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ランニング64:宇宙蜂種族との邂逅

あけましておめでとうございます。

今年もお付き合い頂けると嬉しいです。

 宇宙蜂種族が入殖し始めた星は、ぼく達の住んでる星ホピアとは、同じ銀河のほぼ反対側にありました。記号だと覚えにくいので、便宜上、彼らが住み始めた星をグジェと名付ける事にしました。今すぐ彼らを殲滅するつもりもとりあえずは無いので。


 こちらの陣容ですが、レムドフさんとタラスさんが乗った先遣艇、御座船でもあるジスール、天空騎士団旗艦アハパラージャの三隻を中心に、数も大事という事だったので、リロイが同行してきて、シールド艦六隻で艦隊の前後左右上下を囲み、その中に無人戦闘機母艦を二隻。それぞれ500機の無人戦闘機を搭載してますが、戦力的には賑やかし程度でしかないそうで、特機装兵(ザークト)の方が戦闘能力は高いそうです。

 宇宙蜂の社会構造としては、働き蜂兼下っ端としての兵卒級、その統率役の士官級、士官達を統率して前線を指揮したり女王を護る将軍級、それから女王がいて、一万匹ほどの群れなら、兵卒百匹の群れが百個、それぞれを士官級が率いて、士官級を十から数十程度将軍級が率いるので、将軍級は最低2から10程度と推測されるそうです。

 個体の大きさとしては、兵卒が最低5−10メートル、士官級が25−50メートル、将軍級が100メートル前後で、兵卒や士官も近接攻撃タイプや遠距離攻撃タイプなど幾つかの種別に分かれているものの、概ね大きい方が強くまた賢いとの事。


 という訳で、彼らの星の隣の星系まで一旦ワープしてから、罠の有無などをサーチ。とりあえずのヒットは無かったので、彼らの群れの内容をサーチしていきました。


「女王1、将軍3、士官97、兵卒9831。ほぼ10000だね。兵卒の半分以上は惑星表面を探索中でばらけてる。将軍は、女王側に1、探索指揮に1、惑星上空の大気圏外に兵卒の半分近くを展開してるのが1。という事で、接触する相手が決まったので、よろしくお願いしますね、レムドフさん」

「任せてくれたまえ」


 モニターに映されてるレムドフさんの姿は、兵卒級でも士官級でもなく、将軍級との間のレア個体、指揮官級という物に変わってました。全長75メートルほどの小型宇宙艇という感じで、遠短どちらでも戦えそうな武装、縦横無尽に高機動力を発揮しそうな羽が十枚ほど付いてました。(ちなみに、宇宙蜂に羽が付いてたとして、どうやって宇宙空間で推進力を得ているかについては、宇宙に普遍的に存在しているエネルギーを吸入し放出することで得ているそうです。それは元の世界ではダークマターとか呼ばれていた何かに近いそうですが、詳しい話は長くなるのでまた今度です)


 彼らの星グジェ周辺に展開した隠蔽状態の監視衛星からの情報や、サーチスキルで危険の有無を再確認してから、グジェの外にいる将軍級からおよそ50万キロの位置へとショートワープ。兵卒ならともかく、将軍級ならこれくらいの距離の感知能力を持つそうなので、いきなり団体さんで目の前に転移するのではなく、ドアをノックみたいな感じでレムドフさんから挨拶してもらいました。


 やあ!こんにちは、初めまして!ご機嫌いかがですか?みたいな挨拶だと想像しますが詳細は不明です。地球人の間でも挨拶の仕方なんて千差万別だったし。ああでも、研究者のフィリオさんが言うには、入殖開始直後の宇宙蜂は基本的に一番ピリピリしてる時期だそうです。女王蜂からすれば、ハネムーン開始直後に望まぬ訪問者が来たら怒るだろう?という譬え話はわかりやすかったですが、こちらとしてはちょっとそのハネムーン待ってもらえませんか?になるかも知れないので、仕方ありませんね。


