(2-54)森の恵みを食べよう4(ミートソース)
よろしくお願いします。
(2―54)森の恵みを食べよう4(ミートソース)
なんとか夕食が終わった。マーヴェイ殿下に王城の兵士さん達が来るのでと、ちゃんと伝え許可を貰い自室に戻る。まだ王城の兵士さん達は来て無いので間に合った感じだ。
速攻で一番風呂に入って、王城の兵士さん達が来るのを待つ。面倒だけどマーヴェイ殿下、アルフォンシーノ殿下が未だ帰って無いので再度騎士服を着用する。
自室を出ると、風呂の周りはミグラス伯爵家の兵士さん達が集まって来ている。昨日言ったからトマト料理を期待しているんだろうね。
今日はミグラス伯爵家の風呂脇の窯を使う事になっている。自分も料理長の所に行って、手伝いを始める。と思ったけど料理長の配下の料理人さん達も手伝っていてする事が無かった。
『プロフェッショナルに任せた方が正解だよな』
と思って待っていたら、王城の兵士さん達がやって来た。
「ナギ様、本日もお邪魔させて頂き感謝します。コレ皆さんで飲んでください」
「ああ、有難う」
またビールを貰ってしまった。ミグラス伯爵家の兵士さんが飲むから良いけどね。キンキンに冷えてれば美味しいのかも。氷は魔法で作れるけど出すのは不味いので諦める。氷を作る魔法では、そんなにエネルギーは使わないけど理屈が難しいので現状説明すると色々厄介な事になりそうなので教える事は出来ない。
「トマト料理は、未だ出来て無いから暫く待ってくれ」
と言ったら、先に風呂に入るみたいだ。風呂の道具まで持って来ている。気に入ったんだろうか? まあ良いけど。
王城の兵士さん達が、交代で風呂に入ってる時に料理長達が、大鍋と材料を持って、裸祭りをしている所に来た。
「ナギ様、ここで最終仕上げします」
「はい、判りました宜しくお願いします」
大鍋の中は、たっぶりのミートソースだ。最後の仕上げのパスタをオリーブオイルで炒めるのを、俺の風呂の窯でやるんだと思う。フライパンもかなり巨大だね。大人数の食事を作っているからだと思う。軽く五人前は作れそうだ。
料理長が茹で上がったパスタを、サクッと炒めて行った。一人前で出すのでは無く、半人前程度で皿に盛って行き、配下の料理人がミートソースを掛けている。
「ナギ様、どうぞ」
「はい有難う御座います」
最初に頂いてしまった。
「美味っ! 昼間より更に美味くなってる!」
「いや、すこしだけ変えたんですよ」
マジで凄いね。俺が食べた後は、王城の兵士さん達が、食べ始める。
「ウワっ! なにコレ」
「超! 美味っ」
「ナギ様、コレ……トマト料理ですか?」
「う〜ん。トマト料理かと言われると違うかも知れないけど、たっぷりとトマトは使っているよ」
ミグラス伯爵家の兵士さん達の分も出来上がり、配られて行く。
「ええぇ、これに、トマト使ってるんですか?」
「そうだよ。美味いよな。流石料理長だよ」
出来れば牛肉でミートソースを作りたい所だったけど、イノシシ肉でも十分美味い。
「ナギ! これは何やってるんだ?」
ボスキャラが現れた……。なんでマーヴェイ殿下が来るんだ? ハッシュも来ているけど、単なる付き添いだとは思う。裸祭りしてるの知ってるんだから、連れて来なくても良いだろ、と思ってしまう。
マーヴェイ殿下が現れたので皆んなが一斉に跪く。
「飯食ってる最中だから、跪かなくて良い、立って食べてくれ……と言いたい所なんだが、ハッシュ、なんで皆んな裸なんだ?」
俺はちゃんと着てるよ! と言っても意味は無いかな。
「……えっと、ナギの風呂に入るついでに宴会してるんですよ。大きな風呂は屋敷の横にも有ります。マーヴェイ殿下も入って行きますか? かなり気持ち良いですよ。アルフォンシーノ殿下はレスフィーナが風呂に連れて行きましたから。もうかなり眠そうでしたから、風呂から上がったら眠ってるかも知れませんね」
