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(2-07)振り子時計作り2(タダじゃ無いんです。ちゃんと購入してください)

よろしくお願いします。

(2―07)タダじゃ無いんです。ちゃんと購入してください



 夕方、ミグラス伯爵家に戻り、既に王城から戻って来ていたハッシュ様とハドックさんに、出来上がった振り子時計を実動作させて見せた。


「ナギ。これ良いな! すっげえ格好良い! マジで欲しい! なあコレ貰えるのか?」


 なんか現物見たら、ハッシュ様は、かなり気に入ったようだ。そりゃぁね判りますよ。こう言うのは男子が大好きな物ですもんね。


「ハッシュ様。駄目です。ハッシュ様は、普段朝から王城に行かれるんですから、時計は不要なハズです。私は、奥様のお茶の時間や、お客様の対応等で常に時間を把握していないといけないんです。これは私の執務室に置かせて頂きます。それとこんな良い物が出来るので有れば二〇〇万ネィ(二〇〇万円位)で販売しても良いような気がします」


 ハドックさんも気に入ったようだ。


「ハドックさん、そう思いますか?」


「ええ、間違いなく貴族様達には売れるでしょう。それと私のような家宰にも」

「俺もそう思う」


「じゃあ、販売価格は二〇〇万ネィ(二〇〇万円位)にしましょう」


「もう少しチャッチイ物かと思ってたけど、コレは凄い! 俺の部屋に置きたい!」


 と言われても駄目なんだよなぁ。


「ハッシュ様、ハドックさん。先ずコレは未だ未完成なので、これから一週間掛けて調整する必要が有るんですなので現時点では渡す事は出来ません」


「そうなのか? ちゃんと動いてるじゃん」


「これだと、時間が狂って来るんですよ。なので調整が必要なんです。それと間違えないで欲しいのですが、この振り子時計は、ミグラス伯爵家から私が借金をして作って貰ったんです。当然コレは私の物です。ハッシュ様とハドックさんがこの振り子時計を手に入れるには、ちゃんと予約して購入してください」


「はっ、なんで、だって……」


「だってでは無いんですよ、ちゃんと買って貰わないと、困るのはコレを作ってる職人さん達です。ハッシュ様が言ってるのは、〝俺は貴族なんだからタダで寄越せ〟って言ってるような物ですよ。全く有りえません」


「じゃあ、ナギの借金を無しにして、ミグラス伯爵家が、開発費用を負担する。それなら良いだろう?」


「そう言うのを、後出しジャンケンって言うんですよ。簡単に言えば、貴族の権力を利用した卑怯な手口です」


「ぐっ……」


「ナギさん。()しかしてペンも買わないといけないんですか?」

「そうですよ。私は、ハドックさんは当然、借金の相談をした時点で判っていると思っていましたけど」


「ナギ! そこをなんとか!」


「まあ、ハッシュ様には、あげない事も無いんですけどね」

「マジか? やった!」


「一応、ハッシュ様には、国王陛下と宰相を説得して貰う役目が有りますので、それが成功したならば、報酬として渡しても良いですよ」


「判ったちゃんと説得する……。えっとナギ、出来れば、質問された時に答えられるようにアドバイスを紙に書いておいてくれ」

「良いですけど、紙を貰えないと駄目ですから」

「ちゃんと渡す! 一〇枚有れば良いか?」

「まあそれだけ有れば十分ですね」


「良し! ちゃんと説得するぞ!」


「ナギさん。私は……」

「こればっかりは残念ですが、購入して頂くしか無いですね」


「ハァ……ペンと合わせて二二〇万ネィ(二二〇万円位)かぁ……」


 なんか可愛そうだなぁ……これからもお世話になるんだし救済してやろうかな。


「えっと無料は無理ですし、枠(側)が無い歯車むき出しの物で良ければ、振り子時計は俺が作って売ってあげますよ。それでも二〇万ネィ(二〇万円位)は頂きますけど」


「お願いします! 二〇万ネィ(二〇万円位)払います!」


「契約成立ですね。俺が作るのは、ハドックさんへの一台だけですから、それ以外は受付ませんので。お客様が来たら見せて自慢する事を忘れずにお願いします。ペンの方の宣伝もですよ」

