(1-02)定番魔法の確認
よろしくお願いします。
(1―02)定番魔法の確認
『森だから、火魔法は不味いよな……山火事になる可能性があるから……』
「ウォーター!」
定番中の定番の水を出す魔法を唱えてみる。当然、ちゃんと水が出るように意識しながら。
『おっ! 水が出た! やった!』
取り敢えず、魔法を唱えたら水が出る事が判った。だが……。
「ちょっ、待った! ストップ! ストップ!」
慌てて魔法を止める。
「ヤバい! マジで!」
大量の水が出現した訳では無い。そんなに出て無いんだけど、いきなり体力を消耗し始めたので慌てて魔法を止めた。
「マジかぁ……」
どうも、この世界は魔法を使うと、体力を消耗するらしい。全力で運動した後のように一気に腹が減って来た。
『以前、異世界の小説に詳しい人に聞いた事が有ったから判るけど、こう言う異世界が有っても不思議じゃ無いって……。だけどなぁ、ちょっと想定外だよ……」
教えてくれた人が言うには、〝絶対に物理法則を超える事は出来ないし、単なる想像だけで物理事象を起こす事は出来ない。なんらかのエネルギーの対価が無いと不可能。人の力だけで魔法を使う事が出来るとすれば、カロリーを消費する可能性が有る〟と言っていた。ただ〝質量をエネルギーに変換出来れば、体力消耗は少ないだろう〟とも。
『今の現象は、体力を使って水を出したんだよなぁ……どうやって体力と水の変換が出来たのかは不明だけど……。にしてもマジでヤバいな。街まで辿りつけるかなぁ……喉も乾いて来たし……。だけど街に向かわないと……。マジで転移したその日に死体になってしまうよ』
森から見て開けてる方向に歩き出す。ふと胸元に首からぶら下げるように小さい巾着袋が掛かっているのに気づいた。一旦立ち止まって中を確認する。中に入っていたのは、この世界の貨幣。それと自分が使っているパーソナル・デバイスが入っていた。
「良かったぁ……。これが有れば色々と調べる事が出来る!」
パーソナル・デバイスには、ネットから無茶苦茶情報をダウンロードして格納してある。当然、異世界に行ったら役立つ(かもしれない)情報を。ネットに繋がらなくても、保存した情報は閲覧出来るし、ソーラー充電なので電池切れも心配ない。
『ん? 何で判るんだっけ?』
貨幣(硬貨)を取り出してみると、何故か貨幣の単位と価値が判った。
貨幣(硬貨)の価値と単位は
単位=ネィ
小銅貨:10ネィ=¥10位
大銅貨:100ネィ=¥100位
小銀貨:1,000ネィ=¥1,000(10g)位
中銀貨:5,000ネィ=¥5,000(50g)位
大銀貨:10,000ネィ=¥10,000(100g)位
小金貨:100,000ネィ=¥100,000(15g)位、ただし巾着には入って無い。
中金貨:500,000ネィ=¥500,000(75g)位、ただし巾着には入って無い。
大金貨:1,000,000ネィ=¥1,000,000(150g)位、ただし巾着には入って無い。
『やっぱコレは、初心者パックで神様がくれたんだろうな。神様に会った記憶は無いけど、記憶消去されていると思うし……だけど神様有難う御座います!』
大体、額面で100,000ネィ位入っていた。この金額ならば、街の物価は不明だけど一週間位は生活出来ると思われる。逆に言えば、一週間でお金を稼ぐ目処を付けないと不味いって事だ。それと脳内には自分の習って無い言語が有る事も気付いた、多分これも初心者パックで神様がくれた特典なんだろう。あらためて神様に感謝した。
貨幣(硬貨)を仕舞い歩き出した。
「おっ! こ、これは!」
森の中に、トマトを見つけた。なんで生えているのかは当然判らない。
『トマトだよね? トマトのハズ。トマトだったら良いなぁ……だけど野生のトマトって食べれるんだっけ? そもそもトマトって遥か昔は毒が有ったような……スーパーで売っているのは品種改良されて毒性が低くなっている物だってネットで見た記憶が有るんだよな……。さてどうしようか』
脳内では、食べる=YES 食べない=No のメッセージが浮かんでいる。
『喉も乾いて、腹減っているし……だけど異世界転移して即死になるかもしれない選択をいきなり迫られるとは……』
マジで其の場で考え込んでしまう。