 5分から10分ほど待っていると、タラスさんから通信が入りました。


「レムドフから伝言。平和裡な接触に成功。あちらとしても混乱してるみたいで、何でも良いから役に立ちそうな情報を欲しがってるみたい。向こうを刺激しないくらいの速度で近付いて欲しいって」

「それって、近場にいきなりワープするなってことですよね。一時間くらい掛ければ大丈夫です?」

「たぶんそれで大丈夫だって」


 という訳で、指定されたくらいの速度で、茶色と緑がまだらに地表に存在する星の上空へ近付いて行くと、こちらを出迎えるように五千匹以上の宇宙蜂が展開していました。その中心にいるのが、全長100メートルほどもある将軍級の宇宙蜂で、彼?の背後にいる兵卒と士官級は百匹ずつの小集団が四十個ほど微妙に位置を入れ替えながら統率された動きを見せているのに対して、残り千匹ほどはほとんど動かずに将軍級の側背を固めていました。


「近接戦闘型が動き回っていて、中長距離攻撃型が動かずにいる。彼らの群れとしての警戒行動だ」


 とフィリオさんが教えてくれました。

 こちらも無人戦闘機を展開した方が良いのかレムドフさんを交えて相談して、母艦からは出すがその周囲にて待機させる事になり、千機が発艦した時は宇宙蜂の群れが騒がしくなりましたが、攻撃してくる様子が無い事で動きはまた落ち着きました。


 宇宙では至近とも言える百キロほどを空けて一旦停止すると、あちらの将軍級と少数の供回りだけが進み出てきたので、レムドフさん達の先遣艦だけが前進。モニター越しに見ると、フォルムのイメージ的にはスズメバチなんだけど、生物というよりは生体兵器という印象を受けました。何せ、大きさ百メートルほどもありますし、武装に見える物もあちこちに付いてました。

 変態してるレムドフさんとは、触覚みたいな器官を通じてもコミュニケーションを取ったようで、こちらが今回訪れた目的と、知っている情報などを伝えたところ、彼らの女王も呼んでもらえる事になりました。

 で、30分も待たずに彼らの女王とされる個体、全長およそ200メートルほどもあって、見た目は蜂とは?て感じでした。特別に大きな羽根ぽい器官が四枚付いてて、その機能で群れごと遠距離ワープを可能にするそうです。他にも将軍級よりも大きな羽がいくつもついてたのですが、胸部の先の腹部に当たる部分は産卵期には数倍の大きさに膨れ上がるそうなので、やはり急いでやってきて正解だった様です。

 女王が群れの残り半分を連れてやってきたので、こちらも御座船ジラートと旗艦を供にして両陣営の中間位置に進めると、女王が将軍級と士官級の一部だけを連れて前に出てきたので、こちらもシャーガさんと各色部隊の隊長達だけを連れて接近していきました。


 両者が邂逅したのは、レムドフさんと最初に接触した将軍蜂の居る場所だったのですが、何故か、女王蜂の視線というか関心がレムドフさんに釘付けになってる様に見受けられました。何このイケメン!?、欲しいっ!、みたいな?


 実際、そんな感じのスカウト?があったらしいですが、レムドフさんは変態してるだけで、その種族としては生殖不可能と伝える事で諦めてもらったとタラスさんから報告があり、確かにその途中でレムドフさんが幾つもの別種族の姿に変えてました。

 そんなアクシデント?があり、仕切り直して紹介されましたが、いや全長200メートルって、頭部だけで40メートル、お口は10メートルはあり、鋭い牙みたいのも5メートル以上はあって、宇宙船とかでもバリバリ食べていけそうな迫力がありました。


