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ランニング56:ポーラとリーディアとの挙式と、その後の日々

 式をどこで挙げるかが、問題の一つでした。


 キゥオラとイルキハでそれぞれ挙げる事も考えましたが、後回しにされた方が受ける印象は良く無くなります。

 それに、キゥオラで代々の由緒正しい式場は、つい先日惨禍の舞台となった事で縁起がよろしくないという事も重なり、どこか別の場所で一緒に式を挙げる方向で検討。お嫁さん達やその両親や家臣の皆さん達とも協議した結果、小島の甲板に式場を拵えて、そこで行う事にしました。

 イドル他との婚約式なども同時に行う事になったので、衣装はお嫁さんの人数x衣装替え分が必要となり、ぼく自身も3回くらい着替えさせられる事になりました。

 それだけでなく。キゥオラ、マーシナ、イルキハ以外にも、ミル・キハ公爵や、ドースデン皇帝や選定侯など、大陸中の要人が顔を揃える事になり、その警備体制にも万全の注意を払わなければなりませんでした。


 式そのものの準備は、キゥオラとマーシナ王室の全面バックアップで行われる事になり、要人のお出迎えや相手は主にぼくやお嫁さん候補達が担当。式の司祭役はアガラさんにお願いする事になりました。

 裏方の指揮はアザーディアさんが、それぞれのお嫁さん候補の付き人達を統括してくれる事になりました。

 警備は、ワルギリィさんが表を統括、ガラーシャさんとポーラの眷属たちが裏を固め、バッシュがぼくに、その眷属がお嫁さん候補達一人ずつに付き、各国要人の護衛の案内や監視は、小島と呼ばれる宇宙船を制御するリロイにお願いする事になりました。


 式は自分でするものではなく、他の誰かにしてもらうものだって、何かで読んだ気もしましたが、その通りでした。調理や接待や警備を担当する人達は予め船内に載せて準備を終えた状態で、キゥオラ、イルキハ、マーシナでお嫁さん候補とその家族他招待客を乗せたら、ラグランデ、ガルソナ、カローザで、リルや他の代官となるみんなも乗船。ミル・キハ公爵とそのご一行もお迎えしたら、ドースデン帝国上空へ。


 ドースデン帝都上空に停船し、小型船で帝城からピージャやプロティア皇帝やヴィヴラ君他をお迎えしたら、各選定侯領を巡って選定侯と随行者に同様の手順で乗船してもらい、最後に元ジョーヌ大公領のお城で、エピラッハさんやアマリさん達を乗せて、ようやく招待客や参加者が揃いました!


 いやこれ毎回やるの大変過ぎですね!

 地上は大変なお祭り騒ぎになって楽しそうでしたが、これも皇室や選定侯の御触れの成果でしょう。どこも今日は祝日とされた様ですし。


 式の出だしを務めたのは、ラルルでした。

 マイク要らずの彼女の歌声は、おおよそ一千人に届こうかという参加者の耳をその美しい歌声で満たしてくれました。その華々しい活躍譚の締めくくりに登壇するぼくの気恥ずかしさはこの際スルーするしかありませんでしたが。

 そしてぼくの傍にアガラさんも登壇し、魔道具を使って今日の式次第を参列者に伝えました。

 ポーラ、そしてリーディアとの婚姻の儀式。

 続いて、イドル、エイフィシェナ、ワルギリィさん、リル、そしてピージャとの婚約式。

 ついでですが、エピラッハさんとアマリさんの婚約式。

 それから、ぼくの国というか連合王国の名前や承認式、大公及び選定侯としての就任式を経て、披露宴という名の宴会が行われる事になっています。

 そう、ワルギリィさんはせっかくだからとこの機会に婚約しておく事になりました。ミル・キハ公爵の強いプッシュもあったみたいで、婚約式でワルギリィさんに付き添うのは公爵その人になりました。

