(2-40)硫黄採取に行こう3(三日目)
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(2―40)硫黄採取に行こう3(三日目)
◆洞窟探査
翌朝、暗いうちから準備をする。先ずは朝食から。朝食を食べ終わり明るくなったら行動開始だ。昨日の洞窟の松明も消えているだろうから、松明も持って行くし、糧食も数日分持って行く。長期戦にはさせないつもりだけど。
若しかしたら、昨日は監視されていた可能性も有る。だとすると盗賊達は既に逃げて、何処に有るか判らないオブーツ・ド・ロヘドロ伯爵の所に逃げ込んでる可能性も有る。
『最悪、ロヘドロ伯爵家を攻めるか? オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵本人は王都にいるみたいだから、誰が代理で領地管理しいるとは思うけど……。勝手に攻めるのは不味いよな、その場合は一旦許可を貰いに王城へ戻るか』
と思った。
日が登ったので、早速行軍する。先ずは洞窟まで、監視されている可能性も有るので、周囲に気を配りながら森を進んで行く。
無事に洞窟まで辿り着いた。監視の気配も無い……。拠点を捨てて完全撤退完了したんだろうか? 可能性は有ると思う。松明を用意して洞窟に入る……。昨日の洞窟内の松明は当然だけど消えている。
『誰かが消したって事は無さそうだな、燃え尽きた感じだ……。やっぱ既に逃げたのか? 監視も無かったようだし』
更に奥へ向かう。突き当りまで来たのに出口が見つからない。
「可怪しいな、出口が無い……。隠し通路とかが有るのか?」
「確かに無いですな……。流石に隠し通路は作れないと思いますけどね」
だよねぇ。ゲームじゃ無いんだし、城なら緊急避難通路を予め設計出来るけどな……。じゃあなんでだ? 謎だ。
『昨日、女性達を助けた時に案内して貰えば良かったかも……』
散らばって、出口を探す。
「ナギ様!」
来る途中分岐した方を調べて貰ってた兵士から声が掛かる。その兵士の方へ向かった。
「ん? 何処だ?」
分岐した先は行き止まりだった。
「こっちです!」
上を見上げると、松明の明かりが見えた。
『あんな所に、隙間が有るんだ……。全然気付けねぇよ……。暗いと絶対に判らないな』
岩肌を登って、隙間に入って行く。奥は結構広かった。更に先が有るようだ。天然の洞窟は複雑だよね。既に方向感覚無いもん。
奥に向かうと。盗賊の一味が一人倒れていた。未だ生きてますよ。足を怪我しているから昨日矢で足を射た奴だね。逃げ遅れたんだろうけど、なんでだ? 一日有っただろ? 足を怪我してると無理なのか? 謎だ!
「おい! 起きろ!」
兵士さんが、ボコボコに蹴って起こしてあげている。親切だけど死んじゃうよその辺で止めてあげようね。
「う、う……」
怪我が化膿して発熱してんのかな? 取り敢えず意識は戻ったようだ。
「出口は何処だ?」
顔を踏んだら喋れないから、止めましょう。
倒れてる盗賊は、壁を指差した。
『ん? 何処よ?』
兵士さん達が、丹念に壁を調べる。
「ナギ様。でかい岩で入り口を塞いでいるようです」
「用意周到ですね。何か有った時に、塞ぐ準備をしていたんでしょう」
う〜む。盗賊の癖に侮れん!
「でもこれだと、川から敵が来る時は良いけど、逆の場合は岩で塞ぐ役目のヤツが逃げれなくなるよな……」
「そうですね。多分ですが男の奴隷が居るんじゃないですか? どうしますナギ様」
マジかぁ……。とするとかなり大きな組織だぞ。だけど確かにその可能性の方が大きいよな。この人数で殲滅出来るのか? 困ったぞ。
「案は幾つか有る。それを相談したい」
「はっ!」
「一つ目、この岩をなんとかして、退かして向こうに行く。だけど岩を退かした瞬間に弓の攻撃が有るかもしれない。二つ目、別ルートを探して向こうに行く。だけど、方向も判らないから別ルートを探すのは難しいと思う。三つ目、一旦戻って気球で向こうに行く、その場合は全員は無理だし着陸出来ない場合は、飛び降りて貰う。これも方向が判らないので時間は掛かる。まあ空からならば比較的早く見つかるとは思うけどな」
さてと、他は今の所思い付かないぞ。どうすんべぇ……。
「おい、この向こうに行く為の別な道は有るか?」
再度倒れている盗賊に兵士さんが聞く。だからぁ! 顔を踏んだら答えられないよ。で足を離して貰って聞いたけど、知らないみたいだ。嘘かも知れないけどね。
◆中二病
さてどうするかな? 相手の心理はどうだろう? 回り込んで来ると思っているのか、それとも岩を退かして来ると思っているのか……。どっちでも対応してそうだな。
昨日、気球で往復してるのは見られているだろう。だとすれば、こっちが兵士を増員して来たってのもバレていると思った方が良い。時間が経てば、盗賊達に逃げる猶予を与えてしまう。
「何か、意見は有るか?」
「岩を退かすのが良いとは思いますけど、無理ですよね?」
まあね。重そうだもんね。でもそれが良いって思ったんだろう。
「決まったな。じゃあ岩を退かす事にする」
「えっ? どうやって?」
そりゃそうだよね。
「取り敢えず見ててくれ」
岩の前に立つ、般若刀を抜いて正眼に構える。息を整えて気を練り上げて行く。刃に気が纏い付くようにして、十分溜めを作る。ギリギリまで気を練り上げて行く。実剣を切るより難易度が高い。
「ハッ!」
