唯一の癒し
この作品を見つけて下さった方は、よければぜひぜひ。
「今日も1日疲れたなぁ....」
秋葉原の信号待ちで肩を落としひっそりとつぶやく冴えない21歳のサラリーマン、
上田直樹は仕事に明け暮れていた。
しかしそんな彼にも唯一の''癒し''があるのだ
直樹は信号が変わったところを人にぶつからないように颯爽と走ってゆく。
「はぁ...はぁ....ついた....!」
直樹は息を吐いた後顔を見上げる。
それはメイドが二次元に描かれている看板。
いわゆる「メイド喫茶」と呼ばれる喫茶店へ入っていった。
カランカラン
「おかえりなさいませ〜ご主人様♡お待ちしていましたよ♡」
扉を開けると直ぐ出迎えてくれるのはひなと呼ばれるツインテールのメイド。
フリフリのメイド服にキラキラ光るハイライトの瞳。直樹にとっては女神であった。
席を案内されそれなりの数のお客がメイドと会話する中直樹は座る。
「以外と、人いるな....」
直樹がボーッとしているとひなが水を持って直樹の席に行った。
「ご主人様〜今日もお疲れさまでした!こちら萌え萌えウォーターになります!」
「あ、ああ、ありがとう」
「も〜うご主人様ったらお恥ずかしがり屋なんですから♡そんなところもカッコいいですけど♡」
「ひなちゃんも相変わらず可愛いよ」
「わぁ〜!ありがとうございます!」
笑顔が輝くひな。夢のような雑談が数分続いた。
「そういえばご注文どうなさいますか?」
「もう、わかってるでしょ。」
「あ!いつもの萌きゅん両想いパスタですね!
かしこまりました!少々お待ちください!」
満面の笑みを浮かべるひなが直樹の前から立ち去り
陽気なBGMで店内が賑わう中、ひなの後ろ姿を眺める。
「やっぱり可愛いな〜女神だな〜」
萌え萌えウォーターを片手に頬杖をつく。
すると他のメイドが直樹を覗いた。
ぱっつん前髪、黒髪ストレートのあおいだ。
「ご主人様、どうかなさいましたか?」
「うわぁ、びっくりした」
「ふふ、ごめんなさい。だってご主人様ボーッとしてるんですもの。」
「ごめんごめん。あおいの髪が綺麗だったから見惚れてたのかも」
「本当ですかね、私今来たばかりですよ?」
悪戯に微笑むあおい。黒い髪が靡く。
「本当だって〜」
「うふふ、でもそう言って頂けて嬉しいです。お料理が来るまで私とお話ししましょう。」
あおいの瞳は蒼くて綺麗な色彩をしている。
その瞳を向けられた者は恋に落ちてしまいそうなほどに。
「ご主人様、最近はいかがお過ごしですか?」
「いつもと変わらずで、上司にこき使われまくってるよ」
「あら、そうなんですね....。だけど、そんなことも吹き飛ばしちゃうくらいに私もご主人様に精一杯ご奉仕させていただきますね。」
「あはは、ありがとう。」
「ふふ、そういえばご主人様。最近隣に新しくメイド喫茶ができたのをご存知ですか?」
「え?そうなの?いつもここしか目に入ってないから気づかなかったよ」
「そうなのですね。実は隣のメイド喫茶は初めてのコンセプトカフェらしいのです。」
「へぇ〜どんなの?」
「私がお聞きしたところ、''ヤンデレカフェ''とお聞きしました。」
「ヤンデレ....?なんか、怖そうだね....」
「ええ、私も少し怖いなと思いました。一度行ってみようと思ったのですが、
やはりお店の雰囲気が忌々しくて.....」
あおいは弱々しく呟く。
「そうか、あおいも怖いのか.....因みにその隣店の情報はそれくらいなのか?」
「そうですね、チラシ配りをしているときにお客様が教えてくださったので.....」
「そうなのか」
そんな話をしていると、ひなが料理を手にしてやってきた。
「お待たせいたしました〜!萌えきゅん両想いパスタでございます!
あ!あおいちゃんだ〜!なんだか、このテーブルも賑やかになってきましたね♡」
「あはは、そうだな」
「うふふ」
直樹は頭の片隅にヤンデレカフェのことを置いて
二人に集中することにした。
そのあと直樹はメイド喫茶を堪能し、会計を済ませ外へ出た。
「あれか.....ヤンデレカフェってのは....」
先ほどメイドのあおいに紹介された店が気になり
少し覗いてみると妙な雰囲気が漂っていた。
「やっぱなんかやべえな」
直樹は内心怖いながらも好奇心が震えていた。
「ゴクリ」と喉が鳴り、ドアノブに手をかけた。
「...いや、今日はやめとこう。」
結局直樹はヤンデレカフェに足を踏み入れなかった。
外壁は一見シンプルな建物に看板があるだけの''コンカフェ''だった。
ご覧頂きありがとうございました。