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00 王子と元婚約者の私

ドキドキしながら投稿……!


「もう僕たちの前に現れるな」

 かつて愛した人が。

 もう愛することのない人が。

 冷たい声で告げる。夜空に浮かぶ月を背景に。

 恋愛に、夢や希望や淡い期待を抱いていた時期もある。

 現実とは、時に残酷だ。

 彼の瞳は、憎悪の色に滲んでいる。怒りで冷静さを失い、端正に整った顔立ちを歪めて。

「……もちろん、言われなくてもそのつもりですわ」

 無理やり最後の強がりとばかりに微笑んでみせる。

「本当か?」

 燃え上がるような赤い髪も。

 光り輝く金色の瞳も。

 いつからか、彼の視線が私に向けられることは無くなっていた。

 私ではない平凡で可憐な少女に夢中へとなっていく彼を――私は見て見ぬふりをしていたのかもしれない。

 王子は、胡乱気な眼差しでこちらの様子を伺う。

 私は、この後の展開を知っている。

「なら、その覚悟とやらを見せて――」

 寒空の下、海に飛び込んでみせよ――だったかしら?

 とんだ茶番ね……。

 婚約者を差し置いて、ほかの女性にうつつを抜かす馬鹿王子様とはもう会いたくない。

 私だって、三度目の人生。好きに生きさせてもらいます!

 王子の続く言葉を待たずして、極寒の海に飛び込む私。

 一度目の人生は、王子を誑かした女の罠にめられて、無実の罪をきせられてまもなくして処刑された。二度目の人生は、今日と同じ展開で足を滑らせて海に沈んでしまい、溺死してしまった。

三度目の人生――私がなんの対策してないとでも?

海へ飛び込んだのも演出だ。前回は、重苦しいドレスにしたのが失敗だった。海水を吸い込んで、苦しみもがきながら来世に思いを馳せたの。

次こそは万全な状態でこの日を迎えるべく、入念に準備をしてきた。






「船を出してもらえるかしら」 

 傍で待機させていた、従者の一人である壮年の執事に声をかける。

「承知いたしました。しかし、アメリア様……本当によろしいのでしょうか?」

こんな時でも、心配や不安を隠さずに私を気にかけてくれる。実に優しいお人。

「いいのよ。この国には未練も何もないわ。私は、外を見てみたいの――」

目指すは大国・ラーディス。海を隔てた先にある国。

「きっと、だれも私のことを知らないのでしょうね――」

それだけで、私の心は浮足立つ。

暗闇の中、一隻の小船が海を出発した。



まだ見ぬ国・ラーディスへと向けて――。

 

ジークハルト王子はその頃。


「もう僕たちの前に現れるな」

 目の前にいても、怯むことなく僕のことを見つめるまっすぐな瞳。君のそのなんでも見透かしてそうなアイスブルーの目が苦手だった。彼女の美しい白銀の髪が風に靡く。冷たい声で、かつての婚約者・アメリアに忠告する。


 「……もちろん、言われなくてもそのつもりですわ」

 「本当か?」

 アメリアは、穏やかに微笑む。さすがの僕も心配になり、彼女の様子を伺う。

 「なら、その覚悟とやらを見せて――」

 寒空の下、海に飛び込んでみせてみよ――と続ける前に、アメリアは勢いよく海の中へ飛び込んでみせた。どうせできるわけがないとたかを括っていた。寒空の下、極寒の海に飛び込む彼女を助ける勇気も度胸もなく――僕は途方に暮れた。


 翌日、あの場所へと立ち寄って彼女の姿やなにか手掛かりになるものがないか懸命に探したが、一切でてこなかった。まるで、アメリアが始めからいなかったように――。








―――――――――――――――――――――――――――――

書きためているものを、定期的にUPしていく予定です。

宜しくお願いしますm(__)m

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