縦、横、左右斜めで岩を切った。感覚で刃こぼれして無いのは判る。確実に切れたと思う。
「野獣テンサゲ流、煌八仙」
なんか、シーンとしてしまった。実際切った時に音は殆ど出てないんだけどね。音が出たら刃こぼれしてるから。かなり難しい技なんだ。ちゃんと八分割してるつもりなんだけどな。端っこは切れてないけどさ。昔はちゃんと切れなくて良く火花飛ばしたもんねぇ、懐かしい……。
「なぁ、ナギ様、技名言ってたよな……」
「恥ずかしく無いのかな?」
「ちょっと俺は無理だな……」
『をい! そこか? 注目するのは別だろ! 確かに恥ずかしいけど、癖なんだよ! 中二病で悪いな!』
「これで、岩を退かせる事が出来ると思う」
「えっ? 本当に切ったんですか? 格好付けただけじゃ無くって?」
「マジで? 嘘でしょ?」
「切れたよ、まあ見える範囲だから、端っこの方は切れて無いよ。岩は押さないと崩れないと思うけどね、押せば崩れて行く筈だ」
そう言ったら、兵士さん達が、岩を押し始める。割れた岩は簡単に崩れるから。
「岩が崩れたら、コイツを放り出してくれ、弓で狙われているなら、コイツに刺さるからさ」
背後で、ぐったりしてる盗賊を抱え上げて準備をしている。
岩の方も、じわじわと押され、切れて無い部分も、勢いで割れて行く。上部が外に向かって崩れ落ち、人が通れる隙間が空いた。
盗賊を隙間から、放り出す。
「うぎゃっ!」
やっぱりね。盗賊に矢が三本刺さった。出口を監視してたようだ。
「俺が、先に出て、矢を放った奴らを射る、そしたら全員出て来てくれ。合図するから!」
「「「「「「「ウィッす!」」」」」」」
下の方の岩も、蹴って退かして貰う、矢が一本飛んで来たが、方向が判ったのと人影が見えたので、出る前に矢で射殺した。多分、あと最低三人居る。
『なんか、武器が豊富だし、弓の腕も良いよなぁ……』
これ絶対にオブーツ・ド・ロヘドロ伯爵が罪人を助けて支援してんじゃねえの? ムカつくなぁ。ただの盗賊がこんなに剣や弓を用意出来る訳無いもんな。若しかしてオブーツ・ド・ロヘドロ伯爵の所の騎士も居るのか? なんか居そうだよな。
入り口の岩は崩されて完全に人が通れるようになっている。
左側の方から軽く体を出すようにして、外を覗き見る。直ぐに矢が飛んで来た。だがこれでどの方向かは判った。今度は逆に、右側から同じ事をする。同様に矢が飛んで来て、もう一人の居る方向も判った。あと最低一人いる筈だけど、盗賊に刺さった矢の角度からすると上だ。練度が高く無ければ動いていれば当たらないと思うが……。マーリン団長みたいなバケモンが相手なら死ぬ。
流石に緊張して来たけど、此処に来る前の盗賊達はそんなに弓の練度が有る方じゃなかった。一気に三人仕留めるようにしよう。
「じゃあ、先に行く、剣を持って準備してくれ」
さて、行きますか。
◆敵は誰?
洞窟の出口からサッとでる。先ずは左右の敵を確認して、距離が有るか判断した、直ぐに背後の上に弓を向けて射る。後から狙われるのは嫌だからね。
直ぐに左右の敵も、マーリン団長に鍛えられたので動きながらでも矢を当てられる、マーリン団長ほど上手くは無いけど、走って射る位は問題無い。
『ん? マジかっ!』
狙われないように、動き、左右の相手を二射ずつ射った。
『これで、弓を射るヤツは居なくなったか? まだ油断しちゃいけないけど』
「出て来てくれ!」
兵士さん達が出てくる、臨戦態勢で隙きが無い。
「全方位確認! それと、左右に弓で倒れてるヤツがいるから、確保してくれ。未だ生きているから」
兵士さん達が、十人ずつ左右に行ってくれた。
洞窟の外は、多少開けているが、未だ森の中だ。獣道が出来ているので、辿って行けば盗賊のアジトにも行けるかも知れない。獣道の方向は、山を下っている感じに見える。
『参ったなぁ、どうするのが良いかなぁ』
兵士さん達が、弓で射ったヤツを捕らえて連れて来てくれた。
「ナギ様。連れて来ましたけど……」
「コイツ等って……」
戸惑ってるよね。そりゃあねぇ。だって何処か判んないけど、正規兵の格好してるんだもん。弓を射る時に一瞬正規兵に見えたから、腕と足を射抜くように変えたんだよな。でも、この二人がロヘドロ伯爵家の騎士なのかな? 洞窟の上にいたヤツは盗賊なんだよね。でも死んじゃってるし。
「この格好って、何処の部隊か誰か知ってる?」
「ロヘドロ伯爵家の騎士の格好ですね」
「と言う事は、盗賊と繋がっているのは、本当の事なのか……」
だよね。これが証拠になるかなぁ……。色々と言い訳しそうだけど。でも確定だろうな、死刑囚を助け盗賊に仕立てたのも、人を攫って人身売買してたのも全部オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵の指示なんだろう。
「取り敢えず、此処に居ても、俺たちが狙われる可能性も有るから、洞窟の中に入ろうか」
こんな所で固まってたら、良い的になっちゃうもんね。怪我をしている二人も連れて、再度洞窟の中へ。
「さてと、ちょっと話しを聞かせて貰おうかな。お前達は、ロヘドロ伯爵家の騎士か?」
「「……」」
ですよねぇ……。拷問するのは面倒だしな。
「ナギ様。取り敢えず話しを聞ければ良いのは、一人で十分なので、片方は、殺っちまいますか?」
「ん〜。そうだねぇ……。君達、どうする。そう言ってるんだけどさ。話しする気無い? 一応助けてあげない事も無いよ。確約はしないけど」
