(1-03)冒険者ギルドって何?
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(1―03)冒険者ギルドって何?
王都の街が近づくにつれ街の規模が流石に大きいなぁと思えて来た。
目の前まで来た所で、この王都は城塞都市では無いのが判った。だからと言って入り口には一応衛兵が立って街に入る人間を見張っている。
『だいたい街に入るのには、銀貨三枚位が相場だよな……¥3,000位か……まあこれは仕方ないか……』
見張りに立っている衛兵さんの方に近付いて行く。
「えっと……少し良いですか?」
「ん? なんだお前は」
「王都の街に入りたいんですけど……幾ら払えば良いんですか?」
さっき王都の街の名前も聞いておけば良かったかも……と思っても後の祭りなので仕方ない、不審者に思われなければなんとかなるハズ。
「はぁ?」
「お前、何言ってんの? 金なんか取ってねえぞ」
『えっ? マジ?』
「そう言うのは、もっと先の領地の境の所で取ってるんだよ」
「と言っても、道を通らない奴もいるけどな。基本的に通行料を取るのは商人からだけだし」
『なるほど……変な事を聞いてしまったかも……不審者って思われたかな?』
「えっと、判りました。有難う御座います」
とは言え、未だ確認しないといけない事が有るので衛兵さんに聞く。
「えっと、それともう一つ聞きたいんですけど」
「なんだ?」
「あのですね、冒険者ギルドの場所を教えて欲しいんですけど……」
「冒険者ギルドって何だ?」
『えっ? 通じないの?』
「えっと、魔物を討伐したり、薬草を取ったり……そう言う仕事を斡旋する組合みたいな所なんですけど……」
「はぁ? そんなのねえよ! 魔物ってなんだ?」
「お前、剣を持ってるけど、それって東方の剣だよな? 現物は初めて見るけど……格好もこの国とは違うし……お前東方から来たんだろ? 若しかして東方は魔物が出るのか?」
『えっ? 東方? やっぱ定番中の定番で東方が有るんだ……これは良い事を聞いたな、いつか東方に行ってみよう! だけど資金を稼がないと……』
良い事も聞けたのだが、かなり想定外である。確かに魔物が居ないなら冒険者ギルドなんて組織は無くても良いのかもしれないけど、ハロワみたいな組織は他に無いのかと思ってしまう。
「えっと、まあそんな感じなんですけど……ちょっと困ったなぁ……お金を稼がないと、生活出来ないし……なんか稼げる所って無いですかねぇ?」
「そうだなぁ……お前って剣を持って、東方から此処まで一人で旅をして来たんだろうから、それなりに剣の腕は有るんだろ?」
「だよな、それだったら傭兵団が三つ有るから、どれかに入ってみたら良いんじゃないか? この通りを進んで行けば剣がクロスした看板、槍がクロスした看板、弓の看板が出てるから判ると思うぞ」
「一応、その三つはマトモだぞ。入れるかどうかはお前の腕次第って所も有るけどな」
「あともう一つ、忠告しておくよ。最近他から傭兵集団が来ているけど、そっちは絶対に止めておいた方が良いぞ、宿を貸し切って騒いでいるから判ると思うぞ。マジでゴロツキ共と大して変わらないからさ。すっげぇ迷惑なんだよなぁ、アイツ等」
「まったく、アイツ等は戦の匂いと金の匂いに敏感だからな、何を嗅ぎつけて来たのかわかんねぇけどさ……」
「おい! それ以上言うな!」
「あっ、そうだな」
「それともう一つ教えて欲しいんですが、食事を摂れる所って有りますか? ちょっと腹が減って来ていて……」
「まぁ、有るには有るけどなぁ……」
「最近は開いている店は多くないぞ、収穫前だし……ここ数年この国は不作が続いているのも影響してるからな」
「一応この通りを歩いて行けば何軒かは開いてるよ、行けば判るから」
「はい。教えて頂き有難う御座います。傭兵団は、自分の剣の腕で入れるかどうか判りませんけど行ってみます」
