(2-06)重力加速度測定と振り子時計作り1
よろしくお願いします。
(2―06)重力加速度測定と振り子時計作り
ペンが完成するまで何もしないって訳にもいかないので、状況を纏めて行こうと思っている。
カッセルブラッド王国に居た時は意識しなかったが、グランデルグ王国に来たら、貴族様の名前と言うか〝ド〟が家名の前に付いているので、フランス系って感じがする。異世界で多いのはドイツ系。多分三割以上有る気がする。最初に異世界転移、転生して国を作ったのがドイツ系の人なんだと思われる。
財務関係で、円グラフ棒グラフを用いる事で視覚的にすぐ判るようにした。超有名な王朝の全裸の皇帝、裸人ハルト・フォン・棒円グラフも、ドイツ系だ。異世界転生した時に神様から貰った立派な〝すてぃんぐ・すてぃんぐ〟で女性に人気が有ったらしい。そう言う意味ではこの世界は異なる。俺は神様から立派な〝すてぃんぐ・すてぃんぐ〟を貰って無いし……。なんか不公平な気がする。
でも良かったと言うか安心したのは、フランス系みたいだけど一〇進法を使っている事。フランス系だと二〇進法を使っているのかと思ったけど、そうでは無かった。流石に二〇進法は難しくて覚える気がしないので安心した。
次に始めたのが重力加速度の測定。
そんなの知らなくても暮らして行けるのは判るけど、元の世界とどの位違うのか知っておきたかった。なんだかんだで理系なので知りたい病が出てくる。と言うか出るのが普通だと思う。なんで調べないのかは謎ですよね。
リウットさんから貰って来た糸を使って石を結び振り子を作った。地球上での振り子の周期が二秒位になるように、約一メルトの振り子を作って、周期を測定した。糸の長さはスマート・デバイスで測れるので合っていると思う。
何度も繰り返し測定したけど、どうも重力加速度は、約10Gだった。ちょっと大きい。
世界が違うんだから地球と同じって事は先ず有り得ないと思う。でも人間が暮らせる世界なので、この程度の差なのかも知れないなと思った。この少しの差は、実際に惑星自体が重いのか、大気の層が厚いのかは判らない。惑星のサイズを測るのはちょっと難しいので現時点では行わないと言うか出来ない。
とは言え、もっと詳しく調べたくなって来たので先送りしていた、時間の測定をしようと思った。
この世界に来て、かなり変だなと思ったのは、すでに六ヶ月(現地時間)以上過ぎて、夏から冬になったのに、日の出、日の入りの時間が変わっていない。惑星の地軸が太陽に大して垂直になっているみたいだ。なのに季節が有るのは、見かけの太陽の大きさが変化しているからのようだ。間違いないと思うが公転軌道が楕円形になっていると推測している。
なので、日の出前に起きて、太陽が見える瞬間から、翌日の太陽が見える瞬間迄を、スマートデバイスで測定して一日の時間を計三日間測定した。測って判った時間は、一日が二二時間四五分十一秒位だと言うこと。約一時間一五分も短い感じだ。生活していると全然気にならなくなるのは慣れるからだろう。
これが判ると、役に立たないスマートデバイスの時計よりも、役に立つ時計が欲しくなって来る。なので振り子時計を作ろうと思った。振り子時計はオーバーテクノロジーでは無いと思っている。実際簡単に作れる。なんと言っても小学校の夏休みの工作でダンボールで作った事が有るから。
こっちの人間も分解すれば直ぐに理解は出来るだろう。ただし正確に時を刻む所は悩むとは思う。だけど疑問が出れば理由を知ろうと調べて行くだろう。そうすれば振り子の動作、重力加速度の事も判って来るのではと思った。
『さてと、振り子時計は良いんだけど、一六進にするか、十進にするか、一二進にするか……。やっぱこの世界の人達には悪いけど、自分が見やすいのは一二進かな。一六進の方が歯車的には作りやすそうだけど、秒の計算がやり直しになるし』
と言う事で、普通の午前、午後一二時間の時計を作る事にする。
先ずは、この世界の一秒を決め、計算した重力加速度を元に振り子の長さを決定する。ただし相当誤差が有るので完成品で微調整する必要がある。
値が決まったら設計図を書き始める。歯車のギヤの数、歯車のサイズを書いて行った。重要なのは脱進機の部分。設計図通りに作っても動かないだろうと思う。これは完成品の歯車と脱進機の微調整をしないと駄目だろう。
『工具とか有れば自分でも出来るんだけどな。時間も有るし……』
と思うが、これを欲しがる人が居た場合、作るのに掛かりっきりになってしまう。
『やっぱ、ハッシュ様に相談して借金するか……。未だペンも出来て無いのに次の借金申し込みはし辛いな』
ロテック商会に頼めば投資してくれそうだけど、商人に借金をするのはなぁ……。良し、ハッシュ様に借りる事にしよう。貸してくれると良いなぁ。
と言う事で借金の為のプレゼン資料を作成して行く。振り子時計は、時間が判れば良いやじゃ無く見た目も最初から高級感を持たせるようにしようと思う。
