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(1-05)超強い総務部人事課採用係の主任

よろしくお願いします。

(1―05)超強い総務部人事課採用係の主任



「坊主! 取り敢えず、お前は合格だ。団員にしてやる」


「あ、有難う御座います」


 良かった。これで無能判定されて追い出される事が無ければ、当分の生活はなんとかなるだろう。


 それにしても、この超怖そうなオジサンって、傭兵団の総務部人事課採用係の主任さんなのかな? にしては剣も持ってるし。まあ傭兵団だと事務職だって戦わないと駄目なんだろう。戦いの現場でも戦場を駆けずり回りながら査定していそうだ。


「坊主、なんかフラフラだな、そんなんじゃ此処(ここ)でやって行けないぞ。限界ってのは、もう駄目だと思った先に有るんだよ、俺がもう一丁鍛えてやるか」


 うん、知ってたよオジサンが出てくるってのは。だけど限界の先を教えてるってのは頂けないな。オジサンは自分がやって来た事なんだろうから気付かないんだろうし気付く事も無いって思うけど、此処(ここ)に居る団員達は基本的に肉体的に強い人達だから、そう言う鍛え方をして限界を見せる事も必要な事なんだろう。だけど限界を超えさせられた、児童、生徒が沢山死んでるんだかね、何人ものバカ共教師の所為で。


 限界の遥か手前で止めないと駄目なんだからな! って声を大にして言いたいけど、怖いから我慢する。


 気合を入れて、シャキッとして再度木剣を構える。流石に今回は勝てるとは思わない。残りの体力を全部使って、この総務部人事課採用係の主任さんをなんとか驚かせようと思う。


「よ、宜しくお願いしまっス!」


「おう! じゃあ行くぞ!」


 マジかぁ……いきなり正面から突撃して来た、それも刺突の構えで……。超怖ぇ!


 普通なら、闘牛士のように最小限の動きで避けて、サクッとやる事が良さそうなんだけど、絶対にそれだと駄目だろうって思える。多分、猪突猛進して見せてるのはフェイクで何か技を隠しているんだろう。


 なので、俺も刺突で構えて待ち構える態勢をとる。


「坊主! お前怖いヤツだな! そんなんで刺されたら、俺が死ぬぞ!」

『アンタが言うな! そっちが先に仕掛けたんだろっ』


 って言いたい。言わないけど。全くオジサンはズルい!


 オジサンは間合いのかなり手前でストップした。


「坊主! 掛かって来いよ。今度はお前から仕掛けて見せろ!」


 そう言われたら応じないと行けないな。実際の剣捌きを見たいんだろう。


『腹減って体力が限界なんだよなぁ……』


 なんだけど仕方無いので気力を振り絞って攻める事にする。


 何度も、上中下段から仕掛けるが全て捌かれてしまう。捌くのが難しい横薙ぎも、木剣を上から叩かれてしまう。


『強えぇ! なんだよこの粘りの有る防御力は! バケモンだろ! 採用係主任なのに!』


「悪くないけど、パワーが足りないな。今度は受けて見ろ!」


『いや無理だって! マトモに受けたら絶対に弾き飛ばされるから!』


 とは言え、採用係主任のオジサンはガンガンに攻めて来る。マトモに受けたら不味いので、流すように捌いて行くがパワーもスピードも、さっきの二人以上だ。


 丁度良くタイミングが合ったのでドゥレッグスさんの時と同様に、採用係主任のオジサンの木剣の剣先を自分の鍔元で受けた。


『お、重っ! こっちは鍔元で受けてるのに……。このパワーってマジかよ!』


 ドゥレッグスさんと同じ手を使っても、採用係主任のオジサンは絶対に木剣を離さないだろう。なので同じ事は出来ない。一旦引いて、間合いを取る。


『スゲー体力奪われたぞ……不味いなぁ……』


 採用係主任のオジサンは不敵に笑っている。未だまだ余裕有りそうだなぁ……。


『なんだよ、その構えは! 一撃必殺を狙ってんのか?』


 採用係主任のオジサンは腰を少し低くした脇構えして来た。鞘が有れば居合に見えない事もない感じだ。


『これは、叩き落とさないと……』


 中断に構えたら、剣を振り上げてから木剣を叩き落とす前に、胴を切られてしまう。なのでこっちは予め上段に構えておく。完全に後の先を取らないと……それも一瞬のタイミングでだ。相手のフェイントに引っかかったらアウト。木剣だけど肋骨は折れるだろう。


