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ランニング60:反省と展望

ストックが切れた後は、書けたら更新という感じになると思います。。

 叱られてしまいました。


 興味関心があると、アザーディアさん経由で閨に入ってもらったイギーラには大切な事を教えてもらいました。あのままだったらどこかでぼくかお嫁さんの誰かは壊れてしまっていたかも知れません。

 調子に乗っていたと言えばそれまでかも知れませんが、ブレーキをかけてもらえました。彼女が呼んでくれた元教師役という元超高級娼婦にして大手高級娼館の主人というサヴェージさんにはお説教してもらいました。考えてみると、かなりやらかしてきた自分をきちんと叱ってくれたのは、このお婆さんが初めてでした。

 巻き添えを喰らってしまった家臣のみんなにはごめんなさいなんだけど、この反省は将来に活かす事で謝罪に代えさせて頂きます、ハイ。


 実践教師役として同行していた超売れっ子娼婦の三人とのバトル?も熱かったです。特に、ちょっとポーラに印象が似た子が一番すごかったし、彼女からも、全力は普段使っちゃダメと怒られちゃいました。事が済んだ後は、お嫁さんのみんなに彼女が囲まれて質問攻めにされたり、ぼくはなぜかサヴェージさんに謝られたりもしました。


 特別授業の出張の後、首都の大島にサヴェージさんの支店開設を打診されて、家臣のみんなに協議してもらってます。そこにだけ許可を与えると、方々にいろいろ歪みが生じるとかなんとか。その結果がどうなろうと、サヴェージさんのお店の人とか知り合いの人とかで、性病とかに罹って苦しんでる人がいたら無料で治療するし、何なら定期検診のサーヴィスはお礼として申し出ておきました。売れっ子三人にもお礼のお礼としてまた今度たっぷりとサービスしてもらう約束になりましたが、まあ、お嫁さん達も同性同士でないと相談しにくい事もあるだろうし、そちらのケア込みでお願いする事になったり。


 首都の大島、シャトーラ・トル・アマニという名前は長過ぎて、アマニとか大島と呼ぶのが定着してしまってますが、定住人口を制限してる割には、だんだんと増えてきて小さめな街くらいにはなってきました。ピージャの輿入れの頃くらいまでで一千人、ポーラとリーディアの出産の頃で二千人、イドルがお嫁さんに来た頃には三千人と、それぞれの慶事をきっかけに徐々に制限を緩めるというか、人口を増やしていきました。

 移住希望者は数万の単位でリスト化されて順番待ちの状態で、地上のどこかの領地で領民として暮らしてもらい、問題無いようなら二次選考に進めるような仕組みにしてました。大島への定住を特に望んでない人達には、元呪いのダンジョンがあった辺りへの入植を進めてもらってます。そこで畑を拵えて作物を育てて生活していけるか、徐々に試していってもらってます。

 こっちは数万人単位の人が数百人ずつに分散配置されて生活し始めていました。もう幾つか季節も巡って、初めての収穫を得られたところもありましたし、現地で生まれた子供がだんだんと増えていったりしてます。

 ぼくは、大王としてのお仕事はほぼ午前中だけにしてもらって、午後はレベル上げの為に方々を、お嫁さんの誰か一人か二人と一緒に、走ってというか散歩して、そういった村々でも顔見知りが増えていきました。


 そうして少しずつでもレベルを上げていき、レベル600で「察知」というサブスキルを、レベル700で「完全耐性」を与えられました。察知は、ポーラとの間の子供のノゾムに付与したものでもあります。


察知:自分や指定した対象を害し得る攻撃や存在などを、回避可能な段階で察知する。

   距離に限界は無い。


 察知は、サーチに似ているものの、普段パッシブでもずっと起動してるのが最大の違いですね。気が付いたらやられてたという意識外からの奇襲をおそらく完全に防いでくれる筈です。


完全耐性:どんな環境でも適応し生存可能になる。

     当人だけでなく、直接間接に接している他の対象にも同じ効果を及ぼせる。


 うーん、これ、どう考えてもセットですよね?