「……俺達は」「言うな! どうせ殺される」
「どうせ殺されるんだったら、言っても変わんないと思うよ。サクッと死ぬか、むっちゃ痛くて死ぬかになるけどね。でも話すんなら、まあマジで助けてあげない事も無い。気が変わったら教えてね」
取り敢えず、時間も無いので、放置。
動けないように縛って、ちゃんと猿轡もしておく。少し離れた所に行き話しを始める。
「さて、洞窟を出て攻めに行くと言っても、困った事に、何処に行けば良いのかが判んないだよね。直ぐアジトが見つかるかなと思ったんだけど、どうも獣道が麓の方に向かっているように見えるんだ。
で、これからどうするかなんだけど、攻めに行くにしても糧食が足りなくなると思う。一旦戻って糧食を持って来たい所だけど、持てる量なんて高が知れてる。一ヶ月分なんて持てない。いいトコ一週間分だろう。水の心配も有るから。あの二人みたいに正規兵が相手だと、盗賊とは違うのでかなり厳しくなる。どうするべきかな? 流石に此処までは想定外なんだけど、王国の兵士でも勝手に他領の兵士と戦争する訳にはいかないでしょ? 俺もそんな権限持って無いからさ」
水に関しては、最悪魔法を使う事も想定しないといけない。地図が無いのが痛いんだよね。現在地もだけど、って言うか此処は何処だ? 北側斜面の方だと思ったんだけど違うみたいなんだよな、海が見えるし。下って行ったら何処に出るのか。全然判んないんだよな。空から確認するのが良いのかも。
ロヘドロ伯爵家の裏とかに出たりすると、完全に臨戦態勢で待ち構えてると思うし。そうするとこの兵力だと、まず無理だ。最悪、魔法の裏技使う事になる。出来ればそれは避けたい。
「ナギ様。一旦王城に引き返した方が良いと思います」
「そうだなよ、盗賊は良いけど、ロヘドロ伯爵家と争うのは不味いですよね」
「だよね。じゃあ方針を決めよう」
もっと早く気付くべきだったな。人質からロヘドロ伯爵家の関与を聞いた時点で、全員撤収してれば良かったかも。マジで失敗。硫黄採取出来なくなるけど、それは未だ後からでも出来るし。
「王城へは、先ずあの二人を連れて戻る。尋問は王城の専門家に任せる。どの位かかるか判らないけど、尋問が上手く行っても行かなくても、ちゃんと陛下の方針を聞いて最大で三日で戻って来る」
皆んなが頷くのを確認する。
「次に、皆さんの、待機場所と言うか陣を張る場所だけど……」
「この洞窟は悪く無いんですけど、両方の出入り口から、煙攻めに合ったら全滅しますね」
そうなんだよね。
「ナギ様。やっぱり、気球の置いてある場所で、陣を張って待ってる方が良いと思う」
「俺も、それが良いと思う。もしロヘドロ伯爵家の兵が攻めて来たら、人数にもよるけど、無理に戦おうとせずに川沿いを下って撤退して欲しい。攻めて来るとしたら一〇〇人単位で来る筈だ。向こうも持てる糧食の量に限りは有るから洞窟から一週間位距離を離れれば大丈夫だと思う」
そう言う方針に決めた。なので、怪我してる二人を連れて一旦ベースキャンプに戻る。
◆怒ってます
気球を置いてあるベースキャンプに戻った。捕虜(?)の二人が足と腕に怪我をしているので結構時間が掛かってしまった。それでも、午後を少し回った位。
気球を膨らませ出発準備をした。
「後は頼みます。余力が合ったら、洞窟が見える所から見張って貰えれば、敵が来るか判ると思います」
「判りました!」
捕虜二人は、ゴンドラに乗せて暴れられると困るので、縛って吊るして行く事にする。暴れても何も出来ないだろうし、気になるのは漏らさないか……。ちょっと不安。
気球を浮き上がらせる。
捕虜の二人がギャーギャー煩い。無視する。ぐんぐん上昇して行く。気球の限界速度はどの位かな? 流石に音速を超えるのは不味いって思うので、時速九百キロメートル位に……。息が出来ないかもしれないので、止める事にする。やっぱリニア位の速度で我慢して貰おう。気絶するような気がするけどね。
バビューンって王都まで約二時間。午後三時位に到着。下を覗いて見ると捕虜がぐったりしている。
『死んじゃったかな?』
まあ仕方無い。ゆっくり降下して、一メートル位の高さで、捕虜を縛っていたロープを切る。
「うぎゃっ!」
生きていたみたいだ。良かった。尋問しないといけないんだよね。着陸して、兵士さん達に気球を任せる。
『素早いな』
陛下と宰相が、既に迎えに出てきている。
「ナギ、盗賊討伐は上手く行ったのか?」
「全然ですよ。全く、どうして良いか判んなくなったんで戻って来ました。そこでひっくり返ってるのが、盗賊と連携してたヤツです。兵士達が言うにはロヘドロ伯爵家の騎士じゃないかって言ってますよ。生きていますから尋問してください。それと今後の方針も決めて貰いたいですね、もうやってらんねえって感じ!」
そんな今の俺は怖いのか? なんか陛下も宰相もちょっとビビってるんだけど。そのまま王城に入り、宰相の執務室へ。他、誰だか判んねえけど何人かの人達も一緒に来た。
先ずは状況説明をした。
「詳しい地図を見せてください! 特に、バラクポア山の東側。ロヘドロ伯爵家の領地の地図を! 全然、判んねえから。自分達の居る場所と、敵の場所、地形も判んねえし、このままだと全滅しますよ。俺は硫黄を採取したいんじゃ!」
まあ余裕で戦ってくれるって思えるけどね。兵士さん達は、なんかすげぇ強ぇから。なんで戦争に負けたんだ?