「判りました」




 翌日から、調整に入る。外に持ち出して調整する訳には行かないので(風の影響を受けるから)、室内で調整する。まず時間を一二時にセットしておく。秒針は無いけど歯車は有るので、見えない裏側から歯車にマークを付けた。これで何秒ズレているのかが判る。自室(小屋)から朝日が見えるタイミングで、振り子を動かし翌日の同じタイミングで時間のズレを見て行こうと思う。


 とは言え、時間調整するのは朝だけなので、午後は、ゼニスさんの所へ向かう。


「おう、ナギ、来たか! 見ろよコレ」

「なんで四台動いているんですか?」


「いやぁ、確実に動作するのを作れるようになる為の練習だよ!」


 練習って……もう完璧に作れるんじゃないの? 職人ってマジすげぇ。って言うかゼニスさん寝てんの?


「でだな、ナギ。相談なんだけどよ」

「はい、なんでしょう」


「この振り子時計に、格好いい枠を付ける約束だろ」

「ええ、そうですね高級感の有る物を期待していますけど……」


「それなんだけどよ、ちゃんと作るし、ウチの彫師にしっかりと家具以上にすげえのを作らせる。それは約束する。既に取り掛かっている。大体、こんな感じの物が出来る予定だ」


 無茶苦茶格好良い、振り子時計だ。これは良い!


「凄いじゃないですか。マジで」


「まあ、そうなんだがよ……だけどなぁ……やっぱこう言うのは、動いてる歯車を見せた方が格好良いよな! 絶対に! だから半分は歯車が見える物で半分はちゃんとした物にしたい。駄目か?」


 そうだなぁ。確かに個人的にはスケルトンの方が好きでは有るんだけど……。


「えっと、文字盤だけは作って貰えますか? 歯車だけだと時間が判り難いので。でしたら半々でOKです」


 陛下と宰相の所に二種類持って行ければ良いんだよな。注文も好みの方にしてもらえば良いんだし。だとすると、価格の変更をしたほうが良いか……スケルトンタイプを一五〇万ネィ(一五〇万円位)で、ちゃんとした方は二〇〇万ネィ(二〇〇万円位)に設定すれば良いかな。



「判った、じゃあそれで行く」

「えっと、でも注文はどっちが来るか判りませんからね」


「まあ、そうだが男なら歯車が見えてる方一択だろ?」


 そうだと思うんですけど、そうでも無いかも知れないんですよね……。この辺は好みが有るのは仕方ない。


「所で俺からも相談が有るんですけど」


「なんだ」

「えっと自分で作るので一台分パーツを売って貰えますか?」

「そんな事か。既に量産出来るように準備を始めたんで、量産向けパーツが有るから好きに作りな。金はいらねぇ。ナギも一緒に作ったんだから、その駄賃に一台作って持って行け」


「マジですか?」

「おお、マジだ」

「有難う御座います」


 ラッキーだけど、量産向けパーツまで作って有るのか。仕事が速いなぁ……。


 パーツを貰って振り子時計を組み上げて行く。何日も手伝っているので、サクッと組み上がった。動作させても問題無く時を刻む。


「すげー組んだだけで、一発で動いた」

「当たり前だろ、そうなるように作って有るんだからよ」


 これで量産時も安心して任せる事が出来る。後は振り子の長さを調整して、その値をしっかりと渡しておけば大丈夫だろう。日差一〇分とかで無ければ良いかなと思う。目標は日差一分。重りの位置を戻す時にズレてるようなら、時針、分針を合わせて貰えば良いだろう。



