ランニング54:浮島探索と首都立地確定
西岸諸国領主会議の翌日。ぼくは、これまで訪れてなかったエリアに向かっていました。
「何でも浮かべてしまう不思議な石が埋まってたりするのかな〜」
とかワクワクしながら、キゥオラとかのある大陸とは星の裏側の、ずっと西北の方のエリアに、浮島はいくつもあるようでした。レベル100になった時に、レベル数のx100kmの高さまで登れる様になってるので、レベルが250以上になってる今は、高度25000メートル以上から地表を見下ろせます。
レベル300を目指す為に、走行距離を稼ぎつつ、ショートワープなんかも織り交ぜつつ、目的地に近付いて行くと、大小様々な大きさと形をした浮島が浮かんでいる空域が見えてきました。高度は、だいたい二千から三千メートルくらいに、少なくとも数百個の単位で島が浮かんでいる光景は壮観でした。
「いかにも異世界って感じでイイね!」
「油断はされないで下され、カケル様」
「わかってるよ、マッキー。まずは遠距離から偵察だね」
サーチスキルも併用しながら、浮島諸島の周囲をぐるりと駆け巡ってみました。
おおよそ直径100kmの範囲に、小さいのは数十メートル、中くらいので百から数百メートル、大きいので数キロメートルの大きさの浮島が点在していました。高度により浮島の大きさの偏りはほぼ無かったのですが、浮島諸島の中心部には、一際大きな浮島が固まっていて、その中央、一番高い位置にいるまん丸な浮島は大きさこそ中くらいの1キロほどでしたが、位置からして特別な存在である事が窺えました。
ぼくを迎撃する存在の有無も探りながら走っていたのですが、この浮島諸島の至るところに存在していました。ただし、それらは魔物では無いようで、どちらかと言えば兵器の類で、それらを統制している施設が、先ほどの特別な位置を占めている浮島に在りました。
ぼくの天敵になり得るスキルを無効化する存在はサーチスキルにはかからなかったので、少し大胆に動いてみる事にしました。この浮島諸島に人間やその類はいないようなのですが、全体を統括制御してる存在が、先ほどの施設に居る事が分かったので、その中央島の遥か上空からショートワープでお邪魔しました。
この異世界にもかつて存在したという先進文明の名残りが感じられる、ファンタジー風味の無い、どちらかと言えばSFに出てくる要塞の様な施設の隔壁の類もシフトで通り抜け、統制官?らしき存在がいる場所まで一直線。
そこは数多のモニターや操作パネルが円形に配置された中央管制室とでも呼ぶべき一室で、その中心には頭部とかにケーブルの類を接続された人型の何かがいました。
「えーと、こんにちは。お邪魔してます。言葉、通じてるかな?」
人型の何か、ロボットだかアンドロイドだかは分からないのですが、は、びっくりした様にぼくに向き直ると尋ねてきました。
「・・・何故か通じていますね。あなたは、どうやってここに?そしてなぜ、ここに?」
「どうやってから説明すると、神様にもらったユニークスキルを使って。何故ここに来たかって言うと、ぼくの都合で浮島が欲しくなって、探したら見つけられたから。でも勝手に持っていくのも怒られそうだったから、許可をもらいに来た感じ?」
相手のロボットか何かは、立ちくらみを覚えたのか、数秒間フリーズしました。
それから、おもむろにぼくをじっくりと見つめると、何かを分析したのか納得した様に言いました。
「あなたが、普通の人間ではあり得ない生身で、このジェークトリアの周囲の空を時速250km以上の速度で走り回り、最終的には高度一万メートル以上の高空からこの管制室まで一気に侵入した事から、あなたの言う言葉には信憑性を感じていますが、浮島が欲しくなったというのは?」
「それも説明するけど少し長い話になるから、先に名前があるのなら教えてもらえないかな?ぼくの名前はカケルだよ」
「私の製造型番などを伝えても意味は伝わらないでしょうから、リロイとお呼び下さい」
「うん、よろしくね、リロイ」
「・・・よろしく、カケル」