 リロイやオードリーとも相談しつつ、やはり試運転はしておいた方が良いだろうという事で、一応、大島に備え付けの宇宙服を着込み、軍団長シャーガ以下天空騎士団の特別装備の慣らしも兼ねて、二つのお月様に訪問する事にしました。

 ぼくやお嫁さんや子供達を脅かし得る脅威は、この星のどこかからではなく、宇宙の彼方からやってくる事はほぼ確定していたので。

 あ、もちろん、星龍さんにも星の外に船とか装備を持ち出す件については申告しておきました。宇宙の彼方からやってくるだろう脅威については、いつか来るべきものが来たかという感じで、迎撃に関しては基本的にぼくらに全部任せると言われました。


 天空騎士団の旗艦船アハパラージャは、メタリック・ブラックな船体に銀のラインが入ってる、雨粒を細長く伸ばした様な流水形の宇宙船で、全長約500m、全幅約300m。宙空を高速移動可能な特別機装ザークトを約100機収容可能な母船でもありました。特別機装は、いわゆる人が乗り込んで動かせるタイプのロボットって感じです。全高は約6mと小さめですが、状況に応じていろんな外部兵装を付け替える事が出来ます。ワクテカしかありませんが、ぼくの場合は多分生身で動き回った方が速いし強いのが困りものでした。


 超高空での演習は、大陸外で行ってきましたが、宇宙での初演習という事でシャーガさん以下、新たに騎士団の一員となった皆さんも気合いが入りまくりでした。リロイがコントロールするシミュレーターでは、かつて人類系種族と敵対していた非人類系種族やその兵装との演習も繰り返してきました。


 とはいえ、今回はぼくの慣らし運転が主目的で、彼らも初の宇宙滞在に慣れてもらう事が主目的でしたので、出発前の訓示(スピーチ)では、参加するみんなにリラックスしてもらえるような内容にしておきました。シャーガさんの号令でまたピリッと引き締まりましたが、そういった塩梅はぼくよりも熟知してるでしょうし、お任せです。


 出発時には、上空に浮かぶ緑のお月様を見上げながら、サブスキルのラッシュを起動しました。レベル300の時に得たものですが、その性能から普段使いするには少々難ありでした。


ラッシュ:レベル数の3乗で移動可能。

     一度に一分まで利用可能。最大でレベルと同じ分数まで。

     レベル300なら、300x300x300=時速2700万km、秒速7500km。

     レベル500なら、500x500x500=時速1億2500万km、秒速3万4722km。

     レベル1000なら、1000x1000x1000=時速10億km。秒速約27万7千km。

     一時間停止していると一分(60秒)分回復。

     レベルアップか死亡かチェックポイント通過で利用限度にリセット。


 超加速の上位版ですね。ただ、星の上空を走るには超加速で十分です。ラッシュは明らかにもう、何光年か先にでも行かせる気しか無いですよねこれ。


 今回の宇宙行きを決意したのもレベルがキリの良い750に達した事もあったのですが、750だと、750x750x750=421,875,000、時速4億2100万km。妙速117,187,500m=約11万7千km。

 つまり、約50万km近くの彼方だったお月様の上空まで、宇宙船を片手に引いた状態でも、およそ五秒未満で到着しました。我ながら、とんでもないですね。

 到着したら、リロイの分体の機体に旗艦や乗員の状態から確認してもらいました。それらのチェックが問題無く済んだようで、まずシャーガさん達指揮官の七色の機体が発艦してきて、彼らが問題無く稼働できる事が確認されたら、各色の機体が十機くらいずつ発艦してきて、色ごとの部隊に整列したり編隊を組んだりしながら訓練を開始しました。


「大丈夫そうかな?」

「はい、問題無さそうです。この後は副隊長以下で、全体と各部隊ごとの訓練を実施予定です」

「シャーガさんもそこに混じってなくていいの?」

「普段は看過せざるを得ませんでしたが、こういう機会にこそ、同伴した随行護衛を訓練させて下さい。これは宰相候補や奥方の皆様達からの強い要望でもあるのですから」

「うん、分かってるよ。じゃあ、側に来て」


 シャーガの金色の機体、長距離移動用の外部兵装に換装され、最大速度と巡行距離に特化した機体が側に来たら、ぼくはちょっとだけ覚悟を決めて、宇宙服のヘルメットを外してみました。


