ランニング57:挙式後の日々と、ニャウノとワーナの嫁入り他
ポーラとリーディアと結婚式を挙げた日から、想像もしてなかった波乱の日々が訪れました。とはいえ、外から見れば順風満帆な平穏にしか見えなかったかも知れないし、爛れてるとか淫蕩に耽ってるとか言われても仕方無かったのかもです。
言い訳をするとしたら、ぼくはこの世界を楽しむ為に呼ばれました。諦めないでと言われてもいますが、世直しとかは求められていません。土地枯れや食糧難といった難題に取り組んで貢献している事で、おおよそ役割は果たせているでしょう。戦争を止めたりとかもしたし。
連合王国のこれからをしっかりと固める為に、法律や制度に詳しい人達を派遣してもらったり雇ったり、血風団というキゥオラ王都を脱出する時に対峙した歴戦の傭兵団を丸抱えして軍組織の土台作りに協力してもらったり、各地域の代表商人さん達の声も聞きながら首都建設を進めたり。
レベルも一日に最低3から5、場合によっては10くらい上げて、生命線となるサブスキルの習得にも励みました。レベル300では、超加速の計算式が、レベル数の2乗x2だったのが、x3になって、以降レベルが100上がる毎に、百の位で倍化する様になったり。25レベル毎にもらえていたサブスキルが50毎になったり。
こちらは地道にコツコツ、レベルが上限に達するまでは上げると宣言して毎日励んでました。
結婚式の最中に神様から祝福を受け子供を授けられて、出産までエッチ禁止にされた二人は複雑そうだったけど、なるべく時間を作って、彼女達の花嫁修行の成果という手料理を食べさせてもらったり、一緒に料理もしたり、緑の魔境とかでピクニックに行ったり、そこでテントを張って夜を過ごして添い寝したりしました。
なるべく我慢してましたが、一ヶ月で限界が来てしまいました。
傍目からも危うそうに見えたらしく、エフィシェナから始まって、ワルギリィさん、そしてラルルにも助けてもらいました。
盛っているという言葉通り、エッチする事に慣れてきて、それに向いたサブスキルも会得してしまったりして、それがまた技巧や相手の満足度の上昇にもつながって変な自信を付けたりもして。
しかしエフィシェナも妊娠して子供が祝福を授かりエッチ禁止になると、お嫁さんやお嫁さん候補の間ではピージャが来るまでの間をどうするかとなって、アザーディアさんが名乗りを上げてくれました。
しばらくワルギリィさんとラルルとアザーディアさんで支えてもらってたけど、ワルギリィさんも子供を授かって閨から離れる事になった後は、年頃の壮絶なエルフ美女(プーテと同等以上)に育っていたオードリーが閨に潜り込んできて、彼女の種族の再興に協力して欲しいと嘆願されて、彼女も閨に通う一人となりました。
それで何とかピージャが来るまでは保たせられたけど、ラルルもその頃までに子供を授かったのでギリギリでした。
ピージャと結婚して、彼女は一人でも何とかしてしてみせると意気込んでいたんだけど、やっぱり無理で。アザーディアさんとオードリーにも支えてもらって、ポーラとリーディアの出産までの時間をだいぶ稼いだのだけど、その一月前にはアザーディアさんとオードリーも妊娠したのが分かって、ピージャは二人を祝福しつつも青褪めていました。
お嫁さんや候補達による緊急対策会議も開かれたりしたんだけど、意外なところから救いの手がもたらされたというか転がり込んできて。
拡張と成長を続けている虫ダンジョンというか農作物生産一大拠点に、侵入者があって捕えられたというので行ってみたら、可愛らしい白い猫耳と細長い尻尾を持つ猫獣人娘と、もふもふな茶色の犬耳と犬尻尾を持つ犬獣人娘の二人組が、大芋虫の糸でぐるぐる巻きにされてました。