 エフィシェナの付き添いは姉のラーガージャナさん、リルの付き添いはラグランデ旧王家に仕えていたという家宰の子孫の方です。

 ぼく?ぼくの付き添いは敢えて言うならアガラさんで、護衛という意味ではバッシュがすぐ側で控えてくれてました。ぼくの全てのスキルが使える状態で。


 横長の広い壇の中央に、ぼくだけが立っている状態で、アガラさんが呼びかけました。


「キゥオラ王国王女ポーラ姫様、イルキハ王国リーディア女王、入場」


 舞台の右袖と左袖から、それぞれの父親に付き添われたポーラとリーディアが静々と進んできました。

 ポーラは黒を基調とした、元の世界で言うとゴスロリと呼ばれるだろう、レースやドレープがたくさんあしらわれたウェディングドレスを纏っていました。ウェディングドレスと言えば白なのかなという先入観がぼくにはあったのですが、リーディアと同じ色や似たドレスのデザインにする事は避けたいというポーラの要望を取り入れたものになっていました。


 リーディアは対照的にシンプルな、普段着ている高級シスター服の基調をそのままウェディングドレスに置き換えたようなデザインでした。白い絹の様な滑らかな布地に、金糸の複雑な刺繍が全体に施された、全体としてとても豪華なんだけど、同時に清楚な印象を受けるデザインでもありました。


 大まかな流れは元の世界の結婚式と同じらしいのですが、やはり大きな違いもあって、新郎と新婦から、それぞれ相手に求婚した理由を集まってくれた皆さんにスピーチで伝えなければならないらしく、マーシナの宰相さんとか有識者の手を借りて、ぼくのスピーチ原稿は出来上がりました。

 ちなみに、ぼくとお嫁さん候補達は、スピーチ内容は本番まで秘密にしました。その方が楽しみになると。ただし、互いのやり取りが盛大にすれ違うとそれはそれで問題になるので、アザーディアさんやラルルという中間的な立ち位置に居るお二人に添削はしてもらいました。


 ぼくの傍に二人の花嫁が立ち、右手をポーラが、左手をリーディアが握ったら、ポーラに向けて語りかけました。非物理マイクは、ラルルが実現してくれました。


「ポーラ。ぼくがこの世界に呼ばれて、神様に与えられたミッションの対象が君で良かったと前にも言ったけど、今でもそう思ってる。ここまでぼくが駆け抜けてきて、いろんな人を助けてきれこれたのは、ポーラがぼくのパートナーでいてくれたからだと信じてる。これからは、ぼくの妻として、共に人生を歩んで行って欲しい」


 実際はポーラから求婚された立場ではあるけど、様式美的に、普通は男性から求婚のスピーチを述べ、女性側がそれを受け入れたなら、その面を覆うベールを自ら外し、ぼくの頬に軽く口付けしてから返答のスピーチを述べました。


「カケル。あなたは、絶望の中にいた私を救い出してくれた。キゥオラの政変に巻き込まれたというだけでなく、黒髪黒目の忌み子として生まれた私には、人並みの幸せなんて望めないと信じていた。あなたの幸せは私の幸せ。あなたの歩みを少しでも私が助けられるのなら、そして共に幸せになれるのなら、それ以上に望む事なんて無い。私も、あなたと共に人生を歩んで行きたい」


 これが一対一の普通の結婚式なら、司祭さんに婚姻の誓いを立てて、互いの唇に口付けして、結婚は成立するらしいです。が、この場にはもう一人の花嫁さんがぼくの言葉を待っていましたから、ぼくはリーディアに向けての言葉を述べました。


「リーディア。ぼくと君の出会う機会は、キゥオラとイルキハの不和と不幸を象徴するような場でもたらされた。ぼくは君を君と知らずに攫い、そして今、ここに夫婦となる為に一緒にいる。まだ不安定な立場のイルキハを任せた後も困難な時は続いてしまっているけれども、リーディアはその家族や親族に支えられながら懸命にその役目を務めてくれている。そんな公の立場を離れた場所でも、優しさや正しさを大切にしようとするリーディアの姿勢には助けられてきた。これからも、ぼくが道を踏み外さないよう、支え続けて欲しい」


