(2-60)お食事会の後
よろしくお願いします。
(2―60)お食事会の後
「さて、自室に戻るかな……」
「待て!」
「ええぇ。未だ何か有るんですか?」
「有る。ハッシュ、料理長を呼んでくれ」
ハッシュの指示でハドック(家宰)さんが料理長を呼んで来た。可哀想に料理長は、陛下他、王族がいっぱい居るから、跪いてるよ。
「料理長。今日、出されたトマトを使った料理、それとマーヴェイとアルフォンシーノに出した料理のレシピを買い取りたい。幾ら払えば教えてくれるのじゃ?」
なんか難しそうな話しになって来たのを察知したみたいで、レスフィーナ様が、アルフォンシーノ殿下を連れて風呂に向かった。アルフォンシーノ殿下はベタベタになってるもんね。
「えっ……。直ぐに紙に書いて渡します……。お金なんて……」
「料理長。そりゃ駄目ですよ。しっかり対価は貰いましょう。悪しき前例を作ると、この後、料理長のような凄腕の料理人達が皆んな泣いてしまいますから。それにタダで渡したら、後々、王家の権力に負けたって思われますし、王家も権力を利用した卑怯な手口でレシピを奪ったって噂が出ます。お互いハッピーになるにはしっかりと正当な対価を貰った方がすっきりしますからね」
「ナギよ、随分な事を言って来るが、まあ判った。こちらも支払う事に依存は無いからの。で幾らが妥当なんじゃ?」
「そうですねぇ……。昨日言った条件から少し変わりますよ。あっそうだ。料理長、今日のメインの料理名は、ハッシュ・ド・ビーフになりましたので知っておいてください。それでですね。ド・ミグラス・ソースとハッシュ・ド・ビーフは、料理長のレシピですが、ミグラス伯爵家の料理でも有ります。なので当然ミグラス伯爵家にも見返りとした対価が必要になります。まあ大金貨一〇〇枚が妥当な所ですかね。それとアルフォルノは、アルフォンシーノ殿下の料理ですから、アルフォンシーノ殿下にも払った方が良いと思います。将来、何処かの領地を貰う事になるのでしょうから、その支度金にでも上乗せしてください、大金貨五〇枚かな。で料理長にも、大金貨一〇〇枚が妥当でしょう。ハッシュには、勲章を渡す事でも良いとは思いますよ。勲章はタダですからね。王国としてお得だと思います」
「そ、そんな大金! う、受け取れません……」
まあそうだよね。自分も、言われたら拒否したくなるもんね。変な紐まで付けられてしまうって思うから。
「料理長。今、レシピを売っておいた方が得ですよ。時間が経てば経つ程、特にトマトが出回るようになれば、誰かが考え付くかも知れませんからね。来年だと、半額位、もしくは、それ以上に安くなりますよ」
なんか、詐欺師かな? 土地を売れって感じの……。
「ナギ! 俺の料理は? アルフ(アルフォンシーノ)ばっかりズルいぞ! 俺も金が欲しい!」
「マーヴェイ殿下ってお金見た事無いでしょ?」
「……未だ無いけど、知ってる! お金貰って、王都で買い物をしたい!」
「それは、好きにしてください。ちなみに大金貨では買い物出来ないですよ」
百万ネィ(大金貨一枚)出されても、お釣りが用意出来ないと思うよ。
「えっ? なんで?」
「先ずはそこから勉強したほうが良いでしょうね。それと料理名に関してですが、多少は考えてはいますけど、食材は、年がら年中有る訳じゃ無いんですよ。季節で採れる食材が変わるんです。なのでもう少し寒くなってからですかね」
やっぱ、ソース焼きパスタを作ってあげるかな。とすると大豆もやしが必要だな。
「判った。ミグラス伯爵家の料理長に、大金貨一〇〇枚渡す事にする」
「料理長。王家に渡したレシピは、好きにして貰って構いませんか?」
「は、はい、ど、どうぞ好きにしてください」
「で、有れば陛下、今年は難しいと思いますが、来年トマトが収穫出来たら、王家の晩餐会で、高位貴族達にトマト料理を自慢して、レシピを売り捌けば良いと思います。高過ぎ無い程度で……大金貨十枚位ですかね。その位で売れば、今回の支払い分は回収出来ると思います。美味しい物は、広まった方が良いと思いますから。高位貴族が領民にレシピを売るのは見逃してあげてください。そんなに高くは売れるとは思いませんから」
「判った。確かにそれで有れば、王家も困る事は無いな」
まあ、こんな感じで良いんじゃね。じゃあ自室に戻ろう。
「待て。未だ有る」
「ええぇ。こっちは無いです」
「ワシが未だ用件が有るんじゃ。座っておれ!」
面倒だなぁ。とっとと終わらせて、風呂に行っちゃいなよ。
「さっき言っておった、温室を王城に作れ」
「大工じゃ無いので無理です」
「違うわ! 商会に頼んで作るんじゃよ、ボケが! お主が設計するんじゃ!」
なんか素が出て来たな。
「税金の無駄使い!」
「違うわ! ちゃんと考えて作ると決めたんじゃ!」