彼女達の事情を聞けば、こちらに非があるとも言えたので、とりあえず糸からは解き放ってあげました。
猫獣人の方は、ニャウノ。犬獣人の方は、ワーナという名前だったのですが、彼女達の言い分はこんな感じでした。
「うちらは、緑神様とその眷属が育ててる作物のお零れを頂いてきたのにゃ」
「だけど、いつの間にか、影に潜れる人間どもがたくさん現れて作物をほとんど全部収穫していってしまう様になったんだわん。緑神様とその眷属も止めようとしてないから、手を出せなかったんだわん」
「うちらがあんなに収穫しようとしたら、間違い無く止められてただろうし」
「これまで見逃してもらってた量の収穫も許されなくなってしまってたと思うの。そしたらみんな飢え死にだわん」
「緑神様は地域や季節毎に違う作物を育ててたけど、それもみんな収穫されていってしまって困ってたにゃ」
「どうにか、他に収穫できる作物が実ってないか探してたんだわん!」
「何というか、ごめんね。それ、ぼくとかが原因だったんだ。ぼくのお嫁さん達が生まれ育った大陸で土地枯れが広まって、いろいろ大変な事態になって、それでオ・ゴーさん、君らの言う緑神様の赦しをもらって、収穫して運ばせてもらってたんだ」
ニャウノとワーナは、信じてくれませんでした。
「嘘にゃ。お前、弱っちそうなのに、どうして緑神様の許しもらえた?」
「うちらの種族に伝わってる。緑神様、大昔から人間達と戦ってきて滅ぼして、この大陸の支配者になったんだわん!なのになんで、人間を助けてる?」
「えーと、ちょっと長い話になるけど、我慢して聞いてね?」
まあいつもの、自分が異世界からこの世界の神様に呼ばれてユニークスキルを与えられて云々て話をなるべく短くわかりやすく伝えたつもりでした。それでも、噛み砕き具合が足りなかったか、尺が長過ぎた様です。
「お前みたいのが、魔物を倒して回ってるとか、ハッタリにゃ。お前じゃ、うちらにも勝てないにゃ」
「そうそう。神様の名を騙るとか、天罰が当たるんだわん!その前に、お前が横取りした作物をうちらに渡せ!」
「それでうちらが、次の族長になるにゃ!」
「族長になれれば、これまでよりはたくさん食べられる筈だわん!」
ここで二人をコテンパンにしたり、彼女達の氏族?に食糧を渡したりするのは、すぐにでも出来たのですが、二人がぼくを見下してきてるのが少し面白くなかったし、お嫁さん達を悩ましている問題をこの二人なら解決できるかも知れないと思いついてしまいました。二人はそれなりに発育が良くて、成人してる様にも見えました。
「ん〜。二人は、族長になろうって位だから、成人してるの?」
「これが成人の為の儀式にゃ」
「一族を養えるくらいの食糧を持ち帰れた誰かが、次の族長だわん!」
「じゃあさ。ぼくがその食糧を持ち帰れたら、ぼくが次の族長になれる?」
「猫人族をなめるな!お前なんかじゃ、うち一人にだって勝てないにゃ!」
「犬人族だって、あんたなんかじゃ、うちどころか、もっとちっちゃい女の子にも勝てないわん!」
「そしたら、二人に勝ったら、二人の一族の所まで案内してくれる?」
「ふんっ!そこまで言うなら、うちは片手で相手してやるにゃん」
「じゃあ、うちは片足で!」
「普通に両手両足使って、二人いっぺんにかかってきていいよ。それでもすぐに終わるから」
「言ったにゃああ?もしうちらが勝ったら、食糧全部よこすにゃ!」
「あのダンジョンもだわん!」
「じゃあ、ぼくが勝ったら、二人をお嫁にもらいますね」
「「ほざけ!」」
二人は、優秀な狩人であり、斥候でもあったようで、音も立てずにぼくの左右後背から襲いかかってきました。ぼくが振り向いてどちらかの相手をしようとしたら、もう片方はさらに背後へと回り込んできそうでした。