 リーディアはその面を覆っていたベールを自ら外すと、ぼくの頬に口付けしてから語りました。


「カケル。あなたは不幸の連鎖に縛り付けられようとしていた私だけでなく、キゥオラとイルキハという国と民をもまとめて救って下さいました。

 ええ。あなたと私が出会ったのは偶然から。しかしそれは、あなたをこの世界に呼んで下さった神様によるお導きでもあったでしょう。

 イルキハの歩みはまだ覚束なく、これからもあなたと周囲の皆様の助力を必要とするでしょう。私が出来る事は、あなたの妻としてあなたを支え、あなたを癒し導く光であり続ける事です。どうか私も、あなたの妻としてお迎え下さい」


 それぞれのスピーチと承諾のサインのキスが済んだら、みんな揃って、司祭であるアガラさんの前に跪き、宣誓しました。


「我ら、病める時も健やかなる時も、互いを慈しみ、愛を育む事を誓わん。この世界を創造されし唯一神よ。我らの婚姻をどうか認めたまえ」


 普通であれば、ここで司祭が聖典から適当と思われるエピソードをいくつか抜粋して説教として新たな夫婦に伝え、神へと祈りを届けるような間を設けた後に、婚姻は神よって許されましたと祝辞を述べて、夫婦は互いに口付けして婚姻は成立する、そうです。


 ただし、アガラさんはそんなテンプレな展開は丸っと無視した進行にしました。


「それでは、共に神に祈りましょう。カケル殿は異世界より神のご意志によって召喚されし者。その婚姻に相応しい祝福を授けて下さる筈です」


 これ、祝福がどう授かるのか、授からなかったらどうするつもりなのかは不明だったのですが、ポーラとリーディアが覚悟を決めたように跪き、両目を閉じて手を合わせ、天に祈りを捧げ始めたので、ぼくも同じ様にして、神様にお願いしてみました。


 神様。

 ぼくをこの世界に呼んで下さって、本当にありがとうございます。

 お蔭様で、こんな幸せな日を迎える事ができました。

 まだ愛って何かとか分かってないかも知れませんが、どうか、二人と夫婦になることをお許し下さい。そしてもし神様の御心に適うのであれば、祝福をお授け下さい、と。


 そう祈ったのと同時に、神様からの反応がありました。

 本当に久しぶりに、チェックポイントを今この時に設定するかどうか、YesまたはNoを問う選択肢が視野に表示されたので、何も迷わずにYesを選択しました。


 直後。視野に表示されていた選択肢は消えて、天から降り注いだ黒と白の光がポーラとリーディアをそれぞれを祝福するように降り注ぎ、二人の中に溶け込んで消えていきました。これにはぼくを含め、参列していたみなさんもびっくりしたことでしょう。ポーラとリーディアは、呆然とするだけでなく、当惑と望外の喜びからか、滂沱と涙を流しつつもこれ以上無い笑顔を浮かべていました。


 アガラさんは予知していたのかどうか分かりませんでしたが、ぼくらを祝福するように問いかけてきました。


「カケルよ。ポーラよ。リーディアよ。汝らの婚儀は唯一神に認められ、その証となる祝福は授けられた。参列した全ての者がその証人となった。幸あれ。幸あれ。幸あれ。新たな夫婦よ。この世に新たな幸せをもたらせ。それが汝らの使命なり」

「然り」「然り」「然り」


 最後だけはテンプレのやり取りがあって、ぼくは、ポーラとリーディアの唇に誓いのキスをしたら、参列した皆さんから大歓声が上がりました。空でよく分からない光がまるで祝福の花火の様に弾けていましたが、きっと誰かが魔法か何かで実現してくれてるのでしょう。


 本来なら、続けてイドル達との婚約式が執り行われる筈だったのですが、参列者の皆さんはまだ騒然としたままです。ポーラとリーディアもぼくにひしっと抱きついたまま嬉し涙を流し続けていましたから、この雰囲気と状態のまま、他の誰かとの婚約式は無理だと判断して、いったん間を空ける事になり、控え室へと戻りました。


