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間章10:アザーディアの日記1

 私の名前は、アザーディア・ウィキッド。キゥオラ王国の下級貴族の三女として生まれたものの、黒髪と茶目という外見のせいで、忌避される事も多い幼少の時期を過ごしたが、黒髪黒目のポーラ姫のお付きとされてからは、はっきりと腫れ物扱いとなった。

 そんな訳で年頃になっても見合い話の一つも来ないまま適齢期が来て、過ぎ去ってもしまうのかと思っていた頃に、キゥオラ王家を大政変が襲った。世間一般では傾国の美姫と称されるイドル姫を巡る、原因としては土地枯れに端を発した国際情勢であってイドル姫に落ち度は無いのだけれど、その大政変クーデターで第一、第二王子が殺され、イドル姫はカローザの第一王子に連れ去られ、キゥオラはイルキハの後援を受けた第三王子のタミルの手に落ちた。

 ポーラ姫は、その姉のアマリ姫の助力もあって逃げ出した。どうやら、もう一人の忌み子の少年の手助けもあって王都脱出に成功したらしい。その時のタミルの機嫌は最悪だったが、東岸諸国の戦乱を勝ち抜いた傭兵団の長が打ち倒されたほどと聞いて追撃を断念した。王都内やキゥオラ国内貴族の制圧もまだまだ手がかかる状態だったからだ。


 まあ、その黒髪黒目の少年はカケル様だったのだが、彼の活躍をここで一々振り返りはしない。

 キゥオラ王国の政変が覆されて王が復位してから二ヶ月後、ポーラ姫と、イルキハのリーディア暫定女王は、カケル様に嫁いだ。その天空での挙式で起きた奇跡については、諸国の王侯貴族が目の当たりにした事で大陸中の一大ニュースとして広まったりもしたのだが、カケル様の近くに居る者としては大変な時期になった。

 何しろ、花嫁を二人も同時に娶ったのに、その奇跡により出産までの間性交が禁じられてしまったのだ。一月の間は、カケル様はお二人を尊重する為に他の婚約者となった女性の内、成人済みのエフィシェナやワルギリィに手を出さなかったのだが、反動が来てしまったらしい。

 エフィシェナから閨に呼ばれる様になったものの、一人では一週間も保たず、ワルギリィも呼ばれたが二人でも厳しく、ラルルも入る事でしばらくは安定した。しかし三月が経つ頃にはエフィシェナに普通に子が授かった事が発覚。

 あの結婚式の時の様な奇跡は起きなかったが、神から祝福を子供に授けられ、生まれるまでの間の性交はやはり禁止されて、ピージャ様の輿入れの前倒しも検討されたが、国として体面や手続きなどがあってすぐにというのは難しく、早めても二月後。その時にエフィシェナも挙式する事になったのだが、その穴を誰が埋めるのかがまた問題になった。


 まあ、そんな時に、偶然の流れ?から、立候補してしまったのだ。


 一応の言い訳はある。というかさせて欲しい。

 人間にはあり得ない速度で成長していく不思議な赤子をカケル様から託され、最初の頃は乳母に任せていたのだが、乳を必要としたのは、二週間も無かった。一月ひとつきで四、五歳ほどの外見となり、ポーラ姫達の式の頃には十歳近くにまで見えた。

 大変手がかからない子で、一月経たない頃から言葉を話し、三月経つ頃には子供らしさが抜け始めていた。カケル様にねだって各国王室から手に入れた蔵書に埋もれる日々を過ごす様になり、その異様さは際立っていた。成長するにつれて耳は長く伸び、人ではない種族というのもはっきりしていた。

 彼女を任されたのが私だったということもあり、彼女は私を仮の母、カケル様を仮の父として認識した。結婚もしておらず、そういう事もしていないのに、夫婦とされ、子持ちとなってしまったのだ。彼女の中では。


 私は侍従頭という大役を任された事もあり、それはやり甲斐のある仕事でもあったが、このまま女としては何も為さぬまま年老いていきたくは無かった。オードリーに接する事で、自分の子を持つ事を想像させられた。我が子を孕み、産み、育てるという感覚をちゃんと体験したくもなったのだ。オードリーはあっという間にそういった時期を駆け抜けてしまったから。


 大王となったカケル様の正妃と言っても良い立場にポーラ姫がなられた事で、私も下手な相手とつがう訳には行かなくなってしまった。今更ポーラ様と離れて見知らぬ男に嫁ぐつもりも無かった。

 だとしたら、私に選択肢はほとんど無かった所に、普通ならあり得ない状況が目の前で展開されていた。カケル様に引き合わせる女性も誰でも良い訳にも行かなかった。

 だから私は、オードリーを任された時の見返りを要求してみた。給金などはそもそもキゥオラ王家からも十分過ぎる額をもらっていたが、カケル様に雇われる事になって使いきれない額にもなっていた。だから、金銭ではなく、彼と閨を共にする立場を望んだ。妃の一人という立場は望まないと言明して。