リロイの外見は、剣のダンジョンにいた装飾付きマネキン剣士が近いのだろうけど、元の世界のアニメや漫画に出てきたアンドロイドとかの類の様に、人に模した顔や体は備わっていましたが、服は着ていませんでしたし、凹凸の無い機械の体である事は見て取れました。
ぼくは、元々はこの世界とは違う異世界から神様に呼ばれてきて、ランニングというユニークスキルを与えられ、その後どんな日々を過ごしてきたのか、そしてこれからの日々の為に、自分が持とうとしている国の首都にする為に浮島を持てたら良いなと思ってる事などを素直にリロイに伝えました。
リロイは、ぼくから聞いた情報を整理するのに数分間沈黙しましたが、尋ねてきたのは意外な存在に関してでした。
「あなたが星龍チェレア・ワックに会ったというのは本当か?」
「会ったと言っても、神経細胞の末端か何かとだけだよ。それだけでも死を覚悟したというか、マッキーの身代わり人形が十個も消し飛んだから、実際にはそれくらい死んでてもおかしく無かったね」
「当然だ。あの高位存在の情報量に人間が接して精神が崩壊しない訳が無い」
「まあ実際怖かったから同意はするけど、神様とも何度もあってるけど無事なのは、その情報量とやらを絞ってくれてるから?」
「間違い無くそうだろう。しかし、星龍が避難させ、その身を挺してまで守った人々の末裔までそんな事態になっていたとは。カケルが来ていなかったらいずれ世界ごと終わっていたというのも頷けるというものだ」
「それで、この浮島は何なの?それに、リロイは誰かから頼まれてここを守ってたの?」
「カケルが自身の持つ情報を誠実に開示してくれた事は伝わってきたので私もまた語ろう。ここは元々、別の星々から避難隔離された人々が持ち込んだ物だった」
「物?島をそのまま転移させてきたって事?」
「異世界から神に召喚されたという事は事情を聞かされているかも知れないが、宇宙を渡る為の移民船団だ。遥か昔に、この星を最後の避難場所として神に導かれた後、その民は、星を駆け巡る手段を手放し、地に根ざすよう命じられたのだ。この宇宙船団を握る者が絶対的な権力を得て、避難民を支配下に置く事が目に見えていたからな」
「えーと、宇宙船の外側を島みたく見えるように土とかで覆ってるという事?」
「おおよそ、その様なものだ。偽装の一種だと言えば分かるか?」
「うん。でもさ、神様がそう決めたのなら取り上げたり、完全に隠したり壊しておく事も出来た筈でしょ?地上に降りた人々は、またそれなりの時をかけて文明を発達させたと思ったらまた互いを滅ぼしあったみたいだけど、その時に見つかると不味かったんじゃないの?」
「それも偽装と隠蔽の技術の組み合わせでな。神による助力も相まって、この船団は隠されたまま存在を維持された」
「んん〜?ぼくには、走ってきて普通に見えたけど?」
「そもそも、神に与えられたというサーチスキルとやらにこの船団がかかったのが一つの啓示だろう。見えぬ筈の物が見えるというのも、ここまで何事も無く入り込めたというのもそうだ。この星の大陸で栄えて滅ぼしあった民も高空に至る技術を持っていたが、ここを探し出す事も辿り着く事も出来ずに終わった」
「つまりこの船団は、神様の意思で隠され残されてきたって事?」
「その通りだ。再びこの船団を用いて宇宙へと旅立つ事が許される時が来たという事なのだろうな」
リロイが数え切れない操作パネルを目に留まらない速度でいじり始めると、スリープ状態にあったパソコンが次々に起動していく様な音がして、今まで何も映って無かったモニター類にもいろんな光景が映り始めたので、慌てて止めました。
「ちょっと待って!まだぼくらは、星龍が礎になった大陸でさえ土地枯れとかの問題をようやく解決できるかなってくらいで、まだ宇宙に出て行くつもりは無いよ!」
「・・・それは了解した。だが、首都にする為の浮島を見つけに来たのでは無かったのか?」
「それはそうなんだけどね。別に宇宙船を欲しがってた訳じゃないし、浮かんでる手頃な島があったら、それを持ち帰って町とか築いていけばいいかなって」