 そこでイドル他のお嫁さん候補達に囲まれて、あの祝福について尋ねられたポーラとリーディアは、互いに頷いてみせると、ぼくらに向かって小声で告げました。


「神様の祝福で、あなたの子を授かったと伝えられたわ」とポーラ。

「それも普通の子供ではなく、神子として」とリーディア。

 それでまたお嫁さん候補達は沸騰しかけましたが、二人は彼女達を制止しました。まだ話は終わっていないと。

「ただ、産まれるまでの間、誰も殺してはならないって」

「もしその制限を破れば、宿った子は流れ、二度と神子が宿る様な祝福は授けられないそうです」

「えっと、殺しちゃダメってのは、正当防衛でも?ダンジョンとかのはどうなるの?」

「ダンジョンのは問題無いみたい。普通の獣や魔物とかもね。だけど私なら、眷属を増やしてはいけないという制限も付けられたわ」

「私はイルキハの統治を預かる者ですが、既にある法を破り死刑と定められた罪人を処刑する事は出来る様です。ただ、それ以外の誰かを冤罪などで不当に裁き死に追いやれば、文字通りの天罰が下る様です」

「んー、だとすると、何か偶然でも、そのジャッジラインにかかるかも知れない行為を避けるのなら、二人とも政治とかに関わらない場に、緑の魔境の離宮とか、大島とかに引き篭もってた方が安全かもね」

「同感。眷属が殺してしまってもダメみたいだから、いろんな所に配備してるのも、食糧供給とかに携わってるの以外は引き揚げておいた方が良さそう」

「私の場合は、父など親類に立場を代行してもらった方が良さそうです。私は、絶対に、この子を産みます」

「もちろん、ぼく自身が殺してもダメだろうから、ちょっと色々詰めないとマズイだろうし、ぼく達にそんな制限がかけられたと知れば、良からぬ人達が色々企んで動き出しちゃうかも知れないしね。それは後で国主や代官レベルの人達と対処方法について相談しよう」


 ぼくの言葉に、今日時点でお嫁さん候補から婚約者になる予定のみんなや関係者がそれぞれに反応しました。


「そうですね。私が同じ立場に置かれたら、同様に祝福を授かれるものと信じてその日を待ちますが、私も絶対にあらゆる危険を避けます」とイドル。

「例えばなんだが、護衛の立場の者が、カケルやその関係者が襲われたのを迎撃して、無力化しようとしても誤って死なせてしまってもダメなのだろうか?」とワルギリィさん。

「そこは都度判断されるそうよ。そうしなければ誰かが殺されるか深刻に傷付けられていた様な場面でも傍観しろってほどの無理難題では無いって」

「それは朗報だ。普通の警備手段も許されないとなれば、別大陸か天空くらいしか避難場所は無いだろうからな」


「しかし、ポーラ様の眷属や、カケル様の活動が目に見えて減れば、それはそれで違う被害を生み、死者を生じる様な結果にもつながらないでしょうか?」とエフィシェナ。

「そこまで考慮しろってなると、あちらを立てればこちらが立たずって無理難題になりそうね」とラガージャナさん。

「それはカケル次第だって。デモントの大聖堂を投げ落とした時の様な事をしなければ、それが軍隊でもドースデンの侵攻軍を追い返した時と同様にしたり、それがデモント教徒の信仰が故で起こされるのであれば執着を切る剣を活用したり、とにかくどちらを選んでもダメみたいな選択不可能な状態にはしないって」

「まあ、そういう事なら、何とかなるかな。対策については、この後みんなで、また相談しよう」


 ってことで、婚約式を進める事になったけど、幸か不幸か、ポーラとリーディアの結婚式の時の様な派手な演出というか祝福はもたらされませんでしたが、その分平穏無事に次のエピラッハさんとアマリさんの婚約式まで終わりました。

 壇上には、ぼくの奥さんとなったポーラとリーディア、そして正式に婚約者となったイドル、エフィシェナ、ワルギリィさん、リル、ピージャ、それからコルフェンさん、オルガリアさん、エピラッハさんだけでなく、キゥオラ王、マーシナ王、ミル・キハ公爵、そしてドースデン皇帝と選定侯達が勢揃いしました。


