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キツネ転生者と騎士王子が世界を救う冒険物語  作者: 森野魚
第1章「始まりのセファルス大国」
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15 思春期の少年少女の恋愛物語はいじらしくてもどかしい

 恐怖の森から出て人間が住まう町に来てから約6日目。大分借りぐらしのアリ○ッティのような生活にも慣れてきました!

 え?「借りぐらし」って言ってるのにアリ○ッティ物全然返さねーじゃねえかよって?まぁ、細かいことは無視してくださいよ!


 僕もアリ○ッティもいつか借りた物はちゃんと返すつもりですよ。


 今日も今日とて町の人々から姿を隠し市場を回って、店の人が捨てようとしている食材や運が良かったら落下途中の食べ物を盗み取って腹を満たした。このような生活を始めた当初感じていた罪悪感が懐かしく感じる程までにこの行為に慣れてしまった。こうやって人は犯罪を繰り返すんだろうなと思いながらも、楽に食べ物を確保できる方法がこれなので辞めれない。

 最近、タオルを頭に巻いている肉串屋のおじさんが異様にビクビクとしているのが気になる。微風が通っただけなのにおじさんが悲鳴を上げた時には流石にビビった。何かお化けでも見たのかな?


 腹を満たした後、僕はもう1つの日課になっている宝石屋に寄った。今日は何色を選ぼうかなー、なんて考えながら歩いていたら店の前に着いていた。


 あれ?無いぞ。

 籠は??


 店の前の地面に置いていた籠もその下に敷いていた布も綺麗さっぱり無くなっているではないか!!


 流石に5つもガラス球を取ったらバレちゃうか…そして、今日は僕対策として布ごと籠を撤去したっぽい。

 店主さん、ごめんなさい…いつか絶対お返しを持ってくるから、もう少し待っててね。


 人間性を少し取り戻したもののテンションが下がった僕は今日からどうやって暇を潰そうかと考えながら市場を後にした。動物になってから睡眠時間が長いせいか1日が人間の時よりも短く感じる。しかし、短く感じると言っても、起きている間暇なものは暇だ。何よりも、スマホを持っていないのが辛い。

 僕は前世ではバリバリの現代っ子で、トイレの中にでもスマホを持ち込んでいた程スマホが体の一部と化していた。そんな生活に慣れていたので、動物になってしまった今の僕に取っての1番深刻な問題は、この町には娯楽が少なすぎることかもしれない。

 この世界には電子機器が無いみたいなので、町の人々は新聞のような薄い紙の束から情報を摂取しているみたいだ。新聞も1人1枚持っているのではなく、1人が読み終わったら次の人に回すスタイルなので、ジャンプ漫画を部室で回し読みしている男子高校生のような光景がそこら中で行われている。紙が貴重なのか、印刷技術が発達していないのか理由は不明だが、この世界の新聞はとても大事に扱われている。そのため、僕が読みたいと思っても中々手に入らないし、道端に落ちていることもないので見たくても見れないのだ。

 こんな暇な毎日を送るのなら、森に戻った方が…いやいや、無理だ。あんな所に戻ったら小さな体の僕は何時間生き残れるか…

 戻るとしてももう少し成長してからにしよう。


「おい、見てみろよ!」

「なんだ?」


 嗄声の音の出所に視線を向けると2人の少年と1人の少女が木の板でできた掲示板の前に集まっていた。

 この町には同じような掲示板が他にも複数個か設置されている。ほとんどは昭和時代の電車の駅に存在していた伝言掲示板のように町の人々が好きにメッセージを書くのに使われている。しかし、2つ程例外があり、重要なニュースなどを貼り出すのに使われている公式感ある掲示板が存在する。この少年達が見ているのは後者の方みたいだ。