「水はどうするつもりだったのだ?」
「いやまあ、そこもダンジョン産の何かとかで適当に誤魔化せないかなーって。ぼくやポーラなら、距離とか重さとか無視して運んだり繋げたりも出来ちゃうから」
「・・・・なんと無計画な。お前やそのポーラとやらが死んだらその都市は終わりではないか」
「どちらにしろあちこち移動させようと思ってたから、もし自分が寿命で死ぬ時にでもなったら、あの大陸の中央を縦断してる大河の真ん中にでも設置しようとか思ってた。そしたら水には困らないし、両岸から橋みたいのかければ色々便利だろうし」
ぼくの行き当たりばったり具合に絶句させられたのか、リロイはまたしばらくフリーズしました。
それから再起動がかかったのか、メインスクリーンらしき大きさのモニターに星龍が礎となった大陸の俯瞰地図を映し出してくれました。
「おお、すごい!これもしかして衛星写真?」
「その様な物だ。それで、お前の領地がどの辺りになって、どこに島を浮かべて、最終的に安置しようとしてたのがどの辺りになるか教えてみろ」
という事で、おおまかにどの辺りがどの国の領地とかを指し示して、カローザとイヴィ・ゾヌの中間のどこかに浮島を浮かべたり、最終的に安置する考えを伝えました。
「・・・何はともあれ、星龍殿に打診して了解を得ておけ。そうすれば、後はお前の周辺に了解が得られれば、手頃な浮島らしい事も無い船を見繕ってやる。低開発で、最低限のインフラだけ動かせて、空き地が広ければ広いほど良いのだろう?」
「うんまあ、だいたいそんな感じで」
「星龍殿には当然聞かれると思うが、その浮島を支配の為に使うつもりは無いのだな?」
「統治のためには使うだろうけど、そこまでかな。上空から攻め滅ぼすのなら、別に浮島とか無くてもぼく自身で出来ちゃうし。そんなつもりは無いけど」
「ならば、外敵に攻められない限り兵装などは封じておけば大丈夫だろう。後はそうだな。これを持って行って、星龍殿に了解を得たなら、ここにまた戻って来い」
「分かった。行ってくるね」
という訳で、リロイからキラキラ光る名刺か紙くらい薄いスマホめいた何かを受け取ったら、星龍さんの洞窟の手前まで行き、声をかけたら入ってこいと言われたので、またあの地下への大穴へと向かいました。念の為、また十五個ほどの身代わり人形を身につけた上で。
ただまあ臨死体験を再びするような事は無くて、星龍さんは、だいぶその情報量?を落としてくれてるみたいで、身代わりが弾け飛んだり塵になって消えていったりはしませんでした。
「わずかぶりだが、何かあったのか?懐かしい雰囲気の何かを身につけている様だが」
「ええと、あなたなら、前に来てから今日来るまでの間にどんなことがあったのか把握されてるかも知れませんが、一応お話ししておきますね」
前に来た時は、聞かされた内容にぶち切れてデモントの大聖堂を空から投げ落として、選定侯の領都を更地というかクレーターにしたんでしたっけね。もうずっと昔の事の様に感じてしまいます。
それからどんな事があって、どんな事をこれからしようとしているのかざっと説明していき、その最後にリロイから渡されたキラキラ光る薄い板を取り出して、星龍さんの方に掲げました。
「首都を定めなければいけないって言われても、どこの土地を選んでもメリットもデメリットもあるって言われたから、いっそ移動できる土地の方がいいかなって思って。それで浮島をサーチスキルで探したら、なんだか遥か大昔に宇宙のどこかから移民してきた時に使われた宇宙船団が偽装してるのを見つけて。その時は宇宙船だと知らなかったんだけど、船団を管轄してるリロイってロボット?か何かに、まずあなたに許可をもらって来いって」
「懐かしいな。我がそれを見るのは、数千年ぶりだ・・・。リロイにも言われただろうが、この大陸を滅ぼす為に使うつもりは無いのだな?」
「無いよ。宇宙船として使うつもりも、多分だけど数百年くらいは無いだろうし、その頃には自分は寿命でいなくなってる筈だし」