 後回しにしてきた、連合王国や選定侯としての名前を正式に発表し、国主の皆さん達から承認してもらう儀式の為です。

 ちなみに国章も決めたのですが、こちらはぼくとお嫁さん候補達の間でもかなり紛糾しました。参考までに、マーシナは麦の穂と石臼、キゥオラは天秤と硬貨、イルキハは斧とツルハシ、ドースデンは安寧の象徴とされている何かの鳥の姿が国章とされていました。


 ぼくの奥さんになったかなる予定のみんなを背中に、周辺国の国主の皆さんを前に、ぼくは告げました。


「ぼくの家名は、元の世界でぼくを産み育ててくれた両親への感謝を込めて、大地ダイチとします。ぼくとお嫁さんとの間の子供はダイチの名を継いでいく事になるでしょう。

 樹立する国の正式名称は、テ・ラピア・ホピア。星龍さんに教えてもらったこの星の名前をもらうことにしました。最後の避難地とか、最後の希望とか、そんな意味らしいです。でも普段使うのには長いので、ホピア連合王国を当面の国名とします。ぼくが初代の大王になります。直接的な所領としては、旧イルキハ王国、旧カローザ王国、旧ガルソナ騎士侯国、旧ラグランデ王国、それぞれに代官を置いて治める事になります。

 ドースデン帝国に於いては、ダイチ大公家を興し、旧ジョーヌ大公領と旧デモント教国領とを統治下に置きます。こちらはぼくとピージャの間の子供が継承していくことになるでしょう。その他の領地については、ぼくの妃となるみんなと相談しながら決めていく予定です。大王位の継承者については、おそらくぼくが指名し、その次からはその継承者が順々に指名していく事になります。

 連合王国の首都は、ああ、見えてきましたね。あの大きな浮島を、土地枯れを引き起こす中心地にもなっていた呪われた地を再生させつつありますが、その上空に浮かべて首都とします。名前は、シャシーラ・トル・アマニ。意味としては希望の島、って感じになります。

 地上との往来に関しては、ゲートや、皆さんが今搭乗されているこの空飛ぶ船、ジスールを用います。架け橋という意味です。

 どちらも、悪用しようとした途端に、この大陸の礎となられた星龍チェレア・ワックにより消滅させられると確約されてますので心配はご無用です」


 話を聞くのと実際に見るのとは違う。王様や皇帝とか国主の皆さんの表情は、驚愕に引き攣ってる感じでした。はしゃいでるヴィヴラ君の姿が癒しでしたね。

 リロイが警備ロボット達を整列してくれてた着地スペースにジスールを降ろしたら、承認式の始まりです。

 ポーラのお父さんが進み出て宣誓してくれました。

「キゥオラ王国は、ホピア連合王国の成立を認め、盟邦としてその活動を支える事をここに誓う」

 続いて、イドルのお父さんが進み出て宣誓してくれました。

「マーシナ王国も、ホピア連合王国の成立を認め、盟邦としてその活動を支える事をここに誓う」

 さらに、ミル・キハ公爵が進み出て宣誓してくれました。

「ミル・キハ公国もまた、ホピア連合王国の成立を認め、友邦として平和裡に協調する事をここに誓う」


 最後に、ドースデン帝国のプロティアさんとヴィヴラ君が並んで進み出て、宣誓しました。

「ドースデン帝国は、ホピア連合王国の成立を認め、その初代大王となったカケル・ダイチを、旧ジョーヌ大公領と旧デモント教国領とを併せたダイチ大公家当主として迎え、また大選定侯として任じる。これは他の選定侯とは違い一票ではなく二票を国政の評議の場にて投じる権利を持つものとする。これはドースデン帝国成立から百年後に選定侯が選帝侯となった時にも継続するものとする。

 また、ドースデン帝国全体が陥っていた食糧難と土地枯れという二つの苦難を解決して頂いた功に報いる為、カケル大王存命時と、大公就任から百年の間は皇室への納税を免除するものとする。

