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ランニング65:機械知性達との接触

 彼らがどんな種族かは、オードリーを始めとしたエフェンデの皆さんや、ほぼ同類たるリロイ達から基本的な情報は教えてもらっていました。


 曰く、彼らの始祖は、太古のエフェンデがエフェンデの感覚からしても太古に属するウン億年単位前の大昔で、種族進化の一系統として、生身の体を捨てて、自身の人格を発達させつつあったAIと機械の体で統合する事で、機械知性体の先駆者になったそうです。

 その先駆者の人格というか魂が本当に引き継がれたのか、エフェンデ達にとって関心を寄せられる事の多い研究テーマの一つだそうですが、その先駆者以降、後に続いたエフェンデ達には存在そのものが喪われて、死亡扱いとされ、ほぼ禁断の技術になっていったそうです。(脳を機械の体や、新品のクローンボディなどに載せ替えるのはものすごく原始的な手法で、結局は最初の脳の限界時間が越えられないのですぐに廃れた技術だそうです)

 太古の頃の一時期には、エフェンデ達は死を乗り越える技術も実現していたそうなのですが、その技術も神の領分を侵害する物として、それらの研究成果や実現する為の機器やデータなど丸ごと神によって消されてしまったそうです。


 ちょいちょい最近耳にする事が増えてきた、生物としての枠組みを超える、半神という存在も、そんな太古のロストテクノロジーが絡んだ産物だそうですが、どうしたものでしょうかね。肉体は失ってるけど、物理世界への干渉はほぼ好きな様に出来てしまうみたいなので、ぼくのスキルの大半でも今回の様な対処が限界に近いかもですし。


 さて、彼ら機械知性達に、ぼく達の住む星ホピアの座標を伝えなかったのは、その方が良いだろうとエフェンデ達が意見を揃え、リロイも反対しなかったからです。リロイ曰く、機械知性達は、とてもお節介好きで、世話を焼く事が大好きなのに、彼らの創造主たるエフェンデ達をほぼ全員喪い、途方に暮れつつその所在を探し続けているからだそうです。それにあの大陸の文明技術レベルとの乖離具合からして、今後千年以上は余裕でかかりそうですからね。宇宙に自力で出れる様になるまででも。

 それでも不可解な点があったので質問しておきました。


「あれ? でも、だとしたら、機械知性達は、非人類系種族との対立なんて絶対止めようとしたんじゃないの?」

「彼らは、彼らの種族全体の命運を賭けてまで止めようとしましたが、対決は不可避の段階にまで進んでしまっていましたから、当時のエフェンデの指導者が彼らに不関与と中立を貫く様説得し、そのお陰で彼らは大崩壊の影響を最小限で済ませました。

 その後の最初の避難先星系オレアノフでは、機械知性の関与は最低限にまで神によって制御されました。避難させられた者達は、その将来を自らの手で選び、築き上げていかなければならないと。その結果が再度の崩壊と避難に終わった事はカケルももう知ってる通りです。

 だからこそ、最終避難先の星系は隠されました。機械知性体だけが対象では無かった様ですが、創造神による隠蔽と保護ですからね。その意思を託されたあなたが移民船団の封印を解くまでは、ちょっかいを出してきてる半神にも気付かれていなかったでしょう。そして機械知性体達に、こちらの居住星系の座標を伝えたのも間違い無くその半神です。

 機械知性体達も無力ではありませんが、半神に対しては私達以上に分が悪い相手です。私達は彼らを庇い続けるには非力過ぎますし、彼らと接触するのは、子供達がある程度育ってきてからの方がこちらには都合が良いでしょう」


 とまあ、オードリーのそんな意見がぼくや他のお嫁さん達にも受け入れられて、彼らの派遣艦隊の進路と探索範囲には中継ポッドを配置せず、サーチスキルだけでその位置とかを把握し続けてました。彼らの移動速度は、一日に約2400光年、一年におよそ87万6千光年を進むので、1000万光年を11年と4ヶ月かけて踏破する計算になります。先遣艦隊はその長程の半分程を、その後に続いていた本隊は四割程を終えていましたが、今回の宇宙蜂との遭遇で数ヶ月の遅れは出ると見られてました。


