(2-60)いろいろ準備
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(2―60)いろいろ準備
自室に戻って、頭の中で、温室について検討する。
『適当にガラス張りの建物を作れば良いかな……それよりも先に作りたい物が有るし……』
大体、イメージが出来たので、詳しい事は後回しにして、別件を検討する事にする。
パーソナル・デバイスから情報を引張り出して、紙に設計図を描いて行く。作ろうとしてる物は卓上サイズなので大きくは無いけど、そこそこ複雑だ。量産すれば、そこまで高くなる事は無いかなとは思ってる。まあ宰相に頼んでお金は出して貰うつもりだけどね。
深夜まで掛かって、設計仕様書、使い方マニュアル。ついでに予算を確保して貰う為のプレゼン資料を作って行った。
もう一つ、簡単な物を作りたいので、それも図を描いて行く。まあプレゼンする訳でも無いし、高くは無いだろう。大豆もやしを作る為の、暗所にするんだけどね。
翌日、先ずはハッシュの所へ行く。
「ハッシュ。自室の小屋の所に少し大きめの箱を置きたいんだけど良いか? 風呂よりは小さいぞ」
「なにするんだ? 風呂のオプションか?」
「いや、ちょっと育てたい作物が有るんだ。箱の中じゃないと駄目なんで」
「新しい料理か?」
「まあ、そんなとこ」
「判った。好きにしてくれ。美味いんだろ?」
「それは、どうかなぁ……」
取り敢えず箱を置く許可は貰った。風呂に比べたら小さいから、特に文句を言われる事は無いと思っていた。
朝食後、ロテック商会に向かう。古い従者の服は返してしまったので、仕方無く偉そうな勲章が縫い付けられた騎士服を着て行く。
『普通、勲章って付けたまま街中を歩く事って無いよな……』
なんか恥ずかしい。勲章を取って、王城に行く時だけ付けるようにしようかな。多分それなら陛下も怒る事は無いとは思う。二つ返せるし、なんならハッシュに渡しても良いしね。
ロテック商会に入ると、いつものようにササッと良い格好をした店員さんが近付いて来た……。
「い、いらっしゃいませ、旦那様」
以前も会ってるよね? そんなに雰囲気が違うのか? やっぱ私服で来る方が良かったのか? だけど私服でここに来るのはドレスコード的に合わない感じなんだよな。
「ミグラス伯爵家のナギです。リウットさんは、居ますか?」
「こちらで、お待ちください……」
なんかいきなり、応接室みたいな所に案内された。別に今迄と同じで立って待ってても良いんだけど……。直ぐにお茶が出てくる。
『う~む……。こう言う対応は慣れないから嫌だなぁ……』
と思ってたら、リウットさんが、慌てた感じでやって来た。
「ナギ閣下、お待たせしました……」
「えっと、閣下はちょっと止めて欲しいかな……」
「ですが、ボニート宰相が、そうおっしゃってたので……。それに今迄もかなり無礼だったかなと思いまして……」
「私の方は気にしないと言うか、閣下と呼ばれるのが、好きじゃ無いので、今迄と同様にお願いします」
なんとか説得した。やっぱゴム作りの説明会の事でビビってるのかな? ちなみに先程の店員さんの対応は、自分が来たら最上級の対応をするようにとリウットさんが伝えていたらしい。当然それも止めて貰う事に。
「それで今日はどう言ったご用件で? 用があれば直ぐに伺いますが……」
「えっと作って欲しい物が二つ程有りまして……」
説明を始める。最初に見せたのはタダの箱。材料が有れば自分でも作れるけど、ホームセンターが無いので作って貰う。
「これは直ぐに出来ますね。値段もかなり安く出来ると思います」
「完成したら、持って来て貰えますか? それと、笊が欲しいのですけど、出来れば金属製の……」
木で出来た笊は有ると思うけど、カビが心配なので金属製の物が欲しい。本当はプラスチック製が良いんだけどね。無い物は仕方無いもんね。
「金属製ですか……。それは多分ですが、作らないと駄目かなと思います」
だと思ったよ。細い金属の針金で編み上げる感じにすれば出来ると思うけど、時間が掛かるだろうね。じゃあ別な案で行く事にしよう。
「それでは、鍋に沢山穴を開けた物を作って貰えますか? 五つ位有れば良いので」
「それでしたら、そんなに時間は掛からないと思います」
