢ちゃん、調子は?」
目の前から歩いてきた巨漢に、気さくな挨拶をされた。サーシャは、「悪くないですね」と笑顔で返す。
「そりゃあ良い。ところで、さっき起きてた抗争を止めたのって、嬢ちゃんかい?」
「さぁ。なんのことですか?」
「とぼけるなよ。嬢ちゃん、その歳で祝福受けてるだろ? まだ完璧には使いこなせてないようだけど、現段階でもたいしたモンだ。どうだ、クール・ファミリーに入らねぇか?」
「お給料もらえるんですか?」
「面倒事を片付けてくれたら、相応の報酬は支払うさ」
「その面倒事とは?」
「最近〝ネクサス・ファミリー〟って連中が、おれらのシマを荒らしてるんだ。さっき撃ち合ってたのも、おれの子分どもとネクサス・ファミリーの若い衆でね」茶髪パーマの男前な巨漢は続けた。「さすがに報復に出ねぇと舐められちまう。なんで、ネクサスの幹部をひとり始末してぇんだ」
「なるほど。でも私8歳ですよ?」
「いや? 嬢ちゃん、転生者だろ。さっきの銃撃戦で眉ひとつ動かさなかったし、相当な無法者だったんだろうな。だからま、嬢ちゃんを8歳の非力な女の子とは思わねぇよ」
「へー。見かけで判断しないって素晴らしいですね」サーシャは無のまま表情を変えない。「けど、まだ悩んでいるんですよ。もう一回殺しの道に行くか、転生したし足を洗うか」
「ならそうだな……幹部を拉致してくれれば良いや。ソイツを拘束して、このスマホに電話してくれ。位置情報も載ってるから」
「なら良いですよ」
どのみち殺しに加担しているものの、サーシャもカネに困っている身分。報酬を貰えるのなら、乗らない手はない。
「んじゃ、頼んだぜ」
「はーい」
*
教会に行って、ぶらぶらイーストAsをさまよい、また歩く。小さな足が痛む頃合いだ。早く一仕事終わらせて、家に帰ってなにか食べたい気分である。
(あれか)
ここのギャングたちは白人・黒人混同のようで、サーシャが先ほどの巨漢に渡された位置情報と写真には、白人が映し出されていた。ただ幹部ひとりではない。複数人で、ひと気の薄い裏通りにて、彼らは〝ハッパ〟を吸っていた。
(近くに面白そうなものないかな)
サーシャは操ったら楽しそうなものを探す。別にバイク等をぶつけて気絶させても良いのだが、それでは面白みに欠ける。
(いや、ハッパ吸っているのなら……)
また、彼らはそもそもサーシャがいることにも気が付いていない。どうやら〝草〟で短い旅に出始めているところらしい。警戒心という概念がないのだろうか。
それを見越して、サーシャは唇に人差し指を当てる。
すると、彼らがハッパをくわえた瞬間、それが手持ち花火のように燃え始めた。
「アッツッ!?」
「なんだ!? 誰の能力だ!?」
(さすがに能力だってことくらいは分かるか。さて……)
サーシャは9ミリ弾薬の小型拳銃を取り出し、正確に連中の足に着弾するように照準を合わせる。小型なので射程が短く、推定で100メートルほど離れているため、当てるのは至難の技だ。10メートルから50メートルがまともに当てられる限界値と言われているのだから。
しかし、サーシャはこの手の道具を使いこなしている。並大抵の軍人よりも。
3発の銃弾は、見事に連中の足に直撃した。
「……ッ!?」
サーシャは、歪んだ笑みを浮かべて彼らへと近づく。
そして、
10メートルほどまで迫り、残った銃弾で銃を取り出そうとした敵の腕を撃ち抜くのだった。