宰相の指示で一人が部屋から駆けて出て行った。
「それで、陛下、肝心のオブーツ・ド・ロヘドロ伯爵はバチボコしましたか? なんとかしておいて下さいって言いましたよね?」
「……それは」
「ナギ殿、それは未だです。オブーツ殿は王国の伯爵です。囚われてた女性達の証言だけでは捕らえる事は出来ません」
それは、判ってんだって。でもなんかしろよ!
「あぁ? 重税課してるバカなんでしょ? 早くしないと領民が死ぬだろ! 捕らえて来た兵士は証拠になんねえの?」
「重要な証拠では有りますけど、伯爵との関係を証言をしたとしても……」
なに言ってんだよ! 全く使えねぇな。 王権発動とかしろよ! と思ってしまう。
「で、陛下、俺達は、どうすりゃ良いんですか?」
と詰め寄ってたら、さっき出て行った人が戻って来た。
「こ、これがバラクポア山周辺の地図です」
テーブルの上で広げて見せてくれる。
「なんじゃこりゃ! なんも書いてねえじゃん! 川も書いて無いし使えねぇ地図だなぁ!」
山が有って、ここが俺ん家みたいな地図だ。
「こ、これはロヘドロ伯爵から提供された地図です。領地の地図は、領主から提供されてるので、現地に行った事が無い私では、正しいかどうか判りません」
いや、別にアンタを怒っている訳じゃ無いんだけど、ちょっと気が立っていて……スマソ。
「宰相、不正確で役立たずな地図を納めたのは、拘束する理由になりませんか?」
「地図だけでは……」
「なんでだよ! 何年ロヘドロ伯爵領を治めていたんだよ! 長期に渡って修正しないのは可怪しいだろ!」
「確かに……」
「ボニート。オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵を拘束しろ、地図の件、囚われてた女性達の件、盗賊と一緒にいた兵士の件。三つ有れば十分だ。重税の件も有るが領主の裁量の範囲だからな、それでは拘束出来ん」
「宜しいので?」
「構わん。後から叩けば幾らでも罪は出て来るだろう」
「判りました、直ぐに王都にいる伯爵を拘束します」
最初から拘束しておけよ! 全く! 宰相の指示で、一人出て行った。オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵を拘束する兵を動かしに行ったんだろう。
「宰相、ロヘドロ伯爵家の御用商人も確保してください、奴隷取引に関与している可能性が有ります」
「そうですな。身柄を確保して、書類を押収しましょう。御用商人から犯罪の証拠が手に入るかも知れませんな」
若しかしたら無関係なのかもだよな、表に出て来ない奴隷商人が関わっているのかも。でもこれは今は判らない。後ほど調査する事になるだろう。
「ついでに兵を派遣してください、当然代官も。此処からだと一ヶ月は掛かるのかも知れませんが、それと今、ロヘドロ伯爵領は誰が纏めているんですか?」
「兵の件は、送るように手配する。それと今はオブーツの息子の、ヨゴーレ・ド・ロヘドロが纏めている筈じゃ」
親子で悪事働いているのか? オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵がどんな奴か判んないけど、息子に罪を被らせ無実を訴えてくるかも知れないな。まあ監督不行き届きと、プラスアルファで一族郎党全殺しになると思うけど。
◆えっ宰相が行くの?