ニャウノの指先から伸びた爪も、ワーナの口に生えた鋭い牙も、ぼくの体のどこでも好きな様に切り裂いたり食い千切れたでしょう。もしも触れたり噛めれば、ですが。
やりようはいくらでもあったのですが、元世界のラノベ知識を活かす時だと思ったので、先ずは二人にかかる重力を操作しました。ぼくに飛びかかってきていた二人は、地面に顔から突っ込みました。
「ぶふぅっ!?」
「ぎゃわんっ?!」
何が起きたか分からないまま、とにかく立ちあがろうとする二人の背後に回ったら、その尻尾の根本をギュッと掴みました。
「ひっ、何するにゃあああ!?」
「わわわわわぁぁああ、放せぇぇぇっ!」
「降参するまで離さないから、覚悟してね。ちなみに、降参するなら早い方がいいよ?」
「ふざっ、っっにぃぁぁああああ!」
「なんっ、っっんわぅううううっ!」
お嫁さん達との、組んず解れつの修練の日々(夜々?)を経て、ぼくは、自分の体のどの部分でも好きな速度で動かし、好きな所に任意の強さの衝撃波を送れる様になりました。もちろん、スプラッタ展開回避は絶対条件なので、どこにどの程度までなら大丈夫なのか、気持ち良く感じるのか、特にリーディアと確かめていきました。次点でワルギリィさんもですね。二人とも回復魔法が使えるので。
もちろん、試行錯誤の間でも、二人を傷付ける様な事は一度たりとてありませんでしたが。
そんな修行の成果は、お嫁さん達に平等に寄与され、さらなる技術の研鑽と満足度の向上をもたらし、とても素敵な好循環が生まれました。
まあ、そんなユニークスキルとサブスキルとエッチな修練の集大成を発揮されてしまった二人は、詳しくここには書けない様な醜態、いえ、とても良い反応を示して、気絶してしまいました。尻尾とかその付け根を優しく刺激してあげただけなんですけどね。
二人が意識を失ってる間に、オ・ゴーさんに彼女達の一族の境遇などについて話を聞きに行ったりして戻ってしばらく待つと、二人が意識を取り戻しました。
「どうだった?まだやる?」
「・・・さっきは、何をしたのにゃ?」
「言ったでしょ。神様からユニークスキルを与えられて、レベルを上げていく事で、いろんなサブスキルも使える様になっていったって。そういうのを使っただけだよ」
「ううう、ひどいわん。あんな事されたら、もうお嫁に行けないわん」
「大丈夫だよ。さっき約束した通り、ぼくが二人をもらってあげるから」
「本気にゃ?」
「本気だよ。二人の一族が住んでる里を教えて」
「一族以外の異性が、里の誰かを娶ろうとするなら、試練が与えられるんだわん!お前は、もし本気なら、その試練を乗り越えなければ」
「いいよ。どんな試練でも乗り越えてあげる。二人が欲しくなったからね」
ニャウノはスレンダー系の、ワーナはむっちり系の、もふもふ美女です。獣人の適齢期と年齢がどうなっているかはわかりませんでしたが、少なくともぼくと同年代くらいには見えました。
ぼくのストレートな物言いに、二人は小声でゴニョゴニョと相談しました。地声が小さくないので、ほとんど丸ごと聞こえてきましたが。
「ワーナ、どうするにゃ?」
「ニャウノはどうしたいんだわん?」
「うちは・・・、負けたし、負けたらもらわれるって約束したし、ダンジョンとかもあいつの物らしいし、だから、連れて帰ってみても、いいかにゃ」
「緑神様もその眷属も、こいつとかその仲間には収穫を許してるのなら、この先食糧の不安は無くなるんだわん」
「まあ、そうなるにゃ」
「それに、さっきの気持ち良かったんだわん!とっても!」
「はしたないにゃ、ワーナ」
「ニャウノも、気持ち良かったんじゃないの?」