ホントか? トマト料理が食べたいだけなんじゃね? マーヴェイ殿下やアルフォンシーノ殿下も食べたいだろうし。
「外国の要人との晩餐会でも、トマトの料理を出して驚かせたい。夏よりも秋から春に掛けてが、外交の季節なんじゃ。だからその時に、料理を出したいと思う……。なんじゃその目は? 疑っておるのか?」
「まあ、多少は疑っていますよ。単にマウントを取りたいんですよね?」
「それが悪いか?」
「いえ、全く悪く無いです。全うな理由が有ったので驚いただけです。まあ温室作りは検討しますけど、この冬に完成するかは判りませんよ。それとタダでは働きませんからね」
外交的には、料理も武器になるよね。陛下が相手国に対してマウントを取りたいと言うのも理解出来るもんね。
「まあ、仕方無いであろうな。それと、お主には幾ら払えば良いのじゃ?」
「未だ判らないですね。掛かった工数で、後から要求する事にします。多分風呂を設計した時と同じで大金貨一枚位かなとは思いますが……難しい所が有るかもですので、大金貨二枚位を想定しておいてください」
温室を建てるのに使う木材は杉が良いのかな? 耐水性が高いと思うし。杉が何処に有るのか知らんけどね。まあ詳しく検討するのは後にしよう。
「判った」
取り敢えず、これでお終いだよな。
「ハッシュ。風呂に案内せよ。それとハッシュとナギ、マーヴェイも、一緒に風呂に行くぞ!」
「なんで?」
「なんでもじゃ!」
「族が来たら、王家が終わりますよ?」
「警備はしっかりしてると思っておるが? そうじゃろ、ハッシュ」
「はい、問題なく警備しています」
ホントか? 兵士さん達は裸祭りしてるんじゃね? まあ連れて来ている護衛も沢山居るから大丈夫だと思うけどね。
呼ばれてしまったのは仕方無いので、風呂に付き合う事にする。離れの風呂を使うのは初めてだけど。風呂のルールは変わらないもんね。
「陛下、宰相。風呂の湯船に入る前に身体を石鹸で綺麗に洗ってください。お湯を汚さない為の風呂のルールです。蒸し風呂とは違いますからね。自分専用で誰にも文句を言われない風呂ならば好きにすれば良いとは思いますが、此処はミグラス伯爵家の風呂ですから、他にも使う人は居るんです」
「風呂に入るのは、面倒なんじゃの……」
「そう言うもんですよ」
脱衣所で脱いでる最中に言ったので、ルールは守ってくれるだろう。浴室に入るとちゃんとルールを守ってくれた。
「ナギ。この前の時は、ハッシュは、そんな風呂のルールなんて教えてくれなかったぞ」
「ハッシュ。お前何回、俺の風呂を利用してたんだよ。ちゃんとルール判ってるだろ?」
「そうだけどさ、この風呂は、俺以外は使用人と料理人位しか使わないじゃん! 俺と殿下位は良いんじゃねって思ったんだよ! ウチの風呂なんだし!」
「お前、何言ってんの? そう言うのが、ダメなんだろ、オレ一人だけって言うのが十万人もいたら全員になっちゃうんだよ。陛下だってルール守ったんだから、お前も常にルールを守れ! じゃないと、いずれ領民にルールを無視する領主だって噂されて嫌われるぞ」
「わ、判った」
身体を洗ったので、湯船に入る。十人入れる風呂を作ったので五人だと余裕で入れる。自分の風呂も一人で入る分には広いけど、湯船が大きいのは良いなと思う。
「ふぃ~……」
「陛下、なんか風呂は良いですな……」
「じゃな。蒸し風呂は、我慢比べみたいで苦しい感じがするが、風呂はゆったり出来て良いの……」
だよなぁ。でも蒸し風呂だって良いよね。全身の垢を落とすなら気の所為かも知れないけど蒸し風呂の後で身体を洗った方がキレイになるって感じがするんだよね。
「風呂は王宮にも欲しいな……。ナギ、ロテック商会に言えば風呂は出来るんじゃな?」
「そうですね。問題無く作ってくれると思いますよ。でも王宮に風呂を作るって事は、王家で独占するつもりですか? 王宮には、働いてる侍女さん達や、侍従さん達が居ますよね?」
「むむむ……。つまり全員が使えるようにしろと言ってるのか?」
「そうですよ。まあ風呂を使う優先権は、王家の皆様方で問題無いと思いますが」
「フム。そうじゃの……。そのように取り図ろう」
「流石ですね陛下の人気が更にアップするでしょう。でも王城に努めてる人達は、風呂に入れないんですよね。多分王城に努めてる人達からは、王宮努めは良いなぁ……とか思われて、陛下の人気が下がると思いますよ」
「判った。王城にも作る」
「兵舎の方は作らないんですか?」
「判った全部作れば良いんじゃろ!」
「流石です」
取り敢えず、王城、王宮に風呂が作られる事になった。分散しておかないと相当巨大な温泉リゾートにしないと混雑してダメな感じがするから、分散した方が良いと思う。湯船の大きさもここよりは大きくした方が良いだろうね。その辺は、ロテック商会が上手く対応するだろう。