 さらに、私の養女として、ドースデン帝国皇室を代表してカケル大王に嫁ぐピージャとの間に娘が生まれれば、次代皇帝になるヴィヴラの第一正妃として迎え、その子がドースデン帝国を継ぐものとする」

 プロティアさんに続いて、少し緊張しながらも、ヴィヴラ君が大きな声で宣誓しました。

「ドースデン帝国は、ホピア連合王国の盟邦として、この世界の存続の為に緊密に協力していく事をここに誓います!」


 決められた台詞をきっちり言えたことでほっとしたのか、ヴィヴラ君が普段の朗らかな口調でお願いしてきました。


「これからも、ずっとお友達でいてくれますか?カケルさん」

「もちろんですよ、ヴィヴラ君」


 そして二人で握手したところで万雷の拍手に包まれ、リロイ演出だろう祝砲が轟き、上空から飛来した飛行騎兵達が花吹雪を会場に撒き散らしました。

 そんな賑やかで厳かな場面は、リーディア達を代官に任じる任命式と、ポーラが次代のキゥオラ国女王として国を継ぐ事が発表されたら、宴会である披露宴が開かれました。

 大島の先端に築かれた会場からの眺めは絶景で、ドースデン帝国の大半が眺望できました。提供されるお肉も野菜もダンジョン産で、これまでは出すのを控えてきた最高品質の物で、あちこちで感涙の涙が溢れ、咆哮が上がり、お代わりを求める列が絶えませんでした。

 ちなみにですが、ここに招かれなかった貴族の不満を緩和する為に、民衆にも振る舞うと確約させた上で、溜まっていたバッファロー的な魔物のお肉とか、海産物ダンジョンの幸とかも提供しておきました。


 会場のあちこちで、ラルルや、他に手配された歌手や演奏者達による歌曲とかが演奏されて、午後も半ばくらいまで、参加者が限界まで食べてもう無理という頃になって休憩の時間を挟んでから大半の参列者を送り帰しました。どれだけの人に挨拶を受けたかは覚え切れていません。リロイに映像とかでも残してもらってるから、後でゆっくりと見返していくつもりです。

 お祝いの品とかに危険物が混入される可能性もあったので、受け取りは乗船前に済ませて、保管場所は別の浮島にしてありました。そちらで様々な方法で危険が無いか調査と分析を終えてから受け取る事になっていました。


 盛り沢山だった一日も、終わってみればあっとういう間に過ぎた感じで、ぼくとお嫁さんとお嫁さん候補だけになってから、ポーラとリーディアがぼくやみんなに告げました。とてもプライベートな話になるので、他言無用と約束させた上で。


「あの祝福を受けて、カケルの子供を神子として授かった時に、神様から聞いた話には続きがあってね」

「その、産まれるまでの間は、性交を禁ずるとのことです。母体となっている私やポーラは」

「だからね。それまでの間は、カケルの相手を他のみんなにお願いしないといけないんだけど」

「リルやプーテはまだ成人してないから除外。イドル姉もまだ喪が明けてないから無理とすると」

「残るのは、エフィシェナさん、ワルギリィさん、それからピージャさんとなりますが」


 エフィシェナが勢い良く挙手して名乗り出ました。


「ハイっ!私はいつでも!問題ありません!」


 視線を受けてバトンを渡されたようなワルギリィさんは、どっちでもいいかなという感じでした。


「まあ、どうしてもという時があればな。とはいえ、最初の奥方様達の護衛と出産の方が優先順位は高いだろうから、私に与えられる機会は後回しでいい」


 そしてピージャは悩ましげに言いました。


「私は、懐妊は早ければ早いほど望ましいと思っていました。しかし、あの婚姻の儀式の最中に起きた事を考えると、非常に悩ましく・・・」

「えっとさ、ポーラもリーディアも、式のずっと前からカケルとする事はしてたのよね?なのに、あの式の最中の懐妊というのは、どういう事になるの?」

「誰の子か、という意味であれば、カケルの子種と私の胚を神の祝福によって結び合わされたとの事でしたので、紛れも無く、二人の間の子であると、神様は仰られました」

「まあ、神様がそんな所で不手際(ポカ)するわけも無いけど、普通なら新婚直後って一番愛を深めたい時期に禁欲を強いられるのも、少し悩ましいよね。子を授かる事自体は祝福で間違い無いのだけど」


