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(1-09)悪団長

よろしくお願いします。

(1―09)悪団長



 翌日も同様に夜明けと共に起こされる。やはり同様に自己紹介をして、朝の訓練へ。何人かの団員達はそのまま街中へ向かう。


 傭兵団は、一日交代で、街中の詰め所(交番みたいなモノ)、街中見回り、待機ってローテーションをしている。待機の時に休暇が交代で貰えるとの事。大体六日に一回。自分はこの団では弓も使えない駄目人間なので、訓練がメイン。


 朝一から、弓の練習をする。食後は逆に一部の団員に剣を教える事に。ただ持ってるのは刀なので、西洋剣なんて大して教えられない。そもそも〝野獣テンサゲ流〟なんて怪しくて教える事なんて出来ない。


 午後になって、剣の訓練プラス指導をしていたら。団長室に行けって呼び出しが有った。なんか嫌な予感がする。


 ノックをして団長室に入ると、部屋の中には、マッカレル団長、モーレイ主任、それと知らない人が居た。


「おう、ナギ来たか」


「トラウト、コイツが昨日ウチに入った新人のナギだ、よろしくやってくれ」


「ナギです。トラウト団長、よろしくお願いします」


「違ぇよ! ナギは俺んとこの新人だ、ナギ、帰るぞ」


 と言われても……。俺はどうすりゃ良いんだ。取り敢えず無言で様子見する事にする。


「マッカレル。お前、モーレイから何を聞いて此処(ここ)に乗り込んで来たんだ? ちゃんと手紙に詳しくはモーレイに聞けって書いただろっ?」


「ああっ! モーレイは、お前が強引にナギを移籍させたって言ってたぞ!」


「まあ、モーレイは、バカだからなぁ……。昔から初めてのお使いも満足に出来ないし、大人になっても直ぐに金を落としてくるし……。マッカレル。お前もモーレイにお使いさせる時は一人じゃ無くて別な人間も付かないと駄目だぞ!」


「モーレイがお使い出来ないって聞いてねえよ!」

「そりゃ身内の恥だから言ってないからな。マッカレル。お前も勉強になっただろ、成長出来て良かったな」


 まぁ昔からモーレイは、金を持たせると、街中の孤児とか未亡人の家に食い物を買い与えてるだけで、無駄使いはして無いんだよな、モーレイは隠してるつもりだけどバレバレだし。何故か顔は怖いくせに子供達には嫌われないんだよな……不思議だ。そう言う事に使ってるから金を借りに来ても無利息で貸してやるんだけど、実際は貸した事を忘れてやってるってのはバカだから気付いて無いだろう。俺が孤児達に近付くと怯えて逃げるんだよなぁ、兄弟なのにこの違いはなんなんだ?


「マッカレル。仕方無えから、昨日何があったか教えてやるよ。ちゃんと聞いておけよ」


 そう言って、マーリン団長が、かなり捏造しモーレイさんが悪い事にして説明をした。違うけど違わないって感じだ。


「ちっ! 仕方無えな、ナギはマーリンに預けておいてやるよ! だがナギと俺の試合させろ!」


「マッカレル、駄目だな。ナギと試合したいなら、大金貨(百万円位)一枚、ナギに払え。俺はちゃんと昨日払ったぞ」


「本当か? ナギ」

「はい。マーリン団長に、大金貨(百万円位)一枚相当のお金を頂きました」


 試合するだけで大金貨(百万円位)一枚なら、試合しても良いけどな。


「ナギ、言っておくけど手抜きしたら駄目だからな。どっちかがぶっ倒れるまでだぞ」


 マーリン団長に釘を刺されてしまった。完全にバレてしまっている。


「マッカレル。払えるのか? モーレイにも言ったし、トラウトにも言える事だが、お前等、もう良い年なんだから、無駄遣いしないで、真っ当な仕事に付いてちゃんと貯金しないと駄目だぞ」


 昨日も思ったけど、マーリン団長も同じじゃ無いの? でも真面目に貯金してるのかも。


「「うっさいわ!」」


「俺は別に金払って迄、このド新人と対戦したい訳じゃ無いからな!」


 トラウト団長が、言ってくる。それで良いんです。俺も別に対戦したい訳じゃ無いんで。


「トラウト。良い事教えてやろうか? ナギは昨日、俺の矢を二十本全部避けたぞ。マジでな。モーレイも見てたからな」


「嘘だろ? コイツが?」


「本当だよ、聞く所によると、モーレイにも勝ってるらしいけどな」


「まあモーレイに勝ってもな、自慢にならねえし」


 いやアンタ達どんだけなんだよ! モーレイ主任は十分化け物クラスの実力が有るよ! それ以上に強いんだろうけど。


「どうだ? トラウト」

「なんかやって見たくなって来た! マーリン。ナギと俺とやらせろよ!」


「だから、大金貨(百万円位)一枚用意したら、やらせてやるよ。お前達には無理だろうがな。それでだ、金が無いお前達良い提案をしてやろう。俺の矢を二十本避けたら、大金貨(百万円位)一枚くれてやる。避けれなかったら、まあそうだな……小金貨(十万円位)一枚貰おうか」


「マーリン。良いのか? お前確実に損をするぞ」

「そうだぞ、俺もマッカレルもお前の放つ矢なんて簡単に避けるぞ、良いのか?」


「ああ、構わんよ。お前等はどうか知んねえけど、俺は進化してるんでな、今度こそ、当ててやるよ」


「決まりだな。マーレイに勝って、その大金貨(百万円位)一枚でナギと対戦するぜ!」

「俺もだ!」


 マジかぁ……。俺、金は欲しいけど、そんなギャンブルで稼ぐもんじゃ無いって判ってるし。でも多分、マッカレル団長、トラウト団長共、マーリン団長に騙されてるって思うな。