取り敢えず、出来上がれば、まあ大豆もやしは作れるだろう。
次に本題。こっちはかなり難しいかな。出来ない事は無いと思ってる。
「これは何ですか? 寸法を見ると、そんなに大きくは無いようですが……。この通りに工房に作って貰えば宜しいのでしょうか?」
「ええ、お願いします。小金貨一枚(一〇万ネィ位)位で出来るかなとは思いますが、最初は、もっと高くなっても構いません。最終的に一〇〇台以上は作ると思うので……もしかしたらもっとかも知れませんが……。一ヶ月位で出来れば良いかなと思います」
「随分、多いですね」
「ええ。取り敢えず一台無いと始まらないので。ロテック商会的には、一〇〇台作っても、そんなに利益は出ないと思いますよ」
「いえ、少しでも利益が有るならば、やりますよ」
「それと、糸が欲しいんです。出来れば色が異なる糸を」
「判りました。もしかしてコレは機織り機ですか?」
「半分正解ですね」
「こんな小さいと何も作れないと思うんですけど……」
「作りたい物が小さいので、これで十分なんですよ」
二つ作って貰う事になった。箱の方は一週間位で届くと思う。それから大豆もやしを栽培して収穫する頃には、キャベツの出荷も始まるくらいだと思う……と思いたい。キャベツが無ければ、大豆もやしは、ナムルっぽい料理か、サラダにでも使って貰えば良いかな。
「ところでナギ様」
「なんでしょう? ゴム作りの件ならば、この場では答えられませんよ。全部王城を通して貰わないと、私とロテック商会が癒着してるって思われますからね」
「そちらは、そう思ってましたので、大丈夫です。他の商会は、何とかしてナギ様にツテを作りたいと思っていたので、私に繋いで欲しかったようですが、今は大人しいですね。なんかナギ様に嫌われると怖い事になりそうだと思ってるみたいですよ」
「そんなに、怖くは無いと思いますけど、まあ変に寄って来られると対応にも困るので良いとします」
「で、用件なんですが……。もしかしたら既に知ってるかも知れませんが、この冬に隣のカッセルブラッド王国と戦争が起きそうですよ」
「えっ? マジで?」
確かに、団長達はそんな感じの事を言ってたけど……。今年も天候が悪くて不作だったのかな……。もっとこの国から、王太子殿下の身代金として食料を沢山……十年分位貰えば良いのに……。そうすれば戦争しなくても済んだんじゃね? まあ詳しい事は判らないけど。
「ええ、マジなようですね。商人も情報網は持ってますからね。と言っても情報を売ってるウォール&メアリー商会って言う所から仕入れるのが殆どなんですけどね。実際にウォール&メアリー商会は、店を構えてる訳では無いので、簡単にアポが取れる訳では無いですが……。で、噂では無く確定情報としてカッセルブラッド王国は今年も不作だったようです。その流れで、昨年と同様に戦争を仕掛けてくるらしいですよ」
戦争の事は判ったけど……。
「ウォール&メアリー? 何それ?」
「壁にウォール、商事にメアリーって諺が有るんですよ。それにちなんで、その名前で情報を売ってるんです。だいたい何処の商会にもメアリーは居るんですけどね。私が雇ってるメアリーもいますし、誰だか判らないですが、ウチの商会にも、ウォール&メアリー商会の手下が働いているでしょうね。普通に仕事をしてても優秀ですし、誰だか判らないのでクビにも出来ません。まあ商会同士では余程の事が無いかぎり相手を潰すような事はしません。やったら色々と多方面から報復が来ますからね」
『商人さん達も色々と有るんだね……。確かに豊作、不作は商売に繋がる情報だもんな。似たような諺は、現代にも有るしね』
「そうですか……。判りました」
「なので、ゴム作りの件で各商会に話しが行きましたけど、戦の物資集めで商会は忙しい状態なんですよ。特に軍と取引が多い所は。まあウチの商会も、それなりですけど……」
戦争で儲ける商人が居るのは仕方無いもんな。止めろと言う訳にはいかないもんね。
そっかぁ……戦争かぁ……。行かないと思うんだよなぁ……。だってマーヴェイ殿下じゃ総大将をするのは無理だと思うもんな。とするとやっぱ、王太子殿下が再度行くと思うし、だとすれば自分は、マーヴェイ殿下の従者だから行かなくても良い筈。だけど陛下が気球を出せとか言って来るかも……。その時は、空から眺めるだけにしたい。