「もしもこの大陸を滅ぼさんと利用するのなら、すぐに消滅させる。それを周囲の者にも、その土地を将来受け継ぐ者にも伝え忘れさせるな。忘れた時が滅びる時だとも」
「えーと、デモントの領都を滅ぼした時の様なのは良くて、どういうのならダメなの?」
「其方が大聖堂を空から投げ落としたのは、そうされるだけの咎があったからだ。細々とした国と国の争いに介入するくらいのことなら我も介入しない。迷うくらいの事をするのなら、相談に来い」
「ここに来れなくて、悩むくらいならするなって感じですね。了解しました」
それから、星龍さんは光る板に何かをしたらしく、一部の輝きが変わっていたのを持ったら、リロイの所に帰りました。サブスキルとかいろいろ使いつつ、レベル上げの為に走ったりもしつつ、それでも3時間も往復にかかってないので、ぼくも成長したものです。
リロイは、輝きの変わった光る板を受け取り、どんなやり取りがあったのか聞き終えると、呆れた様に言いました。
「いくら情報量を抑えているとはいえ、お前の様に神の加護を受けていない者を星龍の側にまで近付けようとするなよ。その途中で絶対に死ぬぞ」
「分かった。その洞窟の入り口までって伝えておくよ」
「そうしろ。星龍殿から、お前に譲渡しても良い艦種や装備についても指定を受けたので、それを予め私が選んでおいた物の中からフィルターをかけると、残ったのがこれらだ。選べ」
メインモニターに映し出されたのは十個ほどの浮島というか中身は宇宙船でした。
一番大きいのは、縦5km、横3kmくらいの歪んだひし形の浮島で、その甲板というか上部表面はおよそ平地に覆われていて、都市を築くのならこのくらいの広さがあった方が良いのかも知れません。宇宙船としてのスペックとかもリロイがいろいろ説明してくれて、サイズの小さめなのでもこんな特殊機能がーとか紹介もしれくれたのですが、大きめのを一つと、小さめのを一つで良さそうでした。
「首都用に一つと、そこまでの移動手段としての浮島を一つ、頂けますか?」
「どの道、ここに再び辿り着ける者が現れるまで、この船団の所有者は不在だったのだ。お前を仮の所有者として登録しておいてやる。選んだ船はすぐに使うか?」
「すぐに持って帰ると、大陸中が大騒ぎになるでしょうから、一応、帝国や王国とかの領主さん達とかには周知しておいてからのが良さそうですね」
「・・・お前にそれだけの分別が残っていたのは良い事だ。私もずっと変わり映えの無い日々をずっと送り続けていたからな。お前の戯れにも付き合ってやる」
「どうもありがとうございます?」
何だか偉そうな口調なのですが、久しぶりに働けるとあって嬉しいのかも知れません。パネル操作する指先が何だかウキウキしてそうでしたが、じっと見てたらとっとと行けという仕草をされてしまったので、その日は帰る事にしました。
ただここまで来るのも一手間なので、ゲートを設置させておいてもらったけど。リロイ自身にはまだ使えないようにしておくと伝えた事で少し不機嫌になったみたいですが、感情豊かなロボット?ですね。
翌日、お嫁さん候補や関係者達を連れて、リロイの元を訪れて、みんなを驚かせました。
リロイは何かとても言いたげにしてましたが、淡々と挨拶をこなし、みんなに乗艦証となるバッジみたいのを渡して、ぼくの首都と往復用に使われる予定の小島に案内してくれました。
みんな、ある程度はぼくと高空をかっ飛ばした経験があるのですが、浮島が360度どの方向にも浮かんでる光景には息を呑んだり、歓声を上げたり、それぞれの反応を示してました。浮島が実は何かとか、危ない事に使われないかとかについては、事前にも説明しておいたし、リロイからも念押しで説明してもらっておきました。
小島といっても全長が三百メートル以上はあるので、軽く千人単位で運べそうでした。これは中央管制島に収納されていたもので、小島としての外見は完全に偽装。偽装をしてない状態だと、少し大きめな宇宙船という外見でした。看板に数百人以上載せてても大丈夫なくらい、気流や重力制御とかもバッチリだそうで、倉庫にはかなりの重量の荷物を積んで運べるそうです。
