(2-46)報奨
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(2―46)報奨
それから数日後、夕方、王城から帰って来たハッシュに呼び出された。
「明日、宰相がナギを呼び出しているので宰相の所へ行ってくれ」
「判った」
多分、ゴム作りの件だと思う。
「最近、何やってるんだ? 一ヶ月居なかったし、まあ陛下と宰相に何か頼まれてるんだろうとは思うけどな」
そうか、ハッシュには何やってるか伝わって無いんだな。別に隠してる意味は無いと思うけど、元ロヘドロ伯爵家絡みも有るし詳しくは言っちゃ駄目かも。
「まあ適当に、新しい物作り関係で宰相に頼んでいる事が有るんだ。ミグラス伯爵家には何も悪いことにはならないから」
「そうか、それならば良いけどな。何を作るんだ?」
「靴だよ。もっと安く出来るかなって思ってね」
「ふ~ん。そうか判った。安くなるのは良い事だよな、頑張ってくれ」
と言う事で、翌日宰相の所へ、まあ陛下も居るだろうけどね。いつものように検問みたいな衛兵さんを突破して、応接室経由で執事さんに案内される。
「おう、来たか。色々とやってくれるの」
いきなり陛下が言って来た。
『ん? なんの事?』
全く身に覚えが無いんだけど、最近やった事は、トマトのスクランブル・エッグ料理だけど、食べたいのかな? 流石に陛下は情報入手が早いよね。感心するよ。
「若しかして、陛下もトマト料理が食べたいんですか? なんなら作りましょうか、結構ミグラス伯爵家の兵士さん達には人気なんですよ」
「違うわ! ボケが! そんな事で、態々王城に呼び出す訳無かろう!」
違うんかい! じゃあ何だ?
「えっと、本当に申し訳有りませんでした」
最近は孤児院関係も何もしてないし何だろう。マジで判んないぞ。土下座する方が良いんだろうか?
「陛下、ナギ殿が悪さしているように聞こえますよ、全くそんな事は無いのに、どちらかと言えば王国に良い事なんですから」
う~ん。全く話が見えない。
「ナギ殿、この前の硫黄採取で持ち帰って来た石が有りましたよね」
「ああ、そうですね。まがい物の金かも知れないかなとは思ってましたけど、それが?」
確かに、拾った時は金だったら良いかもとは思ったけどね。黄鉄鉱だとしても鉱山が近くに有るのかもって思ったけど、もしかして当たりだったのかな?
「ナギ殿が、持って帰って来た石を割って確認したら、かなりの量の金が含まれている事が判りました。近くに金の鉱脈が有ると思われます。どの位の産出量が見込まれるのかは不明ですが、相当多いのではとの見解です」
「えっ? マジで。それは御目出度う御座います。オブーツ・ド・ロヘドロは馬鹿ですね自分で鉱山を開発すればウハウハだったでしょうに」
良かったじゃん。金が採れるんだからね。通貨だけで無く宝飾品にも使えるし、モノを輸入する時の支払いに困らなくなるもんね。
「お主、何を言ってるんだ? 確かにオブーツは馬鹿だがな。鉱山開発してれば悪事に手を染めなくても、左手に団扇を持っていただろうし、王国に報告しておけば爵位も上がったじゃろうに……」
「じゃあ、未だ生きているなら、教えてあげたら泣いて喜ぶんじゃないですか? なんなら鉱山が出来たら掘って貰うのも良いかも知れませんよ。懐に入れるかも知れませんけどね」
「そうじゃな、教えてやるとしよう。それにオブーツの一族に掘らせるのも悪くはないの。懐に入れても持ち出せんから問題は無い」
「一応、注意しておいた方が良いと思いますよ。伯爵領を治めていたんですから人脈は有るでしょうし、懐に入れた金で看守を買収して贅沢品を内密に仕入れるなんて技は結構有ると思うので」
定番のパターンだよね。獄中でも偉そうにする奴は多いだろうし、シャバに顔が効くなら看守位簡単に脅して手懐ける事も出来ちゃうんだよね。
「フム、確かにな、奴ならそのくらい裏社会に顔が効いても不思議は無いな」
「陛下、オブーツの事はどうでも良いんです。それよりもです」
「おお、そうじゃな。お主は判っておらんじゃろうから教えてやる、鉱山を発見した者には、一部権利と言うか利益を渡す事になっておるんじゃ。お主にその利益を受け取る権利が渡される事になる」
「えっと、未だ鉱山が見つかった訳じゃ無いですよね。なので発見者はこれからですよね? なので自分は関係無いと思いますけど……」