 ピージャの言葉を受けて、みんながわいわいと意見を交わしてると、またエフィシェナが挙手しつつ、大きめの声で言いました。


「そう、そこ!子供を授かる事自体が祝福なんです!そこを間違えると大変な事になってしまいます!」

「例えば、どんな?」

「いくらでも思い付きますけど、婚姻の儀式で神様からの祝福が、今回と同じ様に起きなかったらどうしようとか、ちゃんと産んであげられなかったら二度と神子を授かる機会がもらえなくなると不安に駆られたり、産まれた子供が普通の子供なだけで失望したりとか、自分も子供も精神的に自分自身で追い詰めちゃって心中しちゃうとか、ありそうでは?」


 みんながシーンと静まってしまった中、ワルギリィさんが言いました。


「一人目の子は神子だった、なら二人目以降は?とかも同様だな。神子として産まれた者は、どうしても、そうでなく産まれた子供を見下すだろう。本人がそうしなかったとしても、周りの見る目は違ってくる。それが全員では無かったとしてもな」

「そうなんです!子供はみんな神様からの授かりものなんですから、みんな等しく愛してあげなくてはいけません。そうでないなら、早晩、カケル様のこの連合王国は次代以降で崩壊していくでしょう。

 だから、私は、別に特別な式も祝福も要りません。そりゃあ、授かれるのなら授かれた方がいいかも知れませんが、みんな、真剣に考えてみて下さい。今後も妃は増えるかも知れず、それぞれが複数の子供を授かるとして、みんながみんな、あんな特殊な祝福を授かると思います?私は、多分そうはならないと思います」

「まあ、確かにそれは無さそうだな。現実的に考えて」

「はい。だからこそ、私は、ポーラ様やリーディア様やイドル様と比べて大変に出遅れてる分、カケル様との関係を深めて、愛情を育みたいです。その結果普通にみごもれたら、私は普通に産み、普通に愛情を注いで育てます。私とカケル様の間に授かった子供なのだから、そうしない理由がありません!」


「そう、ですね。式の最中に起きた事や、ポーラとリーディアに聞かされた事で、私は私自身と、まだ産まれてもいない子供を追い詰めそうになっていました。エフィシェナが言ってくれた通りです。もし奇跡がこの身にも起きなかったら、もし産まれた子が神子でなかったら、我が身もせっかく授かった子も呪い儚み、最悪の選択肢を選んでいたかも知れません」

「いけませんよ、イドルさん!あなたがどれほどカケル様を慕っているのか、カケル様もどれだけ情を抱いているのか、お二人を見ていれば伝わってきます。ね、カケル様?」


 エフィシェナの気遣いに感謝する為に、彼女をハグしてお礼を言ってから、イドルもハグしてから、イドルにも、他のみんなにも伝えました。


「イドルもだけど、他のみんなも焦る必要なんて無いし、あの奇跡が起きるかどうかとか、神子として産まれるかどうかとかで、ぼくは奥さんも子供も差別することはしないから。今回みたいな式を毎回やるのは大変過ぎるし、他の人にも起きたんだから自分にもとか責めるのは止めてね」

「はい、分かりました、カケル。でも、あなたと結ばれる日が本当に待ち遠しいです」

「ぼくもだよ、イドル」


 この場には他のみんなもいるし、ちょっとだけキスを交わしたら、今日正式にお嫁さんになったポーラとリーディアの間に戻りました。


 二人ともぼくをぎゅっとハグして両側からキスもしてくれましたけど、また話し合いを再開しました。


「でも、本当にどうしようかしら。蜜月というくらいだから、最低でも一月か二月は、私とリーディアでカケルを独占するつもりだったけど」

「流石に、大王にもなったカケルにもその間ずっと禁欲を迫る事も出来ませんし、やはりエフィシェナ達に相手を務めてもらうしか無いのでは?」

「ぼくも、なるたけ我慢するようには出来ると思うけど?」

「それは、あんまり信用出来ないかな」

「そうですね。だんだん、激しさも増してきていましたしね」

「私とリーディアだけだと、交互でも大変だったものね・・・」


 ゴクリ、と複数人の喉が鳴ったりしました。

 誰がその中に含まれていたか、ぼくは聞き分けられませんでしたが、お嫁さんやお嫁さん候補の輪の外側にいて、話をずっと聞いていたラルルが進み出てきて、ぼくの前に跪いて言いました。