で、首都にする予定の大島の方は、植民船と呼ばれる艦種で、兵装などは最低限。引き渡される時も、暴徒とかが数万人なだれ込もうと撃退できる警備ロボットを艦内に待機させておくくらい。あとは、高空までやって来れるような生物や魔物がいれば撃退できるような兵器が一通り。
水などの最低限の生活インフラも備えられていて、本来はこの植民船を移住先の地面に降下させて、船体そのものを資材として解体しながら、生活基盤を地上に構築する為に使われるそうですが、避難してくる前の文明技術などをなるべく持ち込ませない為に、この移民船も上空に待機させておく事になったんだそうです。
そんな過去経緯の説明はともかく、ほとんど何も無い平原が広がってるだけの様に見える島の広さにみんなは歓声を上げました。島の中央に建っている尖塔が艦橋というか管制塔らしいのですが、その周囲に王城を築いてしまうのが良さそうです。
「人口はどれくらいを見込んでいるのか?」
「どうだろ?飛び地とはいえ広い領域をカバーしきれるだけの人をここに集める予定だけど、一気にここを大都市にする必要は無いかな。少しずつ街を大きくしていく方が楽しみも大きくなりそうでしょ?」
「その方が地表に必要とされる施設を計画的に築けるか」
そんな話をリロイとしていたら、イドルやピージャ達があちこちを駆け回ってから戻ってきました。
「川や泉などが見当たりませんが、どこかから運ばれるのですか?」
「えーと、ここは浮島の様に見えて、とてもとても沢山の人を、星の海を超えて運ぶような宇宙船なんだ。だから、そういった水源と地表とをつなげて、川や湖みたいのを作れもするし、使用した水を浄化して再利用出来る様にする仕組みも兼ね備えてる。たぶんだけど、食糧生産工場みたいのもあるよね?」
「この船単体だけでも、百万の人口を年単位で支えられる。十万程度なら無補給でも数十年単位は余裕だ」
ぼくやリロイの言葉が衝撃的だったようで、イドルもピージャも固まってしまいました。まあ、この浮島というか移民船一隻で、地表というか甲板部分だけでもたぶん元の世界の東京の中心部とされる山手線の内側に近いくらいの面積があって、しかも移民船としての機能は、地面というか甲板の下の船体の中にあるのですから、とてつもない生産能力があるのも頷けます。
よく、元の世界の進んだ技術で異世界の遅れた技術を見下して生産や商売とかで無双する作品が巷に溢れてましたが、ここでは逆ですね。ぼくが死んだ頃の地球なんて全く相手になりません。最も、そんな進んだ技術を持っていたからこそ、とんでもない規模の破壊を撒き散らしてその大半は滅び、神様の導きで避難させられてきてもまた何度も滅びの憂き目を見ているとか、人類って本当に業の深い生き物なんだなとしか思えませんでした。
その後は、お嫁さん候補達にぼくとリロイは取り囲まれながら、どこに何を作ろうという話を地面に指で絵を描いたりしながら進めましたが、リロイがその結果をタブレットらしき機器に入力して、後から誰でも見返せる様に操作方法まで教えてくれました。
それからこの船というか浮島というか首都の名前を決めようとしたけど紛糾して決まらず、決定は持ち越しとなりました。ひとまずは「大島」というある意味そのままで仮に呼ぶ事にして、この大島の管制塔の最上階にある管制室にみんなで戻りました。
ぶっちゃけ、ぼくやお嫁さんたちと召使や官僚達くらいだけなら、この管制塔だけでも暮らしていけてしまうらしいのですが、それはいくら何でも味気ないので、管制塔の外側に建物やインフラが完成するまでの宿泊施設的に使うことにしました。
管制塔最上階の管制室からは、大島の全貌を眼下に収める事が出来て、リロイが人口増加と文明技術を進ませ過ぎない程度に調整した施設類を建設する都市計画をホログラフで表示してくれたので、さらにみんなの議論?に熱が入りました。