お礼を言って、王都の中に入って行った。
『色々聞く事が出来て良かったけどな。他の傭兵が来ているって言うのは、戦争が起きそうなのか? なんかその辺は兵士さんも詳しく話せないような感じだったもんな。一応、戦争が起きる可能性は想定してたけど巻き込まれるのは嫌だなぁ……適当に稼いで戦争が起こる前にこの国を出れると良いんだけど、傭兵団に入っちゃうと無理なんだろうな、傭兵団ってなんか強面の集団で超怖そうなんだけど、普段なにやってるんだ? 活動資金とかはどうなってるんだろう。給料も生活出来る程度は払ってくれるんだよな……。最悪、食、住があれば生きる事は出来そうだけど……』
考え事をしつつ、傭兵団の場所をキョロキョロと見渡しながら探して行く。五〇〇メートル位進んだ所で、兵士さん達に教えて貰った剣が交差している看板を見つけた。残り二つはこの先に有ると思うが、違いなんて良く判らないので最初に見つけた傭兵団の建物に入る事にする。違うとすれば槍系、弓系なんだと思う。
建物は、高さは二階建てだけど結構大きい。団員達の寮みたいになっているのかもしれない。それに敷地もかなり大きそうだ。中心部では無いかもだけど王都なので、小学校位有りそうな敷地は凄いと思う。この土地と建物を維持するのはかなり稼いでいるって思えて来た。
勇気を出して中に入って見る。
『うわっ。怖っ!』
建物に入って直ぐの、広いロビーみたいな所にテーブルと椅子が有って、そこに強面の団員さん達が座って談笑していた。全員統一された制服っぽいのを着ていて、入って来た俺を見て来た。だけど直ぐに興味が無くなったようで再び談笑を始めている。小説の冒険者ギルドのように酒場が併設されてる訳ではないようだ。
なんか騎士っぽいと言う感じと統率された組織って感じがする。衛兵さん達がマトモだって言ってたのは、こう言う事なのかも知れない。
取り敢えず、受付のカウンターが有ったので向かう。カウンターには制服を着た女性がいる。その奥の事務机っぽい所には、やっぱり制服を着た強面のオジサン達が座っていた。
「えっと……」
「はい。ご用件はなんでしょうか? 何処かで事件でも有りましたか?」
奥の方の人達が俺を注目してくる。
「いえ違うんです。えっと出来ればここで働きたいって思って来たんですけど……」
奥に居た超怖そうなオジサンがいきなり、立ち上がって来た。
「ほう……剣は持ってるみたいだな……坊主、字は書けるか?」
初心者パックで一応書けそうな感じなんだけど、書き順とかが判らないので、書けないと伝えた。
「まあ字を書けないやつは多いからな。じゃあ代筆で良いか」
そう言われて質問されて行く。それに答えて行くとお姉さんが、紙に記載して行ってくれた。最後に間違いないか口頭確認をした。
「坊主! ちょっと来い。使えるかどうか試験するぞ。それと……そうだなドゥレッグス、オーディナルちょっと来い!」
俺と、ロビーに居た団員二人に声を掛けた。
『この人なんか偉そうなんだけど……誰? 名前判んないし……なんか聞くと、ゲンコとか来そうで怖いから後にしておくけど』
名前の判らない偉そうな人の後に、俺と多分呼ばれた二人が付いて行く。ドゥレッグスさん、オーディナルさん二人はかなり若い方だとは思うけど自分よりは年上だろう。
建物の裏口から外に出た。裏は、グラウンドのような広場が有った。ここで普段訓練していると思われる。当然、試験って言うのは、実戦での実力を知りたいんだろう。
『まあ、これは仕方無いよな。衛兵さん達も言っていたんだし……。当然さんドゥレッグスさん、オーディナルさんが相手なんだと思うけど、俺と合わせて二人の成長具合も見るつもりなんだろうな。初見で、どんな剣捌きをするのかが不明な相手って感じで』
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