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ランニング16:ポーラ対リーディア?

「えっ、浮気? なんで? ぼくとポーラって、別に恋人同士じゃないよね? そもそもぼくとリーディアも会ったばかりでそんな関係に無いし」


 と脊髄反射で返してしまう辺り、女性経験というか、人生経験の無さを発揮しちゃってるのでしょう。


 リーディアは、ぼくが全力ピンタされたにも関わらず、冷静な反論に聞こえなくも無い返しを入れたことで変な余裕が生じてしまったらしく。


「キゥオラのポーラ姫ですか? お噂はかねがね伺っておりました」

「どんな噂を? というか、あなた誰?」


 リーディアの無害に聞こえなくも無いジャブを受けて、ポーラのこめかみに青筋がくっきりと浮かび上がりました。リーディアはそれを見て、唇の端がかすかに吊り上がりました。意地悪そうな微笑みです。

 ていうか、どうして二人していがみあう必要あるの?

 さっぱりわからないでいるぼくの目の前で、二人はヒートアップしていきました。


「これは申し遅れまして失礼致しました。我が名はリーディア。かつてイルキハ王国の王族の末席に名を連ねていた、しがなき平民の一人にございます。ポーラ姫様」

「リーディアという名前に聞き覚えは無いけれど、将来有望な筈の光属性の魔法の使い手が、権力闘争に負けて弾かれて王籍から外されたと聞いたことがあるような・・・」

「それが、私めにございます。イルキハの国政に参与することは許されず、さりとてその国運を賭けたアミアン領侵攻には同行を強要され、このカケル殿にその企みを完全に挫かれ、虜囚の辱めに合わされているのが私めでございます」


 リーディアが、およよよという感じでぼくに抱きつき、首もとに頭をこすりつけているのは、いくら鈍い自分でも分かりました。ぼくに好意を示す為の仕草ではなく、ポーラへの示威挑発行為だと。


 ポーラのもう片方のこめかみにも青筋が浮かび上がり、リーディアをぼくの腕から引き剥がすと、ぼくの両襟を掴んで揺さぶりました。


「どうして? やっぱり私じゃ、忌み子じゃダメなの!?」

「落ち着いて、ポーラ。ダメも何も無いよ。今は色恋沙汰にうつつを抜かしてるような時じゃ無いでしょ?」


 ポーラの両手にぼくの両手を重ねて諭すと、ようやくこめかみから青筋が消えたのだけど、


「必死すぎると殿方には引かれてしまうそうですよ?」


 リーディアが茶々を入れたことで、ポーラがまた言い返そうとしたので、自分が間に入って止めました。


「ぼくは驚いたけど別に引いてないし、リーディアとポーラとじゃ比較にならないくらいポーラの方が大事だよ。リーディアは何かの役に立つかと思ってたまたま連れてきただけだから、ポーラにこれ以上憎まれ口を叩くようなら、彼女の眷属にしてもらうからね?」

「はい、軽口が過ぎたようで申し訳ございませんでした」

「リーディアとしては国の兵士達が潰走させられた鬱憤があるんだろうけど、キゥオラもクーデター起こされたり、この領都ポーヴェも盗賊団に荒らされて領主が殺されたばかりだっていうのも伝えてあるよね?殺されたく無いなら、それなりの態度を取った方が良いと思うよ?」


 リーディアは、ようやく、ポーラを揶揄っている場合じゃ無い事を理解したのか、顔を青ざめさせ、深々と頭を下げて改めて謝罪してきました。今度こそ、おそらくは本心で。

「大変申し訳ございませんでした。カケル殿、ポーラ姫様」


 殊勝に頭を下げたままのリーディアを見てようやく落ち着きを取り戻したのか、ポーラが尋ねてきました。


「それで、何がどうしてこの人を連れて帰ってくる事になったの?おおよその流れは眷属達から報告を受けてるけど、ちゃんとカケルの口から説明して」

「ドロヌーブの息子さん達にも何が起きててどうなったのか説明しないといけないから、ざっくり話すと、盗賊団の山城を制圧してすぐにイルキハの兵団が接近してきてるのを見つけて、嫌がらせして追い返すつもりがテンション上がっちゃって。大半の兵士は倒したり行動不能に出来たんだけど、ヒールしてる誰かを見つけて攫ってきたら、それがリーディアだったってだけ」

「でも、どうして光属性の魔法使いを?私や私の眷属達には天敵と言って良いくらい相性が悪い存在なのに」

「だからこそ、だよ」

「どういう事?回復とかならマッキーだって」

「マッキーも役に立たない訳じゃないけど、多分リーディアの能力は比較にならないくらい高いんじゃない?そんな誰かが敵方にいるか味方にいるかは、これからのぼく達の生存率に直結してくる筈だよ。ポーラが忌み子で闇魔法の使い手だって周辺諸国に知られてしまっているなら尚更、光魔法の使い手に眷属を一掃されてしまう可能性だってあるんだから、アンデッドでない眷属や手下も増やしていく必要があろうだろうし、そしたらリーディアの存在はとても大きな違いになる筈だよ」

「そこまで考えてくれていたのなら、仕方ない、かな」


 渋々とでもポーラが認めてくれたみたいなので、気分がまた変わってしまう前に、ドロヌーブを通じて、必要な人達を集めてもらうよう頼みました。

 ぼくもほぼ夜通し動き続けていた訳で、止まっていると眠くなってしまうので、軽食とかを用意してもらって、うろうろと部屋の中を歩き回りながら食べたりしてるうちに、ドロヌーブとその息子と娘さん、それからこの領都の重鎮らしき人達が集まってきたので、さっさと話を進めて済ませる事にしました。


「・・・と、言うわけで、盗賊達の拠点を制圧した後、イルキハの兵力が領都に向けて接近してきてるのを見つけてこれも打破して潰走させました。

 ここにいるリーディアは、負傷した兵士達を光魔法で回復してるのを見つけたので攫ってきました。イルキハの元王族なので、一般的兵士達よりは事情を知ってるかと思います。

 という訳で、リーディア、知ってる限りの事を話してくれるかな?」


 リーディアは、先程と同じ様な謝罪の挨拶から入りました。

 自らは元王族で、キゥオラの王都で起こされたクーデターについては全く知らされておらず、この遠征に加わる事も強制された身である事。それから、彼女がどうして王籍から外される事になったのかについても当然質問されたので、主にぼく向けに、イルキハという国の成り立ちから説明してくれる事になりました。


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