 慎重に相手の間合いにジワジワと、すり足で間合いを詰めて行く。


 間合いに入った瞬間、採用係主任のオジサンが横薙ぎをして来た。バットをアッパースイングするような軌道で。


『不味い。速さで負ける……』


 さっきの不敵な笑いは絶対的にスピードでは負けない思っていたからのようだ。こっちはフェイントにも引っ掛かって無いしタイミングも合っているが、打ち下ろしが間に合わない。


『こうなったら、仕方無い……』


 咄嗟に木剣を手放した。木剣を手放したので振り下ろすスピードよりも早く腕が振れることになる。そのまま腕を交差して、採用係主任のオジサンの軌道に合わせる。鋼の鉄心入りの手甲だから耐えれる筈。


 木剣と十字に交差した腕がぶつかる。


「野獣テンサゲ流、十文字取り!」


 上手く決まったので、中二病が出てしまう。


『えっ? マジで? 嘘でしょ?』


 受け切ったと思ったが、採用係主任のオジサンのパワーは想像以上だった。さっきの打ち合いでも三味線を弾いて手加減しいたようだ。十字交差した腕ごと俺の身体を吹っ飛ばすパワーがある。


『不味い!』


 とっさに膝を蹴り上げ、腕と膝で木剣をぶち折った。技名なんて言ってらんない。


「くそっ! マジかっ! 木剣折られた!」


 木剣が折れた事で、空振るようになった採用係主任のオジサンに、大外刈を仕掛けて強烈な力を掛けて押し倒す。地面は土だから頭を打っても平気かな?


「ウォっ! ヤバっ!」


 頭をガードするように手を後頭部に回して、倒れ込んでいった。本気なら此処(ここ)で頭を蹴って頸の骨を折るんだけど止めておく。そのまま勢いで、身体の上にのる。此処(ここ)でも本気ならば、膝で両肩を砕くか、関節を外すんだけど……。それもヤラない。


 マウントを取り採用係主任のオジサンの目の前で貫手に構える。


「ま、参った! 俺の負けだ! た、タンマ、タンマ! ストップ! そんな事されたら目が見えなくなるぞ! 怖えぇ坊主だな、お前!」


 ちょっと興奮してしまって本気で目潰ししようとしてしまった。冷静になって貫手の構えを解く。だけどこの後騙し打ちが有るかも知れないからもう少し様子を見る事にする。ここは頸動脈を締めて気絶させておいた方が良いかも知れない。





「おい、面白そうな事になってんな、モーレイ、お前遊んでんのか?」


 不意に近付いてくる人が居た。


「マ、マッカレル団長、ち、違うんです!」


「どう、何が違うんだ? まさかお前が負けたんじゃねえだろうな?」


 近付いて来る人を、マッカレル団長って言う人を見上げると……。


『鬼じゃん! こんな人が存在していて良いのか? マジで怖ぇ!』


 採用係主任のオジサン……。モーレイさんって言うらしい人の上から降りる。モーレイさんも速攻で立ち上がって直立不動の姿勢になった。


「えっとマッカレル団長……。負けたんです、俺が……」


「ほう……。で、そこの坊主は誰だ?」

「入団希望の新人のナギって奴です。多分東方の剣士だと思われます」


 ギロリってマッカレル団長に、睨まれる。完全にナメクジに睨まれた蛇状態になってしまう。鳥肌がたってしまう。後ろを向いて逃げ出したいけど逃げれない……。困った。


「ふーん。まさかウチの団の副団長に勝てる奴がいるとはなぁ……」


『えっ? モーレイさんって副団長なの? と言う事は、取締役副団長兼採用係主任って事か、確かにこの位の実力じゃ無いと団員達の査定は出来ないか……』


 だけどもう一回勝負したら多分負ける気がする。パワー、スピード、耐久力でも完全に俺の方が下回ってるもんな、初見で技が決まっただけだから。もっとパワー、スピード、耐久力を付けないと……。この傭兵団でやって行けないかも。


