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サンタクロース・エイトオー  作者: 津多 時ロウ
mission1. サンタと秘密のおもちゃ工場
5/23

1.5 追加オーダー

「はいはいはいはい。イマジナリーアームズの皆さぁーん、お疲れ様でしたー」


 エイトオーたち以外、誰もいないはずの社長室に突如響く拍手と合成音声。声のした方をみると、いつのまにかサンタのお面を被ったスーツ姿の男がいるではないか。


「ち、モミの木か。現れるのが遅かったんじゃないか?」


 エイトオーにモミの木と呼ばれたこの男。当然、本名ではない。財団所属のサンタが裏の仕事を終えた際、必要があれば登場する部隊の名称だ。

 目撃情報の揉み消しに記憶の改竄(かいざん)、巻き添えを食った住民との交渉などが主な業務である。彼らは決まって深緑色に白のピンストライプの上下、黄緑色のシャツと深緑色のネクタイ、それとサンタのお面である。これまでも何度かエイトオーの前に姿を見せたことがあるが、顔も年齢も、実のところ性別すらも分からない。


「いやー、エイトオーさんがお怒りでしたので、つい二の足を踏んでしまいまして」


 怯えた振りをしているが、声も変えられ表情も見えない状況では、彼の本意は彼にしか分からないだろう。


「嘘つけよ。……で、こいつはどうすんだ?」

「それはこちらで処理しますのでご安心下さい」

()()、ね」

「ご興味がおありで?」

「いいや、まっぴらご免だね。聞きたくもない」


 そう言ってエイトオーが首を傾げながら大袈裟に身震いすると、緑スーツはわざとらしく思い出したように話し始める。


「それは残念。あ、そうそう。新しい情報が入ったみたいですよ。帰りに寄ってみては?」

「け、お前からなのは気に入らないが、言う通りにしてやるよ」

「おやおや、これは随分と嫌われてしまいましたねえ」


 肩を(すく)めておどけて見せるも、そろそろ頃合いとみたモミの木が「それではまたいずれ。御機嫌よう」と(うやうや)しく頭を下げ、気絶したままのジョージ・クルードを軽々と(かつ)ぎ上げて去って行った。


「……親父、いけ好かねえ野郎でしたね」

「気にすんな。あれでも俺たちのために働いてくれてるんだ。そんなこより、おら、俺たちも撤収だ。チャーリーで呑むぞ!」

「たくさん吞んでいいっスか?」

「おう、呑め呑め、好きなだけ吞め」

「ヒャッハー!」



「お帰りなさい、イマジナリーアームズ。早速ですが、次のオーダーです」


 チャーリーの店内にはエイトオーたちの他は誰もおらず、マスターは遠慮なく裏の名前で話しかけるも、休息が取れると思っていた矢先のオーダーにたまらず憎まれ口を叩いた。


「おいおい、終わらせて帰って来たばかりだってのによ。相変わらず人使いが荒いもんだ」


 そんな声もさらりと受け流してマスターが口の奥からカチカチと2回、音を立てればエントツに情報が表示され、否応もなくエイトオーの目に新しいオーダーとやらが飛び込んできた。


【オーダー】

★子供の行方不明事件について有力な情報を入手。

 夢遊病のように出歩き、両親に2度連れ戻された子供の事例が報告された。

 (くだん)の子供を尾行し、顛末(てんまつ)を報告せよ。

 当該、子供の家は……

           』


「こいつは……感心しないな」


 エイトオーがぼそりと呟くがマスターは聞こえぬふり。あくまでもエイトオーの独り言、そういうことなのだ。


「だが、面白くはなってきた。マスター、バーボンを頼む。いつものだ」


 エイトオーはニヤリと(わら)うと、暗銀のオイルライターで葉巻に火を点けた。


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