「風呂って言うのは、ソレか?」
湯船を指差して聞いてくる。
「そうですよ。身体をお湯に浸かると、かなりリラックス出来て良いんです。蒸し風呂も、月に一回位は行きたくなるんで凄く良いですけど、風呂は毎日入りたくなりますからね」
「そうか……。ハッシュ、後で風呂に案内してくれ。流石に此処で入る訳には行かないからな」
「判りました」
まあそうだよね。マーヴェイ殿下が風呂に入ったら、侍女さん達が喜ぶかも知れないけど、バレたら市中引き回しの上獄門になるかも知れないからな。此処に入るって言ったら全力で止めさせないといけない所だった。
「で、風呂の事は判ったが……何を食べてるんだ? 飯の時に出たパスタとは違うようだが……ハッシュ判るか?」
「いえ、判りません。俺も食べた事が無いです」
まあそうだろうね。これも現時点では此処でしか食べれない料理だもんな。
「料理長。マーヴェイ殿下と俺の分を貰えるか?」
「はい、少々お待ち下さい。これもナギ様が教えてくれた料理ですよ」
それは別に言わなくても良いんだけどね。
「マーヴェイ殿下。この料理はミートソース・パスタです。これもトマトを使っていますし、料理長は俺が作ったのより更に美味しくしてますから、王国ではここでしか食べれない超貴重な料理ですよ」
「そうなのか……」
なんか残念そうだけど、料理長が許可しなきゃレシピは公開出来ないからね。俺も料理長がどんな魔改造したのか詳しく判らないから。
二人の前に、ミートソース・パスタが提供される。
「さっきのも美味かったけど、こっちはもっと良いな! 肉が入ってるし」
「だな、ハッシュ、ズルいぞ。お前だけこんな美味い物が食べれて!」
「と言われても……」
まあそうだよな。そもそもハッシュだって初めて食べてるんだし。
「マーヴェイ殿下。来年、トマトが収穫出来たらまた食べに来れば良いんじゃないですか?」
「そんなに、待てねえよ!」
マーヴェイ殿下の事は無視しよう。季節に関係無く野菜や果物が収穫出来る他の異世界が羨ましいよ。本当にね。
あっ、そうだ。イノシシ肉は未だ大量に余ってるんだから、代わりに定番の料理を作って食べさせてあげようかな。
「料理長。このミートソースを作る前に作っていた、トマトのソースは未だ余っていますか?」
「はい、有りますよ。ナギ様が作った物を全部、アレンジしてしまいましたが……」
「それは全然OKです。えっとですね、イノシシの肉でコートレットを作りたいんですけど……」
「ふーむ……。普段生肉は入手出来ないんで、鶏以外で作った事は無いですけどやって見ますか……」
「それで、コートレットに、トマトのソースを掛けて食べたいんです。あとはパンも有れば……」
「なるほど……。発酵野菜のソースも合うでしょうけど、トマトのソースも良いかも知れませんな。早速準備して作ってみましょう」
料理長が指示を出して厨房に材料を取りに行かせる。本当はキャベツも欲しい所だけど、残念ながら品種改良が進んでいないみたいで、夏キャベツは無いみたいだ。もっと南(寒い方向)の何処かの高原辺りならば栽培出来るとは思うけど。王都まで傷めずに運ぶのは難しいだろう。夏に焼きそばを作るのは無理かな。
料理人さん達は、屋敷の風呂の所の窯で調理してくれているようだ。なので自分の風呂の窯で、料理長と一緒に薄切りにしたパンを網に乗せて焼き、焼けたパンにはバターとマスタードを塗って行く。
揚げ終わった、イノシシ肉が出来たので、パンの上に乗せ、料理長が作ったトマトのソースを掛けて更にパンを乗せて、四つに切った。
「マーヴェイ殿下どうぞ。ハッシュも食べて見てくれ」