 まあそれは良いんだけど……。えっとこの流れだと。


「坊主! 俺とも少し遊んでくれよ」


 ですよねぇ……。そうなるって知ってました。だけど体力がもう無いんだよなぁ。でも断れないし……。少し離れて投げ捨てた木剣を拾って構える。


「おっ、判ってるね。そう言うのは嫌いじゃないぞ、久しぶりに腕がなるなぁ。ちょっと待ってろ木剣を取ってくるからよ」


「御手柔らかにお願いします。マッカレル団長」





 マッカレル団長が木剣を取って来た。


「坊主! モーレイを倒した腕を見せて見ろ!」


 と言われましても……フラフラなんだけど……。でも気力を振り絞って打ち込みに行く。


「うりゃぁ!」


「なんだこのヘロヘロな剣は! 舐めてんのか?」


 あっさりと弾き返される。そのまま尻餅を付いて、仰向けにぶっ倒れた。


『駄目だ……もう限界……無理!』


「なんだぁ?」


「腹減ってもう動けません……無理っす。ギブアップです!」


「坊主! おい、どう言う事だ?」


「えっと……この王都に来る途中で、喉が乾いたんで魔法で水を出したんです……。それで……」


「お前バカだろう。超、超、超バカだな。魔法で水を出したら体力が無くなるに決まってるだろ! そう言うのは緊急事態の時に少量だけ水を出すんだよ! 腹が減って体力無くなるまで水を出すバカなんて子供でも居ないぞ! ちっ折角楽しめると思ったのによ」


 やっぱり、そうなのか。魔法を使うと体力が無くなるのがこの世界の常識みたいだ。と言う事は、そんなに魔法は流行って無いのかもしれないな。


「おい、お前ら、こんな状態のガキに負けたのか? 今迄なにやって来たんだ? モーレイ説明しろ!」


「も、申し訳有りません……。言い訳出来ません、その坊主の腕が実際に凄かったんです。限界状態でも……」


「坊主! お前の体力が戻ったら、本気で殺るぞ、明日は無理だから、そのうちだけどな。モーレイ! 食堂が使える時間だから連れて行って飯を食わせてやれ! それと明日はマーリンとトラウトの所へ連れて行って顔見せと挨拶させて来い」


「ウィッす。判りました!」


 マッカレル団長は、ブツブツ言いながら戻って行った。倒れて居たけど起き上がる。モーレイさんに案内されて、この傭兵団の食堂に連れて行って貰った。


「坊主……おうそうだ、ナギだったな。パンは好きなだけ食って良いぞ、スープのお代わりは一回だけだ。他のヤツも食うんだからな。泊まる所は有るのか?」


「宿は無いです」


「まあそうだろうな。判った。食べ終わる頃に迎えに来てやる」


 モーレイさんが食堂から出て行く。一緒に来たドゥレッグスさん、オーディナルさんと一緒に食事を摂る。取り敢えず先ずは水をがぶ飲みした。水分が無いと身体が全然動かないし、腹が減ってるのに食べる事も出来なさそうだから。


「ふぅ……(ようや)く落ち着いた……」


 水を飲んで落ち着いてから食事を始める。腹が減り過ぎて会話しながらの食事が出来そうも無いので、スープもパンもお代わりして黙々と食べた。二人は自分程食べてはいない。パンは硬いし、スープは味が薄いけど、こんなものだろう。


 食後しばらくしたら、モーレイさんが、団服三セットとドッグタグを持って来た。ドッグタグは首から掛けて見えるようにしておけと言われた。これが見えていれば街中で傭兵団の一員として認識されるらしい。その後直ぐに泊まる所に案内された、この建屋内の部屋で。ドゥレッグスさんと同室になった。


 この世界は想定通り電気が無いので、日が沈むイコール寝る時間になる。一応ランプは有るけど、大して明るく無いので、寝る前の準備程度にしか役に立たない。起床は日の出らしい。


 暗い部屋の中で、ベッドで横になりながら少しドゥレッグスさんと話しをして色々と聞く事が出来た。


 この国の名前は、カッセルブラッド王国。王都カッセルグ。傭兵団の仕事は、王都の警備だそうだ。聞いていると警察的な仕事らしい。どうも話しを聞いた感じ、この国は軍と警察を分けている。国の騎士、兵士が王都で酔っ払ったりして悪さした時に、同じ騎士隊が取り締まると、有耶無耶にされる事が昔有って、騎士、兵士を取り締まるのに傭兵団を使い始めたのが切っ掛けとなり、それが今も続いているとの事。


 それとマッカレル団長が言ってたマーリンさん、トラウトさんは残り二つの傭兵団の団長との事だ。なんか嫌な予感がするんだけど、明日は体力は復活して大丈夫だと思うので今日程フラフラにはならないと思う。






名前はいい加減です。

マッカレル ー> サバ

トラウト ー> マス類

マーリン ー> カジキ

モーレイ ー> ウツボ



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