「話しは決まったな、じゃあ早速やろうか、来いよ! 今日こそはぶち当ててやるから」


 俺、別に行かなくても良いよね。って思ったけど無理やり三人に連れられて昨日の広場に行った。


「俺から、やってやろう。マーリン、外したからって凹むなよ!」

「俺は二人同時で構わないぜ、矢も二人で二十本でな」


「「舐めてんのか?」」

「さっき言ったろ、俺は進化してるんだよ」


「良いだろう、ちゃんと大金貨(百万円位)二枚払えよ! 後でごねるなよ!」

「マッカレルが当たっても俺が避けきれば大金貨(百万円位)一枚払うんだよな?」

「ああ、払ってやるよ!」


「「勝ったな!」」


 マッカレル団長も、トラウト団長もバカだなぁ……。一人を盾にして矢を二〇本使わせちゃえば。トータルで得なのに。


 マッカレル団長、トラウト団長が向こうに行き、一対二のハンデマッチ? かな。が始まる。マーリン団長は、最初からかなり近い所まで進んで行った。


「近過ぎるぞ!」「大金貨(百万円位)二枚払いたく無くなったのか?」

「避ける自信がねえのか? ナギはこの距離も避けたんだけどなぁ……」


 そんな煽らなくても……。


「その距離でやってやるよ!」

「舐めんな、その距離でも余裕で避けてやんよ!」


 無理でしょ? 多分、最初から昨日より二段速く放って来ると思うよ。お互い知った者同士だから、手加減しないハズだもん。


「串刺しにしてやんよ! 良いオトナなんだから泣くなよ!」


 マーリン団長が、マッカレル団長に向かって、いきなり矢を射る。それも昨日最後に見せた連続三本で。


『えっ?』


 マーリン団長は昨日会話した事を実行して来た。最初は少し遅めで。それも避け易いように、身体の中心線から外して。そうすると避ける方向は決まってしまう。態々(わざわざ)近付くようには避けない。それを狙ったように、避ける方向に高速の矢が二本連続で向かっている。それも物凄いコントロールで、剣で弾き難い右の太もも付近を狙って。


 マッカレル団長も化け物なようで、避けて右足が着地してない体勢で二本目をギリギリ躱す。だが三本目が狙ったように(狙っているけど)マッカレル団長に当たった。


 そのまま、トラウト団長にも連続矢を射って行く。槍は対人戦では強いけど、振り回すのが難しい。やっぱりそのまま、トラウト団長もしとめられてしまった。


「俺の勝ちだ。無茶苦茶弱ぇ! お前ら、全然進化してねえ!」


「今のは無し!」

「そうだ、開始の合図が無かった!」


 いやぁ、それは駄目でしょう。


「そんな言い訳聞けねえな。お前ら二人とも、ちゃんと小金貨(十万円位)一枚持って来いよ。ナギ! 戻るぞ」


 マーリン団長は、スタスタと建屋の中に戻って行った。俺は手甲付けてたから、弾けたけど二人は、剣か槍で弾き落とさないと駄目だもん。絶対に矢のスピードの方が速いよ。って思った。


 団長室に戻ると、(しばら)くして不貞腐れた二人とモーレイさんが戻って来た。


「今日は、調子が悪かっただけだ」

「俺もだ。普段なら余裕で躱してやる所だが、前みたいに避けきるとお前が泣くから勘弁してやったんだ」


 いやぁ、単なる負け惜しみにしか聞こえませんよ。二人はそう言って渋々と言う感じで小金貨(十万円位)を渡して来た。



「それにしても、ナギの言った通りにやったら楽勝だったな。昨日の夜に練習した甲斐があったよ。今迄、速ければ避けれないって思ってたけどな」


「マーリン。どう言う事だ?」

「そうだ、なんかコイツに教えて貰ったのか?」


「おう、そうだぞ。コイツはスゲ~役に立つからな。モーレイのお陰だな。モーレイ、良い新人が入ったから、これをやるよ。大人なんだから無駄遣いするなよ」


「おっ、おう」


 マーリン団長が、モーレイ主任に、二人から奪った小金貨(十万円位)二枚を投げて渡した。


『まあこれで、少しは孤児達も食い繋げるだろう……』


「ナギ! マーリンに何を教えた!」

「俺にも、マーリンの弓を避ける技を教えろ!」


「ナギ。余計な事は言うな。(しばら)くは優越感に浸りたい」


「判りました。ですけど一言。弓を避けるなら、盾を持つのが一番だと思いますよ」

「そうだな。お前ら今度から盾を持てば良いんじゃねえか? まあ盾ごとぶち抜くけどな」


「街中で使いもしない盾なんか持ち歩けるか、バカ!」

「長槍で盾なんて持てねえよ!」


 なんか、かなり仲が良さそうな団長さん達だなって見えた。適当に楽しんで下さい。自分が此処(ここ)にいる必要はもう無いと思えた。


 私服の着替え(特に下着)が足りないのでマーリン団長に頼んで、買い物に行かせて貰う事にした。お店が何処(どこ)に有るか判らないので、ちゃんと団長に許可を取ってスクイドゥさんに店を案内して貰う事にした。


 どうも衣類はかなり高価(予想の十倍以上高い)だったけど必要なので購入した。高い理由は布を作るのが全部人手で大量に作れないからだと思われる。需要に供給が追い付いていないのだろう。ただ売り切れ続出とはなっていないのは高価すぎる価格の所為だと思う。


 ちりめん問屋が全国を旅することが出来るのも、〝ちりめん〟が高く売れるからだと思われる。




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