「あっ、そうだナギ。聞きたいんだけどよ」

「はい」


「この振り子時計って、一日に一回重りの位置を戻さねえと駄目だろ」

「そうですね。紐を長くすれば、稼働時間は伸びますけど、設置場所を高くしないと駄目になりますよ」


「もっと簡単にならねえのか?」

「出来ますけど、最初に作るのはちょっと難しいかなと思ったので止めたんです」

「どうするんだ? 教えろよ」


 ゼンマイが有れば、または作れれば一番良いんだけど、それは未だ先の事だろう。メカ部分を理解した人が閃くと思う。なので別な方法を教える。


「この重りが付いている歯車を水車に変えるんです。上から水をポタポタと少量落として行けば、水を補給するだけで稼働します。ただ、水車ですから下に水が落ちるのでバケツを用意しておかないといけません。重り式とどっちが良いのかは判りませんけど」


「ほほう……そう言う事か。水を足すだけの方が楽だとは思うな。ちょっと作って見るか……」


 別に良いけどさ、結構難しいと思うよ。特に水をポタポタってのが。一定の水圧と蛇口みたいな機能が必要だと思うんだよね。まあ出来上がったらラインナップに加えても良いと思う。砂時計型の方が良いのかもだけど多分無理っぽい。ポタポタ落ちないし大量の細かい砂が必要になると思うから。


 水車型は、お任せする事にした。パーツを貰って自分で作った物を有り難く頂戴して帰った。





 その後、七日間掛けて振り子の微調整をしていった。重りを戻す時に若干時計が止まるので、一日で一〇秒程進むように微調整した。


 調整完了品を持って、ゼニスさんの所へ行く。一番重要な説明をしないといけないので。


「ナギ、来たか待ってたぜ。久しぶりって事も無いけどな」


「調整が終わったので、振り子時計を持って来ました。振り子時計を作る上で一番重要な部分の説明をしたいと思います」


「脱進機とか言う部分が重要じゃ無いのか?」


「そこも重要ですけど、時計ですから狂い無く動作させる為の部分です」


 振り子の支点から重りの位置迄の長さを出来上がった物に合わせる必要が有ると説明した。この調整した振り子時計をマスターとして、長さを記録してもらう。出来れば金属の棒でピッタリの長さの物を作って貰い、今後はそれに合わせて振り子を作って貰いたい。と言う説明をした。


「なるほど、これがキモなんだな。判った」

「それと、今言った部分は、ゼニスさんだけ知っておいて欲しいんです。一応王家に独占権とコピー禁止のお墨付きを貰うつもりですが、購入者が分解すれば、同じ物は作れます。ですが、長さは判らなければ合わせ込めませんから。無いと思いたいですが将来此処(ここ)から独立した職人がコピーしても、マトモな時計にはならないようにです。とは言えいずれは解明されるとは思いますけどね」


「そうだな、自立した奴が勝手に作る事も考えると、俺と後を継ぐ奴だけに教える事にするよ」

「お願いします」


「それでだな、水車型は、今はちょっと無理っぽいってのが判った。どっかの工房に、ポタポタ水が落ちる水槽を作って貰わないと駄目だな。だが一応動く物は出来たぜ」


「流石ですね。水で木製の歯車が濡れてしまうと、動作が可怪しくなる可能性も有るので気を付けてください」

「確かにな。金属製の歯車にした方が良いのかもだな」


 後は、文字盤、外枠(側)の完成した物を見せて貰った。模様が彫られていて漆塗りされ高級感が有る。文字盤も文字の所が盛り上がっていて、更に金箔版と銀箔版の二種類になっていた。ここまで作りこんでくれるとは思わなかった。個人的には銀の文字の方が好きかな。


 後は、ゼニスさんが振り子の調整をしてくれれば完成だろう。納品は、四日後を目処にお願いした。


 帰ってから、ハドックさんに自分が作った振り子時計を渡した。ちゃんと使い方を教える。一日一回重りを上げる事を伝えて。かなり喜んでいる。取り敢えず日没の鐘に合わせて時刻を合わせて本格稼働した。まあ調子が悪くなれば直ぐに調整出来るので問題無いと思っている。


 無料で作らして貰った物だけど、それは言わない。ちゃんと二〇万ネィ(二〇万円位)頂いた。色々と購入する物も有るし。





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