途中の休憩で、この大島をあの大陸のどこに浮かべておくかという話になった時、どこの国の街や都の上空にも基本浮かべない事になりました。こんな大きな物体が空に浮かんでたら恐怖しか感じないでしょうから、高度もある程度高めに設定して、ル・ホライやワイバーン達を番犬代わりに放っておけば、並大抵の魔物では接近する事さえ叶わないでしょう。
「まあだから、国王や皇帝とかに話は通しておくとしても、基本的に見せるのは小島というか、連絡船の方だけにしておいた方がいいわ。あれだけでも十分な衝撃でしょうし」
「そうなるのかな。驚かせ過ぎて老齢の皇帝陛下の心臓を止めたくも無いしね。もしどうしても見学に来たいって言われた時は、みんなで相談してどうするか決めようか」
そして、普段浮かべておくのは、領民がいなくなった、元は呪いのダンジョンがあった土地上空となりました。あそこならこの巨体が落下したとしても、被害は知れてるでしょうし。リロイに聞いたら、そんなミスは万が一いや億が一にも起こさないって怒られたけど。
いろいろ話し合った結果、ここで普段はみんなで過ごして、ゲートとかを通じてそれぞれの職場に出勤。連絡船で送っても大した時間はかからないだろうし。緑の魔境の方は離宮兼農業施設やリゾート地として扱う事にしました。そちらの離宮の建設に関しても、この大島に首都を築く前にすぐに終わらせられるとリロイが提言してくれたので、オ・ゴーさんに事情を説明して、リロイとも直接引き合わせたりした上で、進めてもらうことになりました。ちょっとだけ前文明の切れ端っぽい技術は持ち入れるけど、オ・ゴーさんが誕生してしまった様な事態を引き起こさない様、建物やインフラの整備が終わったら、その部隊は大島に戻り、生活文明基準等が進み過ぎない様オ・ゴーさんやその眷属に見張ってもらう事になりました。
ちなみに虫のダンジョンは五階層にまで増えてました。内容的にはほとんど農産物生産工場で、ダンジョン?て疑問符が付く施設に変貌してました。
まあ、ぼくを含め、みんな大興奮な一日だったのですが、リロイにも手伝ってもらって、釘を刺すのは忘れませんでした。
「昨日の領主会議でも話に出てたみたいに、大王の在所が首都となって、そこを誰が任されるかで後継者争いがどうなるかも決まってくるって言われてたりしたけど、空に浮かぶ島から地面を見下ろしてたら、自分が偉くなったとか、眼下の地面に住んでる誰かを見下すようになってしまう恐れはあると思う」
少年少女の一声で崩壊した某ラな都とか、バッシュの名前を使わせてもらった物語の主役の帝国の首都は確か最後は吹き飛ばされて消滅したんだっけか。高い所から低い所にいる誰かを見下ろす生活を続けるだけでなく、生産技術とかがかけ離れ過ぎてれば、力関係が等しくなる訳も無いから、どういう未来に陥りやすいのかはクドいほどに力説しておきました。それでも横暴な振る舞いをする様なら、大陸の礎にもなっている星龍にまとめて滅ぼされるだろうとも。
「あの、だとしたら、わざわざこの浮島とかに首都を定めない方が良かったのでは?」
という意見は複数人から言われたんだけど、
「オ・ゴーさんのところに一定数以上の人口が集まるような都市を築くのは、向こうの心情を考えれば避けたかったしね。別の大陸でも良かったけど、それはぼくやポーラに何かあった時に行き来が完全に断絶してしまう恐れがあった。それにこの大陸のどこかに首都を定めたとして、東岸か西岸か、さらにどこに築くか定めるかの調整だけで数年がかりになって、それだけ苦労しても結局は完璧に無問題な回答にはならなそうだったからね。ぼくのやりたいようにするのが一番かなって、開き直ったんだ」
「・・・・・・」
何人からか呆れたような眼差しで見られましたが、ポーラ達はフォローしてくれました。
「そんじょそこらの王様かその後継者が言ってるならともかく、みんな忘れないでね。カケルがこの世界に呼ばれた理由を」とはポーラ。
「そうです。カケル様がやりたい様にして、この世界を楽しむ事が、神がこの世界の存続を諦めない事に直結しているのですから」とはリーディア。
