4.3 トレース完了
『エイトオー。今朝の指示について、二件とも抽出が完了しました。どちらの結果から表示しますか』
「急増ワードだな。ホログラム表示と同時に読み上げ解説も頼む」
『了解しました』
ロの字に配置された座席の中央に、青白いホログラムが四方向に向けて浮かび上がり、エイトオーもトナカイたちも顔を近づけ、目をこらす。
『まずは比較データとして、昨日の夕方から今までにかけて増えていたワードを表示します。上から順番に、〝クリスマス〟、〝プレゼント〟、〝クリスマスマーケット〟、〝サンタクロース〟、〝サンタまだ?〟でした』
「ふむ。〝サンタまだ?〟が予告状関係なんだろうが、犯人には結びつかなさそうだな。予告状の前後ならどうだ?」
『はい、予告状通報前後で増えたワードは、上から順番に〝クリスマス〟、〝クリスマスマーケット〟、〝ボヤ〟、〝異臭〟、〝野良猫〟でした』
「ボヤと異臭と野良猫?」
エイトオーが眉を吊り上げた。
それをフォローしたのはつるつる頭のトナ三郎である。
「そういや、何件かボヤが続いてるってネットニュースでやってたぜ」
「そいつは物騒だが、関連があるともないとも言えないな。ソリ男、異臭と野良猫はどうだ?」
『はい。異臭については、ヘヴンズコール外れの、ある工場の近隣住民から市役所に、相次いで苦情が寄せられました。市の職員が調査しましたが、原因は分かっておりません。野良猫については、最近、町中であまり見なくなったと噂になっているようです』
「むぅ、こいつはなかなか犯人に結びつきそうにないな。もう一つ頼んだトレースの方はどうだった?」
『はい。今日一日、サンタクロースの衣装を着て宣伝行為などを行なっていた人物は、全部で二十七名存在していました。そのうち十名が、一般的な労働の通勤パターンから外れるルートを移動しておりました』
「多いな」
『監視カメラ映像から抜き取ったその十名の姿と、辿ったルートがこちらです』
エイトオーの呟きには反応せず、ソリ男は淡々と資料の提示を続け、ホログラムに映し出されているものが、ワードの一覧から写真と地図に切り替わった。
それを見てしばらくしたところで、エイトオーもトナカイたちも目を見開いて固まってしまう。
「こいつは……」
エイトオーを皮切りに、トナカイたちの動揺も続く。
「これは、どういうことだ」
「こいつらはいったい何なんだ?」
映し出されていたサンタクロースは皆、同じ姿。白いファーの付いた上下、白いファーの付いたナイトキャップ、丈夫なベルトにブーツ、そして大きな白い袋。
それだけなら同じ衣装を着ているだけと言えるが、顔も体格も、すべてがまるで同じだった。
そして地図上に描かれる移動の軌跡。
時間はずれているものの、ある一点からスタートし、それぞれ違う場所で活動した後に、再びその一点に戻っていくのだ。
「ソリ男、ここには何があるんだ?」
『ここには、ボヤ騒ぎと異臭騒ぎがあった、スラグ・テクノロジーズ社の工場が存在しています』
「ふむ、その会社が金をかけて特殊メイクなどを施すという、手の込んだ宣伝をしている可能性もあるが、問題はボヤ騒ぎと異臭騒ぎだ。まだなんとも言えないが……ソリ男」
『なんでしょう』
「スラグ・テクノロジーズ社の情報収集と、こいつらの素性を調べてくれ」
『了解しました』
そうして調査は、翌日に持ち越される運びとなったのだが、その結果はエイトオーたちの予想を超える、なんともおぞましいものだった。