「問題無さそうだね」

「だとしても、普段は装着したままでお願いします」

「了解」


 ぼくはまたヘルメットを装着し直すと、シャーガさんの機体に手を触れながら月の表面を移動し始めました。月の円周は約1万2千キロくらいと計算されてたので、超加速だと、750x750x7=3,937,500km/h。秒速だとおよそ1100キロくらい。感覚が麻痺してきますが、今更ですね。レベル750だと75秒まで使えますが、12秒かからずに一周出来てしまう計算になります。

 とりあえず最初の一周は超加速を交えてサクッと済ませて、シャーガさんの機体に問題が出ない事を確認したら、彼の機体の最高速度に付き合って、お月様の表面をじっくりと調査しました。月表面とか内部で資源採掘出来るのなら、いろんな問題の助けになりそうでしたし。とはいえ、まだ星の表面や内部にそれなりの資源は残ってたのですが、文明が栄えた頃にかなり採掘・採取されてもいたので、そちらはなるべく手付かずのまま置いておくつもりでした。


 宇宙移民船団の護衛艦の標準兵装の一つであった特別機装は、素の状態でも、大気圏内の速度的に言えば、マッハ20くらい、時速約24500km換算の推進力で最低十日は航行可能です。だから、何のスキルも使ってない状態なら、特別機装の方が速いのですが、ラッシュはもちろん、超加速にもついてこれません。

 この問題に関してリロイとシャーガさんは速度と耐久性と索敵に特化した機体を用意する事で応えようとしました。マッハ換算なら100くらい。時速約122500km換算の推進力でまる一日は行動可能。行動時間を縮めればその分速度も増せて、瞬間速度は通常の十倍くらいまでは出せる様にしましたが、その瞬間加速を一度使うだけで一時間分のエネルギーを消費してしまうとの事でした。


 なので先ずは通常の最高速度で移動開始。ぼくは、機体の背中の追加アタッチメントに設けられた機外コクピットみたいな所に収まって運んでもらいました。時速約10万キロの速度で月の表面を走査(スキャン)をしながら、だんだんと加速して、122500kmの通常最高速度で一時間以上飛び回っても問題無い事を確認後、月の引力から外れない様リロイのサポートも受けつつ(ぼくのユニークスキルやサブスキルは神様による自動調整が働くのでリロイのサポートは不要)、時速換算なら約百万キロの速度というか推進力でも、特にトラブルは起きませんでした。


 その頃までには副隊長配下の全体訓練(発着艦とかも含む)も一区切り着いてたので、特別機装の補給やメンテなども行われてる間に休憩を挟んだら、今日のメインディッシュでもある、サーチスキルで見つけてしまった何かの所へみんなで行く事になってました。

 今日最初にお邪魔した月の表面で、リロイが検知したというスキャンがやってきた方角からは完全に影になり続ける所にゲートを設置したら、もう片方の青の月へと向かいました。


 大きさとしては、緑の月の直径が約3600kmくらい。青の月は約1000kmくらいでかなり小さめで、緑の月からおよそ100万キロほど外周の軌道を回っているせいか、潮の満ち引きなどは起こさない存在の為、朧の月とも呼ばれているそうです。


 まあ、だから気になってたんですよね。

 大陸の礎となった星龍は、あんなに巨大でも、やっぱり生物なんです。あれだけ高知能高性能な生物なら、おそらく無からポッと出てきたのでは無くて、親の個体から生まれるみたいなんですよね。リロイのデータベースでも調べてもらいました。

 宇宙全体でもかなりの希少種族らしいのですが、改めて意識してサーチしてみたらですね。大当たり(ビンゴ)って奴で。これはまあご挨拶しておかないといけないってことで、大陸になった方の星龍さんを訪れた時にお守りみたいな物ももらっておきました。


 自分が曳航する感じで、青の月上空までにはすぐに到着。緑の月の方は、地球の月と同じ感じで地表のあちこちがクレーターだらけになっているのに、こちらは不思議とまっさらな大地が続いてました。まあ本当に大地かどうかは怪しいのですが。