「初めまして、こんにちは。10万光年ほど先にある星で、人間達の王をやっているカケルと言います」


 レムドフさんから通訳されたらしく、向こうも羽を震わせたり牙をカチカチ鳴らしたりしながら、挨拶を返してくれました。

 タラスさん経由で伝えられた内容はこんな感じです。


「良く来てくれた、カケルよ。私は、あなた達風に名乗るのであればウォーラ。親元を離れ、新米女王として旅立ったばかりだったが、偉大なるお母様、女皇イディゥオールの長征に随行して道中のどこかで指示された星系で営巣する筈が、突然、見たことも無い星の上空へと飛ばされてしまっていた。

 お母様達にも連絡が取れず、どこの天体も見た事が無いので、この星系に天敵がいない事は確認出来たから、とりあえずこの星に営巣して群れの規模を大きくしようとしていた。そちらもまだ天体に出て間も無いのであれば、この銀河を折半する形で共存は可能では無いだろうか?」


 なるほど。このウォーラさん達は自ら望んでここに来た訳じゃないのは判りましたが、それ以外にも気掛かりなところがありました。もっと大規模な群れの一部だけがここに飛ばされてきたというなら、群れの残り、それも女皇というのが完全な上位存在なら、群れの規模も内容ももっと充実してるでしょう。


「レムドフさん、そのお母様とは、どれくらい離れていて連絡がつくものなのか、聞いてみてもらえますか?」


 そのやり取りが済むまでの間に、ぼくはサーチスキルを使用。サーチ結果の位置や方位をオードリーに伝えて、どの辺なのか、どうしてそこが転移先として選ばれたのかの追加情報も聞き取ってました。いやほんと、性悪ですね。騒動を巻き起こして楽しんでる奴がいるのは間違い無さそうです。


「ウォーラで千光年、その母親で一万光年くらいが交信限度、その十倍が互いを感知出来る限度だそうだ」

「なるほど。その限界の外側を狙われたみたいですね。ウォーラさんには、この星で営巣を続けたいか、それともお母さんの元に戻りたいか聞いておいて下さい。ぼくはちょっと急ぎで遠出してこないといけないかも知れないので」


 ウォーラさんのお母さんの群れが飛ばされたのは、ぼくがメッセージ装置を置いてきた、最初の避難先となった星系オネアネフとぼくらが居住している最終避難先の星ホピアを結ぶ直線上のほぼ中間地点でした。姿を隠してなかった艦艇がどの勢力に属すどんな役割の物だったのか、タイムスリープから覚めたナージさんとウリエラさん達は良く知っていました。それが機械知性体(メカニア)達の外交典礼艦である事も、彼らがメッセージを受けた後にどのような行動に出るのかという予測も。

 彼ら機械知性体達の保持している技術レベルから、彼らがぼくらの星ホピアへ交流の為の艦隊を派遣していたとして、時間経過と予想航路図から、リロイとオードリーによる試算も、ぼくのサーチスキルの検索結果からも、何が起きているのかは明白でした。


 ぼくは手短にレムドフさんとタラスさんに状況を伝えると、ウォーラさんのお母さんの所在地へとワープ。全長が1キロほどにもなろうかというその威容に驚きつつ、彼女達の出発地点をサーチスキルで割り出・・・しましたが、そこに戻したとしてもまた悪さしてる奴に同じことをされるかも知れないので、悪さをされない地点をサーチで探したら、そこへとイディゥオールさんを転移。星龍さんに説得を頼んだら、瞬足と連続ワープの組み合わせで、イディゥオールさんの群れの個体を全てその出発地点へと戻しましたが、流石に十万匹の群れを運ぶのはくたびれました。

 イディゥオールさんの群れの中で二番目に大きな個体、大将軍級とやらの呼称がついてそうな個体だけ、ウォーラさんとレムドフさんの元に転移して、情報共有をお願いしました。

 十万匹の移動には流石に手間取り、瞬足と連続ワープの大半の限度時間を使い果たしましたが、生き残っていた機械知性の艦艇にも必要と思われる情報は連携しておきました。幸い、機械知性体達からの反撃は最低限に留めていたので、女王や大将軍級がいきなり不在になっても、死に物狂いで逆襲を試みる事は無かった様です。