だよね。石は見つけたけど、鉱山自体は見つかって無い筈だもん。お金はそれなりに欲しいけど、陛下の事だから、絶対にオマケで変なもの迄付けて来るのがバレバレだもんな。そう言うのが嫌なんだよね。
「ナギ殿、そう言う訳には行かないんですよ、既に金鉱石から鉱脈が有るのは判りますから、あの石の金の含有量からすれば確実ですね」
「えっと、では石は無かった事にしてください」
「無理じゃ」
「じゃあ、一緒に硫黄採取した十人が見つけた事に……」
「ナギ殿、それも無理です、ナギ殿と一緒に行った十人に聞き取りは済ませて有ります。ナギ殿が川で拾っていたと証言を得ていますから」
「どうすれば、良いんでしょう? この国から出て行けば良いでしょうか? 短い間ですがお世話になりました。えっと次は何処の国に行こうかな……。勿体ないけど気球は持てないから置いて行くか……」
サクッと立ち上がって出て行こうとする。
「待て! 未だ話は終わっとらん。それに絶対に国から出て行く事は許さん!」
困ったぞと。どうすりゃ良いんだ? 石なんて拾うんじゃ無かったよ……。石一個で人生が変わるなんて……。呪いの石とか有るんだよね。あの石もそんな類なんだろう。変な模様は無かったんだけど。
「陛下、どうしましょう?」
「どうもせん。権利を受けておけ」
「はぁ……」
「ではコレに、署名してください。すでに陛下と私は署名済みです」
なんだよコレは……。権利が0.1パーセント? デカくね? 一千億円位埋蔵されていたら一億円貰えるのか……。普通の鉱山ってどの位埋蔵されてるんだろう? 判んねえけど、年間一トン採れるとすると、自分の取り分が一キログラム。大体六〇〇万ネィ位か……。だったら大した事無いかなサラリーマンの年収位だし。取り敢えずコレ位ならば、まあ良いかなと思うのでサインしておいた。実際採掘し始めるのは未だ先だうろから。
「さてと、次はコレにもサインして貰おうか」
書類を見せて来た。読んだらサインしちゃ不味いものだ。
「なんで、こんなモノにサインしないといけないんですか? 貴族になんてなりませんよ」
なんか子爵って書いてある。マジで無理! なんでいつも貴族の爵位を押し付けて来るんだ? そんなんは欲しい奴にやれば良いのに。全く。
「騙されてくれんもんじゃの、ちょこっっとサインするだけじゃぞ」
「嫌です。絶対にサインなんかしません」
なんだよ、騙す気満々じゃん。
「ナギ殿、こちらも困っているんですよ。今回の元ロヘドロ伯爵の件で、参加した兵士達は、全員昇格する事を決めました。ナギ殿と最初に一緒に行った十人は、騎士に叙任する事も決定しています。ここでナギ殿だけ何もしないと、他全員が昇格も出来なくなります」
「それはズルいですよ!」
「ズルく無い! お主は、ペン、振り子時計、洗濯庫、脱水庫、そして元ロヘドロ伯爵の件、鉱山の件。さらに結果は出て無いがゴムの件。全てが報酬、報奨の対象じゃ、そもそも此処に出入りするにも身分が必要なんじゃ」
「えっと、もう少し位の低い爵位は有りませんか? えっと准騎士見習い補佐四級くらいで……。もっと低い副准騎士見習い補佐の従卒一二級辺りがベストですけど」
「そんな騎士爵は無い」
「じゃあ、新設するとか、そうすれば次は少し級が上がるだけになりますし……」
「駄目じゃ!」
ええぇ、どうすりゃ良いんだよ! 陛下もワガママだなぁ。
「ナギ殿、最低でも騎士爵になって貰わないと駄目です。じゃないと一緒に行った兵士達が困りますから」
「はぁ……失敗したなぁ……。判りました、騎士爵をお願いします。叙任式とかは無くても良いんですよね?」
「それは、まあ無くても構わん。やりたいなら大々的にやっても良いぞ。高位貴族を全部集める事になるがな」
「絶対に嫌です。逃亡しますよ」
宰相が、サクッと紙を二枚出して来た。えっと内容は、騎士爵叙任の紙だ。ちゃんと内容もしっかり確認する。特に問題無いと思う。
『宰相は、絶対に最初からコレを出すつもりだったよね? 詐欺のやり方に似てるもん。なんか騙された感じがする』
自分で騎士爵になるって言ってしまったから、仕方無いので二枚共サインしておく。一枚は自分の控えだ。
「えっと以前約束して頂いた、ミグラス伯爵家で暮らす権利と、マーヴェイ殿下の従者を続ける権利は有効ですよね?」
「ああ、それはお主が破棄しない限り有効じゃ。従者の服も騎士になったので、後程届くようにしておく、今後王城に来る時は、その服で来るように」
「はい、判りました」
まあ良っか。王城勤務にはなってないしな。服装が変わるのは仕方無い事なんだろう。