「地図に書き込んでも良いですか?」
「構わん、どうせ情報が足りて無いのであろ」
ペンを借りてサクサクっと書いて行く。先ずは川から。そして気球を着陸した場所。位置は大体だけど。そして洞窟の場所。
なんだけど変なんだよな……なんで洞窟を抜けたらそこは東側斜面なんだ? ワープか? 確かにかなり長い洞窟だったけど……。
まさか、洞窟が川の下を通っているのか? なんかその可能性が高そうだな。とすると……。洞窟を出た場所は、この辺なのかな? 伯爵領にかなり近いな……。地図が不明確だもんな伯爵領に入ってるのかも。
「あっ、そうだ。罪人をアネクメーネ砂漠に処刑しに行く時は、ロヘドロ伯爵領を通りますよね?」
「そうですね。ロヘドロ伯爵領で補給と休憩をしてからアネクメーネ砂漠に向かってます」
じゃあ、罪人が処刑されるの、完全に判ってるじゃん。
「ヨゴーレ・ド・ロヘドロ伯爵子息が、罪人を助けてるんでしょうね。何時からロヘドロ伯爵領を纏めているのか判りませんが、オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵も関与してるでしょう」
「そうですな。多分間違い無いでしょう」
つまり確実にオブーツ・ド・ロヘドロ伯爵を追い込むのは、罪人(盗賊)を最低一人は生きて確保しないと駄目なのか。死刑囚が生きてたら言い逃れ出来なくなるよな……。それでも罪は認めないとは思うけど。それこそ陛下の一声でバチボコして貰おう。ホントあのオッサンもっと役に立ってから旅立って欲しいよ。勝手に頭に矢を受けるんだもんな。
「で、陛下、俺達にどうしろと? 勝手にロヘドロ伯爵の兵士と戦うのは不味いですよね? 盗賊だけならばまだしも」
「ワシが許可する。ロヘドロ伯爵の兵士と戦っても罪には問わん」
「と言われても、口約束じゃあ駄目ですよ。後から言って無いってのは偉い人の良く有るパターンですから」
大体、言ったくせに覚えてないとかって、偉い奴は絶対言うんだよね、責任取りたく無いから。その癖に手柄だけは持って行くんだよな。
「判った、書面にするし、王家の旗指も与える。これでどうじゃ?」
「判りました。それが有ればかなり助かりますけど、肝心なのは何をすれば良いんでしょうか?」
「盗賊を生きたまま確保してくれ。その過程でロヘドロ伯爵の兵士と戦っても何も言わん」
だよな。それしか無いよね……。
『ん? 不味い!』
「陛下、盗賊を生きたまま確保するのは、不可能かも知れません」
「なんでじゃ?」
「ヨゴーレ・ド・ロヘドロ伯爵子息が証拠隠滅するのに、全員殺している可能性大です」
失敗した。やっぱ無理やりでも、洞窟を抜けた後、攻めに行くんだった。。
「そうか、確かにその可能性が高いな……」
んん? 洞窟を塞いだ岩は、ロヘドロ伯爵家の兵士が塞いだのかも……。俺が弓で殺した洞窟の上に居た奴も後から殺される予定だったんだろうな。だとすれば、ロヘドロ伯爵家は、王国軍を攻めては来ない筈だ、それよりも証拠隠滅を優先するはず。
「ロヘドロ伯爵家の本邸を押さえないと、証拠隠滅されてしまいます、既に向こうに一日猶予を与えてしまいました」
「ナギ、今の戦力で行くのは無理だよな? 王城から二〇人追加したとしても……」
「ロヘドロ伯爵家の本邸は、城ですか? それとも城塞都市?」
「小さめの砦です。アネクメーネ砂漠に罪人を連れて言った者の報告ではそう報告されていました」
城は簡単に作れないもんね。敵がいるならば作るかもだけど。流石に五〇人程度で本拠地は落とせないな……。出来無い事も無いけど、やったら全滅させちゃいそうだし。二酸化炭素だと加減を謝ると頭がパーになったり死んじゃったりするんだよな。今度、笑気ガス(亜酸化窒素)を出せる魔法を作った方が良いかも。
「陛下の署名付きの書類を持った代官が行けば中に入れますかね? 逆に入れてくれないようならば罪に問えませんか? その場で戦闘になれば戦いますけど」
「それは確実に罪に問える。王家の査察を断るバカは居ない、いたら反逆扱いじゃ」
「と言う事は、中に入れてくれたら証拠隠滅完了してるって事ですね。何か残ってる事を期待しないと……」
「そうじゃな」
まあ行くしか無いか……。
「では、私が査察に行きましょう。当然、代官も連れて行きます。長くここを離れる訳には行きませんから」
『えっ? 宰相が行くの?』
「ボニート、お前が行くのか?」
「ええ、私が適任でしょう。代官が行っても、舐められるだけです。こちらの事は部下に指示を出しておきます。ナギ殿、一時間待って貰えますか?」
「はい、判りました。ですが山を歩きますけど宰相は平気ですか?」
「意外と王城勤務は激務なんですよ、広いですからね。それに昔は陛下と戦場を駆けていましたからね」
『マジ? 結構良い身体してるとは思ってたけど、肉体派だったんだ』
気球を膨らませ、準備をしていると、陛下、宰相ともう一人が来た。多分代官だろう。代官さんの名前はガンバ・ランゴスタさんと言うらしい。貴族かな? でも家名の前に〝ド〟が無いし。まあどっちでも良いけど。
二人の後には、荷物を抱えた人がいる。
「なんですかそれ?」
「これは、飴玉です。強行軍には必要でしょう」
確かに、当分は絶対に必要だな。やっぱ宰相は違うなって思う。二人に気球に乗って貰った。さて行きますか。
◆結構近い