「・・・・・ょかった。けど、村に、一族に認められないと、あいつはうちらの婿にはなれないにゃ」
「大丈夫だと思うわん。見かけからは分からない強さを持ってるみたいだし」
「かもにゃ」
そんな相談が済んでから、サーチスキルでも一応探してあった、二人の里へと向かう事になりました。
二人から話を聞く為に超加速もショートワープもしない通常速度の列車ごっこで移動しましたが、一時間もかかりませんでした。
二人の住む村はほぼ隣り合っていて、その間にお粗末な砦が築かれてました。村の家で建物と呼べる様なのはその砦以外にはほぼ無くて、どれも掘立て小屋未満というか、竪穴式住居というか、無人島に流された主人公が島の植物とかだけで何とか拵えた雨風を防げるかどうかという類の代物でした。
「えっと、何か、ボロくない?」
「季節ごとに村ごと移住してるにゃ」
「みんなバラして持ち運べるんだわん」
「・・・ん〜、じゃあそれはそれとして、二つの村を合わせても、あまり人数多くなくない?」
「それも、事情があるにゃ」
ぼくらが空を駆けて近づいてきてるのに気付いた村人達が家の外に出て騒ぎ始めてましたが、猫人も犬人も、それぞれ百五十人くらいしかいませんでした。しかも、割合として女子供や老人達の方が、男性よりもずっと多そうでした。
「大人の男の人がほとんどいない理由と絡んでる?」
「みんなを、村を守る為に犠牲になっていったからにゃ」
「詳しくは長老達から聞くんだわん。うちらを娶るという試練についても」
ということで、砦の前に並んでいた猫人と犬人の老女の前に降り立ちました。
「無事帰ってきたか、ニャウノ、ワーナ。しかしそいつは何者にゃ?」
「二人は食糧を持ち帰る試練の途中だった筈だが、手ぶらで帰ってきたのなら、族長になるのも諦めたのかわん?」
「こいつは、カケルっていう、緑神様とも話をつけて作物をみんな持っていってしまった奴だにゃ」
「それだけでなく、たくさーん作物育ててるダンジョンもこいつが持ってるんだわん!」
「ふむ、つまり捕虜として連れてきたにゃ?」
「ち、違うにゃ」
「うちらが得る筈だった食糧や、ダンジョンを賭けて、うちらと勝負しろって持ちかけて、このカケルが勝ったらうちらをもらうって話になって」
「食糧も都合してくれるなら、カケルが族長になるって話になったにゃん」
「こいつが?」
「とても信じられないわん」
二人の老女も、その周りを固める護衛なのだろう男性達も納得できてないようで、特に男性達は殺気立ちました。ただ、男性達は片腕や片足を失ってたりしてる人が大半でした。
「この二人を娶るにも、族長になるにも、試練を受けないといけないんですよね?どうぞ、言ってみて下さい。多分すぐに達成してみせますから」
長老だろう二人はボソボソと相談すると、告げました。
「ニャウノとワーナを娶りたいのなら、この村を付け狙う害獣の群れを倒しておくれ」
「そして、猫人族と犬人族を統べる族長になりたいのなら、村人全員を少なくとも一年は養えるだけの食糧を持ってきな」
二人とも、お前にゃ無理だろって眼差しと口調でしたから、売られた喧嘩を買う様に言いました。ぼくを取り囲んでる獣人男性達の舐めた目付きも気に入らなかったですし。
「んー、まあ、どっちもすぐに終わると思うけど、害獣退治には、ニャウノとワーナ、それから長老のお二人が信頼してる誰かを証人として付いて来させて下さい。後からごちゃごちゃ言われるのは面倒なので」
そこで選ばれたのは、ニャランダという中年?猫人女性で、双刀を腰に下げた歴戦の戦士という風格がありました。
「カケルと言ったな。我々は手伝わんし、お前に何があろうと助けないからにゃ」
「ええ、それで構いませんよ。すぐに終わると思うんで、せいぜい怪我しないよう引っ込んでて下さい」