 サブスキルの再使用条件を満たす為に、レムドフさん達の所に最後走って戻るまでの間が一番危険でもあったのですが、今回は何も仕掛けられませんでした。こちらも何かあった時の為の備えはしておいたものの、保険は使わずに次回持ち越しになったみたいです。見え見えの釣り針にはかからなかった感じですかね。


 レムドフさんの所に戻ると、イディゥオールさんまで揃ってました。このクラスになると十万光年程度のワープも可能みたいですが、何となく恨みがましい視線を感じたので、星龍さんとのお話し合いは途中で切り上げて逃げて・・、いえ娘さんが心配で飛んできたのでしょうきっと。だからそんなに牙をガチガチさせないで下さい。御座船ジラートでもぺろりと食べちゃいそうなお口は怖いです。


 そこからまたレムドフさん達に間に入ってもらってコミュニケーションしたのですが、女皇クラスになると年季が違うせいか、一部は直接言語的なやり取りまで可能でした。


「ウォーラ達への説明感謝する。ウォーラ達の存在がいきなり消失して混乱しているところに、全くの別天体へと群れ全体が飛ばされた。私でも到底不可能な距離をだ。そこで遭遇した機械知性体達とは衝突してしまったが全滅はさせていない」

「そうですね。一部の武装と移動手段を壊される程度で済ませてくれてありがとうございます。それで、あなた達を転移させた相手に心当たりはありますか?」

「直接的には無いが、我々をまとめて数十億光年彼方まで一度に飛ばせてしまえる存在など限られている。そんな悪戯を唯一神ならしないだろうが、半神であるなら、あるいは」

「半神ですか。ぼくの周囲にいるエフェンデの皆さんもその可能性が高いと言ってました」

「半神に遭遇するなど、望ましい星系に向けて跳躍(ワープ)したと思ったら天体事故に見舞われるよりもずっと低い確率しか無い筈が、一度目を付けられたら逃れようが無いのが厄介だ」

「同感しかありません」

「不幸中の幸いは、自力では辿り着けなかったろう新たな天体に群れを分ける事が出来た事くらいか。ウォーラ、このカケルとその群れとは共存する様に」

「はい、お母様。お母様やその群れを無傷で方々に散らしたり戻したり出来る方と敵対しようとは思いません」

「それではその様に。カケルよ、そろそろ群れが心配なので戻してもらえるか?」

「承知しました」


 それから母娘の触覚でのやり取り、ウォーラさんで二十メートル級、イディゥオールさんので百メートル程の大きさというか長さなんですが、将軍級と大将軍級との間でも触覚のやり取り、おそらくはお達者でとかお小言の類かもですが、接触通信なので触れ合ってる当事者以外には分かりません。送別対象がそれぞれの触れ合いを終えてこちらに向き直ったので、それぞれの体に触れながら、先に女皇の群れを戻した辺りへ送り届け、最後に手を振って戻ってきました。


 うん、でも、これでお仕舞いじゃ無いのがちょっと辛いです。

 レムドフさんを通じて、ウォーラさんの群れとの共存については後日また詳細を詰める事にして、こちらはイディゥオールさんの群れに噛み噛みされて半壊してしまった機械知性の艦隊の救助に向かわなくてはいけません。ウォーラさんが娘としてお詫びをと言ってくれましたが、お気持ちだけ頂いて代理でお伝えしておきますと返事して受け入れてもらいました。先ほどの様な緊急事態でも無い限り、女王蜂単体をワープさせる訳にもいかず、そうすると群れの一部を引き連れて行くのですから、不幸な衝突がまた起きかねませんしね。


 という訳で、惑星表面へ営巣に戻るウォーラさん達を見送ったら、ぼくは艦隊を連れて、機械知性(メカニア)さん達の艦隊、襲われたのは本隊の方だったのですが、先行してる小艦隊の方に先に接触する事にして、そちらへと向かったのでした。



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