バビューンって気球をバラクポア山迄飛ばして行く。洞窟から、ロヘドロ伯爵家迄どの位離れているのかが判らないので、一旦、偵察をする。洞窟の出口を見つけるのに結構苦労したがなんとか見つかった。やっぱり洞窟は川の下を通っていたようだ。
ついでに、貰って来た地図に記入して行く。
「ほう、上空からだと、以前ナギ殿が言ってたみたいに地図作りが簡単に出来ますな」
「でしょう。やっぱ正確な地図は絶対必要なんですよ。本来は戦争目的で作る訳では無いですけどね。正確な地図は絶対に有った方が良いですよ。川のどの辺が氾濫しやすいとかも地図が正確なら判りやすいですし、治水工事でも活用出来ると思います。まあ定期的に更新しないと駄目ですけどね」
「そうですな、正確な地図を作るのに、ナギ殿に協力して貰っても?」
「まあ構いませんけど、お金は取りますよ」
『この世界の伊能忠敬さんになるつもりは無いけどね』
上空から獣道がどこに向かっているのか調べる。
『むむむ……。結構、近くね?』
洞窟の出口からだと森が多いので見えなかったのだけど、ロヘドロ伯爵家の本邸は、洞窟から一〇キロメートル位の所に有った。山道なので、十キロメートル以上は歩くとは思うが……。今からなら今日中に間に合うかもと思う。
「宰相、地図は大体良いので、兵士達と合流します」
「判りました」
気球を移動させて、最初のベースキャンプの所まで戻った。予定では三日と言ったけど、その日のうちに戻れた。気球を潰し風で飛ばないようにしてから、全員に大きな声で伝える。
「直ぐに、準備を! これからロヘドロ伯爵家の本邸に向かう! 糧食は二日分有れば良い!」
ロヘドロ伯爵家の本邸に行けば食べる物は有ると思う。少し余計に持って行くのは、水を魔法で出す必要が有ると思うから。それと宰相が持って来てくれた飴玉も分配する。途中で舐めるのも構わないと伝えるけど、流石に行軍中は逆に喉が渇くと思うから舐める事は無いと思う。ただもう日暮れまで時間が無い。夜間の行軍になってしまう。
持ってきた旗指を兵士さん達に渡しておく、行軍中は使わないと思うが、ロヘドロ伯爵家に着く時には目立つようにする必要が有るって思うから。ちょっと心配なのは連れてきた代官。強行軍になるけど大丈夫かな? 最悪は後から来て貰おう。戦闘になって巻き込まれるのも心配だし。宰相は剣を佩いてるので殺る気満々だろう。
準備が出来たので全員で出発する。かなり急いで向かう。第一チェックポイントの洞窟まで、一時間掛からずに着いた。ここで小休憩をする。ついでに軽く食事も。だけど水を出すので結構な食事を摂る事になるのは仕方無い。ここで飴玉が大活躍だ、やっぱ糖分は絶大だね。
洞窟の暗い中、松明の明かりで、兵士さん達の一部に地図を見せる。兵士さん達には、ロヘドロ伯爵家の本邸に向かうとは言ったけど、どの位掛かるのか伝えて居なかったから。
「地図を見て欲しい、戻って来る前に気球で上空から偵察して来た」
現在地の洞窟と、ロヘドロ伯爵家の本邸までの道程を見せて説明する。
「ナギ様。この位なら、気合を入れれば二時間位で行けるでしょう?」
『えっ? マジで?』
だって夜だよ、山道だし……。下りだけど下りの方が足の負荷が大きいと思うんだ……。まあ俺も付いて行けないって事は無いと思うけど……。
「宰相は平気ですか?」
「まあ、なんとか成るでしょう……。此処まで来たんですから何とかしますよ。それよりガンバはどうですか?」
「ちょっと私は、厳しいかと……。此処迄でも、かなり疲労しましたし」
との事なので、兵士さんのうち五人をガンバさんに付けて後から追いついて来て貰う事にする。五人にはしっかりと地図を覚えて貰う。食事もしたし行きますか。
松明の明かりを頼りに、獣道を下って行く。先頭は山道になれてる兵士さんにお願いする。三〇分程度下った所に盗賊のアジトっぽい洞窟が有ったので、確認したら、盗賊と思われる人達が全部斬り殺されていた。
「死体を処分する、暇が無かったんでしょうな」
宰相がそう言う。俺もそう思う。
「証拠隠滅と盗賊を見つけて退治したって言い訳の為でしょかね?」
「そうでしょうな」
全く、ずる賢いな。変な事に頭を使いやがって……。
「ナギ様! 一人生きています!」
『良いけどさ、宰相が居るんだから、俺じゃ無くって宰相に報告したら?』
仕方無いので代わりに宰相へ伺いを立てる。
「宰相、どうします?」
「ナギ殿の考えは?」
何でだよ! 聞いた意味無いじゃんよ!
「助かる可能性が、有りそうなので治療しましょう。三人程此処に残して、残りでロヘドロ伯爵家へ向かうのが良いかと」
「ですな、そうしましょう」
と思ったら、遅れていたガンバさん達が追いついて来た。なので負傷した盗賊の面倒はガンバさん達に任せる事に、後からと言うか、翌日に兵士二人でガンバさんをロヘドロ伯爵家へ送って貰う事にした。
「これを使いなさい」
そう言って、宰相が懐から何か取り出した。
「怪我に効く薬草です。まあ気休めかも知れませんがね。それと痛み止めの飲み薬です。手を尽くしても駄目かも知れませんが、たとえその盗賊が死んだとしても罪に問う事はしませんから、安心して下さい」
すげぇな宰相。そんな物まで持って来てたんだ。薬が必要だって意識が無かったよ。死体は邪魔だと思うけど、何週間も此処に居させるつもりは無いから。遅くても三日位で戻って来るつもり。
さてと、準備も出来たので俺達は再び獣道を下って行く。
洞窟で時間をロスしたが、下るペースは想像以上に早い。宰相が良く付いて来てるなと思う。実は現役バリバリの戦士なのかも知れない。親父並なのかな?