 いきなり地表に降下はしません。まともに向き合うとみんなショック死してしまうかも知れないので、自分が向き合った時の様な神経細胞の末端というか、この青の月の場合は数百の衛星が巡っていて、大半は直径1mから10m未満くらいの物なのですが、いくつかある100m級の物の中でも一番大きな物の1000キロくらいの距離まで移動。


 新大陸の礎となった星龍チェレア・ワックからもらった何だか良く分からない物を掲げて、ぼくの通常条件速度でゆっくりと?近づいて行きました。

 それは、単なる岩の塊にも見えましたが、リロイの分析によるとアダマンタイトよりも硬い物質で、データベースの検索結果によると、チェレア・ワックの鱗の破片の一断片のカケラみたいでした。人間で言えば、死んだ細胞、つまりは垢みたいな物でしょうか?

 星龍同士の風習とか交流がどうなってるかとか分からないので、宇宙空間ですが、ゆっくりと呼びかけながら、接近を続けました。


「どうもー、こんにちは〜。異世界からこの世界の神様に呼ばれてやってきたカケルっていう者です〜。星龍チェレア・ワックさんから紹介状?みたいな物ももらってやってきましたー」


 ヘルメットのインカム越しに、リロイの分体からの分析結果を聞きながら宇宙を走り続けてました。リロイによると、青の月の星龍は眠っている(スリープ)状態との事でした。当然、外部星系などからのスキャンにもかからない様に隠蔽された状態でもあるそうです。

 ちなみに、移民船団には、直接的には、星龍達による護衛は知らされていなかったそうです。おそらくは悪用や悪意によるアクシデントを避ける為だったろうと推測されてました。ただしオードリーの継承した記憶によると、神の言いつけを守らずに宇宙に還ろうとしたら、滅ぼされるだろうと警告はされていたそうで、その執行者がおそらく星龍だったのではと考察されてました。つまり、星龍一体でも、あの移民船団全てを滅ぼし得るだけの戦力を持ち合わせてるって事ですね。

 そりゃあ、レベル100未満の時のぼくなんか相手になる訳無かったですね。納得です。


 さて、反応が無いまま、道程も残り半分となった辺りで、リロイからのエネルギー反応が!みたいな警告メッセージが来たのとほぼ同時に、ぼくと天空騎士団旗艦は、向かっていた目的地でもあった一番大きな衛星の間近にまで転移させられていました。

 距離は、おおよそ、1km離れて無いくらいかな?青の月の地表に対して高度千メートルと言った方がわかりやすいかも知れませんが、その地表に、直径数キロメートルはありそうなカメラレンズの様な物体が現れました。

 そのレンズというか瞳?は、目を(しばたた)かせる感じで瞳の収縮を何度か繰り返した後、語りかけてきました。


「あ“、あ“〜、言語セットはこれで伝わっているか?異世界より神に()ばれし者よ」

「はい、伝わってはいますが、もう少しだけ、声量を抑えて頂けると嬉しいです!」

「お“、お、それはすまなかったな。これでどうか?」

「ありがとうございます、大丈夫です」


 1km離れてても届く声というか、相手の体の大きさが直径1000kmだからね。普通に発声するだけで音波攻撃みたいなすごい振動が空間を伝わってきました。ぼくは微速歩行してたから影響受けませんでしたが、旗艦の方はシールド張っててもかなり揺るがされたようで、インカムから伝わってくる通信が賑やかでした。

 まあ、もっと長い体を無理矢理丸め込んでるとしたら、全長とかどれくらいになるんだろうとか想像しながら話し続けました。


「それで、チェレアの体の破片を持って会いに来たという事は、何かあったのか?」

「先日、人類系種族が戦っていたという非人類系種族が使っていた様式の走査(スキャン)を受けました。おそらく、隠蔽状態にあったそちらでも記録されているのでは?」

「待て、確かめる。・・・なるほどエフェンデ達の暦換算でおよそ一年前か。走査元は、こちらの情報だと、シェベリア宙域フングルイ銀河団のx−255銀河のPox−101星系辺りか」

「移民船団を管轄している機械知性(AI)の分析でも同じ分析結果になりました。おおよそ一年と少し前くらいに、ぼくが移民船団を見つけてその一部でも隠蔽状態を解除した事が伝わった事が起因してるみたいですが、先ほどの星系、10億光年くらいは先にある所ですよね?」