 ポーラ様や他の妃や妃候補達にも、諮問してもらい、受け入れられた。

 最初の夜だけは、私一人で、カケル様の相手をさせてもらった。ポーラ様に心配されもしたが、私が望んだ事ですと言い切った。

 いろいろ事前知識を吹き込まれていたし、壁越しに見聞きもしていたので、期待は大きかったが、裏切られなかった。カケル様は優しく、そして激しかった。回数を重ね、体が馴染んでいくに連れて、すぐに達せられてしまい、ずっと達したままさらに高みへと登らされていった。このまま達せられ続ければ狂ってしまうのでは無いかと心配になるくらいに。


 こほん。

 やはり、聞くと見るでは、そして自ら体験してみるとでは、まるで違った。

 カケル様の妃となった皆さんの仲が良くなるのも体の芯から納得した。あれをずっと続けられたら、身も心も保たない。しかも、最初の夜という事で、私一人という事もあり、カケル様は手加減されていたというのだから、身心共に震えた。

 ポーラ様もリーディア様も、奇跡を授かった子が産まれるまでは禁欲を強いられて辛そうにされていたが、心底同情もしてもらった。

 カケル様がもたらされたダンジョン産の食肉類は一度食べたら絶対病みつきになる麻薬の様な中毒性を持っていたが、カケル様との性交は比較にならなかった。


 私が閨に通う様になって、一月経つ頃には、ワルギリィも子と祝福を授かり、彼女も戦線を離脱。

 ピージャ様の輿入れまで一ヶ月ほどになっていたので、それまではラルルと私で間を保たせるしかない状況になった。今後も似たような事が起きるのなら、閨要員の補充も検討されたが、私とラルルが揃って倒れている間に、いつの間にか入って紛れ込んでいたオードリーがカケル様と繋がっていた。

 カケル様は、僅か半年ほど前まで赤子だった彼女をさすがに閨に入れようとはしていなかった。例えその外見や体型などから成人年齢に達している様には見えていたとしても。

 それでも、彼女以外絶えてしまった種族の再興の為にと求められ、カケル様は応じてしまった。そして彼女の種族はこういった事にある程度の耐性があるのか、保ちも良かった。複雑な心境は残ったが、彼女に助けられる形で、何とかピージャ様の輿入れまでの時は稼げた。

 その頃にはラルルの妊娠も発覚していた(この子も祝福を授かった)ので、本当にギリギリだった。


 ピージャ様の輿入れまでには、首都の塔の背面側に名前そのものの後宮の建設や人の手配も終わっていた。ピージャ様と同時に挙式したのは、エフィシェナ、ワルギリィ、ラルル。

 しかしその内三人は妊娠済みで、ピージャ様も最初は出来る限りカケル様を独占したがったが、実現できたのは最初の三日間だけだった。その後は、私やオードリーも入って間を保たせつつ、ポーラ様やリーディア様の出産を待つ事にもなったが、補充人員をどうするかは、その子供の立場や法的地位をどうするかと含めて、頭の痛い問題でもあった。


 カケル様は建国前後からすでに人を集められて法体制の整備も進めてはいたがまだまだ都度付け足しという感じで、確定はしていなかったが、まだ焦る必要は無いと仰られていた。どんな堅牢万全に見える制度を作っても、結局はそれを運用する者達次第だと。


 そしてポーラ様とリーディア様の出産まで一ヶ月、イドル姫の輿入れまで二ヶ月ほどになった頃、私と、オードリーの妊娠が発覚。オードリーは、自分の種族が妊娠する可能性は非常に低かった筈と驚いてもいたが、喜んでもいた。これで後に繋げる、と。幸い、二人して、二人の子供共に祝福を授かれた様だったが、ピージャ様は祝福してくれつつも、その顔は引き攣っていた。


 その非常事態は、カケル様が緑の魔境で捕獲したという珍しい獣人族の娘を二人連れてきた事で凌がれた。良い加減長くなってきたので今日の分の日記としては筆を置こうと思ったが、忘れない内に書いておくと、ドースデン帝国に提供している食糧は彼女達の糧食でもあったそうで、それがごっそりと消えていってしまってる影響を受けて食糧探索を余儀なくされ、カケル様の虫ダンジョンという食糧生産基地を見つけて侵入し、そこの魔物達に捕獲されたらしい。

 彼女達は族長の娘という事で、婿になる為の試練とやらもあったらしいが、カケル様は軽くそれらを乗り越えて彼女らを新たな嫁として連れ帰ってきた。


 うん、もう認めよう。

 人には誰しも欠点はあるものだ。

 カケル様は暴食も暴飲もしない。連合王国の大王としての務めも果たし、一日に幾つかずつレベルも上げ続け、さらに食糧の確保等の作業も継続した上で、後継ぎ作りに精を出しているだけだ。年頃の青年としては、十分良くやっている。嫁達からの評価で言えば、満点以上だ。

 だから、嫁も子供もこれからも増え続ける事を、私達は改めて覚悟して受け入れたのだった。


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