 先遣艦隊か、彼らの旗艦だけでも、いったんぼくらの星まで招く事も出来なくは無かったけれどそれは見送る事を決めてましたし、彼らがこちらに艦隊を派遣しようとしたきっかけを作ったのはぼくなので、挨拶と事情説明くらいは済ませておく事にしました。


 襲われたのは本隊の方ですが、その情報が先遣艦隊の方に伝わるのはそれなりに時間がかかるそうなので、情報伝達の二度手間を防ぎ、本隊の方に面通しする時に仲介してもらう為に、先遣艦隊の方に先に接触。ちょうどワープの合間の通常航行中だったので、その速度から適切に思える正面方向の位置へと転移ワープ

 先遣艦隊に向けて、挨拶代わりのメッセージを発信してしばらく待つと、彼らの百隻ほどの艦隊は速度を緩めて、こちらへと近づいてきました。

 今回の折衝役メッセンジャーとしては、エフェンデの誰かではなく、リロイに担当してもらいました。


「こちら、カケル大王の御座船ジスールを制御している機械知性体、通称リロイ。君達の社会で言えば特級個体に該当する。カケル大王や私が今回君達に接触した目的や背景などについては、機械知性語で記載した圧縮情報を君達のオープン回線宛に送信済みだ。質問はその情報を閲覧してからにしてくれ」


 リロイ曰く、どうせ移民船団が編成される経緯や最終避難先で起きた出来事までなんかを丸ごと説明しないと彼らは納得しないので、人間なら早口でも数日かけて説明しないと聞き終えられない内容でも、彼ら機械知性ならものの数分程度で経緯程度なら把握出来るだろうとの事でした。

 移民船団が元の避難先星系オレアノフを発ってから、今日機械知性の捜索船団本隊が襲われる今日までの数千年に起きた出来事をおよそ10分ほどで把握したらしく、先方の代表者から返答がありました。(実際には、5分程で資料に目を通し終わり、リロイとの間で機械知性語での質疑応答があったそうですが、ぼくとかが介在するだけ時間がかかるので事前の認識合わせは最高速度で終えてくれた様でした。ちなみに、リロイが送った資料データは、元の世界基準で言うと、数ペタバイトくらいの容量の情報量はあったそうです。圧縮した状態で)


 こちらのモニターに、あちらの艦長らしき人型機械の姿が映り、返礼から挨拶が始まりました。


「こちら、機械知性体連盟の宗主国イギライダの統合個体より、人類系知性体種族捜索先遣艦隊を指揮官を任命された特級個体、通称メル・クレールです。我らの捜索艦隊本隊の危機を救って下さった事、その後こうして我らにコンタクトを取って下さった事に重ねて感謝申し上げる」

「人類系種族最後の避難地となった星、テ・ラピア・ホピアで、星龍チェレア・ワックがその礎となった新大陸にて幾つかの国を束ねた連合王国の大王のカケルと言います。五年ほど前にメッセージボックスをそちらのオネアネフ監視艦艇の前に置いて来たのはぼくなので、今回のご迷惑をかける遠因を作ってしまった事をお詫びします」

「いえ、とんでもない。そちらのリロイ殿やエフェンデの皆様ならご存じの通り、我々は人類系種族と共に在る為に作られた種族でもあります。その存在意義が失われ迷走しかけていた私達に導きの光をもたらしてくれたあなたには感謝しかありません。そちらの星系の座標を伝えられなかった理由も、ホピアに住まう人々の文明基準を大幅に乱さない為となれば致し方無かったでしょう。