「人類系種族と非人類系種族双方を宇宙ごと消滅させかねなかった決戦を神が止められて、その大半を滅ぼす事で危機を回避してから、この星系基準でまだ四千年ほどか。別の星系でも一千年ほどしか平穏は保てず、さらに規模を縮小してこの星を最後の希望の地として避難してきた。我はこの星の守りの要を託されて、真なる危機が訪れた時の備えとされ、それまで眠りについてきたのだ。

 ここが人類系種族の最後の避難地だとすれば、非人類系種族の方にも似たような境遇の生き残りがいてもおかしくはない。光速を超えた監視手段を、来るべき日の為に方々に展開し終えていて、それで彼らに察知されたのだろうな」

「まあ、そうなるんでしょうねぇ。でも、だとすると、まだ直接攻撃されてきてないって事は、その手段が無いか、その意思が無いか、両方無いか、両方あって既に届いてないか、が選択肢になると思うんですけど、ぼくが神様からもらったスキルによると、こちらを滅せそうな攻撃はまだ放たれてないみたいです」

「我の普段の警戒網も、隠蔽時には1000億キロほどまで落としてあったからな。好戦的だった部類は凡そ滅ぼし尽くされた筈だ。四千年の間であちらで何が起きていたかは我も推測するしかないが、まだ攻撃をしてきていないのであれば、調査船団を送ってくるのが常道ではあろう」

「それって、こちらの移民船団の縮小版というか?宇宙で活動できるような種族ならもっと違う形態とかあるかもですが。規模とか戦力とか能力とか、来ちゃうまで分からないですよね?」

「こちらの第一次避難船団も、かなり技術的制約を受け、この星に至ってからは更に限定されてきた。神の御心次第ではあるが、その制約が一方だけに働いていたとは考えにくい。従って、この星に在る移民船団の規模が一つの基準にはなるだろう。

 もっとも、彼らが星系規模から穏当にやり直せていたのだとしたら、その計算もまるで違ってくるが」

「んー、じゃあ、最悪、あの移民船団の百倍から一千倍くらいが来るかも知れないと」

「かも知れぬな。もっと少ないかも知れぬし、もっと多いかも知れぬが、どちらにしろ情報が無い」

「では、情報を拾いに行くしか無さそうですね」

「10億光年の彼方にか?」

「神様からもらったユニークスキルやそのサブスキルを組み合わせれば、何とか」


 という事で、それらについて説明していきました。

 レベル500を超えた事で、既存スキルにも更新がかかったりしたんですよね。

 その一番大きな一つが、ワープで、星の大気圏内だと、見えている範囲でもレベルと等しい距離(km)までしか移動出来なかったのですが、大気圏外、つまり宇宙空間であれば、それが何光年先だろうと、一瞬で移動可能になりました。

 レベル500で得たサブスキルが、光速移動だったので、ラッシュとかと組み合わせれば、移動に困る事はほとんど無くなりそうです。


 見えてさえいるならどこまでも移動できるという出鱈目さに、星龍さんも絶句してた様ですが、


「それも神の御意志という事なのだろう」


 と折り合いを付けた様でした。


「という訳で、直線距離で向かっても良いのですが、それであちらを刺激して、不可避な攻撃が直接こちらに飛んできても危ないと思うので、ワンクッション置いて、そちらから向かってみようかと」

「その合間にどこを挟もうというのだ?」

「この星に来る前の人類系種族が避難させられた星系です。ここから1000万光年くらい先らしくて、目標となる恒星もまだ残ってるみたいですし。そちらに生き残りがいないのなら、そっちにどんな攻撃を受けたとしても、たぶんこちらは影響を受けないでしょうしね」

「そちらでの騒動こそ、相手方に伝わっていただろうしな。そこに何らかの探査手段なり中継手段を残していたとするなら、10億光年よりはよほど近い」

「はい。なのでそちらを調査してみてから、彼らの本星に向かってみようかと」

「・・・そうすると、我の一端末も同行させた方が良さそうだな。しばし待つが良い」


 もしかしたらリロイみたいなのが来るのかなと思ったら、地表のレンズみたいな瞳の脇の地面から何かが飛び出してきたと思ったら、虹色の虹彩を放つ飛行物体というか、ドラゴンが飛んできました。体そのものは長い首の先の頭から尾の付け根までで5メートル、尾の長さで5メートル、二対三組の翼がカッコいいです。