更に、一時間位下った所で、漸くロヘドロ伯爵家の砦が見えた。あと三〇分位だと思う。ここで一旦休憩する。膝がキツイ。流石に疲れてしまったし、腹も減った。
逆に腹が減った今なら、多少多めに水を出しても、沢山食べるのでバレないだろう。
「まだ体力に少し余裕が有るので、水を、魔法で出します。体力が厳しい方は、分ける事が出来ますから。その分食べさせて貰いますけど」
そう伝えたけど、兵士さん達は、自分で水を出している。まあ沢山食べるんだろうけど。やっぱ飴玉の効果は大きいかも。水を出しても、比較的早く回復してる感じがする。
なので、宰相に、水を出してあげる。宰相はなんか平気そうだけど。
『結構、バケモンだよな宰相も』
「ナギ殿、有難う御座います」
「いえ、宰相は、この後で活躍して貰いますからね。この程度で良ければ。もっと水を出しても平気ですから」
と言っても、宰相も遠慮してしまう。まあ判ってるもんね。水を出すのがどの位大変かを。取り敢えず自分も、喉を潤しつつも、しっかりと食事をする。糖分もだけど塩分も必要だ。干し肉が丁度良い感じ。
最後の休憩も終わったし、さてバチボコしに行きますか。
残りの距離を駆け下り、漸くロヘドロ伯爵家の砦の前に着いた。だけど此処からが勝負だ。
兵士さん達は、王家の旗指を掲げる。
◆ロヘドロ伯爵家本邸
ロヘドロ伯爵家の砦の前に整列する。
ロヘドロ伯爵家の砦は、入り口の門を閉ざしている。だが見張りの兵が、壁の上からビビっている感じでこっちを伺っている。流石に弓を向けて来る事は今の所は無い。まあ王家の旗指立ってるんだし。射った時点でアウトだもんな
なんか良く解んないけど、宰相の直ぐ斜め後ろに控えさせられた。マーヴェイ殿下の従者なんだけどな。
「王家の査察で有る、門を開けよ!」
宰相、カックイイ!! なんか威厳が有るよね。時代劇の勅使って感じ。モブでも勅使なら皆んなひれ伏すもんね。でもこっちはこの国の実質ナンバーツーだもんな、本物の威厳が有るし、地方の伯爵程度なんて雑魚なんだろう。
「三分待つ、それで門を開けなければ、王家に対する反逆とみなして、勝手に入らせて貰う」
ちょっと無理じゃ無いかなぁ……。強引に入るつもりなんだろうけど。小声で宰相に話しかける。
「宰相」
「ナギ殿、何ですかな?」
「えっと、多分ですけど、ここのロヘドロ伯爵家には、未だ振り子時計は無いと思うんですよね。なので三分と言っても通じて無いかも知れませんよ」
「おっと、これは失敗しましたな……。でもそんな事はどうでも良いんです。元々強引に押し入るつもりでしたからね」
そうなんだ。で、どうやって強引に押し入るの? 門はしっかりと閉じられてるんだけど。多分ぶっとい閂で閉じてると思うよ。
「さてと、三分経ちましたかな……」
「まあそうですね。どうやって入るんですか?」
「それは、ナギ殿に任せるつもりですが……。岩を切れるんですよね? こんな少し大きいだけど扉なんて、簡単ですよね?」
『をい! 確かに岩を切ったって報告したけど、信じたんか? 普通は信じないだろ?』
まあ良いか、サクッと攻めたほうが早いし。
「判りました、でも間違い無く戦闘になりますよ?」
「まあ、そうですな。半数位は王家の旗指を見て攻撃してこないとは思いますけど、向かってくるのは、悪事に加担してる物として成敗しましょう。もうねバカの相手に時間を取られるのはウンザリなんですよ」
『ウンザリしてるのは理解出来るけどさ、成敗するのは大変だよ。この大きさの住居兼の砦なら百人は居ないと思うけど、半数以上が敵なんじゃね? 兵士の全員が人身売買に関わっるとは思わないけどさ』
背後を振り返ると、兵士さん達は皆んな殺る気だ。気合が入ってる。
「じゃあ、閂を切りますから」
「宜しくお願いします」
門の正面に立つ。門の隙間は、刀が通る位は空いているので、スパッと切れるだろう。般若刀を抜いて正眼に構える。息を整えて気を練り上げるけど、対象が樹なのでそこまで溜めを作らない。
「ハッ!」
そのままスパッと門の隙間に般若刀を振り下ろす。閂は、サクッと切れた。
「野獣テンサゲ流、粋颯一湛」
「ナギ殿、言ってて恥ずかしく無いですか?」
『聞くな!』
閂が切れたので、内開きの門を押して開いて行く。
見張りの兵が、壁の上でどうすれば良いのか戸惑っている感じだ。多分、俺達だけならば、殺す命令が出てはいたと思うが、王家の旗指まで有ると流石に手が出せなくなっているんだろう。
「おい! ソイツ等を、……うぎゃぁ」
建屋から、偉そうにしたロヘドロ伯爵家の兵士が一人出てきて叫び始めたんだけど、いきなり俺の背後の兵士さん達に両腕と両足を弓で射抜かれていた。最後までセリフが言えなかったので、壁の上の見張りの兵は、どうしようか迷っている。まあ敵対してこなければ放置で良いか。
『素早いなぁ』
兵士さんが、サクッと近付いて、口に剣を突っ込む。刺してはいないけど。
「だずげで、ぐだざい゛……」
「宰相、どうします?」
「取り敢えず縛って放置しておきましょう。後で色々聞けるかも知れませんから」
会話を聞いてた兵士さんが、速攻で猿轡をして手足を縛る。縛らなくても動けない気がするけどね。
「さて、ナギ殿、室内戦に行きますか。狭いですから気をつけてください」
「はい」
石造りの建屋に……入る前に、兵士さん達に指示をする。扉を開けると矢が飛んでくるかもなので、避けているようにと。
一斉ので、扉を引いて開く。案の定矢が飛んで来たが、想定内なので全員無事だ。
矢が放たれた直後に、突入していく、相手が直ぐ次の矢を放とうとするが、矢を射る前に腕を切って倒して行く。当然、剣士もいたがソイツ等は、自分の直後に突入して来た兵士さんがぶった切っていた。