 我々にその座標を伝えてきた者が、今回の宇宙蜂との遭遇を仕組んだのではないかという見解には賛同します。徹底的な破滅をもたらす事を望んでいるならそうも出来た筈がそうしていない。つまり目的は隠されているか、刹那的な余興をも兼ねているのか、そのどちらかか両方かも知れません」

「そうですね。半神なんてこちらか手出ししにくい相手みたいですから、とりあえず向こうが手出ししてこない内は放っておきましょう。今は、宇宙蜂の大群との遭遇で被害を受けてしまったそちらの本隊に状況を伝えるのが先でしょう。

 それから先ほどの事情で、まだこちらはあなた方との接触を公に受け入れるにはまだ数百年以上の単位で早過ぎるので、今回送られてきた艦隊が自力で辿り着かれた際にはぼくやぼくの家族や身内と呼べる臣下達で歓迎させて頂きますが、おそらくそこがしばらくの限界になります。およそ5年後であればぼくの子供達もある程度は成長しているでしょうから、その時を楽しみにしています」

「了解しました。本隊としての判断は、そちらを率いている特級個体の判断が優先されますが、先程の危機を救って頂いた事もあり、強く反対されることは無いと思います」


 そんなやり取りを済ませた頃には、裏でリロイが並行して折衝して、本隊に連れて行き、また連れ戻すのは先遣艦隊の旗艦だけという事になり、船体の予備部品などの補給物資の一部も積み込むのをしばし待ってから、こちらの艦隊にメル・クレールさんの搭乗している旗艦も引き連れて、捜索艦隊の本隊の近くへとワープしました。


 本隊の指揮官のサン・トーカさんという特級個体へはメル・クレールさんが繋いでくれて、さっきリロイが用意してくれたデータに、メルさんが補足を加えてくれた情報が効いたのか、前置き的なやり取りの大半は省略出来ました。機械知性すごいね!

 とはいえ、彼らは彼らで、とある銀河の一角を占有するくらいの勢力は保持しているらしいのだけど、そんな存在がいても、大崩壊は防げなかったとか、色々と厳しいものを感じたりもしました。


 機械知性体にとって、機体性能がその思考速度や展開範囲・同時処理可能なタスクスレッド数などの動作性能に直結する事もあって、社会階層の上位に位置する個体ほどリソースが割かれていて、その分任される役割も重大なものになっていくそうです。

 リロイの本体というかメインコンピュータとも言える装置は、あの大島の中央管制塔の方などに分散しているので、見かけ上のボディーはスッキリスマートな感じで済んでますが、機械知性体の特級個体も艦の方に分散させているのでしょうけど、メル・クレールさんがリロイの外装にいろいろ付け足して処理速度その他性能アップを図ってゴテゴテしてる印象なのと比べると、サン・トーカさんの方は最新世代機体という事もあってか、外見はリロイ並みかそれ以上にスッキリしているけど、その頭上には天使の輪めいた、数珠っぽい珠が十個くらい光の輪を通じてクルクルと回っていて、その珠一つでリロイのボディの頭部くらいの思考処理能力がありそうだとリロイは後で教えてくれました。


「ホピア連合王国大王、カケル・ダイチ殿にはこの上無い感謝を申し上げる。我々の危機を救って下さったばかりか、我々の先遣艦隊にも接触し、その補給物資まで運んで下さった。これからどの様な試練が待ち受けているか分からない中、この援助は非常に有難い。重ねてお礼を」

「いえ。メル・クレールさんにも伝えた通りですが、ぼくがオネアネフ星系に置いてきたメッセージボックスがあなた方の対応を混乱させてもしまう遠因を作ってしまいましたし、どの様な厄介事が今回の衝突を引き起こした存在によってもたらされるかも分かりませんから」

「半神ですか。大崩壊に関与した様なのは、創造神によって悉く滅ぼされ存在を消されたというのが我々の統合個体に神から直接伝えられておりましたから、その処罰をうまくすり抜けた者なのでしょう。我々の次元にも関与可能な高位存在への抵抗は非常に困難ではあるものの、手段が皆無という訳もありません」

「ちなみにですが、どんな抵抗手段があるのですか?それはこの艦隊に装備されてたりしますか?」

「具体的な方法や手段について私には開示されていない情報であり、この艦隊には装備されてはいませんが、統合個体より存在すると記録されています。今回の捜索に伴い十万を超える事態のシミュレーションも行われましたが、半神との遭遇はその中には含まれておらず、その事について統合個体も特級個体の間でも問題にされていなかったという事は、つまりそれだけ無視し得る低確率の事象が発生したという事なのでしょう」


 えーと?