「あの大陸のどこに首都を定めても普段は別れて過ごす定めになっていたでしょうけど、ここなら、みんな一緒に暮らせます。それは、私達の子供やそのまた子供達のことを考えれば、とても幸せなことなのではないでしょうか?」とはイドル。
ゲートですぐに行き来可能になるとは言え、同じ場所に住んでいるかどうかは、同じ家族として意識できるかどうかにかなり影響しそうですよね。育った後は、それぞれバラバラの場所に巣立って別れて暮らすとしても、同じ一つの場所に帰れる所があるか、定まっているかどうかは大きな違いとなるでしょう。例えそれが宇宙移民船だとしても。
お嫁さん候補達に伝えた翌日には、キゥオラとマーシナの国王夫妻、イドルの兄弟や妹、リーディアの家族、それから代官を務めてもらう予定の二人や、アマリさんとその婚約者にも、大島にご招待して予定を伝えておきましたが、皆さんショックを受けてました。そして彼らもお嫁さん達と同じく、大島はなるたけ皇帝に見せず、小島を見せるだけで十分ではと意見を一致させました。
という事でその翌日には、ドースデン皇帝のプロティアさん他重鎮の皆さんに、自分が空に浮かぶ大きな島に首都を築こうとしている事と、普段はそれを人が住めなくなった領域上空に浮かべておくので、例え何かアクシデントがあっても最悪その下には誰も住んでない事、小さな島で地上と行き来したりする事などを伝えておきました。
宇宙船云々の説明は端折りました。話されても理解できない部分が生まれるだろうし、余計な恐怖を煽るだけだと思ったので。
プロティアさんは不安がり、ヴィヴラ君は行ってみたいと言い出しましたが、小島の方なら、自分とポーラとリーディアが式を挙げる時に招待すると伝えて、それで納得というか折れてもらいました。
プロティアさんには仕事を増やしてしまいましたが、空に島が浮かんでいたり移動していても、ぼく絡みのものだから不安に思うことは無いと御触れを回してもらう様お願いしておきました。選定侯の皆さんにも協力してもらって。
そのお礼的に、また食糧の当てが増えた事も伝えておきました。少なくとも数十万人分を数十年分でも可能というのは、聞かなかった事にされましたが。それだと完全な依存になってしまうし、土地枯れの解決策が確認されたと情報を流している中、ほぼ無制限の食料供給の話まで流してしまうといろいろよろしくないそうです。
ぼくがお嫁さん達に話した通り、ぼくからドースデン帝国全体への食糧援助は基本一年で、延長してもさらに一年。再生した土地での食糧生産が問題無さそうなら、三年目からは自立してもらう計画です。ぼくの所領となる旧ジョーヌ大公領と旧デモント教国領に関しては、当面というかぼくが大王で選定侯である間は無税で構わないそうです。援助された食糧や、土地枯れ解決への対価がお金では支払えないので。もし万一ぼくがぽっくり死んでしまって次代に引き継がれるような事になった場合でも、百年間は無税にすると決めてくれてるそうです。
新たな選定侯領の名前を決めておいて欲しいと言われて、とりあえず大地を仮称としておいてもらいました。これもお嫁さん達に相談して、早々に決めておかないといけませんね。連合王国の名前と同じにするかどうかも、小さくない問題ですし。
そんな風に、決めることもやることも多い慌ただしい日々は瞬く間に過ぎて行きました。
緑の魔境の離宮は、生活インフラを含めて僅か二日で完成しました。さすが超科学技術!
大島の方の宮殿や生活施設も、マーシナやキゥオラなどの城を手がけた建築技師の皆さんの意見も聞いてデザインを決め、リロイに実際の建築を進めてもらい、こちらは一週間ほどで形になってしまいました。都市の中心部と行政区画と生活施設のみの、ほとんどがまだ更地の状態は寂しげで、リロイもまだまだ物足りなそうでしたが、一旦ストップしておいてもらいました。
そしてポーラとリーディアとの結婚式の日があと二週間後に迫ってきた頃に、キゥオラやマーシナやドースデンなどの大商人や商会達から面会を申し込まれてたので、まとめてその申し出を受ける事にしました。