「このサイズなら、その船の倉庫にも載せて運べるだろう。お前が方々を訪ねる際にも連れて回るがいい」

「ありがとうございます!ぜひ、そうさせて頂きます!それで、つかぬことを伺っても?」

「なんだ?」

「この端末に名前を付けても良いでしょうか?きっと、ぼくら連合王国のマスコットというかシンボルになりそうな気もしたので」

「・・・チェレア・ワックによれば、お主は悪用などしないだろうから好きに使うがいい。名前は、そうだな。我の名前が、マ・ミルネ・キェフだから、それ以外であれば、好きにしろ」


 マ・ミルネ・何とかって名前はどこかの何かに付けられてたと思いますが、すぐには思い出せなかったので、このドラゴンに付ける名前を考えて、音の響きだけで何となく決めてみました。


「じゃあ、虹龍シェヴァルヴァで。これからよろしくね」


 シェヴァルヴァは、人間の言語だとどんな擬音で示せば良いか分からない声で返事をしてくれました。


「お前が言う事は伝わるから心配するな。会話は、お前のところにいる統括用端末機を挟めば成立するだろうが、私とて一光年以上離れると厳しくなる。それが1000万光年や、10億光年ではさすがに無理だ。また何か伝えることがあればここにやってくるといい」

「ああ、それなんですが、ここにもゲートを設置させてもらっていいですか?ぼくの関係者以外には使えない転移装置みたいな物です」

「構わないが、船ごと転移してくるつもりもあるなら、地表ではなく、衛星のどれかの方が良いだろう」


 という事で、外見は本当にただの岩の塊にしか見えない直径50mくらいの衛星の表面にゲートを設置させてもらったら、さて、考え所です。


 本当なら今日は、二つの月を巡ってゲートを設置したら、いったん船で大気圏降下訓練で帰るつもりでした。もちろん、新大陸からは見えないルートを辿って。


「今日は慣らし訓練の予定まででしたから、普段であれば予定されていたメニューだけこなして帰投するのが良いのでしょうが、カケル様には、先にこなしておいた方が良いと感じられているのですね?」

「うん。特に根拠は無いんだけど、何となく、後回しにしない方が良いんじゃ無いかなって」

「結構です。どの道、光の速さですら想像を絶するのに、その速さでも1000万年もかかる距離にヒョイと行って帰って来れるというカケル様のユニークスキルには絶句するしかありませんが、戦場における勘は無視すべきではありません。私達もそれで何度も救われたことがありますし」

「隊長の勘も鋭かったですよ」

「それはガチですぜ、大王様!」

「了解。そしたら、彼らの偵察衛星か何か分からないけど、それがある星系にまでは行って、メッセージは残しておこう。あとゲートもどこかに設置しておけば、またすぐに行けるしね」


 リロイからも特に反対意見は無かったので、サクッと行ってみる事にしました。

 目標地点となる星系の最寄りの恒星をヘルメットに拡大表示してもらったら、旗艦に手を触れながらワープを起動。ちなみに虹龍は、ワープ先で何かあってもすぐに対応できるように、旗艦の甲板に伏せた状態で待機してもらいました。

 ワープによる転移は一瞬なのですが、これも相当ですよね。いろんな漫画アニメやSF作品だと、ワープ中は異次元空間をそれなりの長さ、距離や設定により数ヶ月以上潜り続けて目的地に到達する様なのも少なくなかったのですから。

 そして恒星のすぐ側に出たら、ぼくはともかく船は無事では済まないかも知れないので、1億キロほど手前にしてみました。転移したらすぐ隠蔽状態で星系全体を走査(スキャン)してもらいました。この星系には、人類種族が居住可能な星が7つほどあったらしいのですが、そのどれもが今では損なわれてしまっているそうです。7つあった内の四つが消滅。二つが大破。一つが小破で済んだものの、人が住める環境では無くなってしまったので、残された人々は再度の移住をするしかなかったそうで。