「あの、そういう事情でしたら、私も名乗りを上げても良いでしょうか?」

「えーと、体だけの関係って訳じゃ、無いわよね?」

「皆様の様に、政治的な立場や権威とか、子供への継承位とかはまるきり望みません。私はこれまで何度か恋人もおりましたし、処女でもありません。

 しかしカケル様はそういった事は特に気にされないそうですし、そうであれば、私も身籠るのであれば、カケル様の子供を授かりたいと思ったのです。情を通じ合い、子を成すほどにもなれば、私もカケル様の嫁として迎えて頂きたいです。ただ、今回の様な王侯貴族の皆様を賓客として招いて頂く必要はありません。今ここにいる皆様や、私の家族などがいれば、それで十分でございます」

「もしそういう事をするのであれば、ぼくはラルルもちゃんとお嫁さん候補として迎えて、同じ様に扱うよ。もし結果的に子供が授からなかったとしてもね」

「ありがとうございます」


 ラルルが何かを期待する様にぼくを見上げてからその瞳を閉ざしたので、彼女を軽く抱きしめて、唇を触れ合わせておきました。

 それでラルルも身を引いて、みんなで話し合って、これからの一週間は妊娠中期間をどう過ごすのが最善なのか、その準備に費やす事にしました。その後はなるたけポーラとリーディアと時間を過ごし経過を見ながら、エフィシェナ、ワルギリィさん、そしてラルルがぼくの寝所に通う事になりました。


 それだけ聞けば、どれだけ色ボケしてやがるんだとか言われそうですが、結婚式直後から子供が産まれるまではそういうこと出来なくなるとか、誰にも予想できてませんでしたしね。。


 そんな訳で、予想外に起きた出来事への対処を終えるまでには、ほぼ一ヶ月くらいかかりました。

 ポーラは式のほぼ翌日から、アザーディアさんたちを中心に、緑の魔境の離宮の受け入れ体制を整え、リーディアは代官としての役割をご両親にお願いする事になり、その引き継ぎはジスールで行う事で、万が一の事故も起きない様に配慮しました。

 首都の都市設計は、イドルやリルやピージャ達が中心になって進めました。旧ジョーヌ領と旧カローザ領とキゥオラ王国にゲートを設置する場所を選び、警戒警備体制も定まり、式の一ヶ月後には試験運用が始まりました。二ヶ月後からは領主に認定された商人や貴族や個人のみが通行を許される様になり、ゲートが置かれた場所周辺は建築ラッシュと爆発的な好景気が起きてると聞きました。


 そして、式の一ヶ月後までは何だかんだ忙しかったのもあって我慢できたのですが、その後からはエフィシェナを皮切りに、数日でやはり一人では無理だという事になって、順番的にワルギリィさんにも入ってもらう事になり、二人のどちらかの体調の都合などが合わない時にはラルルにも閨に入ってもらいました。


 もちろん、その間もレベルは一日に複数個は必ず上げる様に務めました。式を挙げるまでに300には到達して、その時のサブスキルで大抵の事態には対応できそうだったのですが、設置できるゲートの数を増やしていく為にも、想定外の事態が将来起きた時に対応する為にも。


 そうしてポーラとリーディアと挙式してから半年ほどは、全体として平穏に時は流れていき、二人のお腹は順調に膨らみを増していきました。その間に、エフィシェナが普通に妊娠したのが発覚したりして、ピージャとの挙式を少し早める事が決まったりもしましたが、まあそれはそれでお目出度い事なので。


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