ムッとした様ですが、その場では何も言いませんでした。
サーチスキルでそれらしい存在にはすでに当てを付けてあったので、列車ごっこの注意点だけ伝えたら、四人で移動。最初の一匹だけは、念の為、鑑定メガネで見ておきました。不意の事故とか、ポーラやリーディア他、祝福による制約にかからない相手かどうかを確認しておく為です。こんな余興の為にやり直しとか、バカらしいですからね。
単独で移動してるのを見つけて、早速鑑定。
バラマル・クーガー:デュードリアン大陸に生息する猛獣。およそ2−3メートルの俊敏な体格と、鋭い牙と爪とで攻撃してくる。特徴は、狩りをする際に、最大1分ほど姿を消せるステルス能力と、数回繰り返せる短転移能力にある。匂いや気配などで接近を察知しても、一度に転移できる距離は最大10メートルほどと長くは無いが、そのくらい離れた間合いから至近距離まで姿を消したままの猛獣が攻撃してくれば、大抵の標的にとって致命傷となる。
なお、肉は一応食用だが、あまり美味ではない。
なるほど。こんなのに付き纏われてたら、安心して暮らせないし、男性が少なかったり、残ってた人の大半の腕や足が欠けてたのも、食いちぎられたのでしょう。
「さて、狩りを始めるけど、その前に、ニャウノ、ワーナ」
「何にゃ、ビビったのか?」
「死にたくなくて、尻尾巻いて逃げ出すなら今のうちだわん」
「いや、害獣駆除して、食糧も納めたら、ぼくのお嫁さんになってもらうからね」
「もし出来たら、嫁にでも何でもなってやるにゃ」
「うちもだわん。でも、たった一匹やっつけただけじゃだめで、全部だわん!」
「二人とも、今言った事を忘れないでね」
三人を少し離れた場所に降ろしたら、狩りの開始です。
イプシロンやポー達も手伝いたがりましたが、これはぼくへの試練ということで、よっぽど不意を突かれたりしない限りは影の中で待機していてもらいました。
サーチスキルで検索をかけると、村の周囲の広範囲に、三十頭近くかかりました。猫人や犬人だけが主食だった訳じゃないでしょうけど、時折遊び半分に狩る相手にされていたのでしょう。たぶん。
さっき上空から鑑定メガネで見てた個体の正面から歩いて近付いていくと、すっ、とその姿を消しました。瞬きをする間にも背後から生臭い息がかかったのですが、その直後にバラマル・クーガーの体は地面に叩きつけられました。短転移してきても重力に逆らえる訳じゃないですからね。
何とか起きあがろうとする獣の額へデコピンで頭蓋骨とその奥の脳に損傷を与えてトドメを刺しました。
ぼくが無傷で最初の一頭を倒した事で、付き添いの三人が近寄ってきました。
「武器も魔法も使わず、何をしたのだ?」
「重力って力を操作しただけ。そこの二人も味わってるから、詳しい話はそっちに聞いて。さて、さっさと片付けるよ」
バラマル・クーガーの死体は、一旦ポーラの影空間に収納しておいてもらいました。ここでの用事が済めば、氷の精霊の所に送って凍結しておいてもらう事になるでしょう。子供が産まれるまで、ポーラは眷属を増やせないので。
それからはほとんど同じ作業の繰り返しです。サーチで見つけて近寄り、姿を消して襲いかかってきたら重力操作とデコピンで撃破。複数匹で襲いかかられても結果は変わらないし、サーチスキルと鑑定メガネがあれば透明化して逃げ出しても無駄でした。ぼくの方が足速いしね。
そうして最後に残ったというか、残したのが、群れのボスらしき小グループ。一際大きな体躯を持つオスとメスの番と、その子供だろう三匹。全部殺すのも簡単に出来たでしょうけど、ぼくにはちょっとした考えと思い付きがありました。
「イプシロン、いる?」
「がうっ!」