料理長にも一切れ渡し、自分も一切れ食べる。やっぱ美味いよな。イノシシと豚は、住んでる所が違うだけで同じ動物みたいだから、コートレットにするのは定番だよね。まあ現代では日本は三元豚、アメリカは四元豚が主流らしいから、一元豚と思われるイノシシとは少し違うかもだけど、美味いのには変わりがない。
「な、なんだコレ! イノシシのコートレットだよな……すっげぇ美味い! こんなに美味いのか……」
「俺も、そう思う。マジで美味い! ナギ! これもソースにトマトを使ってるのか?」
「そうですよ。料理長が新しく作ったソースですね。トマトを使ってるので、現時点では此処でしか食べれない物ですよ」
「ナギ様。そこまで、持ち上げなくても……ナギ様が作ったトマトを煮込んだ物をアレンジしただけです」
いや、そのアレンジが凄いんじゃん。
「料理長。このソースは、何て言うんだ? 新発明なら料理長が命名すれば良いんじゃね?」
「えっと……ナギ様。どうしましょう……大元はナギ様が作っていますし……」
う〜ん。まあ良いか……偶然だもんね。
「ハッシュ。このソースは、ミグラス伯爵家で出来たものだから、伯爵家の名前を採用してド・ミグラス・ソースって言う名前はどう?」
多少は違うかも知れないけど、ド・ミグラス・ソースっぽいんだもんね。
「えっ? ド・ミグラス・ソース?」
「そう。悪く無いだろ? 若しかしたら、これもそのうち王国中に知れ渡って行くかもしれないぞ」
「そ、そうか……。なんか悪く無いな……」
「おい! ナギ! なんでアルフ(アルフォンシーノ)とハッシュなんだ? 俺の名前の料理も作れ!」
「ハッシュじゃ無いですよ、ミグラス伯爵家です。それに、そんな簡単に、新料理なんて出来ませんよ」
稲藁が有ったら納豆を作って、マーヴェラス・ソイとかにすれば良いのか? 絶対にマーヴェイ殿下は納豆を食べるとは思えないけどな。冬になってキャベツが出回ったらパスタを発酵野菜ソースで炒めて、焼きそばモドキを作れば良いのかな? 〝浅草焼きそば〟モドキになるけど、マーヴェラス・パスタにすれば良いかも。まあ冬になってから考えよう。
イノシシ肉のコートレットが、じゃんじゃん揚げられて行くので、そのまま、ド・ミグラス・ソースか発酵野菜ソースを掛けて食べるのと、パンに挟むのを作って貰って、兵士さん達に食べて貰う。こっちの方がミートソース・パスタよりも人気が有る感じ。やっぱ肉の塊が良いのかも知れない。
そんなにインパクトが有ったんだろうか? 有ったんだろうなトンカツじゃ無いけど似たような物だし、現代でも外国人の方々に結構人気が有る料理だから。ついでに飲酒量が凄い事になっている。風呂には入らないようにして欲しい。
「料理長。この発行野菜ソースって何か呼び方が有るんですか?」
「いえ特には、いつもは、ただソースと呼ぶか野菜ソースと呼ぶかのどちらかですね。これもナギ様が、言ったようにトマトを入れて味が良くなったので……。名前が有るんですか?」
「ナギ! マーヴェイ・ソースにしろ!」
無視しよう。そんな長い名前なんて呼び難いし、食卓で省略して〝マーヴェイ〟取ってくれなんて言えないもんな。本人の前で言ったら絶対に不敬罪になる。
「東方で似たようなソースは、ウスターソースって呼んでいましたね」
「ウスターソースですか、判りました、トマトが入った発酵野菜ソースはウスターソースって呼ぶ事にします」
なんか、マーヴェイ殿下が文句を言ってたけど聞こえない事に。風呂に入って寛げば怒りも治まるよ。
料理人さん達に持って来て貰ったイノシシ肉は、全部無くなった。一応、屋敷の人達の分は確保してあるとの事で安心した。
取り敢えず肉祭りかな?(大量にイノシシ肉を食べたので肉祭りで良いだろう)は、お開きになった。皆んなが帰った後は、風呂から出てくるマーヴェイ殿下を待って見送りした。アルフォンシーノ殿下は侍女に抱えられて爆睡中だった。




