笑いのメカニズム
【それにしても、人間ってどうして笑うのかしらね?】
佳苗からの質問に対して、由一はこの間から考えていた説を話すことにした。
【おそらく笑いの起源は原始時代の妊娠中の女性だったんじゃないかなと思う】
【原始時代の妊婦? どうしてそんなことが分かるの?】
【まず前提条件として、現代社会と違って食糧が圧倒的に少なかったと思う。
妊婦だからなるべく高カロリーの食糧、例えばマンモスの肉とかを食べたいと思う。
でも毎回毎回肉にありつけるとは限らない。
そもそも論として、旦那さんが無事に帰ってきただけでもかなり嬉しい。
でも持ち帰ってきた獲物がキノコとかだったらがっかりしてしまう。
しかしそんなことで嫌な顔したり、喧嘩していたら旦那さんも狩りに行くテンションが下がってしまう。
もう一度言うけど、旦那さんが無事に帰ってきただけでもかなり嬉しいのは事実。
つまり、肉の期待からキノコへのがっかり感を、旦那さんが無事に帰ってきたことに対する喜びで相殺する。
この命がけの感情の相殺が、笑いの起源だったと思われる】
【なるほど……。だから真剣な時に笑いって生まれやすいのね?
命がけの必死さが笑いの必要条件だったから】
【その通り。原始時代がそれだけ必死な時代だったことが伺える。
おそらく氷河期だったんだと思う】
【真剣な顔でくだらないことを話と面白く感じるのはこのためね】
【ああ、真剣、損得勘定、安心から来る歓喜、この3要素が適切な順番でほぼ同時に情報処理されることで笑いが生まれるということだ】
【他人の失敗を面白く思うのは、長居集団生活の中で他人の失敗による自分の序列の向上を何回も経験しているから、損得勘定に変換されてしまうからと言うことね】
【そうだね。この原理を上手に使えば、効率的に面白い話とかを考えることができるかもしれないね】
【う~ん、どうだろう? 逆に難しくなったような気がする】
【笑わない人間がほとんどいないことから考えて、笑うことができた個体だけが子孫を残すことに成功したと考えられる。人類の歴史って、想像以上にハードだったってことが推察されるね】
【笑いって大事なものだったのね】