 つまりこれは、彼らの主星系まで行って、統合個体さんに会って来ないといけない流れになってるのかな?

 リロイがさっきメル・クレールさんと交わした情報によれば、機械知性達の超高速通信手段でも、艦隊の移動速度の数倍が限界らしい(というか高速艇で物理的に情報運ぶのが一番早いらしいです)ので、行程の半分近くを五年ほどかけて進んできてその数倍なら、今ここで起きた情報が伝わるまでに一年以上はかかる様です。

 機械知性体達に情報伝達をお任せしてたら、何の妨害が入らなかったとしても、五年から十年かかるリスクを見逃せるかどうか、ですか。選択肢があるようで無いっぽいですね。


「ちょっとこれからの動きを身内で相談させて下さい。しばらくお待たせしてしまうかも知れませんが」

「問題ありません。既にあなたの援助で贖われた時間的・物理的支援は膨大になっていますから」


 サン・トーカさんの謝辞?は曖昧な笑顔で受け流してから、御座船ジラートに設置してあるゲートを通じて、大島に詰めてるお嫁さんや子供や家臣の所へと戻りました。まあ超チート技ですよねこれ。

 お嫁さんや子供達と軽いハグを交わして状況を説明。オードリーやリロイ、随行して戻ってきてるレムドフさん他研究所の皆さんも交えた話し合いはそれなりに時間がかかりましたが、要約するとこんな感じです。


「防衛手段があるというなら、十年以上を無駄に待つのは無いわね」

「それが半神にどれだけ効果のある手段なのかは分かりませんが、知ったり持っておけるというのは一つの安心材料にはなるでしょう」

「こちらで研究してある程度の改良も施せるかも知れませんし」

「んー、じゃあやっぱり、こっちから訪問しちゃった方が早そうだね。メル・クレールさんとサン・トーカさんからの資料なり連絡船なりを同行していけば説明の手間もだいぶ省けそうだし。だけど彼らの本星との間のゲート設置は見送る方向で。派遣艦隊の皆さんが可哀想だしね」


 そんな具合に意見をまとめ、研究所のシャプリラさんが半神を研究テーマに選んでいた事もあるそうで、ロンド夫妻の旦那さんのナージさんが機械知性体の統合個体と知己の関係との事でやはり同行する事に。

 ジスールに設置したゲート経由で捜索艦隊へと戻り、身内で話し合った結果を伝えると、彼らはこちらの結論がそうなった時の為に資料と連絡船と副官の一人を証人として付ける準備を終えてくれてました。機械知性体マジ有能!

 こちらが彼らの本星と接触した結果がどうなったのかも、今回随行した副官さん達をここに連れ戻す事になったので、メル・クレールさんとその旗艦を先遣艦隊の方に戻すのは後回しに。ぼくはぼくで、彼らにお守りとして、超小型のクリスタル・ゴーレムを渡しておきました。このお守りを通じて通信とかは出来ないけど、何か異変があればそのゴーレムを通じて即座にぼくに伝わると言うと、またかなり感謝されてしまいました。

 このお守りにはリーディアやガラーシャさんとかがかけられるだけの永続バフとかをかけてくれてましたが、半神相手にどれだけ効果があるかは不明です。


 メル・クレールさんとサン・カトーさんにひとまずの別れを告げたら、教えてもらった彼らの本星間近の座標へと移動したのでした。


これでまたストックがほぼゼロに。。

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