需要予測が良く判らない。時計が無くても生活出来ているから。取り敢えず鐘を鳴らしている教会には必要な物かなとは思うけど。それと見栄を張りたい貴族位だろうか……ペンよりも台数は売れない気がする。価格もどの位が妥当なのか……ペンよりも大きいしギミックが好きな人には良いとは思うけど。需要が良く判らないので、一〇〇万ネィ(一〇〇万円位)位の価格設定にしておこう。
これも、陛下と宰相に使って貰って宣伝して貰おうと思う。ペンと似たようなプレゼン資料になったけどまあ良いだろう。
ハドック(家宰)さんに話しを持って行く。借金のお願いだったのでちょっと嫌な顔をされたけど。どうもハッシュ様は毎日王城へ出勤しているようで、夕方にならないと戻って来ないらしい。
ハッシュ様が戻って来たタイミングで、ハドック(家宰)さんから連絡が有って、再度応接室でプレゼンをする。
「この時計が有ったら凄く便利だとは思うが……売れるのか? どう思うハドック」
「そうですね、ペン程では無いと思いますけど、それなりには売れると思いますよ。私は部屋に一つ置いておきたいですね。教会の鐘だけでは時間が良く判りませんから。この価格設定は高いとは思いますけど、現在時計なる物が無いので妥当かも知れません」
なんとか、ハッシュ様から、二〇〇万ネィ(二〇〇万円位)借金をする事が出来た。現物を見れば欲しがる人は増えると思うんだけどなぁ……。だって歯車が動くんだからワクワクすると思うんだけど。
翌日、再度ロテック商会を呼んで貰い、迎えに来た馬車に乗り込んでロテック商会に行った。
久しぶりと言う程でも無いけど、挨拶をして、早速本題に入って行く。前回のペンの事が有ったのでかなりスムーズに話しが進む。なんと言っても開発費はこっち持ちなので、どう転んでもロテック商会は損をしないからね。
話しをした後、作れそうな工房、それも直接取り引きしている所に心当たりが有ると言う事で、工房に向かう。アポ無しだけど大丈夫と言っている。良く発注をして親しいのだろう。
やっぱり工房は街外れに有るとの事。行き先は家具を作っているパネライ工房さん。
工房長の職人ゼニスさんに、話しをして行く。かなりのオジサンだけど、ギミックは大好きみたいだ。凄く作りたそうだ。もうノリノリだったので、速攻で契約。納入物は一ヶ月後に五台で約束した。ゼニスさんの感覚では歯車のギミックは二日位で作れるんじゃないかとの事。
『マジかぁ……すげぇな職人って』
だけど、これは作っても動かないと思うので、自分も作業に参加する事にして貰う。ただ困った事に、此処まで来る足が無い。歩いて一時間以上かかるだろう。と思っていると、リウットさんがロテック商会の馬車で送迎してくれるとの事。感謝です。
翌日、ロテック商会の馬車の送迎でパネライ工房に向かう。
「おおう、坊主来たか。取り敢えず、歯車を作って組み立てて見たけど動かねえぞ」
それは、元々判っているんだし、動かないって昨日伝えたよね? って言うかなんで出来てんだよ! 早過ぎだろ! このオジサン。興味の有る物作りだと集中しすぎて夜でも作っちゃう人なんだな。絶対にそうだ。
「そうですね、最初はそうなるって思ってましたから、その為に俺が来てるんです」
出来上がった物を見ると、見た目はバッチリだ。外装を作れば完璧って感じ。だけど不具合箇所を修正するには、分解しないといけない。
取り敢えずどんな感じか見ていく。やっぱり脱進機とギアの部分が噛合い過ぎて動作しない。
「ここですね。どっちも直さないと駄目だと思います」
ゼニスさんに説明して行く、脱進機がカチャッって左に動くとギアが一つ進んで、右に戻るとギヤが再度一つ進む。現状は、何方も噛合い過ぎている。ギアの方も一応、単なる三角形では無くノコギリ型に設計図は書いていたけど、作られているのは三角形の形だ。これだと脱進機だけの修正では動かないだろう。
ゼニスさんに、ギアの修正をお願いする。多分作り直しかなと思う。
これを何度も繰り返して行く。だけどゼニスさんは文句も言わずに、失敗する度にもう少しとか言いながらも、楽しそうに作って行ってくれた。
これを繰り返して、三日程で期待する動作になった。脱進機と歯車何個作ったんだろう? かなり失敗してるな。
「よっしゃ! 坊主やったな! なんかすげぇな! コチコチと連続で動くんだもんな! こんなの考えつくなんてすげえ奴だなお前は! わっはっはっ!」
そうなんだよな、自分も何度も失敗しながら作って動作した時は感動したもんな。学校に持って行って披露した時はヒーローだったもんね。まあ重りの付けてる場所が悪くて一五分位しか動かなかったけど。
だけど正確に時刻を刻ませるのは、此処から更に時間を掛けないといけない。ゼニスさんには、この出来上がった物をベースに、量産作業のお願いと、高級感の有る側を作って貰う。ちゃんと修正箇所はメモを取っているし、ノウハウは得られたと思う。俺はコレを持ち帰り、正確に動くように、振り子の長さを調節する事に。取り敢えず一週間(八日)程猶予を貰って調整する。現状早いのか遅いのかが全く判らないし。
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