(2-14)捕虜から戻って来た王太子殿下
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(2―14)捕虜から戻って来た王太子殿下
先の戦争で、捕虜となっていたラビッシュ王太子殿下とキリマン・ド・トール公爵公子が、身代金を払った事によって戻って来た。一応グランデルグ王国が手配した迎えの馬車に乗って。ただし王族や高位貴族が乗るにはかなり見窄らしい馬車で。他に囚われていた者は、既に釈放されている。
ラビッシュ王太子殿下とキリマン公爵公子は、すぐさま陛下の執務室に呼ばれる。その場にはハッシュもマーヴェイ殿下も呼び出されていた。
「父上! この度は……」
「バァッカモォ〜ン! 、父上では無い!」
なんでこんなバカになったんだ? 以前はもっとマトモだと思っていたが……。怪しいクスリでもキメたのか?
「へ、陛下、申し訳有りません、この度はお手数をお掛けしました。ですが聞いて下さい!」
「なんじゃ、申してみよ」
「戦に負けたのは、マーヴェイの夜襲が失敗したからです。あれが成功していれば負けませんでした」
「そうか……。ではマーヴェイに聞く。ラビッシュはお前の所為で負けたと言っておるが、お前の見解はどう見る?」
「夜襲が失敗したのは、誠に申し訳無いと思います。ですが私とハッシュが連れて居った戦力が無くなっても、未だ相手の二倍以上の兵力が残っておりました。なので私の所為では無いと思います」
「マーヴェイ黙れ、お前のようなガキに判る訳がなかろう! 総大将は俺だ!」
「ラビッシュお前が黙れ。ワシは、マーヴェイに聞いておるのじゃ」
「……」
ラビッシュ、お前、ゴメンナサイ位言えよ! 全く。マーヴェイも意外とハッキリ言いおったの。
「つまりマーヴェイは、ラビッシュが無能な総大将で有ったと言ってる訳だな」
「いえ其処までは……」
言ったようなもんだろ。まあ無能を曝け出したのは事実なんじゃし。
「マーヴェイ、ラビッシュはお前を謹慎処分にして王都に返したが、その処分は妥当だと思えるか?」
「えっと、良く判りません。私が戦場に残ったとして、どの位役に立つのかも不明です。現に相手から奇襲を受けて、全く役に立てませんでした。ナギが助けてくれなければ、死んでいたでしょう。ですが初陣でしたので最後迄戦の行方を見届けたかったと思っています」
まあそうであろうな。ナギも良いタイミングでマーヴェイを助けてくれたな。ラビッシュとマーヴェイ二人が殺られていたら、アルフォンシーノを王太子に立てなければいかんからの。
「マーヴェイ、お前は居ても居なくても戦は変わらん!」
「ラビッシュ、煩い黙っておれ!」
ホントにもうコイツは! もう少し黙っていろよ!
「さて、ラビッシュ。色々矛盾してる事をホザイておったが、マーヴェイの夜襲が失敗して負けるようなら、何故、直ぐに兵を引き上げなかったのじゃ? そんな良い加減な作戦で戦に臨んでいたのか?」
「い、いえ……未だ勝てると思いまして……」
「では、マーヴェイの夜襲が失敗した事が敗戦の理由では無いな、当たり前であろう。居ても居なくても変わらんと言ったし、未だ勝てるとも言った。お前が今そう言ったのじゃから」
「し、しかし……」
「諄い! それで、お前は、どう負けた? 本当の負けた理由を詳しく報告せよ」
大体はボニート(宰相)が兵と、ボニートの手の者からの報告結果を貰ったので判っている。
ラビッシュの報告は、負けたくせに自慢話しばかりで、内容が無かった。
「そこで、カッセルブラッド王国の将が一騎打ちを申し出て来たんで、俺が相手をして切ったんです」
そんな、報告は受けて無いぞ、チラッとボニートを見るが首を振っている。まあ嘘なんだろう。
「で、誰だその相手の将とやらは? 何処の領主だ?」
「えっと……」
「陛下、それは……」
「キリマン、黙っていろ! 王族同士の会話に口を挟むのは無礼であろ!」
「も、申し訳有りません」
「ラビッシュ、誰だソイツは? 一騎打ちなら、相手は名乗りを上げた筈だ、違うか?」
「えっと……忘れてしまいました」
「討ち取った、将の首はどうした?」