建屋の中は、敵だらけみたいだね。このまま戦いながら進むんだろう。
「ナギ殿、有難う御座います。では行きましょうか」
宰相が、スタスタと歩いて行く。
『をい! 敵が来たら危ないぞ!』
なんだけど、結構迷いが無い。通路から出てきた敵を、バッサリと切っている。
『宰相、強ぇ!』
身体の動きと剣捌きを見ると、達人っぽい。
「宰相、何処に向かっているんですか?」
「ああ、この手の屋敷と言うか建物は、大体作りが似てますからね。こっちに行けばヨゴーレ殿が居る執務室が有るでしょう。
『そう言うもんなんだ。全然判んねえっす』
とは言え、宰相を先頭にする訳には行かないので、兵士さん達が前に出て行く。と言ってもダンジョンでも迷路でも、ド○・キホーテでも、ヤクザの組事務所でも無いので、真っ直ぐ進んで行くだけだったけど。何人もロヘドロ伯爵家の兵士が扉から出て来たが危なげなく制圧して行く。
当然、開かない扉も開けて部屋の中を確認して行った。
「此処ですな」
扉の前で、立ち止まる。確かにちょっと偉そうな感じの扉になっている。王城の陛下や宰相の執務室よりは劣るけどね。奥にも未だ部屋は有るので、別な兵士が制圧に向かった。
『いよいよだな』
扉を開くとまた矢が飛んで来るかもしれないので、慎重に兵士さんが開けて行く。矢が飛んで来なかったので速攻で、中の敵を征伐するのに、自分と兵士さんが飛び込んだ。
流石に、最も重要な部屋なんだろう、手練が居たが、サクッと倒してしまう。(殺してません)
「ヨゴーレ殿、これはどう言う事ですかな? ロヘドロ伯爵家は王家に逆らうと言う事で宜しいのですね」
「ち、違う! こ、これは、王家の旗指が偽物に見えたんだ! だから族だと思って対処したんだ!」
流石です。ナイスな言い訳! そんなんが通じる訳無いって判んねえのかな? そんな事は今更どうでも良いんだけど、何で暖炉に火が付いてるんだ? 冬じゃ無いのに……。やっぱ証拠隠滅だろうな。
「ほう……王家の旗指を見間違ったんですか? グランデルグ王国の貴族で有りながら……。オブーツ・ド・ロヘドロ伯爵はどんな教育を貴方にしてたんでしょうな。貴族として王家の旗指を見間違えるだけでも罪ですよ」
「宰相、捕縛しますか? それとも死刑にしますか? 両腕と両足を切り飛ばす事も出来ますよ」
「フム……。取り敢えずは捕縛しておきましょうか」
兵士さん達が、バチボコにして縛り上げた。なんかヨゴーレ泣いて汚れてる。
宰相が、兵士さん達に建屋内の他の場所に居る人達を拘束する指示と、家宅捜索の指示を出した。兵士さん達が、建屋内に散らばって行く。
「さて、ナギ殿、手伝って貰えますかな」
「はい、構いませんけど、あんまり役に立た無いかもですよ」
「取り敢えず片っ端から此処に有る資料を調べてください、私も調べます。重要な証拠だけは押さえて置きたいのですが、既に燃やされてる可能性も有りますね」
確かにね。ヨゴーレが踏み込む直前に燃やそうとしていた資料は、間違いなく重要資料だろうから先ずは確保。他の資料も漁って行く。
結構な資料が見つかって行く。ヨゴーレは新しいのから燃やしていたようだ。古いのは見つかった。多分だが、古いのはオブーツが関わっていた時代の物で、ヨゴーレは自分が手を下したのを重点的に処分していたのだろう。父親を犠牲にして助かろうと思っていたのかな? まあクズだよね。
「宰相!」
「兵士さんが、執事っぽい人を縛って連れて来た。手には書類を抱えて」
「家宰から聞いて、家宰が保存していた資料を押収して来ました。かなり重要な内容です。家宰は自分から資料を用意して待っていました。一応縛っていますが、抵抗はしないと思います」
宰相が、資料を受け取って見始める。
「ほほう……。これは重要な資料ですな。これが有ればロヘドロ伯爵家も終わりでしょう」
ほっ、取り敢えずは重要証拠が見つかったらしい。
「ナギ殿、相談なのですが」
「はい、何でしょう」
「明日の事ですが、先ず、ナギ殿を含め、最初に硫黄採取に向かった兵達で、気球を此処まで飛ばして頂きたいのですが、可能ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「それで、明日、捕らえた者を、王城へ運んで頂きたいのですが」
「はい、構いません」
まあ想定してたからね。
「それと、最後で構いませんから、明日、王城へ帰還したいと思います。明日になればガンバも此処に来ますから、後は任せたいと思います。それと、追加でこちらに連れてきた兵士四〇人は、このまま此処で仕事をさせるつもりです」
なるほど、確かに警備は必要だろうし、若しかしたら領内に未だロヘドロ伯爵家の息の掛かった奴らが居るかもだもんね。まあ何も知らずに兵士だけやってる人も多いんだろう。でも良いんだろうか? 宰相だから全権代理の権力が有るのかな? 一応聞いておこう。
「えっと、構いませんが、陛下から借りてる兵士を勝手にロヘドロ領に配置しても大丈夫ですか? まあ王城に戻った時に事後承諾で良いのかも知れませんけど」
「ああ、大丈夫ですよ。此処に来ているのは全て私の部下達ですからね。内密でお願いしますが、自国内でも密偵を入れておかないと駄目なんですよ、特に軍にはね、武力を持っていますから」
なんか怖えって言うか、国の統治って大変なんだな……。現代でもやってるんだろうか? 治安が悪い所はやってそうだな。勉強になったよ。
ガンバ ー> 芝海老、車海老
ランゴスタ ー> 伊勢海老
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