「あのクーガー達と話付けられそう?必要なら、他の狼さんやポー達も呼んで」
すぐにイプシロンやゼータ達七頭の狼と、熊のポーが勢揃いしたので、イプシロン達にはガラマル・クーガー達が逃げ出さないよう、逃げ出しても追いかけて捕まえるよう囲んでもらい、ポーにはぼくのすぐ後ろについてきてもらいました。
ニャウノもワーナも地面にへたり込んでガタガタ震えてましたし、ニャラルダさんは気丈にも立ったまま双刀の柄に手をかけてましたが、その両膝は震えてました。
そんな圧力をかけながら近付くと、ボスらしきオスは、メスと子供達を背後に庇うように進み出てきました。
イプシロンがぼくの傍に来てくれたので、通訳を頼みました。バウリンガルというか、獣語がどうなってるかは分かりませんが、イプシロンは確かに通訳を務めてくれた様です。
「お前達を殺すのはいつでも出来るけど、お前達の縄張りが空白になれば、多分他の獣達がやってくる。だから、お前達はこれから獣人達の村を守れ。猫獣人と犬獣人は今後襲うな。襲えば殺す。子供諸共だ。分かったか?分かったら、服従を誓え」
バウワウワウガウガウみたいな通訳が一頻り続いた後、ボスらしきオスは、ぼくと、イプシロン達やポーと、それから離れた所で震えてる三人を見ると、ぼくの前に伏せました。すると番のメスが子供達も連れてきて、同じ様に伏せのポーズのまま動かなくなったので、ぼくはボスとその番の額に手を触れながら言いました。
「お前達はこれからこのぼくの僕だ。ボスのお前はオライオ、番のお前はレオリアという名前もくれてやる。子供達は、イーク、ニーク、サンクだ。猫獣人と犬獣人達の村を守り続ければ、月に一度は褒美もやる。これは契約の手付金代わりだ」
ぼくはアイテムボックスから獣系ダンジョンのバッファローもどきの肉の塊を取り出して、バラマル・クーガー一家の前に置きました。
「食え。それで契約成立だ」
イプシロンの通訳もあってか、オライオが最初に口を付けて大丈夫そうだと分かったのか、レオリアも子供達も肉に齧り付き、20kgくらいはあった肉の塊はあっという間に完食されました。まだ欲しそうにしていましたが、今は怯えつつも物欲しそうな顔をしている獣人三人のところへオライオ一家を連れて行き、伝えました。
「このバラマル・クーガー一家はぼくに従属させました。今後は村を守るように伝えたので、獣人の側から手を出さなければ手を出される事は無くなりました」
「本当に、お前の言う事を聞くのか?」
「お前がいない時も大丈夫なのかにゃ?」
「大丈夫だよ。ぼくがいない時も、イプシロン達の誰かには見張っててもらうから」
「がうっ!」
「ほら、大丈夫だってさ」
まあ、そんな訳で村までみんなで戻ったのですが、大騒ぎになりました。ちゃんと、ニャランダさん達に前触れもしてもらったのにね。オライオ達を従えていてもまだ右往左往していたのですが、倒したバラマル・クーガー達の死体を積み重ねて見せて、ようやく落ち着きました。
「これで、害獣駆除は完了で良いですよね?」
「あ、ああ」
「しかし、食糧の当てはあるのか?」
「ありますよ。とりあえず、今日はニャウノとワーナのぼくへの嫁入りの宴って事で、ちょっと美味しいお肉を振る舞います」
獣系ダンジョンでドロヌーブに狩ってもらったばかりのバッファローもどきの開きを三頭分、影から出してもらい、とりあえずは溶岩剣を突き刺してヒートソードとして手っ取り早く焼き上げて行きました。大変良い匂いが周囲に立ち込めたので、ポーラのその他眷属にも出てきてもらって切り分けたり皿に盛り付けたりしてもらったら、猫獣人も犬獣人ももう我先にとかぶり付き始めました。
「お代わりはまだまだあるから、焦らないで良いからね〜」