まあ無いのは判っている。ボニートからの報告では一騎打ちをしていないし、首も刎ねてない。どうも味方に殺されたらしい事は判っている。
「そ、それは……」
「もう良い! お前マトモに報告も出来んのか? 自慢話を聞くために、ワシもボニートも居るのでは無い! 時間の無駄じゃ!」
「……」
「今回の戦で、兵が二割。一万人程失われた、全て総指揮官である、ラビッシュの責任だ、何か言う事は有るか?」
「兵を、失ったのは申し訳有りません。私の不徳の致すところです。ですが平民の兵士なんて簡単に集まりますから問題有りません!」
「何を! 言うかこの戯けが!」
「陛下、落ち着いてください、ここで剣を取っても意味が有りません」
「ボニート、すまぬ少し血が登った」
スゥハァ、すぅはぁ、すーはー。良し落ち着いた。少しと言うか、かなり怒りが頂点に達してしまった。此処まで怒るのも久しぶりかも知れん。試練。
「陛下、何か気に触りましたか。大して役に立たなかった平民の兵士が悪いのです。ですが一万人は少し多かったかも知れません」
コイツ、死刑にしたろか! 一族郎党だとワシも入るからそれは無しで。ナギの作ったペンと振り子時計での税と、不正役人からの賄賂の返却、それと、速攻で出てきた不正コピーの罰金徴収で国庫の方は多少は持ち直しているが、厳しい事には変わりないのに、軽く言いやがって! 今まで何を学んで来たんだ?
「お前と、キリマンを返して貰うのに、多大な身代金を要求されたのだぞ、その責はどう取るつもりじゃ?」
「そんなの税を重くすれば良いんじゃ無いですかぁ? 俺達が戦で命を懸けて戦っているのに、のんびりしてんだから、その位は肩代わりして貰ってしかるべきだと思います。いやすべきです、絶対!」
「殿下、それ以上は何も言わない方が……」
「キリマン、黙っておれ! 二回目だぞ」
「は、はい……」
キリマンの奴は、一応、ラビッシュの発言が不味い事は判っているようだが……馬鹿の暴走を止められなければ役に立ってるとは言えんな。
「ラビッシュ、キリマン。お主達には謹慎を言い渡す。頭を冷やしておけ。ラビッシュは直ぐ出て行け、今直ぐ謹慎しろ! キリマンには話しが有るから残っておれ!」
ラビッシュ、お前は剣しか振れん馬鹿だったようだな……。ブルマン・ド・トール公爵の報告は嘘だったのか? それとも勉強だけ出来て実践が伴っておらんのか? やっぱ怪しいクスリでもキメたのか?
ラビッシュが渋々を言う感じで退出して行った。残ったキリマン・ド・トール公爵公子に話し掛ける。
「キリマン、ラビッシュでは話しにならん。お前が正確に報告せよ」
「はっ」
キリマンからの報告で、漸く詳細が判って来た。討ち取ったカッセルブラッド王国の将はスコンブ・レソース公爵らしい。かなりと言うかカッセルブラッド王国では大貴族の一人だ。だが実際討ち取ったのは、ラビッシュでは無いそうだ。宰相の報告通り、味方の裏切りで殺されたらしい。それをラビッシュが討ち取ったとして士気を揚げたとの事。まあ士気が揚がるのは悪く無い。だが首を取って持っていれば、身代金交渉の材料に使えたのだが。
それと裏切った奴三人は、直ぐに矢で殺されたとの事。ただ何処から放たれた矢なのかは不明。カッセルブラッド王国の陣からは弓で狙える距離では無いとキリマンは言っている。
「ボニート、矢を射ったのは、アイツか?」
「可能性は高いかと」
全く、あのバケモンは……。カッセルブラッド王国は戦争を使って態と邪魔な貴族を切り捨てたな。中々出来る事じゃ無い。もし次が有るならワシが行くべきか?
その後は、宰相の報告通りに火攻めに合い、更に突撃して来たやたら強い部隊に蹂躙されたとの事だ。
「キリマン、お前の身代金は、トール公爵が払っておる。帰って叱られておけ、それとお前の最大の罪は、ラビッシュをコントロール出来なかった事だ。もっとしっかりするように、判ったら下がれ」
「ハッ、判りました失礼します」
スコンブレソース ー> サンマ
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