 残念ながら僕のアングルからは何も見えないが、暇なので彼らの会話を盗み聞きをしようかな。


「来週の花祭りの剣術大会に参加した人は全員賞品が貰えるって!」

「ふーん、全員貰える物なら大したもんじゃないだろ」

「ここに書いてあるはずだ、どれどれ…お!ガラスで作られた一輪の花だってさ!」

「ガラスの花〜?そんなの貰って何に使うんだ?貰うなら金が良かった…」

「これだからお前は〜。花祭りと言えば?」

「んだよ…フォレンス様?…剣術大会?……踊り?」

「そうだけど違うだろ!ほら、イェニ!」

「…お花を愛している人に渡して、共に花祭りに参加できたことを喜ぶ日…」

「それだ!!愛している人に花を渡すなら特別な花が良いだろ?そう思ってる人が多いからこそのガラスの花だ!ガラスで出来た花とか見たことないし、今年はこの賞品を目当てに剣術大会に参加する人が増えると思う!」

「ふーん、よくわかんね。ガラスの花貰って喜ぶ奴っているのかよ」

「…私だったら嬉しいよ…」

「あ?声が小せぇよ」


 モジモジと顔を赤らめる金髪の少女と彼女の声を聞こうとして顔を近づけている声変わり中の少年、そしてそんな2人をニヤニヤしながら眺めている金髪の少年。なんだかこれはこれで面白い青春の場面に出くわしてしまった気もするが、それよりも花祭りだ!!

 どんな祭りなのかはわからないが、剣術大会と踊り、花を好きな人に渡す伝統がある祭りみたいだ。しかも、今年の花祭りの剣術大会の参加者全員にガラスの花が配られるだと?!

 ガラス球であれほど感動していた僕にとっては大ニュースだ。是非とも一目だけでも良いのでその花を見てみたい。


「で、セオは大会に参加するのか?」

「ああ、ガラスの花はどうでも良いが、剣術大会に参加して優勝してやる」

「ほー、今からそんなに自信満々で良いのか?俺が参加したらお前は精々準優勝だぞ〜?」

「ふん、どの口が言ってやがる」

「イェニ、お前はどっちが勝つと思う?」


 2人の少年の賑やかな会話に釣られたのか、掲示板に近づこうとしている人がちらほらと増えてきた。この3人の青春劇をもう少し見ていたかったが、そろそろ撤退するべきだろう。僕は剣術大会には参加できないが、花祭りは見に行くつもりなのでそこでまたこの3人に会えるかもしれない。


 楽しみだな〜!とルンルンの気分で廃墟に帰って行った僕はその後行われていた重要な会話を聞き逃していたことを知るはずもなかった。


「…私は第1騎士団の人が優勝すると思う…」

「あ?第1騎士団?なんでその人達の名前が今出てくるんだ?」

「…ん〜?あ!ここに第1騎士団と第2騎士団から1名ずつ出場して特別試合をするって書いてある!!」

「は?!どういうことだ!第1騎士団がこの町の剣術大会に参加したことなんてないじゃないか!」

「俺もわかんないよ…でも、この『特別試合は剣術大会には影響しません』って…多分、単純に花祭りを盛り上げるために特別試合をするみたいだ」

「なんで今年の花祭りはこんなに力が入ってるんだ?なんか特別な年だったか?」

「ん〜、何も思い当たらないな…」

「…王子が2人居る…?」

「あー!言われてみればそれかもしれない!この町に王子が2人も揃って居ることなんて珍しいもんなー」

「なるほど…」

「まぁ、花祭りがいつも以上に豪華になるのは楽しみだな!」

「確かに…第1騎士団の剣術を間近で見る機会なんて無いし、楽しみだ」

「はぁー、お前の頭には剣術大会の事しかないのか?」

「いや…やっぱり何でもない」

「…へー、ふーん!花祭り楽しみだな、イェニ!」

「…うん…」




第1章15話を読んでいただき、ありがとうございます!

話とあまり関係ありませんが、私は借りぐらしの映画が結構好きです。昔映画館に見に行ったのが懐かしいです。因みに1番好きなジ○リ映画は王蟲のやつと狸がぽんぽこしてるやつです。


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