そんな声をかけつつ、長老二人には調理済みのもう少し美味しい別のお肉を差し出したら、それで二人も陥落しました。それから砦の食糧庫を彼らも食べられそうな作物で満たしたり、村の直接的な護衛としてロックゴーレムを十体と、砦にはアイアンゴーレムを二体配置しておきました。
村のみんなが限界までお腹を膨らませた後は、満場一致で、新たな族長として認めてもらいました。
ニャウノとワーナには、これからそういう事をするので食べ過ぎない様に制限をかけておきました。涎を垂らしながら我慢する姿は可哀想でもありましたが、ポーラ達の二三人前は軽く平らげてたので、一旦スルー。
する事をする前にはリロイに連絡を取って、ニャウノとワーニャが風土病とか何かヤバい物に感染したりしてないか調べてもらって、文字通り綺麗で安全な状態にしてもらいました。ついでにですが、村の住環境も調べて、必要な措置をしておいてもらう様にも頼んでおきました。二人から変な何かをもらってしまって、それが他のお嫁さんや子供とかに悪影響をもたらすとかは避けたかったですからね。
光魔法的な何かはガラーシャさんにお願いしました。お小言ももらってしまいましたが。
身体検査的な準備を終えたら、リロイに火山島に整備してもらった温泉宿的な施設へと移動。そこでニャウノとワーニャと露天温泉に浸かりながら、しっぽりと、二人とのエッチを楽しみました。二人とも初めてだったのもあり、かなり優しくしたのですが、あの尻尾とかその付け根を触った時の経験から、かなり感度が良くて、声や反応も大きいというのが分かってたので、他のみんながいないここを選んで正解でした。妊娠してて我慢しないといけないお嫁さんのみんなには刺激が強過ぎる事が想像できましたし。
しばし温泉でハッスルしたり休んだりしてから、軽食休憩を挟んだ後は、今度はベッドの上で、夜通し二人を、いえ、二人と楽しみました。もちろん、二人には無理させ過ぎない様注意しながら。
そして翌朝。二人がようやく起き上がれる様になったら、先ずは緑の魔境の離宮に集まってもらってたお嫁さんやお嫁さん候補達への身内のお披露目です。
「な、なんにゃ、この女達は!?」
「お腹大きくしてるのが何人もいるけど、もしかして」
「そう、全員、ぼくのお嫁さんか、これからお嫁さんになるみんなだよ。
みんな、ポーラから報告を受けてただろうけど、ぼくの新しいお嫁さんになってくれたニャウノとワーナだよ」
二人がどんな種族で、ぼく達の活動でどんな影響を受けて、どんな試練とかを経てぼくに嫁入りしたのか、ポーラからも伝わってただろうけど、ぼくの口からも一応説明しておきました。そう、本当に、一応ね。
みんなからの自己紹介を受けたニャウノとワーナは、お嫁さん達の人数にも圧倒されてたけど、それよりも驚いていた特定の対象がいました。
「『選良』にゃ!なんで『選良』がここにいるにゃ!?」
「族長達の言い伝えでは、改良種族達は互いを滅ぼしあって、残ったのも緑神様達に滅ぼされたって聞いてたわん!」
二人の視線はオードリーに釘付けになってたので、オードリーに尋ねました。
「『選良』とか改良種族が何か、オードリーは分かる?」
「ええ、記憶を引き継がれてますから。それにしても獣人族ですか。まだ生き延びているのがいて、カケル様とご縁を繫ぐとは。これも神の導きなのでしょうね」
「そうなんだろうね。この中ではオードリーだけが知ってて、ぼくらも知っておいた方が良い事があるなら、教えておいてもらえるかな?」
「はい。伝えるべき時が至ったのでしょう」
という事で、説明の為に一番適した場所というオードリーのリクエストで、身内のみんなで大島の管制室へと移動したのでした。