 旗艦によるスキャンが終わるまでの間、ぼくはぼくで、目標となる非人類系種族の通信装置の所在などをサーチして行きましたが、複数ありました。星系内と星系外、小破で済んだ惑星の衛星軌道上、恒星近くなどです。

 で、彼らの船団とか兵力などがいないかなと思ってこちらもサーチしてみましたが、船っぽい存在は何隻かいました。一隻だけが隠れてなくて、その一隻を星系内と星系外の逆方向にいる別の船が監視してる感じでした。

 ぼくはそれらのサーチ結果をリロイの分体にも伝えて、さらに精査なスキャンを行なってもらったのですが、その間に、人類系種族の生き残り、無いしその遺産とかが遺されてないかサーチしてみました。


 あっちゃいましたよ。

 パッと見は、船でも無いし、星でもない、小惑星帯(アステロイド)に紛れてる物なので、きっと監視してる側にも見つかってないぽいです。

 だけど、船で移動したり横付けしたりすれば、当然、発見されちゃうし、下手すれば攻撃されたり拿捕されたりとかもあり得ます。敵の増援がどこからか現れたっておかしくありません。


 と言う訳で、リロイ分体やシャーガさん達と相談した結果、用意してあったメッセージボックスを、姿を隠してない船の10万キロ先の空間に置いたら、隠蔽状態の旗艦を先にキェフさんの所に戻した後、さっきのアステロイド帯に連続ワープで戻って、目的の小惑星?(といっても直径200メートルくらい)に手を触れて、またキェフさんの所のゲートにまで戻ってきました。瞬足と連続ワープの組み合わせも、宇宙にまで行動範囲を広げた結果すごい事になっています。


 もしこの小惑星がやばい物だったら、キェフさんに消滅させてもらおうと思って運んできてみたのですが、ぼくが外からサーチしつつ、内部はシャーガさん達天空騎士団が訓練を兼ねて探索してくれる事になりました。

 ぼくは甲板の上に立っていたのですが、隣にいたシェヴァルヴァから、キェフさんの声が聞こえてきました。


「ついさっきぶりだが、これはあの星系にあったものという事で良いのか?」

「そうですね。非人類系種族の監視体制もバッチリ組まれてたので、あちらで調査する訳にも行かず、とりあえずここに持ち帰ってから調べてみる事にしました。何かやばい存在でも、キェフさんならすぐに対処できるかな、と」

「やれやれ。面倒な事を。相手の紐付きで無さそうなのは確認済みな様だが」

「これ、隔離施設というか、避難者の一団とかなんですかね?」

「さあな。神ご自身であればともかく、我々星龍も別に万能な存在ではない」


 小惑星内の設備はほとんどが休眠状態にあり、警備装置なども動作していなかったので、リロイ分体によるハッキングで全体構造情報などを把握。物理的にも特別機装達が目視して掌握していき、最後に残った中枢部に特別な施設を見つけたとの事で、ぼくもそこへ訪れる事になりました。


 それはまあ、オードリーが一千年以上を眠っていたのと同系統のいわゆるコールドスリープ系装置なのでしょう。ガラス張り、ではない棺の様な何かが十個ほど並んでいて、リロイによると、その中身の四体がエフェンデ、別種族が二組二体ずつで計八体。さらに、凍った小さな水槽と大きな水槽には、非人類系種族が一体ずつ収められていると。


 んー、これはオードリーの出番かなぁと思いつつ、ぼくはシェヴァルヴァ越しにキェフさんに、非人類系種族を目覚めさせる前に処分しないといけない決まりの様なものがあるのか尋ねてみて、無いと確認できました。


「そもそも、人も、龍も、それ以外の種族も、皆、創造神様による被造物であることは一致しているのだ。互いを消滅させようと宇宙まで滅ぼしかけた連中は種族によらず滅消された。ならば、それ以外の道を探ろうとしている連中が、カケル以外にもいたとして不思議ではあるまい?」

「まあ、そうですよね〜」


 とか応じながら、一旦、彼らを起こす前に、オードリーを含め、奥さん達やお嫁さん候補達と話し合う為に地上へと戻ったのでした。小惑星の監視と保護はキェフさんにお願いして引き受けてもらった上で。


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