『えっと……神様がこの森に転移させてくれたのは間違い無いと思う。だとすれば、森から出る過程で、俺がこのトマトを見つけるのも当然判っているハズ。んで多分俺がコレを食べるんじゃ無いかなって言うのは判っていると思う。意地悪な神様だとすれば、トマトを食べて即死させるって罠を仕掛けていると思うけど、そんな悪い神様じゃ無いと思いたい。無いよね? だってお金も初心者パックで恵んでくれているんだし……。だとすれば、これは多分食べても平気なハズ……』
自分の都合の良いように勝手に判断して、トマトを手に取った。
『大丈夫、毒性が有っても一個位じゃ死なないはずだから……』
そう思ってトマトをカプリと食べ始める。
「美味っ! マジで!」
空きっ腹だと言う理由もかなり有るとは思うが、無茶苦茶甘くて美味しいトマトだ。一気に全部食べてしまう。
『もう一個、行っとくか? こんなに美味いんだし、未だ全然満足出来てないもんな!』
二個目を手に取り、直ぐに食べ終わる、そして三個目を食べてしまった。未だお腹が膨れるって事は全く無いけど流石に危険かも知れないと思い、四個目を手に取るのは諦めた。
『これでなんとか街まで辿り着けると良いんだけど……』
少し体力が復活したナギは、再度歩き、なんとか森から出る事が出来た。森から出た所には、砂利道では有るが街道と思われる道が有った。
『どっちに行けば良いんだ?』
左右を見渡すが、森の側に近いのと砂利道の脇には結構背が高い雑草が生えているので見通しは良くない。だけど少し左右に進んで確認したら左側の方向になんとなく街っぽい感じの物が有りそうに見えた。
『良し! こっちに進もう』
左方向に進む事にしたが実際の距離は良く判らない。現在時刻も不明であるがかなり明るいので、暗くなる前には辿り着けそうな気がしている。多分だけど一〇キロ位だと思える。じっとしていても始まらないので、街が有ると思われる方に歩き始めた。
『途中で湧き水でも有れば良いんだけどなぁ、森の側だし山も近いから水が湧いて流れてる所が有っても不思議じゃ無いよな……期待して歩こう!』
砂利道を歩いていて気づいた。
『やっぱ、そうだよなぁ……有ると思ってたんだよなぁ〝ウ○コ〟が』
歩いている砂利道は、大体二車線位の幅が有る。街道を通る馬車がすれ違えるようになっていると思われる。
まあそれはその通りだと思うんだけど、各車線の真ん中付近には、〝ウ○コ〟が結構な頻度で落ちていた。
『当たり前だけど馬車を引く馬の〝ウ○コ〟が落ちているんだよな。牛の可能性も否定は出来ないけどさ……。間違い無いと思うけど、この道は、街と街を結ぶ街道なんだろうな』
と判断出来た。という事は、何方に向かっても取り敢えず街は有るとは思えるが近いのは左方向だろうと思える。
『でもなぁ……。やっぱ、街道には〝ウ○コ〟がいっぱい有るって、小説には書いていて欲しいよなぁ……俺みたいな感じで異世界に行く人間もいるかもしれないんだからさぁ……。若しかしてだけど他の異世界は街道に〝ウ○コ〟は無いのかなぁ? まあ書く意味が無い情報かも知れないけど……。それともスライムかなんかが直ぐに〝ウ○コ〟を食べてるのかも……。だとしたらこの世界はスライムが居ないのか? いやそれは街の冒険者ギルドで確認しないと……』
と頭のなかでブツブツ文句を言いつつも目的地に向かって歩いて行く。体感で一〇分位歩いた所で向こうから馬車が近づいて来るのが判った。
『あの馬車の人に、街までの距離を聞いて確認しよう!』
馬車が近くに来た所で合図をして、馬車を止めて貰い話をして聞いた。農家さんの馬車のようだった。御者さんの話しでは、大体歩いて半刻位で着くと教えて貰いお礼を言って通り過ぎた。
『えっと……』
脳内検索をしたら、一刻が大体三時間位だって判り、だいたい一時間半位で到着しそうだと判った。どうも向かっている街は、この国の王都らしい。取り敢えず発展していそうで安心する事が出来た。
途中、運良く、湧き水が流れている所が有り、飲めるか不安だったけど自然が豊富なので平気だと判断して喉を潤してから王都に向かった。
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